(一財)土木研究センター/刊行物/月刊誌土木技術資料抄録/平成24年

 
平成24年1月 報文抄録
 

【特集報文】 橋梁の耐震性の向上に向けて
−東北地方太平洋沖地震における耐震補強された橋の挙動−

星隈順一・張 広鋒・堺 淳一

<抄録> 本報文は、2011年東北地方太平洋沖地震の影響を受けたと考えられる橋の地震時挙動を把握するための一環として、耐震補強が既に実施された橋を対象として、地震時における橋の挙動並びに耐震補強の効果に関する分析結果を報告するものである。

<キーワード> 東北地方太平洋沖地震、道路橋、耐震補強、地震時挙動

 

【特集報文】 河川堤防の耐震性向上に向けて
東北地方太平洋沖地震の観測記録を用いた基礎地盤の液状化強度評価−

松岡一成・片岡正次郎・金子正洋

<抄録> 河川堤防の液状化強度の評価は耐震設計上重要な要素であるが、現地の地震観測記録をもとに実地盤の液状化強度が推定された事例はすくない。本報文では、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の際に観測された実地盤の記録を用いて、液状化強度を逆算し、先に検討した2003年7月26日の宮城県北部地震の結果と比較することにより、液状化強度推定方法の精度について検証した結果を報告する。

<キーワード> 東北地方太平洋沖地震、河川堤防、液状化強度、観測記録、累積損傷度解析

 

【特集報文】 ダムの耐震技術の向上に向けて
−終局限界状態を考慮したコンクリートダムの耐震性能照査手法の開発−

金銅将史・切無沢 徹・小島裕之・山口嘉一・岩下友也

<抄録> 大規模地震に対するダムの耐震性能として、ダムに損傷が生じたとしてもダムの貯水機能が維持されることを確認する必要がある。そのため、コンクリートダム堤体に亀裂が発生し、堤体が分断されるような最も厳しい状態を想定した終局的な耐震性の評価手法の開発を目的として実施した、振動実験や解析の結果について報告する。

<キーワード> 重力式コンクリートダム、耐震性能、分断亀裂、振動実験、個別要素法

 

【特集報文】 大規模地震の迅速な危機管理対応を目指して
−地震観測情報を活用した地震比較による災害対応支援情報の提供−

長屋和宏・片岡正次郎・運上茂樹・金子正洋

<抄録> 甚大な被害が想定される大規模地震時には状況把握の遅れにより、危機管理対応に遅れを生じる恐れがある。筆者らは、施設管理者の意志決定をサポートすることを目的に、強震観測記録を利用し、発生地震の地震動分布の作成、既往地震との比較による近似性の高い地震の抽出、参考となる既往地震の被害情報を活用する仕組みを構築した。

<キーワード> 地震観測、参照地震、推計地震動分布、地震近似性評価

 

【特集報文】 大規模沿岸域災害の減災に向けて −港湾における低頻度大規模災害への対応−

根木貴史・熊谷兼太郎・渡邉祐二

<抄録> 東日本大震災を経験し、想定外を想定することの重要さと難しさを知らされることとなった。当研究室では、発災前から「低頻度メガリスク型沿岸災害」について研究を始めていたが、現在進められている対策検討の中で、どう取り入れられたか、また何を想定できていなかったのか、事後的に浮かび上がったところを報告し、今後の課題の例示を試みる。

<キーワード> 東日本大震災、低頻度メガリスク型沿岸災害、港湾、津波防災まちづくり、海岸保全施設

 

【特集報文】 大規模水災害の減災に向けて −低頻度大規模水災害への対応−

田中茂信

<抄録> 頻度は低いが、ひとたび発生すると甚大な被害を生じる「低頻度大規模水害」について、中小規模の災害と比較しつつ、東日本大震災、タイ・チャオプラヤ川の洪水を事例にリスクと災害の関係、災害対策と意識の関係などの観点から対策のありかたを述べる。

<キーワード> リスク、Opportunity(機会)、津波、復旧・復興方針、国際貢献

 

【特集報文】 大規模土砂災害等の減災に向けて
―土砂災害の予測・監視・警戒避難の高度化への取り組み―

小山内信智・石塚忠範・武士俊也・野呂智之

<抄録> 2011年は毎年発生するタイプの土砂災害に加え、霧島山新燃岳噴火、東日本大震災、そして紀伊半島豪雨災害といった、いわゆる"大規模な"災害が総棚浚えされたような異常ともいえる年であった。このような大規模な土砂災害等に対して"減災"を図るために、現在取り組んでいる幾つかの研究・技術開発の事例について紹介する。

<キーワード> 大規模土砂災害、減災、天然ダム、地すべり、雪崩

 

【特集報文】 迅速で確実な天然ダム形成確認調査に向けて
−ヘリコプター搭載型簡易レーザ計測システムの開発−

水野正樹・岡本 敦

<抄録> 地震や豪雨等、天然ダム形成につながる異常現象が発生した場合、天然ダム(河道閉塞)形成の有無と規模を把握するヘリによる天然ダム形成確認調査をより迅速かつ確実に行うため、各種計測手法を比較し選定したヘリ搭載型レーザ測定システムを防災ヘリあおぞら号に搭載して、調査手法の有用性を検証した。

<キーワード> ヘリ調査、レーザ、河道閉塞、天然ダム、形成確認調査

 

【特集報文】 コンクリート構造物の信頼性の向上 ―ひび割れの影響―

渡辺博志

<抄録> コンクリートに発生するひび割れが、コンクリート構造物中の鉄筋腐食に与える影響について、暴露試験結果を報告するものである。ひび割れ幅の増加は鉄筋腐食面積率の増加につながるが、かぶりが大きいと腐食面積率は小さくなることが明らかとなった。

<キーワード> コンクリート、ひび割れ、鉄筋腐食、塩害、暴露試験

 

【特集報文】 コンクリート道路橋の維持管理技術の向上に向けて
−腐食PCはりのせん断耐力評価−

花井 拓・中村英佑・早川智浩・村越 潤・木村嘉富・田中良樹

<抄録> 鋼材腐食の生じたPCはり部材のせん断耐荷特性については、これまでの研究の事例が少ないのが現状である。そこで、電食により人工的に鋼材腐食を生じさせたPCはり供試体を製作し、せん断載荷試験を行った。また、電食過程における劣化の進展を非破壊検査手法により確認した。

<キーワード> せん断、プレストレストコンクリートはり部材、鋼材腐食、剥離、非破壊検査

 

【土研センター】 塗装・防食相談室の開設 ―その役割と調査事例(その1)―

片脇清士

<抄録> (財)土木研究センターでは塗装・防食相談室を開設した。道路橋や構造物などの塗装や防食に関する豊富な経験を有する技術者が相談をうけるしくみである。その1では、相談室へ期待される役割について、また、塗膜のはがれやさび、塗料などいくつかの相談・調査事例について紹介する。

<キーワード> 塗装・防食相談室、橋梁塗装、橋梁長寿命修繕計画、はがれ・さび、塗膜調査

 

 

平成24年2月 報文抄録
 

【特集報文】 受発注者間の情報共有システムに求められる機能に関する検討

上田英滋・東耕吉孝・井星雄貴・青山憲明・重高浩一

<抄録> 受発注者間の情報交換・共有によるコミュニケーション円滑化を図るため、情報共有システムを利用した工事施工の試行が実施されている。本研究は、情報共有システムの試行運用の調査をもとに、現状システムの効果や課題を明らかにし、情報共有システム機能要件の改定を行った。

<キーワード> 情報共有システム、CALS/EC、工事施工、維持管理、業務効率化

 

【特集報文】 情報共有ツールを活用した防災対応情報共有のためのアプローチ

横地克謙・小原弘志・重高浩一

<抄録> 災害から国民の生命や財産を守るためには、災害に関する情報や被害状況等を迅速に把握し、適切に対処する防災対応力が必要である。防災対応力の一層の向上を目的とし、ナレッジマネジメントの手法を応用しノウハウや経験といった暗黙知を的確に抽出すると共に、広く情報共有するための手法について研究を行った。

<キーワード>  防災、ナレッジマネジメント、ICT、知識共有

 

【特集報文】 道路関連情報の流通のための位置参照方式 〜道路の区間ID方式の確立〜

今井龍一・有賀清隆・佐々木洋一・重高浩一

<抄録> 道路の区間と参照点とを用いて相対的に道路上の位置を特定し、異なる地図間でも正確に道路関連情報が交換できる道路の区間ID方式を具体化した。本稿は、同方式および活用場面の具体化の取り組み状況を報告する。

<キーワード> ITS、位置参照方式、道路関連情報の流通、道路ネットワーク

 

【特集報文】 埋蔵文化財包蔵地における先端建設技術の活用
〜情報化施工を使った文化財保護〜

藤野健一・石松 豊

<抄録> 建設事業を行う際に、しばしば埋蔵文化財包蔵地で施工を行わざるを得ない場合がある。この際には文化庁や各都道府県等の教育委員会に対して現状変更手続きが必要となるが、その際には施工方法についても文化財保護のために最善を尽くすことが求められる。本稿では埋蔵文化財保護のために情報化施工を適用した事例について、その効果を含めて解説するものである。

<キーワード> 埋蔵文化財保護、情報化施工、3D-MC、3D-MG、mm-GPS

 

【特集報文】 効果・効率的な盛土施工について
〜これからの盛土施工の考え方と情報化施工の有効活用〜

岩谷隆文・藤野健一・茂木正晴

<抄録> 昨今の地震凶豪雨等における災害が発生している中で河川・道路盛土の品質確保は社会資本維持の簡単から重要なものと考えられる。盛土の品質を確保するためには、盛土施工のメカニズム、現場状況に応じた施工手法及び管理が必要となる。本報告では、効果的・効率的な盛土施工及び品質管理を目的とした、現在施工現場で活用推進されている情報化施工技術のほかに施工時における締固め機械の選定や今後の盛土施工に関する考え方について報告するものである。

<キーワード> 情報化施工、盛土施工、締固め、施工・品質管理

 

【特集報文】 情報化施工技術を活用した工事の成績評定結果の分析

渡辺健一・市村靖光・塚原隆夫

<抄録> 情報化施工技術は、ICT(情報通信技術)の活用により、従来の施工技術と比べ、より高い生産性と施工品質を実現可能とするものである。このため、建設工事において積極的に一般化・実用化の推進を図るべく、直轄事業において試験工事を実施してきた。今回、平成21年度に完成した土木工事の中から、情報化施工技術を活用した試験工事における成績評定結果を分析し、その傾向について報告する。

<キーワード> 情報化施工、新技術、工事成績評定、監督、検査

 

【現地レポート】 中部地方整備局における情報共有システムの取り組み

水腰直樹・岩崎哲也

<抄録> 本報告では、中部地方整備局の実現場おいて情報共有システムを活用し、その中から得られた課題と対応策や導入効果を検証すると共に、受発注者間の新たなコミュニケーションツールとしての可能性や有効性について述べる。

<キーワード> 情報共有システム、情報一元化、コミュニケーションツール、監督検査効率化

 

【現地レポート】 舗装工事へのTS出来形管理技術適用の取り組み

二瓶正康・岡田雅昭・古川伸一・竹本憲充

<抄録> ICT技術を活用するため、新しいツールに対応できるルールの整備が求められている。「施工管理データを搭載したTSを用いた出来形管理」の適用拡大として、舗装工事での試験施工について課題把握と対応検討について報告する。

<キーワード> TS出来形管理、情報化施工、3次元座標、計測効率化

 

【報文】 地すべり地における地表水・地下水排除施設の適正な維持管理にむけて

丸山清輝・中村 明・野呂智之

<抄録> 地すべり地における地表水・地下水排除施設の適正な維持管理について検討した。本文では、その中から全国における地表水・地下水排除施設の維持管理の実態調査結果、新潟県上越地方における横ボーリング集水管閉塞までの期間の調査結果、集水井内観察カメラの試作について示した。

<キーワード> 地すべり、地表水・地下水排除施設、維持管理、実態調査、集水井内観察カメラ

 

【土研センター】 塗装・防食相談室の開設 −その役割と調査事例(その2)−

片脇清士

<抄録>  (財)土木研究センターでは塗装・防食相談室を開設した。道路橋や構造物などの塗装や防食に関する豊富な経験を有する技術者が相談をうけるしくみである。その2では、塗装技術の経緯、長期間に経過した塗膜の調査、調査に用いる高度分析、調査によって得られる効果について紹介する。

<キーワード> 塗装・防食相談室、橋梁塗装、橋梁長寿命修繕計画、塗膜調査、高度分析

 

 

平成24年3月 報文抄録
 

【報文】 地球温暖化が湖の水質に与える影響
―霞ヶ浦と琵琶湖の約30年間の水質データの統計解析−

北村友一・南山瑞彦

<抄録> 地球温暖化が湖の水質に及ぼす影響を明らかにするため、霞ヶ浦と琵琶湖の既存の水質調査結果をもとに、約30年間の気温と水質変化の傾向を隣接年比較法より解析した。その結果、霞ヶ浦と琵琶湖の年平均水温はそれぞれ0.012℃/年、0.031℃/年で上昇していた。隣接年比較法から、水温の上昇に対する水質の変化を解析すると、霞ヶ浦ではCODが増加傾向、DOが減少傾向を示した。琵琶湖表層では、pHが増加傾向、DOとNO3-N濃度が減少傾向を示した。

<キーワード> 地球温暖化、水質、琵琶湖、霞ヶ浦

 

【報文】 地すべり応急緊急対策としての押え盛土の形状と効果

石田孝司・藤澤和範・武士俊也

<抄録> 地すべりの押え盛土工の施工事例から、応急緊急対策工として実施する際の適切な盛り土量や盛土形状について考察した。また計画・施工に際しての留意事項等について整理した。

<キーワード> 地すべり、応急緊急対策、押え盛土工、盛土量、安全率

 

 

【報文】 路面の"きめ"と転がり抵抗の関係について

渡邉一弘・井谷雅司・久保和幸

<抄録> 本研究では、同一条件下で異なる舗装種別における普通自動車の転がり抵抗の測定を試みた。その結果、舗装の種別により転がり抵抗に差があること、同一舗装種別では路面のきめが転がり抵抗に影響を及ぼし得ることを明らかにした。また、転がり抵抗の測定方法に関しては、実道での適用性の面から平均牽引力測定法が適していると考えられた。

<キーワード> 舗装、路面、きめ、テクスチャ、転がり抵抗

 

 

【報文】 山地河川における岩盤露出による影響と砂礫床回復への取組み

小林草平・増本みどり・三輪準二

<抄録> 河床において砂礫減少による岩盤露出が環境上の問題となっている。栃木県鬼怒川上流の黒部ダム下流を対象に行った研究から、岩盤露出が拡大している原因、砂礫減少と岩盤露出が底生動物群集に及ぼす影響、また岩盤露出区間で砂礫床を回復させる取組みとして、ジオテキスタイル製ふとん篭を用いた施工の効果を報告した。

<キーワード> 山地河川、砂礫床、岩盤露出、礫径、底生動物、ふとん篭

 

 

【報文】 火山噴火後に降灰分布を速やかに推定する手法

木佐洋志・山越隆雄・石塚忠範

<抄録> 火山噴火により火山灰等が厚く堆積した流域斜面では浸透能が著しく低下し、小規模の降雨でも土石流発生の危険性が高まるとされている。そのため、降灰分布の迅速な把握が重要であるが、網羅的な降灰分布調査は時間を要する。そこで、噴火後に降灰分布を速やかに推定する手法について、新燃岳2011年1月噴火を例に説明する。

<キーワード> 降灰分布の速やかな推定、等層厚線、目標層厚、面積−層厚の反比例関係、霧島山(新燃岳)

 

 

【報文】 コンクリート用表面含浸材の含水率低減効果に関する屋外暴露試験

古賀裕久・渡辺博志

<抄録> アルカリシリカ反応(ASR)により劣化したコンクリートなどへの補修工法の一つである表面含浸材について、屋外暴露試験を行って検討した。その結果、ASRひび割れが生じている場合でも吸水を抑制することが可能であった。一方、雨がかりがある場合、部材内部の含水率の低下は顕著とまでは言えず、注意を要する。

<キーワード> コンクリート、補修、表面含浸材、アルカリシリカ反応、含水率

 

 

【報文】 ダム貯水池に堆積した微細粒子土砂の再侵食の評価手法

箱石憲昭・櫻井寿之

<抄録> ダム貯水池に堆積する粘土やシルトといった粘着性を有する微細粒子土砂の再侵食・再浮上は、現象が複雑で土砂輸送に関するシミュレーションにどのように取り扱うかが課題である。そこで、水理実験によりT.Aカオリン及び3つの貯水池の堆積土砂の侵食特性を把握し、侵食速度推定式とそのパラメータを求めるための試験方法を提案した。

<キーワード> 堆砂、微細粒子土砂、再侵食、再浮上、侵食速度推定式

 

 

【報文】 道路面上の法定外表示等の利用事例の調査

尾崎悠太・高宮 進・山口公博

<抄録> 本報文では、全国で収集した交通安全対策等を目的とした法定外表示等の事例を対象として現地調査やヒアリング調査の結果を基に整理した、法定外表示等の事例の設置目的と期待する効果を、代表的な例と共に紹介する。

<キーワード> 法定外表示、交通安全対策、路面表示、カラー舗装

 

 

【現地レポート】 福島河川国道事務所における東日本大震災の対応と教訓

服部 司

<抄録> 東日本大震災では、震度6弱の揺れにより福島河川国道事務所の管理する国道4号や阿武隈川などの施設が著しい被害を受けた。本報文では、管内の国道、河川の被災状況、現場での応急復旧の状況について紹介し、震災対応を通じて得た危機管理上の教訓についてまとめた。

<キーワード> 福島河川国道事務所、東日本大震災、国道4号、阿武隈川、復旧

 

 

【土研センター】 プラスチックボードドレーンを用いた液状化対策工法の動的遠心模型実験

溝口義弘・井口 実・堀内晴生

<抄録> 頭部をジオグリッドと連結したプラスチックボードドレーンを用いた液状化対策工法によって改良された地盤の動的遠心模型実験を行った。その結果、改良地盤は過剰間隙水圧の発生抑制効果と地盤変形の抑制効果を有し、改良域内では地盤が一様に変形していることと、ジオグリッドには張力が作用していることなどを確認し、液状化強度が増加することが分かった。

<キーワード> 動的遠心模型実験、液状化、プラスチックボードドレーン、ジオグリッド

 

 

平成24年4月 報文抄録
 

【特集報文】 濁水が魚に与える影響 〜高濃度の濁りの場合〜

村岡敬子・天野邦彦・三輪準二

<抄録> 河川で発生する濁りによる影響を的確に評価することを可能ならしめるため、わが国の重要な水産対象魚種のひとつであるアユを対象に、個体の鰓に付着した懸濁物質の質量と粒度組成の違いに着目し、懸濁物質の違いによる影響の原因を明らかとした。また、魚種の違いによる影響レベルの違いの原因について考察した。

<キーワード> 濁り、懸濁物質濃度、鰓、生存率、致死

 

【特集報文】 貯水池濁水処理における天然凝集剤の凝集特性

海野 仁・箱石憲昭

<抄録> 本報告は、凝集材として天然由来の土コロイドであるアロフェンを取り上げ、凝集特性を明らかにしたものである。貯水池から濁水を採取し凝集実験を実施した結果、アロフェンは濁水の凝集に有効と判断された。また、濁水に凝集材を投入した後、超音波分散処理と攪拌処理を同時に行う方法により、濁水を効果的に凝集できることが判明した。

<キーワード> 天然凝集材料、アロフェン、貯水池、濁水、凝集

 

【特集報文】 活性汚泥処理による抗生物質クラリスロマイシンの代謝物探索

森田匡一・小森行也・南山瑞彦

<抄録> 本研究では、活性汚泥に抗生物質クラリスロマイシン(CAM)を添加し、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS/MS)法によりCAM代謝物の探索を行った。その結果、代謝物候補の分子イオンとしてm/z828(ポジティブイオン)とm/z826 (ネガティブイオン)が検出された。これらのイオンは同一物であると考えられ、CAMに硫酸抱合が生じていると推測された。

<キーワード> 活性汚泥処理、抗生物質、クラリスロマイシン(CAM)、代謝物、質量分析(MS)

 

【特集報文】 各種下水処理条件でのノロウイルスの除去特性

諏訪 守・岡本誠一郎・桜井健介・内田 勉

<抄録> 各種下水処理法として標準的な活性汚泥処理法を含め、窒素やりんの高度除去法である生物学的高度処理法などによるNVの除去率に及ぼす影響因子を評価した。また、下水処理場における負荷削減量を明確にするため、冬季の感染性胃腸炎の流行期において日間変動の調査により流入と流出濃度を評価した。その結果、標準法やOD法ではHRTやML(V)SS濃度にNV除去率が依存すると考えられたが、高度処理法ではその影響が見られなかった。下水処理場における流入、流出のNV濃度の平均は最大検出濃度に対して各々50%程度であることが明らかとなった。流入、流出濃度の変動状況は、処理場の規模や地域差により大きな偏りはないようであった。日間変動による24時間採水と施設滞留時間を考慮したスポット採水により各々得られたNV平均除去率は、ほぼ一致した値であった。

<キーワード> ノロウイルス、活性汚泥処理法、高度処理法、日間変動

 

【特集報文】 水循環への膜処理技術の応用

小越眞佐司・宮本綾子・西村峻介

<抄録> 21世紀は「水の世紀」といわれており、効率的な水資源利用が求められている。その中で、排水を循環利用する技術が注目されており、膜処理技術はその中心的な役割を果たしている。そこで、本稿は、水の循環に伴う諸課題や膜処理技術の現状と課題を整理し、膜を利用した近未来の水循環システム実現に向けた技術の方向性について述べた。

<キーワード> エネルギー、再生水、膜処理技術、膜分離活性汚泥法、水循環

 

【特集報文】 千曲川上流域における流域特性と河川水質の関係性評価

天野邦彦

<抄録> 千曲川上流域における河川水質の縦断的変化を、集水域特性の縦断的変化と関連づけて評価することを試みた。地理情報システム(GIS)を用いて、河川を縦断的に分割して、それぞれの分割地点における集水域の土地利用変化を集計し、水質変化との関係性を評価した。森林が大半を占める当該流域において、硝酸性窒素濃度が急激に上昇する地点が存在するが、これは、集水域における野菜畑の割合が多い地点であり、施肥に由来する硝酸性窒素が流出していると考えられることが示された。このような解析を行うことで、河川水質変化に与える流域の影響度合いを評価することが可能となると考えられ、水質保全のための流域対策策定に資するものと考えられる。

<キーワード> 流域、土地利用、水質、河川、GIS

 

【現地レポート】 印旛沼・流域における水循環健全化の取り組み

山口 浩・竹内亀代司・日野泰宏・椿原保彦・堀口友宏・杣澤良介・矢野秀和

<抄録> 印旛沼は千葉県最大の湖沼で、貴重な水源であるが、流域の急激な都市化により水質が著しく悪化した。千葉県では、印旛沼流域水循環健全化会議を立ち上げ、行政、研究機関、市民、利水者等が一体となり、多様な流域対策を進めている。また、沼内には、水質改善効果が期待される水生植物が繁茂する植生帯を造成している。

<キーワード> 流域水循環健全化、エコトーン、みためし、沈水植物

 

【報文】 沿道大気質予測に用いるNOx・PM等自動車排出係数の更新

土肥 学・曽根真理・瀧本真理

<抄録> 道路事業の環境影響評価における沿道大気質予測に用いるNOx・PM等自動車排出係数について、最新の自動車排出ガス量測定データや今後の排ガス規制強化動向を踏まえて更新を行った。本報文では、このNOx・PM等自動車排出係数の更新値の算定過程及び算定結果の概要について報告する。

<キーワード> 沿道大気質予測、自動車排出係数、NOx、PM

 

【報文】 自動車走行時のCO2排出係数及び燃料消費率の更新

土肥 学・曽根真理・瀧本真理

<抄録> 沿道大気質予測に用いるNOx・PM等自動車排出係数の更新のために調査した最新の自動車排出ガス量測定データや燃費基準導入・強化動向を用いて、自動車走行時のCO2排出係数及び燃料消費率の更新を行った。本報文では、このCO2排出係数及び燃料消費率の更新値の算定過程及び算定結果の概要について報告する。

<キーワード> 自動車排出係数、CO2、燃料消費率

 

【土研センター】 道路規制箇所等に用いられる仮設棚類の種類と性能

安藤和彦

<抄録> 道路の工事箇所や規制箇所等と、車両や歩行者・自転車等が通行する車線、歩道等との境界に設置されている代表的な仮設柵類を取り上げ、それら施設の性能や特徴等を整理するとともに、選定、設置上の留意点についてとりまとめを行った。

道路規制箇所等に用いられる仮設柵類の種類と性能

<キーワード> 仮設柵、道路施設、道路規制、性能

 

 

平成24年5月 報文抄録
 

【報文】 水際部の低流速域に対して配慮が必要とされる流速条件とは?
―魚類による低流速域の利用に関する水路実験から―

小野田幸生・萱場祐一

<抄録> 遊泳力の低い仔稚魚が水際部の低流速域を利用することが野外で観察される。流心部の流速を操作した水路実験によって、供試魚の流速耐性を超えた流速条件下で低流速域が避難場所として機能することが示唆された。また、流速耐性の目安として体サイズから推定される巡航速度(2-3BL/s)が有効であり、水際部が魚類の生息場所として機能するかの判断材料になると考えられる。

<キーワード> 多自然川づくり、水際域、低流速域、遊泳魚、流速耐性、巡航速度

 

【報文】 暖冬少雪下の除雪工調達に関する課題

駒田達広・角 拓史・塚原隆夫

<抄録> 除雪工の調達を巡っては、入札不調・不落が発生し除雪体制の確保が危ぶまれる地域がみられる。道路管理者および受注業者を対象に調査した結果、国の除雪工では、天候任せのリスクが依然あること、地方自治体では自治体毎の違いが大きく、受注業者側のリスクが高いケースがあることが示された。

<キーワード> 除雪工、暖冬少雪、入札不調・不落、待機費用、通年契約

 

 

【報文】 ITSに関する国際標準化活動状況

鈴木彰一・若月 健・金澤文彦

<抄録> 本稿では、ISO/TC204を舞台とするITS分野における国際標準化活動の概要について整理した後、特に、近年の政府機関を中心とした、協調ITSに関する国際的な標準の調和化活動の動向、特徴について述べる。

<キーワード> ITS、国際標準化、ISO/TC204、協調システム

 

 

【報文】 コンクリートの乾燥収縮率の粗骨材品質による推定

山田 宏・片平 博・渡辺博志

<抄録> コンクリートの乾燥収縮率を簡易推定するための指標として、粗骨材の乾燥収縮率に着目した。ひずみゲージによって粗骨材粒子の乾燥収縮率を測定し、コンクリートの乾燥収縮率との関係について検討した。その結果を報告するものである。

<キーワード> コンクリート、粗骨材、乾燥収縮率、ひずみゲージ、簡易推定

 

 

【報文】 セメントコンクリート舗装におけるアスファルト中間層の効果

堀内智司・井谷雅司・寺田 剛・久保和幸

<抄録> セメントコンクリート舗装においてアスファルト中間層を設置することで、コンクリート版に発生する温度応力を低減し、耐久性が向上する可能性があることがわかった。また、横ひび割れ発生した場合でも、段差量の増加を抑制し、路盤支持力をある程度確保し、荷重伝達効果も低下しにくい傾向があることを確認した。

<キーワード> セメントコンクリート舗装、アスファルト中間層、温度応力、段差量、路盤支持力

 

 

【報文】 連続体モデルを使用した数値シミュレーションによる全層雪崩事例の運動解析

池田慎二・伊東靖彦・野呂智之・田中頼博・林 一成

<抄録> 雪崩の走路・堆積区対策施設の合理的な諸元設定手法の確立を目指して開発に取り組んでいる連続体モデルを使用した雪崩運動シミュレーションによる全層雪崩の事例解析を行った。今回の事例解析においては、概ね雪崩の状況を再現できた上、僅かな速度の違いによっては、雪崩が尾根を越えて流下する可能性があることも示すことができた。

<キーワード>  雪崩、走路・堆積区対策、運動解析、連続体モデル

 

 

【報文】 ACC車両による高速道路サグ部における渋滞緩和効果

岩ア 健・鈴木一史・坂井康一・金澤文彦

<抄録>  ITSスポットによる路車間連携サービスを活用した、インフラとACC車両の連携による渋滞対策に関する研究を行っている。ACC機能を上手く活用することで、勾配変化区間における渋滞要因を軽減させることが可能と考えられている。本稿はACC車両の混入による渋滞緩和効果を把握するため、ミクロ交通シミュレーションによる推計結果を報告するものである。

<キーワード> サグ・上り坂部、路車間連携、ACC、交通円滑化、交通シミュレーション

 

 

【報文】 総価契約単価合意方式フォローアップ調査結果

吉田 潔・大野真希・関根隆善・船田 誠

<抄録> 平成22年4月1日以降国交省直轄土木工事に適用している総価契約単価合意方式の、制度改善に資するためのフォローアップ調査を実施した。調査の結果、多くの受注者がメリットを感じている一方、総価契約単価合意方式の内容を理解できずメリットを享受できていない受注者の存在や、現場の負担感の大きさが明らかとなった。

<キーワード> 総価契約単価合意、単価協議、フォローアップ、個別合意、包括合意

 

 

【現地レポート】 鋼床版の疲労損傷に対する非破壊調査技術の現場への適用

村越 潤・木村嘉富・高橋 実・木ノ本 剛

<抄録> 道路橋の鋼床版のデッキプレートとUリブの溶接ルート部からデッキプレート板厚方向に進展する疲労き裂が発見されている。このき裂は、溶接内部から発生し、貫通しても舗装下に隠れているため目視による確認が困難である。本稿では、このき裂の発生の有無を把握するための超音波探傷法を用いた調査技術の概要と現場での適用状況等を紹介する。

<キーワード> 維持管理、鋼床版、疲労き裂、非破壊調査、超音波探傷

 

 

【土研センター】 2011年大津波の災害と被災を免れた神社

宇多高明・三波俊郎・星上幸良・酒井和也

<抄録> 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴い、大規模な津波が三陸や仙台湾沿岸、福島・茨城県沿岸に襲来し、多大な被害をもたらした。津波高は地域により大きく異なるが、いずれの地域でも海岸線近傍に祭られた神社はわずかな例外を除いて津波災害を免れ、多くは津波の避難場所として役立った。本研究では、津波高と神社の地盤高の関係からこの理由について考察した。

<キーワード> 大津波、神社、歴史的事実

 

 

平成24年6月 報文抄録
 

【特集報文】 津波防災地域づくりの概要とそれを支える主要な技術

五十嵐崇博・諏訪義雄

<抄録> 「津波防災地域づくりに関する法律(平成23年法律第123号)」に基づく津波防災地域づくり制度の内容とそれを支える重要な技術である津波浸水想定の設定方法、建築物等によるせきあげ高の評価法の要点について紹介する。

<キーワード> 津波防災地域づくり、津波浸水想定、基準水位、推進計画、警戒避難体制、建築行為・開発行為規制

 

【特集報文】 津波による海岸堤防の被災の分析〜粘り強くする方向性を見いだすための被災分析〜

渡邊国広・ 諏訪義雄・加藤史訓・藤田光一

<抄録> 青森県から千葉県の太平洋沿岸に設置された海岸保全施設を対象に、東北地方太平洋沖地震津波による被災状況を分析した。その結果、三面張り構造の海岸堤防では裏法尻部の被覆、天端と背後地の比高の縮小が粘り強さの向上に寄与すること、表法の緩勾配化は半壊しても全壊に至りにくくする効果があることが示された。

<キーワード> 津波、海岸保全施設、海岸堤防、被災、粘り強い

 

【特集報文】 津波来襲時の河川堤防の被災の程度を分けた要因

福島雅紀・佐野岳生・成田秋義・服部 敦

<抄録> 東北地方太平洋沖地震津波の来襲直後に実施した現地踏査結果等から、津波痕跡と堤防高、被災状況との関係を整理した。今次津波を再現した津波遡上シミュレーション結果等を用いて、津波遡上時の越流状況を詳細に調べたところ、堤内地の湛水状況によって同程度の越流状況でも被災の程度が異なることを確認した。

<キーワード> 河川津波、越流、堤防、侵食、ウォータークッション

 

【特集報文】 下水道の耐津波対策における技術基準策定に向けた最新動向

深谷 渉・ 松橋 学・田敏宏

<抄録> 東日本大震災に伴う津波は、東北地方沿岸部の下水処理場やポンプ場に壊滅的打撃を与えた。国土交通省では、学識経験者等からなる下水道地震・津波対策技術検討委員会を設置し、津波に対する今後の下水道施設のあり方を議論してきた。本稿は、第4次提言「耐津波対策を考慮した下水道施設設計の考え方」の内容を中心に、下水道における耐津波対策の最新動向について述べる。

<キーワード> 下水道施設、耐津波対策、耐津波性能、リスクマネジメント

 

【特集報文】 津波避難ビル等の構造設計法に関する技術基準

深井敦夫・原口 統

<抄録> 東日本大震災における津波による建築物被害を踏まえ、津波避難ビルの構造設計法にについて、津波荷重算定式等の見直しを行い、津波防災地域づくり法に基づく技術基準告示等に反映するとともに、実務者の技術的支援のため、設計例を作成した。

<キーワード> 津波避難ビル、構造設計法、技術基準、津波荷重、設計例

 

【特集報文】 東北地方太平洋沖地震を踏まえた津波警報の改善

尾崎友亮

<抄録> 東北地方太平洋沖地震に対し気象庁は地震発生3分後に津波警報を発表したが、実際の津波は第1報の予測を大きく上回るものであった。同地震への津波警報発表における諸課題を踏まえ、平成23年度、気象庁では津波警報の改善策をとりまとめた。平成24年中を目途に、改善策に沿った運用へ移行する計画である。

<キーワード> 東北地方太平洋沖地震、津波警報、津波警報改善策、情報文等の改善

 

【現地レポート】 岩手県における東日本大震災津波からの復旧・復興の取組

馬場 聡

<抄録> 本報告は、岩手県における東日本大震災津波による海岸保全施設等の被災状況、効果の検証結果を紹介するとともに、三陸地域の復旧・復興に向けた今後の津波対策の方向性、海岸堤防等の復旧・整備の取組状況を報告するものである。

<キーワード> 東日本大震災津波、復旧・復興、海岸堤防、防災

 

【現地レポート】 仙台湾南部海岸における復旧・復興に向けた技術活用最前線
〜津波堆積土砂の活用を中心として〜

佐藤慶亀・横山喜代太

<抄録> 東日本大震災・津波で被災した仙台湾南部海岸の復旧にあたり、東北地方整備局が新たに取り組んだ体制を紹介した。また大量に発生した津波堆積土砂及び震災瓦礫の活用の方向性について中間報告する。

<キーワード> 東日本大震災、津波堆積土砂、震災瓦礫、石炭灰造粒物、台形CSG

 

【報文】 ハイドロフォンによる掃流砂量の連続観測

鈴木拓郎・内田太郎・岡本 敦

<抄録> ハイドロフォンを用いた掃流砂観測手法の現地適用性を検証するため、与田切川坊主平堰堤にて流砂観測施設による直接観測とハイドロフォン観測を実施した。両者の結果は細かな変化まで非常に良好に一致しており、ハイドロフォンの現地適用性の高さが示された。

<キーワード> 流砂観測、掃流砂、ハイドロフォン、音圧、与田切川

 

【報文】 自然風・交通換気力を活用した新換気制御技術の開発

森本 智・石村利明・角湯克典・三谷敦史

<抄録> 道路トンネルの換気設備は、トンネル延長、交通量、換気対象物質である自動車排出ガス量等の諸条件に加えて、自然風と自動車の走行による交通換気力を考慮して設計が行われている。しかし、供用後の換気設備の運用は、時々刻々と変化する自然風や交通換気力とは関係なく、所要のトンネル内環境が確保されるように一定パターンに従った制御をしている場合が多い。このため、換気設備の運用に自然風と交通換気力を活用した制御を行うことで、換気設備のランニングコストを大幅に削減できる可能性がある。本稿では、時々刻々と変化する自然風と交通換気力を活用する新換気制御方式について、実証試験を実施し適用性について検証を行ったので報告する。

<キーワード> 道路トンネル、換気制御技術、自然風、交通換気力

 

【土研センター】 樹脂製雨水貯留浸透槽の実走行試験

山田浩久・坪井宏人・中根 淳・倉持智明

<抄録> ゲリラ豪雨や台風などによる道路の冠水対策や雨水の有効利用として、道路地下に適用可能な樹脂製雨水貯留浸透槽の構造部材『アクアロード』の開発にあたって、実構造物による走行試験を実施した。その結果、『アクアロード』は道路構造物として必要な性能を有する構造部材であることを確認できた。

<キーワード> 道路、雨水、ゲリラ豪雨、貯留浸透槽、走行試験

 

 

平成24年7月 報文抄録
 

【特集報文】 設計・施工における社会資本LCA適用の有効性

曽根真理・菅林恵太・木村恵子

<抄録> 国土技術政策総合研究所では、総合技術開発プロジェクト「社会資本のライフサイクルをとおした環境評価技術の開発」を実施し、社会資本整備に伴う二酸化炭素排出量の算出式と計算に用いる原単位を開発した。設計・施工レベルにこの社会資本LCAを導入することによって、低炭素化へ向けた取り組みに有効であることが確認された。

<キーワード> 地球温暖化、低炭素化、ライフサイクルアセスメント、社会資本LCA、原単位

 

【特集報文】 河川事業におけるCO2排出量算出の試み

竹本典道・池田鉄哉・天野邦彦

<抄録> 実際の河川事業を対象として設計段階において複数の河道改修案を想定し、各案の事業費やCO2排出量、廃棄物発生量を算定した。施工段階についても土砂や資材の再利用などによって環境負荷が低減されることが期待できることから、土砂や資材を再利用しない場合と再利用した場合のCO2排出量を比較分析した。

<キーワード> CO2、環境負荷、試算、河川工事、代替案

 

 

【特集報文】 緑化分野におけるLCCO2に関する検討 −街路樹を対象とした事例−

山岸 裕・松江正彦

<抄録> 本研究では、街路樹を対象として、植栽から老朽化して伐採されるまでをライフサイクルとしてとらえ、植栽工事から維持管理にかかるCO2発生量、剪定枝葉・街路樹本体等に蓄えられたCO2固定量、剪定枝等の植物発生材を有効に利用した場合のCO2削減量などを総合的にとらえLCA(ライフサイクルアセスメント)評価を行った。

<キーワード> 街路樹、CO2固定、植物発生材、リサイクル、LCCO2

 

 

【特集報文】 グリーン調達における定量的LCAによる品目評価の試み

梅原 剛・市村靖光・塚原隆夫

<抄録> 国土技術政策総合研究所において、社会資本LCAの環境負荷原単位や環境負荷量の算出手法が整備された。そこで本手法等を用いて、既に特定調達品目に指定された品目に関し、定量的LCAによる評価を試みた。その結果、グリーン調達の品目評価においても適用可能なことが確認された。本論では、その概要について報告する。

<キーワード> グリーン調達、特定調達品目、LCA、技術評価

 

 

【特集報文】 社会資本LCAに用いる環境負荷原単位一覧表の作成

曽根真理・神田太朗・菅林恵太

<抄録> 本稿は国土技術政策総合研究所が作成した社会資本LCA用の環境負荷原単位の概要を紹介するものである。この環境負荷原単位は、複数の意思決定レベルに対応しており、社会資本整備をとおした適時適切な環境負荷削減対策の検討を可能にしている。技術的には、産業連関法と積み上げ法の相補的な長所短所に着目し、網羅性の向上による算出条件の共通化と詳細な物量データに基づく精度向上を両立している。

<キーワード> LCA、環境負荷原単位、CO2、積算体系

 

 

【現地レポート】 北海道エコ・コンストラクション・イニシアティブの展開

高橋丞二・福原潤二

<抄録> 北海道開発局では、社会資本整備の実施段階において、北海道の優れた資源・特性を活かした先駆的・実験的な環境対策を推進する「北海道エコ・コンストラクション・イニシアティブ」に取り組んでいます。本報文において、取り組み概要と今後の展開について紹介します。

<キーワード> 環境対策、社会資本整備、建設現場、資源循環、低炭素社会、自然共生

 

 

【報文】 下水汚泥の濃縮効率を向上させる手法

浅井圭介・宮本豊尚・岡本誠一郎・内田 勉

<抄録> 土木研究所では、既存の重力濃縮槽を生かしながら下水汚泥の濃縮効率を向上させることのできる装置として「みずみち棒」を開発した。本報では、みずみち棒のさらなる効果向上を図るため、Coe-Clevengerの計算方法を準用し、小型実験装置による実験結果から沈降速度上昇が汚泥濃度向上に与える影響について報告する。

<キーワード> みずみち棒、下水汚泥、汚泥粒子、重力濃縮、固形物負荷

 

 

【報文】 2012年3月新潟県上越市で発生した融雪地すべりの特徴

木村 誇・畠田和弘・丸山清輝・野呂智之・中村 明

<抄録> 新潟県上越市で発生した融雪地すべりの特徴を整理した。今回の地すべりは旧地すべり地形の一部が再滑動した移動距離の長い地すべりであった。今冬の上越地域では、例年を大きく上回る積雪があり、それが2月下旬から気温上昇に伴って急激に融けたことで、地すべり発生直前に近傍の河川の水位が急増していたことが確認された。

<キーワード> 地すべり、移動距離、積雪深、融雪水量、河川水位

 

 

【報文】 うき・はく落を生じるトンネルの健全度評価

砂金伸治・角湯克典

<抄録> 今後財源が制約される中で効率的に道路トンネルの維持管理を実施するためには、変状の状態を客観的に判断できると同時にトンネルの健全度を定量的に評価できる手法の確立が望まれる。本報では覆工の材質劣化によって引き起こされることが多いうき・はく落に対して、定量的に健全度を評価できると考えられる評価指標を抽出し、それに基づき変状の状態を判定する手法に関する考察を行った結果について述べる。

<キーワード> トンネル、維持管理、点検、変状、ひび割れ

 

 

土研センター コンクリート構造物の後(あと)施工せん断補強技術

大田孝二

<抄録> 兵庫県南部地震を契機に見直された耐震設計基準を満足するために、カルバートや地下室の壁などの既存の地下壁構造に用いられる、新しいせん断耐力補強技術(後施工せん断補強鉄筋)の基本的な考え方やその適用の効果について紹介を行った。

<キーワード> 地下壁構造、せん断補強鉄筋、定着長、支圧板

 

 

平成24年8月 報文抄録
 

【特集報文】 道路橋をとりまく状況と維持管理の信頼性向上に向けた道路橋示方書の改定

玉越隆史・横井芳輝・西田秀明・堺 淳一

<抄録> 近年、道路橋において発生した損傷や災害事例に対する管理者への技術支援等を通じ、明らかとなった維持管理に関する課題と技術基準へのニーズに対し、国土技術政策総合研究所及び土木研究所において実施してきた取組みを紹介するとともに、道路橋示方書の改定に反映された事項について概説する。

<キーワード> 道路橋示方書、維持管理、補完性又は代替性、橋台部ジョイントレス構造、支承部

 

【特集報文】 東北地方太平洋沖地震をはじめとする大地震による被害を踏まえた調査研究と道路橋示方書の改定

星隈順一・玉越隆史・七澤利明・堺 淳一・片岡正次郎・西田秀明

<抄録> H24年2月に改定された道路橋示方書において、近年の大地震によって道路橋に生じた被害及びその被害に対する調査や原因、対策に関する研究を踏まえて改定された項目について、その根拠となる研究成果や知見を含めて紹介する。

<キーワード> 道路橋示方書、大地震による被害、耐震設計、調査研究、改定

 

 

【特集報文】 耐久性の向上に関する調査研究と道路橋示方書の改定

村越 潤・玉越隆史・遠山直樹・宮田弘和・西田秀明

<抄録> 道路橋を長期にわたって健全な状態で供用していくためには、橋を構成する鋼部材の疲労や腐食、コンクリート部材の塩害等の経年的な劣化や変状に対して十分な耐久性が確保できるよう、設計・施工において配慮する必要がある。本報では、今回の道路橋示方書の改定に際して、耐久性の向上の観点から規定・解説の充実を図った主な項目について、国土技術政策総合研究所及び土木研究所において行われた各種の調査研究との関連を含めて述べる。

<キーワード> 道路橋示方書、耐久性、疲労、塩害、調査研究、改定

 

 

【特集報文】 設計の合理化・高度化や新技術等への対応に関する調査研究と道路橋示方書の改定

木村嘉富・玉越隆史・宮田弘和・遠山直樹・西田秀明・堺 淳一

<抄録> コスト縮減や設計の合理化・高度化に資する新技術等が要求する事項を満たしているかの定量的な判断基準や評価方法等を基準に示すため、国土技術政策総合研究所及び土木研究所において各種の調査・研究を行ってきた。今回の改定で道路橋示方書に反映された主な項目について、改定の趣旨とその根拠を概説する。

<キーワード> 道路橋示方書、合理化、高度化、新技術、調査研究、改定

 

 

【特集報文】 施工性の向上や施工品質の確保に関する調査研究と改定

中谷昌一・玉越隆史・遠山直樹・宮田弘和・西田秀明・堺 淳一

<抄録> 安全性や耐久性など道路橋において所要の性能を確保するためには、設計のみならず施工が適切に行われ、所定の品質等が確保されることが不可欠である。本報では、施工性の向上や施工品質の確保に関して国土技術政策総合研究所及び土木研究所で行った主な検討内容とそれを踏まえた道路橋示方書の改定事項について示す。

<キーワード> 道路橋示方書、施工性の向上、施工品質、SD390及びSD490、溶接

 

 

【現地レポート】 東北地方太平洋沖地震による直轄道路橋の被災状況

佐々木一夫

<抄録> 平成23年3月11日(金)14時46分に、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0、最大震度7の国内観測史上最大となる大地震が発生し、太平洋沿岸の広い範囲に津波が押し寄せ、各地で甚大な被害をもたらした。本稿は、震災直後から重要な役割を担った直轄道路橋について、緊急点検結果と被災状況について報告するものである。

<キーワード> 直轄道路の被災状況、橋梁緊急点検の概要、点検結果と被災状況、津波による道路橋の流出、緊急点検の意義

 

 

【報文】 地理空間情報プラットフォームの仕組みを利用した組織内における情報共有手法

小川倫哉・上田英滋・有賀清隆・小原弘志・重高浩一

<抄録> 地理空間情報プラットフォームは、国土交通省が保有する地理空間情報の流通を促進し、これらの情報を相互利用することで社会資本の整備・管理の効率化・高度化を図るための地理空間情報利用環境である。この仕組みを利用し、これまで組織毎に別々に集約・提供してきた地理空間情報を部門横断的に組織内で共有する手法について報告する。

<キーワード> 地理空間情報、プラットフォーム、情報共有、メタデータ、RSS、XML

 

 

【報文】 道路橋設計における構造解析結果の処理方法の比較

石尾真理・玉越隆史・横井芳輝・中洲啓太

<抄録> 本研究では、道路橋の新設設計において、FEM等の解析手法により得られる応答値と基準の許容値等とを適切に比較できるように、FEM等の応答値の処理方法について検討を行った。また、照査する部材の限界状態等に対する安全余裕を把握するための方法を検討した。その結果、予め橋梁形式や評価内容に応じて、解析手法毎に計算応力等の結果の処理方法や適用範囲を適切に定めておかなければ、基準に定める許容値との適切な対比とならないことがわかった。また、解析方法とその結果の扱いによって、構造物の安全余裕の評価が大きく左右されうることがわかった。

<キーワード> 道路橋、解析、解析手法、FEM、計算応力

 

 

土研センター 局部腐食が生じた堀切大橋の構造安全性に関する調査検討

高橋節哉・相原博紀・中野正則・安波博道・落合盛人

<抄録> 本稿は、供用後25年が経過し、全橋に亘って局部的ではあるが進行した腐食により減肉(減厚)が発生している鋼上路式ローゼ橋(堀切大橋)の構造安全性についての検討報告である。本検討では、腐食部をモデル化したFEM解析や地震時応答解析により全体構造系の安全性を照査した結果、現況の腐食レベルでは補修は必要ないとの結論を得ることができた。

<キーワード> 鋼橋、橋梁診断、腐食調査、耐荷力検討、安全性評価

 

 

平成24年9月 報文抄録
 

【報文】 ITSを活用した物流支援サービスの実証実験

岩ア 健・元水昭太・澤田泰征・金澤文彦

<抄録> 国土交通省では道路プローブ情報の物流の効率化・安全対策等への活用を目的とし、官民連携の実証実験を開始したところである。その実証実験より得られた道路プローブ情報の分析を進めている。本稿では試験的に収集したデータを用いて交通状況の把握や交通事故対策の評価への適用に関する検証結果を報告する。

<キーワード> ITSスポット、物流支援、プローブ情報、官民実証実験

 

【報文】 千曲川高水敷におけるアレチウリ埋土種子の分布特性とその形成要因

傳田正利・黒川貴弘・三輪準二

<抄録> 特定外来種アレチウリの埋土種子分布特性を調査した。その結果、地表から0.1mまで埋土種子が集中した。アレチウリが優占する景観では発芽可能な埋土種子が多く、アレチウリとハリエンジュが共生する景観では発芽可能な埋土種子が少なかった。アレチウリとオギが共生する景観では、発芽可能な埋土種子が地表面に集中した。これらの分布特性には、冠水頻度と冠水時流況が影響を与えていると考えられた。

<キーワード> アレチウリ、埋土種子、千曲川、分布特性、河川高水敷

 

 

【報文】 GPSを用いた重力式コンクリートダムの変位計測

山口嘉一・小堀俊秀

<抄録> 本論文は、国土交通省東北地方整備局が建設した長井ダム(重力式コンクリートダム、堤高125.5m)の変位計測にGPS変位計測システムを試験導入し、GPS変位計測システムより得られるコンクリートダムの変位挙動の確認やプラムラインとの精度比較等を行い、その適用性について検証するものである。

<キーワード> 重力式コンクリートダム、安全管理、GPS、変位計測

 

 

【報文】 連続繊維シートの付着耐久性

西崎 到・カリム・ベンザルティ・マーク・キアトン・加藤祐哉

<抄録> コンクリート補強材料として普及している連続繊維シートの付着耐久性について、土木研究所およびフランス中央土木研究所(LCPC)がそれぞれ独自に行った検討結果を比較検討した概略を紹介する。付着特性評価方法としてのプルオフ試験、せん断付着試験、引きはがし試験にはそれぞれに特徴があり、それを活かした評価法選択が重要であることなどが明らかとなった。

<キーワード> 連続繊維シート補強材、コンクリート、付着力、耐久性、国際研究協力

 

 

【報文】 雨水・再生水による利水量の定量的評価

豊田忠宏・川ア将生・鳥居謙一

<抄録> 雨水・再生水利用の利水面の効果について、雨水・再生水の利用が推進されている福岡市を対象としてモデル化を行い、渇水時を含めた利水効果の定量的な評価を行うとともに、将来利用量について試算を行った。

<キーワード> 雨水利用、再生水利用、個別循環方式、広域循環方式、渇水

 

 

【報文】 霞ヶ浦流入河川の溶存態窒素、リン、有機炭素濃度と集水域の土地利用の関係

北村友一・南山瑞彦

<抄録> 河川水中の栄養塩の主要な発生源を明らかにするため、霞ヶ浦流域を対象に、GISを用いて河川ごとの土地利用割合、家畜飼育密度、人口密度を整理し、これらと栄養塩濃度の関係を解析した。その結果、河川水のNO3-N濃度は集水域の畑の割合および豚の飼育密度と高い正の相関を示し、NO3-Nの主要な発生源は、畑や豚飼育によると推測された。PO4-P濃度は、集水域の市街地の割合や下水処理以外人口密度と正の相関を示した。

<キーワード> 霞ヶ浦、河川、栄養塩、土地利用、GIS

 

 

【報文】 模型実験・地震被害事例の解析による道路土工構造物としての補強土壁の耐震性評価

中島 進・藪 雅行・石原雅規・佐々木哲也

<抄録> 動的遠心模型実験ならびに被害事例の分析により道路土工構造物として使用される補強土壁の耐震性とコンクリート擁壁の耐震性を比較した。その結果、震度法と許容安全率を用いた設計法においても、コンクリート擁壁と比較して、耐震性の優位性が確認できた。

<キーワード> 補強土壁、動的遠心模型実験、耐震性、被害事例

 

 

【現地レポート】 億首ダム(台形CSGダム)本体工事の施工報告

新城晴伸・與那嶺盛明

<抄録> 億首ダムは、従来のフィルダムやコンクリートダムと異なる新工法の「台形CSG」にて施工を行った。本報告は、新工法の施工方法の紹介や、より高速な施工を行うための課題の提案を行った。

<キーワード> 億首ダム、台形CSG、PC型枠、高速施工

 

 

【土研センター】 撥水性を有する浸透性コンクリート保護材性能試験

柴田辰正・五島孝行・大田孝二

<抄録> 土木研究センターでは、土木研究所資料第4186号に規定された「浸透性コンクリート保護材の性能基準(暫定案)」に基づく性能試験を実施している。本報告は、浸透性コンクリート保護材の性能試験を実施するに当たり、試験方法および性能基準の妥当性を確認するために事前に実施した試験の結果をまとめたものである。

<キーワード> 撥水性、浸透性コンクリート保護材、シラン、シロキサン、性能試験、質量変化率

 

 

平成24年10月 報文抄録
 

【特集報文】 衛星SAR画像による大規模崩壊判読調査手法の実用化

水野正樹・神山嬢子・佐藤 匠・林 真一郎・岡本 敦

<抄録> 天然ダム形成につながる豪雨等が発生した場合、河道閉塞形成の有無を迅速に把握する必要がある。そこで、2011年台風12号で河道閉塞が多数発生したエリアを撮影した衛星SAR画像を用いて検討を行い、夜間や悪天候等においても撮影可能な単偏波の衛星SAR画像による大規模崩壊箇所の緊急判読調査手法を実用化した。

<キーワード> 衛星SAR画像、河道閉塞、天然ダム、大規模崩壊、判読調査

 

【特集報文】 2011年台風12号における降雨量と斜面崩壊発生の関係

内田太郎・佐藤 匠・水野正樹・林 真一郎・岡本 敦

<抄録> 平成23年台風12号により、紀伊半島では、総降雨量で1000mmを超えるような豪雨がもたらされた。この豪雨により、紀伊半島では大規模な深層崩壊を含む数多くの斜面崩壊が発生した。本報告では、紀伊半島における降雨量と斜面崩壊の関係を分析し、降雨量が斜面崩壊の規模や密度に及ぼす影響について考察した。

<キーワード> 深層崩壊 紀伊半島 降雨量 発生確率

 

 

【特集報文】 天然ダムによる土石流想定範囲計算システム(QUAD-L)の開発と2011年台風12号災害における適用

清水武志・内田太郎・山越隆雄・石塚忠範

<抄録> 本稿では、2011年5月1日に一部改正した「土砂災害防止法」に基づいて、天然ダム決壊で発生する土石流によって被害が想定される区域を推定するために用いるコンピュータシステムであるQUAD-Lの概要と、筆者らが開発に貢献した部分に関して留意した事項を述べる。併せて、2011年台風12号において初めて適用した事例を紹介する。

<キーワード> 天然ダム、土石流、QUAD1.0、2011年台風12号

 

 

【特集報文】 東北地方太平洋沖地震により白河丘陵で発生した地すべりの発生箇所の特徴

杉本宏之・宇都忠和・本間宏樹・武士俊也

<抄録> 東北地方太平洋沖地震により福島県白河市で発生した6箇所の地すべり地において地形、地質、土質調査を行い、地すべり発生斜面の特徴を明らかにした。その結果、①遷急線を挟んで発生、②火山灰層が厚く堆積、③すべり面となった層準は風化で軟弱粘土化、④すべり面の直上は硬軟の境界、⑤流れ盤状にテフラが堆積という特徴が共通することが明らかとなった。

<キーワード> 地すべり、地震、テフラ、丘陵

 

 

【特集報文】 豪雪地帯で発生する地すべり、雪崩の特徴 −近年の災害発生状況と研究課題−

野呂智之・丸山清輝・伊東靖彦・池田慎二・木村 誇・畠田和弘

<抄録> 近年は少雪傾向が続いているとされているが、今年は平成18年豪雪に匹敵する大雪の年となり、雪崩災害だけでなくこの融雪期の地すべりも多発している。また、昨年3月に長野県で発生した雪崩は詳細が明らかではないが地震に起因するとされており、豪雪地帯特有の複合災害といえる。これら新潟県とその周辺で発生した災害事例のいくつかについて現地調査を行ったので概要を紹介する。

<キーワード> 豪雪地帯、地すべり、雪崩、災害事例、現地調査

 

 

【現地レポート】 平成23年台風12号による深層崩壊への対応

木下篤彦

<抄録> 平成23年の台風12号では深層崩壊により奈良・和歌山県域で大きな被害が出た。このうち、河道閉塞が存置した5箇所については直轄砂防事業で対応することとなった。本稿では、この1年間の工事をレビューするとともに今後の対策について説明する。また、越流侵食等による被害を軽減するために必要な調査について説明する。

<キーワード> 河道閉塞、深層崩壊、水位予測、砂防堰堤、斜面対策

 

 

【報文】 起振機実験および常時微動測定に基づく実鋼上路式アーチ橋の固有振動特性の検証

崔 準祜・堺 淳一・星隈順一

<抄録> 47年間道路橋として使用された後に供用を終えた鋼上路式アーチ橋を活用し、その固有振動特性を起震機実験及び常時微動計測により検証するとともに、3次元骨組みモデルによる固有振動解析との比較により、解析モデルの設定に関する考察を行った。

<キーワード> 鋼上路式アーチ橋、橋の固有振動特性、起振機実験、常時微動計測、固有振動解析

 

 

【報文】 ダムの貯水により飽和する不飽和地盤の透水性の合理的評価法 (1)

山口嘉一・坂本博紀

<抄録> 不飽和透水地盤の透水性を実務的な試験時間内で適切に評価することが出来ればダム基礎処理における大幅な合理化が可能となる。本研究では、飽和−不飽和浸透流解析を用いた長時間透水試験の再現解析を実施し、解析結果の分析から得られた知見より、実務的な透水試験実施時間内に得られる試験結果を用いた最終安定流量の推定方法を提案するとともに、その再現性を実際の原位置透水試験結果を用いて検証した。

<キーワード> 不飽和地盤、非定常浸透、透水性評価、長時間透水試験、飽和−不飽和浸透流解析

 

 

土研センター 二重壁構造を持つジオテキスタイル補強土壁の耐震性能

辻 慎一朗・竜田尚希・王 宗建・中根 淳

<抄録> 地震時におけるジオテキスタイル補強土壁の挙動は、明確に把握されたものではなく、より合理的な設計法を確立するためにも、補強土壁の地震時挙動の解明が求められている。著者らは、二重壁構造を有する補強土壁の地震時の挙動と安定性を確認するための動的遠心載荷実験を行った。その結果、二重壁構造を有する補強土壁の壁面材と補強盛土体は一体的に挙動し、十分な耐震性を持つことなどがわかった。

<キーワード> ジオテキスタイル、二重壁構造、補強土壁、耐震性能、動的遠心載荷実験

 

 

平成24年11月 報文抄録
 

【報文】 施工パッケージ型積算方式の新規導入

吉田 潔・塚原隆夫・大野真希・関根隆善・船田 誠

<抄録> 国交省は平成24年10月1日以降入札する全ての直轄土木工事に、ユニットプライス型積算方式の課題を改善した新しい積算方式"施工パッケージ型積算方式"を導入する。「単価設定に応札者単価を活用」「標準単価及び補正方法を公表」などの施工パッケージ型積算方式の概要および特徴を解説する。

<キーワード> 施工パッケージ型積算方式、ユニットプライス型積算方式、応札者単価、標準単価

 

【報文】 山岳トンネルの地震時挙動に関する動的計測結果

日下 敦・砂金伸治・ 真下英人

<抄録> 山岳トンネルの地震時の挙動に関する計測事例はほとんどなく、その特性はほとんど明らかになっていない。そこで、既設の実トンネルに動的計測機器を設置したところ、トンネル周辺で震度6強〜6弱の揺れを観測した地震において、トンネル覆工の動的な挙動に関するデータが得られたので、その結果を報告する。

<キーワード> 山岳トンネル、地震、動的計測

 

 

【報文】 高軸方向鉄筋比・高軸応力度条件下での中空断面RC橋脚の地震時破壊特性

八ツ元 仁・堺 淳一・星隈順一

<抄録> 中空断面RC橋脚は、その構造特性から内面の点検が困難であり、たとえその損傷を発見できたとしても修復が難しい。中空断面RC橋脚における耐震性能の評価では、このような特性を踏まえたうえで限界状態を設定する必要である。本研究では、特に知見が少ない高軸力かつ高軸方向鉄筋比の中空断面RC橋脚について、正負交番繰返し載荷実験を行い耐震性能の検証を行った。

<キーワード> 中空断面RC橋脚、正負交番繰返し載荷実験、高軸応力、高軸方向鉄筋比、耐震性能

 

 

【報文】 接円式固化改良地盤に支持される杭の水平抵抗特性に及ぼす平面配置の影響

谷本俊輔・河野哲也・七澤利明・中谷昌一

<抄録> 本研究では、固化工法を用いた道路橋基礎の支持機構、破壊形態、抵抗特性等を明らかにするための実験的・解析的検討を行ってきた。本報では、接円式固化改良地盤に打設された杭の水平載荷実験を行い、杭とソイルセメントコラムの平面配置が杭の支持機構、反力特性等に及ぼす影響について調べた結果を紹介する。

<キーワード> 深層混合処理工法、杭基礎、水平抵抗、載荷実験、耐震性能

 

 

【報文】 ダムの貯水により飽和する不飽和地盤の透水性の合理的評価法(2)

山口嘉一・坂本博紀

<抄録> 不飽和透水地盤の透水性を実務的な試験時間内で適切に評価することが出来ればダム基礎処理における大幅な合理化が可能となる。本研究では、飽和−不飽和浸透流解析を用いた長時間透水試験の再現解析を実施し、解析結果の分析から得られた知見より、実務的な透水試験実施時間内に得られる試験結果を用いた最終安定流量の推定方法を提案するとともに、その再現性を実際の原位置透水試験結果を用いて検証した。

<キーワード> 不飽和地盤、非定常浸透、透水性評価、長時間透水試験、飽和−不飽和浸透流解析

 

 

【報文】 米国陸軍工兵隊による洪水被害のリスク分析手法

板垣 修・吉谷純一

<抄録> 米国陸軍工兵隊による洪水被害のリスク分析手法導入の経緯と現状について、洪水被害低減プロジェクトに係る不確定性の観点を中心として、文献並びにカリフォルニア州にある工兵隊の研究所・事務所等を2012年春に調査した結果に基づき報告する。

<キーワード> 米国陸軍工兵隊、河川、洪水被害低減、リスク分析手法、不確定性

 

 

【報文】 深層崩壊を引き起こした降雨の特徴

内田太郎・岡本 敦

<抄録> 近年の深層崩壊を事例に、深層崩壊を引き起こした降雨の特徴について分析した。その結果、深層崩壊を同時に複数引き起こした降雨は、概ね48時間雨量で600mmを超えていたのに対し、1つのみの深層崩壊を引き起こした降雨では、48時間雨量で600mmを超えている事例はなかった。

<キーワード> 深層崩壊、雨量

 

 

【報文】 近年の地震による地すべり対策概成斜面の変動発生状況

丸山清輝・野呂智之・中村 明

<抄録> 地震の規模がM7.0前後であった中越地震、中越沖地震、岩手・宮城内陸地震を対象に、地すべり対策概成斜面の地震による変動発生状況を調査した。その結果、施設が設置されているブロックでの変動発生率は4%(17/388ブロック)であり、地すべり対策概成斜面の地震による変動の発生は少ないことなどが明らかになった。

<キーワード> 地震、地すべり対策概成斜面、変動発生状況

 

 

【現地レポート】 新たな地盤改良工法の導入に向けた試験施工(経済的に沈下と側方流動を抑制できるコラムリンク工法)

宮川智史・小橋秀俊・堤 祥一・繻エ正純

<抄録> 当チームでは、民間会社との共同で経済性と周辺地盤への影響の抑制を両立できる地盤改良工法『コラムリンク工法』の開発を行った。報文では、開発技術の概要と共同研究で開発した設計法を用いて、熊本・宇土道路にて実施された試験施工の動態観測の状況について紹介する。

<キーワード> 軟弱地盤、地盤改良、動態観測、側方流動

 

 

土研センター スペイン北部SantanderのSardinero海岸の観察から学ぶ

宇多高明・酒井和也・遠藤将利

<抄録> 2012年7月2日〜8日にスペイン北部のSantanderで第33回海岸国際会議(ICCE)が開かれ、その際近くのSardinero海岸を訪れた。この海岸での観察結果について述べるとともに、日本と海外の海岸の現状および海岸保全の姿勢の相違について、比較・考察した。

<キーワード> 現地調査、海岸保全、ポケットビーチ、スペイン

 

 

平成24年12月 報文抄録
 

【特集報文】 道路と下水道−道路陥没防止に向けた下水道管きょの維持管理・改築更新技術−

末久正樹・深谷 渉・横田敏宏

<抄録> 社会資本の老朽化問題が顕在化している中、下水道管きょの老朽化等に起因した道路陥没が、全国で毎年約4千件発生している。道路陥没のような日常生活や社会活動に重大な影響を及ぼす事故の発生や、下水道機能の停止を未然に防止するため、ライフサイクルコストの最小化、予算の平準化の観点も踏まえ、予防保全型管理の計画の策定とそれに基づく適切な改築更新の実施が自治体の重要な課題となっている。 本稿では、管きょの点検・調査の現状及びその現場で活躍するテレビカメラ調査の技術について紹介するとともに、改築更新分野で活躍する管きょ更生工法について、利点および工法の概要、品質確保に向けた取り組みについて紹介する。

<キーワード> 下水道管きょ、道路陥没、予防保全型管理、テレビカメラ調査、更生工法

 

【特集報文】 下水処理水再利用の拡大に向けた温室効果ガス排出量の定量的評価

宮本綾子・西村峻介・山縣弘樹・小越眞佐司

<抄録> 下水処理水再利用の拡大に向けて環境影響や効果を適切に評価する必要がある。地球温暖化対策の観点から、LCA手法を用いて下水処理水による広域循環とビル内での個別循環、及び処理プロセス別のCO2発生量の比較検討を行った。

<キーワード> CO2発生量、LC-CO2、広域循環、個別循環

 

 

【特集報文】 化学物質から市民の生活環境を守る下水道

小森行也・岡安祐司・鈴木 穣・南山瑞彦

<抄録> 水生生物への影響の懸念から下水処理場の放流水中に残存する化学物質(医薬品等)について関心が高まっている。下水処理場での医薬品類実態調査から下水処理における医薬品類の除去特性の把握を行い、多くの医薬品類が下水処理により除去・削減されていることが明らかとなった。

<キーワード> 医薬品類、下水処理、実態把握、除去、生物影響

 

 

【特集報文】 病原微生物リスクから市民の健康を守る下水道

諏訪 守・岡本誠一郎・内田 勉

<抄録> 本報では、対象菌種として大腸菌を選定し、下水処理過程での微生物混在系における多剤耐性大腸菌の消長を把握することを目的に、耐性遺伝子の存在や抗生物質耐性大腸菌の下水処理水中での実態を明らかにするとともに、下水処理場で多用されている塩素消毒の有効性について考察した。その結果、活性汚泥処理により菌数は大幅に減少するものの、抗生物質耐性大腸菌に占める多剤耐性菌の割合は上昇するが、塩素消毒によるCt値を若干高めることで、二次処理水中の多剤耐性大腸菌株を不活化させられる可能性が示された。

<キーワード> 抗生物質耐性大腸菌、多剤耐性株、耐性遺伝子、スーパー耐性菌

 

 

【特集報文】 資源・エネルギーを回収する下水道

日高 平・内田 勉

<抄録> 下水処理場で発生する下水汚泥は貴重な資源であり、建設資材利用、緑農地利用などのマテリアル利用やエネルギー資源としての利用について、技術開発が行われている。本稿では、下水からの資源・エネルギー回収に関する現状やリサイクルチームでの研究事例を紹介する。

<キーワード> 下水、資源回収、栄養塩、エネルギー回収、低炭素

 

 

【特集報文】 黒部市におけるバイオマス利活用戦略

小崎敏弘・森田弘昭

<抄録> 国総研が、国土交通省下水道部、北海道庁、歌登町と共同で実施した「ディスポーザー導入社会実験」の成果をもとに、黒部市は、国総研の指導を受けながら、ディスポーザー導入を含む「黒部市下水道バイオマスエネルギー利活用施設整備運営事業」を開始した。

<キーワード> バイオマス利用、エネルギー回収、ディスポーザー、PFI

 

 

【現地レポート】 清正公下水道−遺構保存と持続可能な下水道経営−

宮原國臣

<抄録> 熊本市には、加藤清正公の整備した城下町や熊本城、大規模な治水施設、利水施設が、遺構として保存されており、その多くは、現在も市民生活を支えている。例えば、熊本城の入場者数は、全国の城郭公園入場者のベスト3であり、市の魅力発信の最強ツールとなっている。また、清正公が築造した城下町の排水施設は、現在も下水道施設として使用されている。

<キーワード> 熊本市、加藤清正公、遺構保存、市民生活、持続可能な下水道経営

 

 

【現地レポート】 消化ガスを燃料とした発電システムの開発

姫野修司・高橋倫広・山岸和弘・森田弘昭

<抄録> 土木研究所は、平成17年から20年までの四ヶ年でライト工業株式会社、株式会社井上政商店と共同で、電力単価12円/kwhの条件で5年以内に採算が合う消化ガス発電機を含む汎用性の高い動力システムを開発することを目的として共同実験をおこなった。長岡技術大学、新潟県、(株)大原鉄工は、この研究成果を元に、土木研究所の指導を受けながら実規模の発電施設を用いた実証試験を実施している。

<キーワード> 消化ガスの有効利用、低価格発電機、実用運転

 

 

【報文】 再生路盤材からの6価クロム溶出抑制対策

森濱和正・渡辺博志・片平 博

<抄録> 再生路盤材から微量の6価クロムが溶出する。溶出濃度が環境基準を超える場合、路盤材として使用できなくなり、大量の産業廃棄物が発生することになる。これを防止するために、6価クロムの溶出抑制対策について検討した。室内試験および現場を想定したポット試験を行い、高炉徐冷スラグを数%添加することにより溶出の抑制が図られることを確認した。

<キーワード> 再生路盤材、6価クロム、環境庁告示46号、溶出抑制対策、高炉徐冷スラグ

 

 

【報文】 鋼トラス橋格点部の腐食損傷と圧縮耐荷力に着目した載荷試験

澤田 守・村越 潤・遠山直樹・依田照彦・野上邦栄

<抄録> 長期間供用され、著しい腐食損傷が生じた鋼トラス橋の撤去部材を用いて、格点部を対象に、腐食量計測を行い、腐食損傷の傾向を把握した。その後、圧縮耐荷力に着目した載荷試験を行い、破壊性状や残存耐荷力を把握するとともに、FEM解析を行い、腐食損傷が耐荷力に及ぼす影響やモデル化手法について検討した。

<キーワード> 臨床研究、鋼トラス橋、腐食損傷、トラス格点部、載荷試験

 

 

土研センター 橋の免震構造に関する技術資料の出版
―「わが国の免震橋事例集」と「道路橋の免震・制震設計法マニュアル(案)」―

大田孝二

<抄録> (一財)土木研究センターでは「道路橋の免震構造研究委員会(委員長 川島一彦東京工業大学大学院教授)」を設け、「我が国の免震橋事例集」と「道路橋の免震・制震設計法マニュアル(案)」の2冊を刊行した。これらの内容紹介として、免震構造の発展経緯、特徴的な免震橋の事例などを記述した。

<キーワード> 道路橋、免震橋、免震・制震、事例集、設計法マニュアル