(一財)土木研究センター/刊行物/月刊誌土木技術資料抄録/平成25年

 
平成25年1月 報文抄録
 
特 集:持続可能な社会の実現に向けた土木技術
 

【特集報文】 河川における再生可能エネルギーの活用の推進
−既設ダムの活用や小水力発電の促進−

西村宗倫・川崎将生・豊田忠宏

<抄録> 河川の水力エネルギーは、持続可能な社会の実現のためには必要不可欠な再生可能エネルギーの一つであり、更なる活用に資するため、本研究室では、既設ダム貯水池を活用した増電策の検討、既設ダム貯水池の容量再配分による増電策の検討、及び小水力発電の水利使用許可の技術審査に係る研究を行っており、その動向について報告する。

<キーワード> 水力、再生可能エネルギー、発電、ダム、小水力

 

【特集報文】 都市における再生可能エネルギー活用の推進−都市の植物廃材の利用−

曽根直幸・山岸 裕・栗原正夫

<抄録> 公園・街路等から発生する未利用の剪定枝・刈草等を再生可能エネルギーとして活用し、災害にも強い低炭素・循環型都市の実現を図るため、様々な技術の都市における活用可能性の検討、国営公園をフィールドとした小規模ガス化発電技術の実証実験など、都市由来の植物廃材に適したエネルギー利用手法に関する研究開発を行っている。

<キーワード> 再生可能エネルギー、バイオマス、ガス化発電、剪定枝、刈草

 

【特集報文】 下水道における再生可能エネルギー・資源の活用の推進
−下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)の実証研究−

山下洋正・藤井都弥子・井口 斎・原田一郎・堀江信之

<抄録> 国土交通省では、下水道事業における大幅なコスト縮減や再生可能エネルギー創出を実現し、併せて、本邦企業による水ビジネスの海外展開を支援するため、下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)を、国土技術政策総合研究所下水道研究部の委託研究として平成23年度から実施しており、その内容を報告する。

<キーワード> 下水道、省エネルギー、省資源、温室効果ガス、革新的技術

 

【特集報文】 低炭素社会の実現に寄与するコンクリート技術−低炭素型セメント結合材の利用−

中村英佑・鈴木 聡・森濱和正・渡辺博志

<抄録> コンクリート分野における低炭素社会の構築に向けた取り組みの一例として、(独)土木研究所基礎材料チームと国内8機関の共同研究として実施している「低炭素型セメント結合材の利用技術に関する研究」の概要と検討内容の一部を紹介する。

<キーワード> 低炭素型セメント結合材、混和材、CO2排出量、塩化物イオン拡散係数、中性化速度係数

 

【特集報文】 低炭素社会に貢献する舗装技術−低燃費舗装のCO2排出量削減効果の試算等−

川上篤史・新田弘之・寺田 剛・久保和幸

<抄録> 低炭素社会の実現に寄与する舗装技術(低炭素舗装技術)の現状を紹介するとともに、新たな低炭素舗装技術として、舗装の転がり抵抗を改善することによって自動車由来の排出ガス低減に寄与する舗装技術(低燃費舗装技術)について、ライフサイクルCO2の試算によるCO2削減効果の検討結果を紹介する。

<キーワード> 低炭素社会、低炭素舗装技術、中温化技術、低燃費舗装、ライフサイクルCO2

 

【特集報文】 貯水池の長寿命化のための堆砂対策技術の開発

箱石憲昭・櫻井寿之

<抄録> 新規のダム建設が困難な社会状況のもと、貯水池容量の再編などによる既設ダムの有効活用の必要性が高まっており、適切な堆砂対策による貯水池の長寿命化が求められている。本稿は、これまで実施されている堆砂対策に触れながら、既に実用化されている土砂バイパスや排砂設備の課題を解決するために土木研究所が開発中である「潜行吸引式排砂管」について紹介するものである。

<キーワード> 堆砂対策、長寿命化、土砂バイパス、排砂設備、潜行吸引式排砂管

 

【特集報文】 道路橋の長寿命化に向けた非破壊検査技術の開発

桑原徹郎・木村嘉富・村越 潤・星隈順一

<抄録> 今後急速に高齢化が進む道路橋の長寿命化を図るため、早期に適切な診断・評価および補修・補強を行う予防保全の取り組みが重要である。特に適切な診断・評価を行うためには、目視確認出来ない状態を可視化する非破壊検査技術が有効である。本報文では、構造物メンテナンス研究センターにおける非破壊検査技術の開発状況と今後の取り組みの方向性について報告する。

<キーワード> 道路橋、予防保全、長寿命化、ライフサイクルコスト、非破壊検査技術

 

【特集報文】 次世代に受け継ぐ自然環境−河川汽水域の保全と再生に資する技術開発−

中村圭吾・岩見洋一・山本 聡

<抄録> プロジェクト研究「汽水域の保全と再生に関する研究」の成果により得られた河川汽水域の類型化、植生分布の評価法、滞留時間の数値解析法やそれらを用いたインパクトレスポンス検討事例について紹介する。

<キーワード> 河川汽水域、環境保全、自然再生、類型化、数値解析モデル、植生分布

 

【特集報文】 人、車、道路をつなげる協調ITS研究開発の方向性
−国際的な研究開発動向との調和に向けて−

金澤文彦

<抄録> これまでETC(電子式料金自動収受システム:Electronic Toll Collection System)、VICS(道路交通情報通信システム:Vehicle Information and Communication System)、カーナビの普及にみられるように、日本はITS分野で世界を牽引してきた。一方で欧米では、欧州がリードして、車、道路インフラ、個人端末間で情報を交換しアプリケーションを共用する協調ITS開発、国際標準化活動を活発化させている。このような国際動向や最新の技術動向を踏まえ、今後、持続可能な社会の実現に向けてITS研究の進むべき方向性について考察する。

<キーワード> 協調ITS、自動運転、サグ部等交通円滑化、ITSスポット、官民共同研究

 

【土研センター】 第7回舗装路面の性状に関する国際シンポジウムの紹介

安藤和彦

<抄録> 世界道路協会(PIARC;The World Road Association)が主催者となって、4年に1回開催されている舗装路面の性状に関する国際シンポジウム(SURF; Symposium on Pavement Surface Characteristics)の第7回シンポジウムに参加したので、その概要を紹介するものである。

<キーワード> 舗装路面、路面性状、国際会議、すべり摩擦、転がり抵抗

 

 


平成25年2月 報文抄録
 
特 集:土木材料の信頼性向上に向けて
 

【特集報文】 再生骨材コンクリートの耐凍害性評価技術の開発とJIS規格への反映

片平 博・渡辺博志

<抄録> JIS A 5022に規定される再生骨材Mを用いたコンクリートに関しては、耐凍害性を評価する手法が確立していなかったことから凍結融解作用を受けにくい地下構造物等に使用範囲が限定されていた。そこで、土木研究所では、再生骨材の耐凍害性を簡易に判定する試験方法を開発した。この試験方法はJIS A 5022の2012年の改訂においてJISの附属書に組み込まれ、耐凍害品が設定されるに至った。この研究内容とJIS改訂の概要を報告する。

<キーワード> 再生骨材、凍結融解抵抗性、試験方法、冷凍庫、日本工業規格

 

【特集報文】 鉄筋溶接継手の新しい超音波探傷試験方法の探傷精度

森濱和正・渡辺博志

<抄録> 鉄筋溶接継手の超音波探傷検査は、現在、ガス圧接継手の検査方法であるJIS Z 3062(JIS法)が準用されている。しかし、溶接継手とガス圧接継手ではキズの種類、発生しやすい位置、形状、大きさなどが異なるため、JIS法の溶接継手への適用には問題がある。そこで、JIS法に代わる新しい超音波探傷試験方法として斜めK走査法について、その探傷精度を検討した結果を報告する。

<キーワード> 溶接継手、超音波探傷、JIS Z 3062、斜めK走査法、探傷精度

 

【特集報文】 塗装施工時の温湿度がコンクリート表面被覆材の性能・耐久性に与える影響

佐々木 厳・西崎 到

<抄録> 表面被覆工法はコンクリート構造物の補修工法の一つとして用いられているが、期待した性能が発揮されず早期に再劣化する事例も見られる。施工管理の信頼性向上のため、表面被覆工法の不具合発生の要因調査、室内試験による検証実験、施工環境の観測等を行った。

<キーワード> 表面保護工、施工条件、塗装環境、接着性、遮蔽性

 

【特集報文】 土木構造用FRPの物性のばらつきと信頼性

西崎 到・冨山禎仁

<抄録> 近年、土木構造物への実用化が進みつつあるFRPの物性の評価方法とその信頼性に関する知見の取得のため、GFRP引抜成形チャンネル材から切り出したクーポン試験片を用いて引張試験を行い、切り出し部位による引張特性の相違、およびばらつき程度を評価した。また、得られたデータを基に材料係数の試算を行い、既存研究との比較検討を行った。

<キーワード> FRP、信頼性、ばらつき、引張特性、材料係数

 

【特集報文】 X線CTスキャナを用いたアスファルト混合物内部の品質評価手法の開発

谷口 聡・西崎 到・大谷 順

<抄録> アスファルト量及び混合物種類の異なるマーシャル安定度試験用供試体を用いてX線CT評価研究を実施した。その結果、X線CT撮影により得られたCT画像および4値化画像は空隙、アスファルト、骨材の分布を表現できることがわかった。また、CT値ヒストグラムは混合物の特性を顕著に表すことができた。

<キーワード> アスファルト混合物、X線CT、空隙分布、骨材形状、CT値

 

【現地レポート】 寒冷地における塗膜はく離工法及び作業環境の評価

西崎 到・天羽嘉津志

<抄録> 平成17年の「鋼道路橋塗装・防食便覧」に記載された、高級アルコール系剥離剤について、実橋を使った寒冷地での塗膜剥離工法の評価と素地調整工法別の粉じん等の作業環境評価について報告する。

<キーワード> 塗膜除去、高級アルコール系剥離剤、素地調整、粉じん、鉛、作業環境

 

【報文】 暴露条件の違いがASRによる劣化特性に与える影響の評価

河野哲也・七澤利明・中谷昌一

<抄録> アルカリシリカ反応(ASR)は、骨材の配合や種類、温度等の環境条件によって異なる。本文では、条件の違いによる膨張特性の違いについて基礎的な知見を得るために行った小型供試体に対する恒温恒湿状態における暴露試験の結果を報告する。さらに、これらの供試体に対して実施した非破壊検査による結果についても述べる。

<キーワード> アルカリ骨材反応、温度、湿度、骨材の種類

 

【報文】 自転車通行空間の整備形態選定の考え方に関する海外比較

小林 寛・山本 彰・岸田 真・吉田秀範

<抄録> 本稿は、海外における自転車通行空間の整備形態の選定基準等について、自転車と自動車の通行空間の分離必要性に着目し整理・比較したものである。我が国においても平成24年11月に国土交通省道路局および警察庁交通局から安全で快適な自転車利用環境創出ガイドラインが発出されており、各地域における自転車通行空間検討において参考にされたい。

<キーワード> 自転車、ガイドライン、海外基準、構造的分離、車道混在

 

【報文】 社会資本整備における利害調整のための人づくり支援

大谷 悟・森田康夫・服部 司・畑中謙吾・深澤竜介

<抄録> 社会資本整備には利害関係者との調整が不可欠であるが、公共事業費の削減等により、公的機関職員の利害調整技術等を向上させる機会が減少しており、利害調整にかかる支援が大きな課題となっている。そこで、現場で利害調整に従事する職員の人づくり支援にかかる取組み案を報告するものである。

<キーワード> 社会資本整備、利害調整、人づくり、利害関係者、合意形成

 

【土研センター】 鋼道路橋の塗替え時における含鉛塗料の除去について

片脇清士・中野正則

<抄録> 重防食塗装Rc−I塗装系の素地調整時に用いるブラスト作業では旧塗膜に含まれる含鉛塗料を微粉砕除去することから必要な対策を講じなければ作業者の鉛中毒による健康被害が生じることが危惧されている。鉛中毒による健康被害や米国の対策、これを未然に防ぐための技術について紹介する。

<キーワード> 鋼道路橋、塗替え、鉛中毒の予防、米国の事例

 

 


平成25年3月 報文抄録
 

【報文】 平成22年度道路交通センサス一般交通量調査結果の概要

小塚 清・橋本浩良・水木智英・松本俊輔・門間俊幸

<抄録> 国土交通省で実施した、平成22年度道路交通センサスのうち、一般交通量調査(道路状況調査、交通量調査、旅行速度調査)の結果がまとめられた。本調査では、分析の利便性に配慮した新たな調査区間の設定、民間で普及している通信型カーナビから取得した車両走行データを活用した旅行速度調査など調査の効率化・高度化を行った。

<キーワード> 道路交通センサス、交通調査基本区間、交通量調査、旅行速度調査、道路状況調査

 

【報文】 ITSスポットにより得られる道路プローブ情報の道路管理での適用可能性

金澤文彦・澤田泰征・田中良寛・岩ア 健

<抄録> 2011年より高速道路を中心に約1,600箇所でITSスポットサービスを展開しており、市販のITSスポット対応カーナビを搭載した車両から無線通信技術を用いて道路プローブ情報(走行履歴等)を収集している。本稿では、ITSスポットにより得られる道路プローブ情報の道路管理での適用可能性について紹介する。

<キーワード> ITSスポット、プローブ情報、交通調査、道路管理、利活用システム

 

【報文】 ITSのアーキテクチャに関する国際比較からみた今後の方向性

金澤文彦・鈴木彰一・中村 悟

<抄録> ITS(高度道路交通システム)の研究開発には官民様々な主体が参加するため、システム検討にあたり関係者の共通認識が必要となる。このため、日米欧ともに、国家的なレベルで、サービス内容、システム構成など全体像を定めたもの、いわゆるアーキテクチャを作成し、研究開発を進めている。本稿は、日米欧の各国家レベルでのアーキテクチャを比較し、欧米と日本との差異分析から、今後、日本におけるアーキテクチャ作成・活用の方向性について考察した内容を報告する。

<キーワード> システムアーキテクチャ、国際比較、日米欧、ITS、共同研究

 

【報文】 歩行者の安全横断支援のための横断歩行者感知式注意喚起システムの検証

鈴木一史・金澤文彦

<抄録> 横断歩行者の存在をドライバに注意喚起する横断歩行者感知式注意喚起システムについて、利用者の受容性、システムの有効性等について検証を行った。その結果、利用者からの受容性は比較的高く、安心感が高まったとの回答が得られた。また、歩車間の危険な交錯が全体的に減少し、安全側にシフトする傾向が観測された。

<キーワード> 横断歩行者、ITS、安全対策、ラウンドアバウト

 

【報文】 軽交通道路における舗装の管理実態及び損傷形態と構造的健全度

渡邉一弘・久保和幸

<抄録> 本稿は、地方自治体における舗装の管理実態に関する調査結果と、路面の状態と舗装の構造的健全度の関係についての調査結果を報告するものである。その結果、軽交通道路における舗装の管理においては、地方自治体の体制的・財政的制約が大きいこと、点検手法としては目視による路面点検が有用であること等を明らかとした。

<キーワード> 軽交通道路、舗装、管理実態、損傷形態、構造的健全度

 

【報文】 道路施設の対症的維持の高度化方策

吉田 武

<抄録> 道路管理者は、道路施設維持管理における予防保全的維持の研究と実用化を推進する一方で、対症的維持に日々追われている。本稿では、対症的維持が予防保全的維持に劣らず重要であるとの認識の下に、対症的維持の意義と改善が論じられている。コスト縮減、所要時間短縮、および通報者の待ち時間短縮を改善目標とした改善の枠組みが提案されている。

<キーワード> 対症的維持、予防保全的維持、レスポンスタイム、性能規定型契約、性能基準

 

【報文】 連続体モデルを用いた雪崩層厚と速度の算出
〜連続体モデルとフェルミーモデルの比較〜

池田慎二・伊東靖彦・野呂智之・田中頼博・林 一成

<抄録> 雪崩対策工の合理的設計手法を検討するために、連続体モデルと現在一般的に使用されているフェルミーモデルを用いて雪崩対策工の設計諸元の算出を試みた。連続体モデルによる計算結果は、フェルミーモデルによるものと比べると速度:1/3、雪崩層厚:‐2.8 mとなり、連続体モデルを用いることによりコスト、環境負荷の軽減がもたらされる可能性があることが示された。

<キーワード> 雪崩、走路・堆積区対策、運動解析、連続体モデル

 

【報文】 直轄工事における総合評価落札方式の現状と改善方針

岡野 稔・田嶋崇志・森田康夫

<抄録> 直轄工事における総合評価落札方式の実施状況について、平成17年度から平成22年度までのデータを整理し、応札者や落札者等の動向などに関する分析を行って運用上の課題を抽出した。その課題を改善するために、総合評価落札方式におけるタイプの二極化等の改善案を検討したので、その概要を紹介するものである。

<キーワード> 総合評価落札方式、直轄工事、課題の抽出、改善方針

 

【報文】 河道内におけるヤナギ類の効果的な伐採方法

槙島みどり・田屋祐樹・赤松史一・中西 哲・三輪準二・萱場祐一

<抄録> 日本の多くの河川で樹林化が進行し、管理上の課題となっている。主要な管理対象樹種であるヤナギ類を対象に、伐採に複数の方法を組み合わせた現地実験を行い、その効果を定量的に検証し河川管理の現場への適用に向けて考察した結果を報告する。

<キーワード> 樹林化、伐採、栄養繁殖、萌芽再生、萌芽再生抑制効果

 

【現地レポート】 長崎EV&ITS(エビッツ)の取組み

野嶋克哉

<抄録> 長崎県五島列島では、EV、ITS、Energyが融合した「長崎EV&ITS(エビッツ)プロジェクト」が展開されている。地域発観光情報をITSスポットからEV搭載のITSスポット対応車載器へ配信し、案内・誘導する仕組やEVと再生可能エネルギーの連携など、プロジェクトの概要を紹介する。

<キーワード> EV、ITSスポット、観光ナビサービス、再生可能エネルギー、独立分散電源

 

【土研センター】 袋詰脱水処理工法による放射性物質汚染底泥の封じ込め実験

土橋聖賢・道端秀治・大友啓次・阪本廣行

<抄録> 袋詰脱水処理工法は、河川・湖沼などに堆積している底質を封じ込め・減容化技術する技術として利用されている。本報文は、福島県川内村で実施した放射性物質汚染底泥の封じ込め確認実験の結果を報告するもので、放射性物質汚染土を袋に充填することで放射性物質を封じ込めることが確認された。

<キーワード> 袋詰脱水処理工法、放射性物質、底質

 

 


平成25年4月 報文抄録
 
特 集:自然災害被害の予測・把握技術の高度化に向けて
 

【特集報文】 堤防の変状等を高精度に把握するモービルマッピングシステムの開発

久保田啓二朗・大浪裕之・西山 哲・東 良慶

<抄録> 本研究開発は、相模川及び円山川の河川堤防を対象として、車両搭載型レーザスキャナを活用したモービルマッピングシステム(MMS)により、三次元的に堤防形状の計測を行った。計測の結果、目標の計測精度±20oを確保できるとともに、堤体の変状区間を差分解析により抽出することができ、今後の河川堤防の効率的なモニタリングに活用できる方法として有用であると考えられる。

<キーワード> 堤防等河川管理施設及び河道の点検要領、MMS、遠距離・高密度レーザ

 

【特集報文】 リモートセンシング技術による斜面移動箇所探索手法の検討

佐藤 匠・水野正樹・内田太郎・岡本 敦

<抄録> 大規模崩壊の前兆現象となる岩盤クリープや地すべりなどといった斜面変状箇所を広域山間部から探索する方法として、人工衛星SARのInSAR解析と航空レーザ計測によるDEM画像解析の2種類の手法を選定し、実現象に適用した結果について分析して両者の有効性と問題点を整理し、望ましい利用方法について提案を行った。

<キーワード> リモートセンシング、斜面モニタリング、変化抽出、SAR、航空レーザ計測

 

【特集報文】 光ファイバによる河川洪水等に関わる広域モニタリングシステムの開発

飯野光則・大浪裕之・村山英晶・湧川勝己

<抄録> 本研究は、東京都神田川流域の桃園川幹線を対象に、光ファイバセンサネットワークによるモニタリングシステムの技術開発を行い、動作確認試験によりシステムの基本的性能を確認することができた。今後は、現地実証実験を行い、モニタリングシステムの有効性と課題をとりまとめ、将来の河川管理への導入可能性について検討を行う。

<キーワード> 光ファイバセンサ、モニタリングシステム、OTDR、光ファイバ近接センサ、FBGセンサ

 

【特集報文】 強震記録に基づく地震動分布即時推定システムの構築

運上茂樹・金子正洋・片岡正次郎・長屋和宏・中村洋光・功刀 卓・青井 真

<抄録> 地震発生直後に災害対応担当者が迅速かつ的確な初動対応の準備にとりかかれるよう、地震発生直後に地震動分布を推定する手法、ならびに所管施設の被害状況を精度良く推測する手法の開発に取り組んでいる。本稿では、即時に強震記録を共有し地震動分布を推定・表示するシステムの構築状況について紹介する。

<キーワード> 強震記録、地震動分布、初動対応

 

【特集報文】 地震時の斜面崩壊危険度評価と警戒避難降雨基準の検討

野村康裕・岡本 敦

<抄録> 地震時および地震後降雨時の斜面崩壊危険度評価手法の精度向上のため、東北地方太平洋沖地震等について、地震時崩壊危険度評価判別式による災害的中状況および地震後の土砂災害警戒情報暫定基準による災害捕捉状況をそれぞれ検証した。その結果、これら手法の有効性が確認されるとともに、同暫定基準の改良案が示された。

<キーワード> 地震、斜面崩壊、危険度評価、土砂災害警戒情報

 

【特集報文】 津波により橋の構造部材に生じる力の特性

星隈順一・張 広鋒・中尾尚史・炭村 透

<抄録> 橋梁が段波状の津波の影響を受けた際の支承部に発生する力の特性を、橋梁模型を用いた水路実験により検証した。その結果、上部構造の床版張出長や主桁の高さ、幅員、支承個数などの構造形式の違いにより、支承部に発生する力の方向や大きさに有意な違いが生じることを確認した。

<キーワード> 津波、橋梁、上部構造形式、支承、水路実験

 

【特集報文】 東日本大震災における道路管理者の対応の記録

長屋和宏・山影修司・金子正洋

<抄録> 東日本大震災では、道路の被災状況の把握、地震および津波により被災した道路の啓開および復旧を迅速に行うことが要求された。本調査は、道路管理などの災害対応業務にあたった職員などを対象としたヒアリング調査を踏まえ、災害発生時における道路管理者の対応や被災施設の復旧にあたっての課題や問題点について整理したものである。

<キーワード> 東日本大震災、道路管理、ヒアリング調査、災害事例・教訓集

 

【現地レポート】 南海トラフの巨大地震に備えた中部版くしの歯作戦と地震・津波対策の取り組み

横山幸泰・内藤正仁・大原千明

<抄録> 近い将来発生が懸念されている東海・東南海・南海地震等、南海トラフの巨大地震に備え、中部地方整備局において被害の最小化を図る方策として検討を進めている中部版くしの歯作戦と地震・津波対策の取り組みについて紹介する。

<キーワード> 南海トラフの巨大地震、中部版くしの歯作戦、地震・津波対策、道路啓開、耐震対策

 

【現地レポート】 斜面崩壊検知センサーによる表層崩壊の検知について〜石狩川上流における事例〜

西村 義・幸田 学・山口昌志・武澤永純

<抄録> 土砂災害(土砂移動現象)発生情報は、巡視による目視確認などに頼るところが大きいため、発生予測・検知技術の構築が求められている。それらを構築する目的で石狩川上流域においては斜面崩壊検知センサーを設置した。そのセンサーが全国で初の事例として表層崩壊の発生を検知したことから、発生時の状況やその後の現地調査結果等を報告するものである。

<キーワード> 表層崩壊、発生予測、検知技術、斜面崩壊検知センサー

 

【土研センター】 インド洋に位置するMauritiusの海岸踏査

宇多高明・酒井和也

<抄録> 2012年8月にインド洋にあるMauritiusの海岸調査を行った。この海岸での観察結果について述べるとともに、日本と海外の海岸の現状および海岸保全の姿勢の相違について、比較・考察した。

<キーワード> 現地調査、海岸保全、Mauritius、砂嘴

 

 


平成25年5月 報文抄録
 

【報文】 全国の交通系ICカードのデータ収集・蓄積・活用状況

今井龍一・井星雄貴・濱田俊一

<抄録> 本稿は、全国の交通系ICカードを導入している鉄道事業者・バス事業者に対して、導入実績や活用状況の実態調査の結果を報告した。実態調査により、交通系ICカードの利用状況、収集・保存しているデータ項目、社内の活用状況およびデータ提供の可能性が明らかになった。

<キーワード> 交通系ICカード、動線データ

 

【報文】 首都高速道路の急カーブ区間における安全運転支援サービスの効果検証実験

金澤文彦・岩ア 健

<抄録> 車両を検知するための路側センサーと路車間通信を組み合わせた安全運転支援システムの研究開発を進めてきた。路側に設置した検知器で車両の速度を検知し、ITSスポット通信を活用して注意喚起情報を提供する「カーブ進入危険防止システム」について、その効果を検証するために実施した走行実験の結果を報告する。

<キーワード> ITSスポット、安全運転支援、路車連携、走行実験

 

【報文】 都市間道路のサービス水準に関する実態と課題

橋本雄太・小林 寛・山本 彰

<抄録> 都市間道路のサービス水準に関する実態と課題を把握するため、主に平均旅行速度に着目した分析を行った。その結果、都市間道路の現状や地域差を示すとともに、平均旅行速度と信号交差点密度との関係等を明らかにした。また、都市間道路の詳細分析から、道路の階層性を踏まえた道路ネットワークにおける課題を考察した。

<キーワード> 都市間道路、サービス水準、平均旅行速度、信号交差点密度、道路階層

 

【報文】 舗装の騒音低減機能の簡易試験法及び新しい低騒音舗装の提案

渡邉一弘・井谷雅司・久保和幸

<抄録> 本稿は、開発されている多様な低騒音舗装技術の騒音低減効果について評価することができる簡易試験法の開発について報告すると共に、粗面型小粒径薄層SMA舗装の騒音低減機能の持続性とわだち掘れ耐久性についての舗装走行実験場での実験結果について報告するものである。

<キーワード> 舗装、低騒音、騒音低減、簡易試験法、粗面型小粒径薄層SMA舗装

 

【報文】 不同沈下や偏土圧の影響を受けるアーチカルバートの構造特性

八ツ元 仁・藤原慎八・谷口哲憲・西田秀明・石田雅博

<抄録> 道路土工構造物の一つであるカルバート構造では、近年、従来とは異なる特性を持った部材間の接合部にヒンジ接合を有するアーチカルバートを採用する事例が見られる。そこで、このようなアーチカルバートが不同沈下や偏土圧に起因する外力を受けた場合の構造的特性について明らかにすることを目的として数値解析により検討を行った。

<キーワード> アーチカルバート、ヒンジ接合、水平バネ、不同沈下、偏土圧

 

【報文】 塩害により撤去されたPC橋の耐荷力評価

松沢政和・木村嘉富・花井 拓・本間英貴

<抄録> 鋼材腐食により劣化したPC橋のせん断耐荷力評価手法に関する知見を得ることを目的として、塩害により撤去されたポストテンションPCT桁の載荷試験を実施した。本試験の結果より、外観の損傷度とプレストレスの低下量やせん断ひび割れ発生荷重に相関があることが確認された。

<キーワード> 塩害、劣化、ポストテンションPC桁、静的載荷、せん断

 

【報文】 載荷試験による補修RC桁の耐荷力評価

本間英貴・木村嘉富・花井 拓・中島道浩

<抄録> 近年、建設後50年以上を経過する道路橋が増えていく中、劣化損傷により補強された橋梁を維持管理していくため耐荷力評価手法が求められている。補強後の再劣化による損傷が見られるコンクリート橋の耐荷性能を評価すべく、既設橋で撤去された単純RC桁を用いて載荷試験や材料調査など各種試験等を実施した。

<キーワード> 載荷試験、塩害、ASR、鋼板補強、断面修復、耐荷力評価

 

【報文】 超高力ボルトの橋梁分野への適用に向けた各要因の影響

玉越隆史・石尾真理・大久保雅憲・加藤浩一・氏本 敦

<抄録> 超高力ボルトの橋梁分野への適用に向けて、示方書における高力ボルトと同じ規定や制限を、超高力ボルトに適用することで、超高力ボルトを使用することができる可能性について検討する。摩擦接合を対象にすべり試験を行い、ボルト等級や接合面処置などの要因が、すべり係数に与える影響について確認した。

<キーワード> 道路橋、超高力ボルト、摩擦接合、すべり試験、すべり係数

 

【現地レポート】 超高強度ひずみ硬化型モルタル(UHP-SHCC)を用いた表面保護工の施工

田中一能・松本康弘・高橋 衛

<抄録> 中性化により鉄筋腐食した壁高欄の補修に際し、断面修復工と表面被覆工の両者の役割を担うハイブリット表面保護工として、第15回新道路技術会議において優秀技術研究開発賞を受賞した超高強度ひずみ硬化型モルタルを適用し、その施工性について報告する。

<キーワード> 繊維補強モルタル、中性化、表面保護工、ASR、有機短繊維

 

【土研センター】 「耐候性大型土のう積層工法」設計・施工マニュアル

堀内晴生・辰井俊美・了戒公利

<抄録> 従来から緊急を要する応急工事等へ用いられていた「耐候性大型土のう」を、仮設土留め工や仮護岸工、仮締切工等の仮設工事に適用する際の設計・施工法をとりまとめた『「耐候性大型土のう積層工法」設計・施工マニュアル』について概要を紹介する。

<キーワード> 耐候性大型土のう、積層工法、仮設工事、性能規定値、性能証明

 

 


平成25年6月 報文抄録
 
特 集:道路事業における環境保全を支える環境影響評価技術
 

【特集報文】 「道路環境影響評価の技術手法」全面改定の概要と新たな「配慮書」段階の具体的手法

井上隆司・山本裕一郎・角湯克典

<抄録> 「道路環境影響評価の技術手法」は、全国の道路アセスの実施状況を踏まえて一般的な手法を解説した手引き書である。この度の環境影響評価法の改正(平成25年4月施行)及び最新の科学的知見を反映した全面改定について、全体概要を紹介するとともに、新たに義務付けられた配慮書手続の具体的手法について解説する。

<キーワード> 環境影響評価法、環境影響評価技術、配慮書手続、計画段階配慮事項、道路事業

 

【特集報文】 道路環境影響評価の配慮書段階における動物、植物及び生態系への配慮の考え方と検討手法

山本裕一郎・井上隆司・角湯克典・栗原正夫・上野裕介

<抄録> 改正環境影響評価法による配慮書手続きの導入を受けて追加作成した「道路環境影響評価の技術手法」の第1章 計画段階配慮事項(全ての影響要因・環境要素に共通)のうち、動物、植物及び生態系の調査・予測・評価に係る参考として、配慮書段階における検討の考え方と検討手法の例を紹介する。

<キーワード> 計画段階配慮事項、道路事業、動物、植物、生態系

 

【特集報文】 道路環境影響評価における動物、植物及び生態系の事後調査手法

山本裕一郎・井上隆司・角湯克典・栗原正夫・上野裕介

<抄録> 改正環境影響評価法による報告書手続き(事後調査結果等の報告・公表)の導入を受けて、「道路環境影響評価の技術手法」の第13章 動物・植物・生態系に事後調査の手法を追加した。本稿では、その内容を紹介する。

<キーワード> 環境影響評価技術、道路事業、動物、植物、生態系

 

【特集報文】 道路環境影響評価の技術手法における最新の自動車の排出係数等を踏まえた大気質・騒音・振動の予測手法の改定

土肥 学・吉永弘志・角湯克典

<抄録> 道路環境影響評価の技術手法(大気質及び騒音)について、今回の法改正を受けた技術手法改定にあわせて行うこととした、自動車排出係数(NOx・PM等)の更新等の最新の科学的知見・データ等に基づく改定内容について解説する。

<キーワード> 環境影響評価技術、道路事業、大気質、騒音、振動

 

【特集報文】 土壌・底質・廃棄物等に関する「道路環境影響評価の技術手法」の改定の背景

品川俊介・宮武裕昭・阿南修司

<抄録> 道路環境影響評価の技術手法(土壌、底質、廃棄物等)について、今回の法改正を受けた技術手法改定にあわせて行うこととした、関連マニュアル類の整備等の最新の科学的知見・データ等に基づく改定内容について解説する。

<キーワード> 環境影響評価技術、道路事業、土壌、底質、廃棄物等

 

【特集報文】 道路環境影響評価の実績と課題、今後の展開

井上隆司・山本裕一郎・角湯克典

<抄録> 環境影響評価法の施行(平成11年6月)以降に実施された35件の道路事業の法アセスの実績を振り返るとともに、適切な項目選定、事後調査結果の有効活用、電子化の推進等の今後の課題と考えられる点を展望した。

<キーワード> 環境影響評価法、道路事業、環境保全措置、アセス図書、電子化

 

【現地レポート】 法アセス事業における環境保全措置等の実施状況

岡部武彦・川口文弘・加藤真吾

<抄録> 都市計画道路 鷹巣高速線・大館南高速線は、平成14年5月に環境影響評価法(アセス法)に基づく手続きが終了し、平成17年度より一般国道7号 鷹巣大館道路として事業化されている。本稿は、事業開始より8年が経過し事業が大きく進捗していることから、環境保全措置及び事後調査の実施状況について報告するものである。

<キーワード> 鷹巣大館道路、環境影響評価、環境保全措置の実施状況、猛禽類調査、植物の移植

 

【報文】 東日本大震災における地域建設業の初動にみる今後の災害対応の方向性

大橋幸子・竹谷修一・渡辺健一・横井宏行

<抄録> 東日本大震災における地域建設業の初動について、国総研・東北地整・東北建設業協会連合会が行った実態調査をもとに分析した。その結果、初期のインフラの機能回復は、燃料の不足や通信の途絶等により地域内の人材・資機材等を中心に行われたこと、また、地域内での人材・資機材の確保が作業の迅速性に寄与したこと等が分かった。

<キーワード> 東日本大震災、地域建設業、災害対応マネジメント、アンケート調査

 

【報文】 アジア開発銀行との連携協定による地域技術協力プロジェクト(ADB TA7276)最終報告

日比野繁信・岡積敏雄・バドリ シュレスタ・鍋坂誠志・宮本 守

<抄録> 土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は2009年11月からアジア開発銀行と連携協定を結び、水災害管理への投資の支援として2013年3月までの約3年3ヶ月間でインドネシア、バングラデシュ、フィリピン、メコン川下流域での実践と水災害指標の開発の技術協力を実施した。途上国における技術支援の困難さを乗り越えるための衛星情報の活用、高度技術の適応を駆使して、現場での実践を通じた国際貢献の活動事例を紹介している。

<キーワード> 洪水予警報、脆弱性評価、衛星雨量、流出モデル、国際貢献

 

【土研センター】 車両用防護柵の変形性能と設置地盤強度との関係

染谷 修・安藤和彦

<抄録> 衝突試験により防護柵の性能確認を行っていく場合、設置地盤の適切な強度設定、管理は不可欠であると考えられる。そこで、過去の実車衝突試験結果を基に、防護柵性能のうち変形性能に着目し、試験地盤の強度との関係について検討した。

<キーワード> 車両用防護柵、たわみ性防護柵、防護柵の変形性能、車両の最大進入行程、地盤強度

 

 


平成25年7月 報文抄録
 

【報文】 崩壊土砂の流動化量に関する一考察

内田太郎・岡本 敦

<抄録> 近年の深層崩壊を対象に、崩壊土砂の流動化の実態について調査した。ここでは、崩壊土砂の流動化率(崩壊土砂量に占める流動化した土砂の割合)を算出し、崩壊土砂量、斜面における流下方向と渓流・河川の流下方向のなす角度、渓流・河川の河床勾配、校数量の永久について検討した結果、流動化率に崩壊土砂量の及ぼす影響が大きいことを示した

<キーワード> 深層崩壊、流動化、地形、崩壊土砂量

 

【報文】 山地河川における洪水時の地盤振動特性の評価

武澤永純・山越隆雄・石塚忠範・中谷洋明

<抄録> 本研究は、山地河川で観測された流量データと振動データを用いて、豪雨時に生じる振動の増幅の分析および、洪水時において観測されたハイドログラフと振動の増幅傾向の比較を行った。その結果、ピーク流量を観測する前の流量と振動振幅に相関があることを明らかにした。

<キーワード> 振動センサー、洪水、流量、速度振幅、土砂移動現象

 

 

【報文】 樹脂固定標本によるすべり面の微細構造分析手法

武士俊也・武田伸二・村田誠一・藤本泰史・本間宏樹・水野直弥

<抄録> ボーリングによって採取したすべり面等の樹脂固定標本の微細構造分析手法とすべり面の認定手法について紹介した。標準的な観察項目とその結果を観察柱状図に整理する手法を示すとともに、すべり面を認定する際の留意点を示した。

<キーワード> 地すべり、すべり面、ボーリングコア、樹脂固定標本

 

 

【報文】 東日本大震災における応急復旧に関する災害協定の効果−地域建設業の活動実態を通じて−

大橋幸子・竹谷修一

<抄録> 東日本大震災における災害協定の効果について、国総研・東北地整・東北建設業協会連合会が行った実態調査をもとに分析した。その結果、災害協定が迅速な活動に効果があったこと、また、特に被害の大きい地域で災害協定に基づく活動その他の支援の要請が重複した状況や、一部では被災により対応が難航したこと等が分かった。

<キーワード> 東日本大震災、地域建設業、災害対応マネジメント、災害協定、アンケート調査

 

 

【報文】 「画像処理による交通量計測手法」についてのインドネシア公共事業省道路研究所との共同研究

関谷浩孝・上坂克巳・橋本浩良・高宮 進

<抄録> インドネシアの幹線道路において複数の交通状況及びカメラ設置条件で撮影し、画像処理技術を用いて交通量を計測した。これにより次の知見を得た。画像処理による交通量計測値の誤認率は、混雑時に19%程度となることがあるものの、昼夜ともに非混雑時には10%未満となる。鉛直から60度にカメラを設置すると誤認率は最小になる(昼間の非混雑時、カメラを高さ8mの場合)。

<キーワード> 道路交通、交通量計測、画像処理、国際協力

 

 

【報文】 デンマークにおける最近の自転車交通施策

本田 肇・藪 雅行

<抄録> 日本における自転車利用環境の創出に資するため、自転車先進国であるデンマーク及び首都コペンハーゲン市における交通事故状況及び自転車交通施策の動向について、インターネット調査及びヒアリング調査を行った。その結果を元に、最近の自転車利用環境の質的向上を中心とした施策の動向を整理した。

<キーワード> デンマーク、コペンハーゲン、自転車交通施策、交通事故状況

 

 

【報文】 歩道の舗装に求められる段差・平たん性の路面性状

川上篤史・井谷雅司・寺田 剛・久保和幸・竹内 康

<抄録> 本研究は、健常者や高齢者など利用主体に適した路面の平たん性、段差の補修目標に関する提案を行うことを目的とし、実歩道等において多様な被験者を対象にアンケート調査を実施、歩行者系舗装に求める路面性状の傾向を検討した。また、路面の平たん性、段差の補修目標に関する検討を行った。その結果の概要について報告する。

<キーワード> 歩行者系舗装、段差、平たん性、補修目標、歩行実験

 

 

【報文】 ITS技術の海外展開に向けたシステム要件に関するヒアリング調査結果

金澤文彦・鈴木彰一・鈴木一史・岩ア 健

<抄録> ITS技術の海外展開に向け、留意・配慮すべき点について関係機関、製造メーカに対してヒアリング調査を実施した。その結果および、ヒアリング調査により得られた今後の海外展開の方向性に関する意見をもとに、海外展開向けITS技術が備えるべきシステム要件について提案する。

<キーワード> ITS、海外展開、ヒアリング調査、パッケージシステム

 

 

【報文】 水際に寄り洲を形成するバーブ工法

原田守啓・高岡広樹・大石哲也・萱場祐一

<抄録> 流砂を捕捉して寄り洲を形成する「バーブ工法」を紹介するとともに、設置時の平面角度と形状が河床変動特性に与える影響について、実験結果を中心に報告する。バーブ工の寄り洲の形成機構は、上向き角度が大きく、かつ先端を下げた高さの低い水制が、出水中に水制の高さまで掃流砂を堆積させる働きによるものと考えられた。

<キーワード> バーブ工、寄り洲形成工、越流型水制、平面設置角度、水理実験

 

 

【現地レポート】 新宿区における歩行者に配慮した舗装

小野浩一

<抄録> 新宿区は、「暮らしと賑わいが調和し、住む人、働く人や訪れる人々が心地よく感じることができる、環境に配慮したみどり豊かな快適で潤いのあるまち」の実現を目指して、歩きたくなる歩行者空間の充実を目指している。本報告では、区内の歩行者優先の道路整備の変遷と、最近の取り組み事例を紹介する。

<キーワード> 歩行者系舗装、石畳舗装、インターロッキングブロック舗装、コミュニティ道路、人とくらしの道づくり事業

 

 

【土研センター】 青森県開運橋における合理的な耐震補強法

工藤一彦・中野正則・安波博道・中島和俊

<抄録> 本報では連続桁性状を示した橋梁に対して、一般に機能不全と捉えられる同挙動を肯定的に評価し、耐震補強の一部とすべく積極的な桁連続化を行った事例を報告した。

<キーワード> 鋼鈑桁橋、耐震補強、連続桁化、温度伸縮

 

 


平成25年8月 報文抄録
 
特 集:ストックマネジメント技術研究の最前線
 

【特集報文】 社会資本の予防保全的管理のための点検・監視技術の開発

山口達也・塚原隆夫・ 鈴木 敦

<抄録> 本研究では、社会資本の予防保全的管理を目的として、非破壊検査や遠隔検査技術等を用いて、構造物の目視困難な部位および目視では評価が困難な変状に対する点検・監視技術の開発を行った。これらは、これまでの「見えるところを見る」から「診るべきところを診る」へ転換するための技術である。

<キーワード> 予防保全的管理、点検・監視技術、社会資本の高齢化、非破壊検査、遠隔検査技術

 

【特集報文】 アセットマネジメント国際規格ISO55000誕生への急がれる対応

堀江信之・越海興一・末久正樹

<抄録> あらゆるインフラ運営組織を対象とし、施設・人材・資金・情報等の資産を最適運営するためにどれだけの仕組みが必要かを示したアセットマネジメントの国際規格ISO55000シリーズの最終案が、3年間にわたる作成作業を終えてまとまった。経緯、概要、日本での適用について概観する。

<キーワード> アセットマネジメント、ISO55000、インフラ運営、リスク、リーダーシップ

 

 

【特集報文】 アセットマネジメントに向けた下水道管きょ調査における調査頻度の提案

深谷 渉・末久正樹・小川文章

<抄録> 我が国の管きょストックは約44万q(平成23年度末現在)に達し、下水道事業に早く着手した自治体では改築を要する管きょを多く抱える。自治体においては、財政事情の厳しい中、施設の老朽化による事故を未然に防止するために、アセットマネジメントの導入を視野に入れつつ、計画的かつ効果的に維持管理を進める必要がある。本報告では、下水道管きょが安定的に機能を発揮するために必要な点検調査頻度について、道路陥没の実態、信頼性重視保全、健康寿命の3つの視点から考察を行った。

<キーワード> 下水道管きょ、調査頻度、信頼性重視保全、健康寿命

 

 

【特集報文】 信頼性とリスクを考慮した道路構造物資産の予防保全的管理手法の研究

玉越隆史・大城 温・石尾真理

<抄録> 信頼性やリスクを考慮して維持管理計画が立案できるような、道路構造物の維持管理体系の確立に向け、全国の橋の定期点検データを用いた劣化現象のばらつきの分析や、リスクアナリシスの手法を活用した橋梁の構造特性ごとの潜在的リスクの抽出方法に関する基礎的検討など、橋の維持管理体系の高度化に関わる最近の研究内容を紹介する。

<キーワード> 道路構造物、維持管理、予防保全、リスク、劣化予測

 

 

【特集報文】 アセットマネジメントに向けた河川ポンプ設備の状態監視保全技術

上野仁士・藤野健一・田中義光

<抄録> 設備の老朽化に伴い増大する維持管理費を抑制するとともに信頼性をより向上させる事を目的に実施している、河川ポンプ設備への状態監視保全技術の適用性と評価手法の研究について紹介する。

<キーワード> 状態監視保全、振動、排水機場、維持管理、コスト削減

 

 

【特集報文】 道路の性格・役割を踏まえた舗装の点検技術の開発

渡邉一弘・堀内智司・久保和幸

<抄録> 舗装の効率的な管理の実現に向け、道路の性格・役割を踏まえた点検手法が求められる。土木研究所では、舗装の点検技術に関して民間各社と共同研究を実施しているところであり、本稿ではその技術開発状況についてその概要を例示的に報告するものである。

<キーワード> 舗装、点検、調査、路面、路面性状測定車

 

 

【特集報文】 点検・災害データの蓄積と活用による道路のり面・斜面管理の高度化への取組み

佐々木靖人・浅井健一

<抄録> 道路のり面斜面管理における点検・災害データの蓄積とアセットマネジメントへの活用の取り組みについて報告するとともに、最近の道路のり面斜面管理の方向性について紹介する。

<キーワード> 道路、斜面、点検、災害、老朽化

 

 

【現地レポート】 橋梁診断を通じたアセットマネジメントに係る人材育成・地域支援

深谷 亘・鈴木康芳・山田光希

<抄録> トンネルや橋梁等の古くなったインフラの点検のあり方が社会的な問題になる中、中部地方整備局管内の管理事務所が行う橋梁点検について、中部技術事務所として点検現場に立ち会い、統一的な視点や知見に基づき橋梁診断を行っているが、その過程を通じた人材育成・地域支援等に果たしている役割と貢献について報告するものである。

<キーワード> 橋梁診断、橋梁判定会、人材育成、地域支援、橋梁保全講習会

 

 

【現地レポート】 阪神高速におけるアセットマネジメントの取組み

宮口智樹・荒川貴之

<抄録> 阪神高速の維持管理業務において、資産情報や点検から補修までのデータを一元管理するために構築している「保全情報管理システム」を中心に阪神高速のアセットマネジメントについて紹介する。

<キーワード> アセットマネジメント、保全情報管理システム、防災システム、BMS、GIS

 

 

【報文】 大規模地震災害における地域建設業の活動実態の特性と傾向

大橋幸子・竹谷修一

<抄録> 本研究では、災害時のインフラ機能の復旧の迅速性向上を目的に、新潟県中越沖地震、岩手・宮城内陸地震、東日本大震災の地域建設業の活動実態調査をもとに分析を行った。その結果、地域の具体的な課題の推移を明らかにするとともに、災害の規模を問わずその経験が以降の備えに結びついていること等を確認した。

<キーワード> 東日本大震災、平成20年岩手・宮城内陸地震、平成19年新潟県中越沖地震、災害対応

 

 

【土研センター】 アルカリシリカ反応で損傷した道路橋床版―橋梁インフラの維持補修事例の紹介―

伊戸康清・島田 守・五島孝行・柴田辰正・大田孝二

<抄録> 道路橋床版の損傷は、以前より輪荷重の繰返し載荷が原因とされてきたが、最近では経年による床版コンクリートの材料劣化と輪荷重の繰返し載荷の複合で床版損傷が生じる事例も散見される。アルカリシリカ反応によるコンクリート材料の劣化がみられる床版を調査する機会を得たので、ここにその結果を報告する。

<キーワード> 道路橋床版、床版損傷、材料劣化、複合劣化、アルカリシリカ反応

 

 


平成25年9月 報文抄録
 

【報文】 セグメント2区間における河道タイプと氾濫原水域・指標生物分布との関係

永山滋也・原田守啓・萱場祐一

<抄録> 17直轄河川のセグメント2区間を対象として、現在の氾濫原水域とイシガイ類・タナゴ類の分布を調べた。その結果、これらの分布はセグメント区分(2-1,2-2)よりも河道タイプに依存しており、水域密度および生息割合は植生遷移が進行した河道において高かった。また、人為的な高水敷整備は、氾濫原の形成を抑止していた。

<キーワード> 直轄河川、セグメント2、氾濫原生態系、樹林化、高水敷整備

 

【報文】 河川高水敷における特定外来生物アレチウリの埋土種子分布と河川流況との関係性

傳田正利・萱場祐一

<抄録> 研究では、信濃川水系千曲川の河川高水敷において、植物群落内の特定外来生物アレチウリの埋土種子の分布特性を調査し、物理環境条件と埋土種子分布特性の関係性の考察を行った。同時に、アレチウリ防除のために河川管理上配慮すべき事項の考察を行った。その結果、(イ)埋土種子はアレチウリ群落、ハリエンジュ群落、オギ群落で、主に確認された。アレチウリの生育が確認されなったオギ群落内の埋土種子の分布には、出水時の流れの形態が影響を与えていると推定された。(ロ)埋土種子の鉛直分布は、表層から約0.1mに集中するが、冠水時の撹乱が高い場合には、表層から約0.25m程度まで分布した。(ハ)冠水頻度と冠水時の撹乱状況が埋土種子の分解状況に影響を与えた。以上の3点を明らかにした。河川管理の現場においては、アレチウリが生育している箇所だけでなく、出水時の流況、冠水頻度、冠水時の撹乱状況を考慮し、アレチウリ防除を行う必要があることを明らかにした。

<キーワード> アレチウリ、埋土種子、千曲川、分布特性、河川高水敷

 

 

【報文】 仮設防護柵に設置する斜面崩落検知センサの開発

千田容嗣・武士俊也・石田孝司・坂野弘太郎

<抄録> 大規模な落石や斜面崩落が発生する前に、前兆現象として生じることがある落石や小崩落を検知するため、仮設防護柵に設置して落石時の防護柵の振動を検知する「斜面崩落検知センサ」を、共同研究を通じて開発した。本報告では、その検知センサの現場への適用可能性を確認するための実験結果について報告する。

<キーワード> 仮設防護柵、落石、斜面崩壊、振動計測

 

 

【報文】 近年の交通事故発生状況と歩行者の安全対策

池原圭一・藪 雅行

<抄録> 近年の交通事故は減少傾向にあり、平成24年の死者数は4,411人であった。しかしながら、いまだ多くの尊い命が交通事故により失われている。本稿では、全体の死亡事故の36.2%を占め、近年その割合が増加している人対車両の死亡事故の傾向及び特徴に関する分析結果を紹介する。また、参考となる諸外国の取り組みを紹介する。

<キーワード> 交通事故、交通事故分析、人対車両事故、横断中事故、高齢者

 

 

【報文】 ITSスポットサービスのモニタ調査による有効性評価

金澤文彦・鈴木一史・中村 悟

<抄録> 2011年8月までにITSスポットが全国の高速道路上を中心に約1,600機設置され、ITSスポットサービスが本格的に運用を開始している。本稿では、ITSスポットサービスのモニタ利用者約700名に対して実施したアンケート調査に基づき、ITSスポットサービスの有効性について評価した結果を報告する。

<キーワード> ITSスポット、情報提供、利用者評価

 

 

【報文】 CCTV画像を用いた危険事象検知システムの低コスト化

金澤文彦・鈴木彰一・田中良寛・佐治秀剛

<抄録> CCTV画像を用いた自動検知を低コストで実現するため、危険事象検知システムのコスト面の問題に着目し、システムの低コスト化のための検討を行うとともに、低コスト化したシステムの模擬環境下での検証および実環境下での検証結果を報告するものである。

<キーワード> CCTV、危険事象検知システム、クラウドコンピューティング

 

 

【報文】 コンクリート道路橋における信頼性設計の適用に関する基礎的検討

和田圭仙・木村嘉富・宮田弘和・高橋敏樹・松沢政和

<抄録> 現在、道路橋示方書の次期改定に向けて部分係数設計法の導入と、さらなる性能規定化に向けた検討が進められている。本検討ではコンクリート道路橋の代表的な橋梁形式を対象として、信頼性設計の適用に関する基礎的検討を行った。試算結果に基づき目標信頼性指標を定めた上で、抵抗係数を提案した。

<キーワード> 道路橋示方書、コンクリート道路橋、信頼性設計、部分係数設計法

 

 

【現地レポート】 岐阜県における自然の水辺復活プロジェクト−岐阜県における現地ワークショップ−

萱場祐一・岩崎福久

<抄録> 岐阜県では「自然の水辺復活プロジェクト」と題して、平成13年度より岐阜県下の自然環境の創出や保全を効果的に進める取り組みを行っている。このプロジェクトでは「産学民官の協働」「モノづくり」「人づくり」「現場での実践」の4本の施策を総合的に推進することにより、「清流の国ぎふ」に相応しい川づくりを推進していくことを目的としている。本報告では、本プロジェクトの概要を説明するとともに、(独)土木研究所自然共生研究センターとの連携事例等として桂川におけるバーブ工設置の取り組みを紹介する。

<キーワード> 自然共生型川づくり、自然の水辺復活プロジェクト、岐阜県、多自然川づくり

 

 

【土研センター】 建設発生土利用技術マニュアル第4版の出版

土橋聖賢・阪本廣行・木俣陽一・堀 常男

<抄録> 建設発生土利用技術マニュアルは、建設工事に伴って発生する土砂や汚泥を定められた土質区分基準や利用用途別の品質基準等の技術的な標準とその解説を示すものです。本報文では、建設発生土利用技術マニュアルの改訂ポイントと、最近の発生土の有効利用の事例を紹介しました。

<キーワード> 建設発生土、建設副産物リサイクル、土質区分、事例紹介

 

 


平成25年10月 報文抄録
 
特 集:道路橋保全の取組み ―この5年の実績と今後―
 

【特集報文】 道路橋の耐久性向上と維持管理体制の適正化に向けた近年の取組みと展望
―道路橋示方書と定期点検要領を中心に―

玉越隆史

<抄録> 本稿では、道路橋の設計基準への反映を目的とした、維持管理性への配慮や耐久性とその信頼性の向上のための取り組み、点検要領を始めとする道路橋の適切な保全のための維持管理体制の適正化に向けた取り組みの現状と今後の課題等について紹介する。

<キーワード> 道路橋、耐久性、維持管理、道路橋示方書、点検要領

 

【特集報文】 鋼橋における劣化損傷と技術開発
−これまでの主な取組みと今後の方向性−

村越 潤・高橋 実・木ノ本 剛・澤田 守

<抄録> 我が国の道路橋については、その大半が高度経済成長期頃から建設されており、急速な高齢化が進む中、様々な劣化損傷事例が顕在化しつつある。鋼橋の主たる劣化損傷である腐食や疲労に伴う重大損傷事例と各事例に関わる課題を述べるとともに、これまで実施してきた臨床研究等による主な研究成果の概要を紹介する。

<キーワード> 維持管理、腐食、疲労、詳細調査、対策技術

 

 

【特集報文】 コンクリート橋上部工における劣化損傷と技術開発
−これまでの主な取組みと今後の方向性−

木村嘉富

<抄録> CAESAR設立以降「臨床研究」として行ってきたコンクリート橋上部工の維持管理技術の開発のうち、撤去桁を用いた耐荷性能の評価技術、ならびに塩害の予測手法の高度化への取り組みについて紹介する。

<キーワード> コンクリート橋、載荷試験、耐荷性能、塩害、劣化予測

 

 

【特集報文】 道路橋基礎における不具合への対応

七澤利明

<抄録> 道路橋ストックの合理的な管理や大地震時の道路ネットワークの機能確保のため、道路橋基礎に関して不具合事例を踏まえた適切な対応を講じていく必要がある。本稿では、地震による被災、軟弱地盤での不具合、材料劣化など基礎の不具合への対応として、土木研究所CAESARが取り組んできた研究開発等について紹介する。

<キーワード> 道路橋基礎、耐震性、軟弱地盤、材料劣化、研究開発

 

 

【特集報文】 橋の耐震性能評価技術の向上と津波の影響への対応

星隈順一

<抄録> 本稿では、震災経験や実験等に基づいた道路橋の耐震性能の評価の向上に関する様々な研究や津波が作用することにより橋が受ける影響について、CAESARがこれまでに取り組んできている研究開発の状況について紹介するとともに、今後の研究の方向性についてまとめた。

<キーワード> 橋梁、耐震性能評価、免震・制震、応急復旧、津波の影響

 

 

【特集報文】 非破壊検査・モニタリング技術の開発
−これまでの取組みと今後の方向性−

木村嘉富

<抄録> 道路橋のメンテナンスサイクルを効率的、効果的に実施していくためには、非破壊検査技術、モニタリング技術高度化が不可欠である。CAESARにおけるこれらの技術開発動向や他機関での開発支援への取り組みについて紹介する。

<キーワード> 道路橋、非破壊検査、モニタリング、振動特性

 

 

【特集報文】 海外の道路橋保全におけるリスク評価の動向

石田雅博

<抄録> 海外では、道路橋に関して、部材の劣化の生じやすさや損傷による社会的影響を評価して、点検・診断や補修・補強の優先順位付けに用いるリスク評価を行っている国もある。先進的な事例として、イギリスとオーストラリアの道路構造物の点検制度および道路橋のリスク評価の手法について述べる。

<キーワード> 点検、診断、道路橋、社会的影響、リスク評価

 

 

【現地レポート】 "道守"養成プロジェクトによるインフラ長寿命化の挑戦

出水 享・森田千尋・中村聖三・松田 浩

<抄録> 長崎大学が長崎県および地元建設業界をはじめ、国や市町やNPO団体等の関連団体との連携により実施している道路インフラ施設の維持管理や道路の見守り活動を行える人材の養成を目的とした日本発のプロジェクト「観光ナガサキを支える"道守"養成ユニット」の概要について説明する。

<キーワード> 道路インフラ、老朽化、道守、維持管理、長寿命化

 

 

【現地レポート】 沖縄県離島架橋100年耐久性検証プロジェクトにおける取組みについて

仲嶺 智・渡久山直樹・翁長正勝

<抄録> 非常に厳しい自然環境である沖縄では、離島架橋を長期間供用するため「100年耐久性検証プロジェクト」が開始されている。新設の離島架橋である伊良部大橋では、コンクリートの配合や鋼橋部での塗装仕様など様々な取り組みを実施しており、その事例について報告する。

<キーワード> 沖縄県離島架橋100年耐久性検証プロジェクト、塩害対策、フライアッシュコンクリート、現場溶接、AlMg合金溶射

 

 

【土研センター】 日中建設技術交流会の開催

徐 光黎・馬  鄖・了戒公利

<抄録> 2013年6月12日〜15日に、土木センターの主催で日中建設技術交流会を実施した。交流会は「土留め」をテーマに、技術セミナー、現場見学及び技術研究所の見学等を行った。日本及び中国の建設事情、TRD工法と地中連続壁工法等の施工技術について活発的な討論があった。

<キーワード> 日中技術交流、土留め、TRD工法、地中連続壁工法、見学

 

 


平成25年11月 報文抄録
 

【報文】 交通需要マネジメントへのITS技術の適用に関する調査

金澤文彦・鈴木彰一・築地貴裕

<抄録> 交通需要マネジメント施策に協力するドライバーへインセンティブを与えるインセンティブ付与型の交通需要マネジメント施策の実現に向け、我が国における交通需要マネジメント施策ニーズの調査、及び、海外での類似技術を用いた取組み事例の調査を行った。

<キーワード> 交通需要マネジメント、ITS技術、インセンティブ付与

 

【報文】 天然由来の火山灰質凝集材を用いた濁水凝集処理に関する現地実験

海野 仁・箱石憲昭

<抄録> 貯水池内で堆積土砂の湖内移動が実施されている山須原ダム貯水池において、アロフェンを主成分とする火山灰質凝集材を用いた現地凝集実験を行った。実験の結果、初期濁度285〜290NTUの濁水に対し、450mg/Lの濃度でアロフェンを投入したのち、超音波分散と攪拌を実施することにより凝集が進行することを確認した。凝集処理の実用化にあたっては、凝集材投入量の縮減と凝集材の効果的な分散が課題として挙げられた。

<キーワード> ダム再開発、火山灰質凝集材、アロフェン、凝集、分散

 

 

【報文】 シールドトンネルのセグメント設計における施工時荷重の影響

石村利明・真下英人・森本 智

<抄録> 本報文は、洪積粘性土(土丹)中を通過するシールドトンネルにおける現場計測結果を参考に、セグメント組立後からシールドテール通過時の圧力、裏込め注入圧等の施工時荷重を想定し、三次元シェルモデルを用いた解析により、これらの施工時荷重がセグメント応力、リング継手に与える影響についての検討結果を報告するものである。

<キーワード> シールドトンネル、施工時荷重、三次元FEM解析、シェルモデル

 

 

【報文】 衛星測位技術「RTK-GNSS」の出来形管理への適用に向けた計測精度確保方策

梶田洋規

<抄録> 衛星測位システムGNSSを利用したRTK測量技術(RTK-GNSS)を、土工の出来形管理で利用するには、必要な計測精度(鉛直方向)が安定的に得られないという課題がある。そこで、実験で取得したRTK-GNSSのデータを分析し、簡単な追加機能や運用方法で必要な計測精度を安定的に得るための方策を検討したので紹介するものである。

<キーワード> RTK、GNSS、出来形管理、施工管理、情報化施工

 

 

【報文】 河川における外来種管理のためのオオキンケイギクの開花推移に関する新たな把握方法

小栗ひとみ・畠瀬頼子・松江正彦・栗原正夫

<抄録> 特定外来生物オオキンケイギクの防除を効率的・効果的に行うためには、当該地域におけるオオキンケイギクの開花結実の時期を正確に把握し、それを踏まえた作業工程の設定が重要である。本稿では、オオキンケイギクの開花結実に関するデータを、広域かつ連続的に取得する上で有効な、インターバルカメラにより連続撮影した画像からオオキンケイギクの開花量の推移を定量的に把握する手法を紹介する。

<キーワード> オオキンケイギク、インターバルカメラ、画像解析、開花量

 

 

【報文】 既設コンクリート道路橋桁端部の腐食環境改善への取組み

村越 潤・田中良樹・藤田育男・坂根 泰・田中健司・植田健介

<抄録> 既設道路橋の桁端部は、凍結防止剤を含む路面からの水によって、厳しい腐食環境に置かれている。近年、コンクリート橋の桁端部における塩害も報告されている。その改善のため、現在、コンクリート橋の桁端部用排水装置の開発に取り組んでいる。本文では、同排水装置を導入するために必要となる桁端部の知見や、開発における留意点を述べる。

<キーワード> 塩害、凍害、劣化、排水、防水

 

 

【報文】 衛星多偏波SAR画像による大規模崩壊の緊急判読調査手法

水野正樹・江川真史・神山嬢子・佐藤 匠・蒲原潤一

<抄録> 夜間や悪天候時でも、地震や豪雨等で発生した大規模崩壊や河道閉塞の迅速な探索手法が必要なため、衛星の複数種類の多偏波SAR画像を作成し判読の視認性を評価し、手法を検討した。結果、単偏波SAR画像に比べ視認性が良く判読効率と抽出精度が向上した衛星多偏波SAR画像による大規模崩壊の緊急判読調査手法を確立した。

<キーワード> 大規模崩壊、河道閉塞、判読、緊急調査、多偏波

 

 

【現地レポート】 サンドパック工による宮崎海岸の砂丘の保全対策

真鍋将一・下田勝典

<抄録> 2008年度から国土交通省直轄事業に移行した宮崎海岸では、浜幅50mを確保するために、養浜、突堤、埋設護岸の工事を進めている。このうち、埋設護岸については、サンドパック工と呼ばれる新技術を全国で初めて本格導入することが決定した。宮崎海岸の概要とともに、サンドパック工の現地実験結果等について報告する。

<キーワード> 海岸侵食、埋設護岸、サンドパック工、砂丘保全

 

 

【土研センター】 ツバル国フォンガファレ島西岸の海岸保全に関する考察

宇多高明

<抄録> Tuvaluは、地球温暖化に伴う海面上昇により水没の危機にあるとされているが、実際には、海岸線近傍まで土地利用が進んだことによる波浪災害の増加など人為impactへの対処こそが課題となっている。本研究では、2回の現地踏査と衛星画像をもとにTuvaluのFongafale島西岸の今後の海岸保全について考察した。

<キーワード> Tuvalu、サンゴ礁、現地調査、海岸保全

 

 


 
平成25年12月 報文抄録
 
特 集:土工・舗装・トンネルにおける維持管理の取組み
 

【特集報文】 走行型路面たわみ測定試験機の現状と我が国における取組み

松井邦人・久保和幸・寺田 剛・川名 太

<抄録> 舗装路面のたわみ量を走行しながら連続的に測定し、舗装の支持力性能を評価することができる走行型試験機について、米国やデンマークの海外の最新の開発状況を整理するとともに、我が国で開発した試験機について計測結果とともに紹介した。

<キーワード> 走行型たわみ測定試験機、舗装、健全性、レーザー変位計、海外

【特集報文】 コンクリート舗装の維持管理実態と点検時の着目点

堀内智司・上田宣人・水谷和彦・久保和幸

<抄録> コンクリート舗装を適切に維持管理する手法の構築に向けて、直轄国道の維持管理に関する実態調査を行って巡回時の点検項目及び破損種類毎の発生頻度を把握し、その上で目地部等の部位毎の点検時の着目点を整理した。

<キーワード> コンクリート舗装、維持管理、着目点、実態調査、変状

【特集報文】 山岳トンネルにおける耐震対策工の効果に関する実験的考察

河田皓介・砂金伸治・日下 敦・真下英人

<抄録> 山岳トンネルで実施されている変状対策の地震に対する効果と、不良地山の覆工裏側に生じた空洞による地震時の影響を検討するため、模型実験を実施した。その結果、インバートおよび単鉄筋による補強は耐力の向上が期待できる可能性がある。また、空洞はトンネル構造の耐力が低下する可能性があることがわかった。

<キーワード> 山岳トンネル、変状対策、不良地山、地震、模型実験

【特集報文】 現地計測に基づく既設トンネルの変状の進行に関する考察

砂金伸治・真下英人・石村利明

<抄録> 道路トンネルでは、供用後に外力によるひび割れや盤ぶくれ等の変状が発生している例も報告されており、通常の施工や後の点検で得られる範囲でのデータのみから変状の進行を詳細に議論することには限界があることも多いと考えられている。本報では変状が進行する状況を把握するために、矢板工法による既設トンネルにおいて、3年間にわたって、変状の状況の観察やトンネル構造に関する計測を行った結果をもとにトンネルの変形のメカニズムを考察した結果を報告する。

<キーワード> トンネル、維持管理、膨張性地山、変状、ひび割れ

【特集報文】 グラウンドアンカー維持管理の現状と課題

藤田智弘・宮武裕昭・近藤益央

<抄録> 本稿では、土工構造物のメンテナンスサイクル構築の参考となる、アンカーの維持管理マニュアルの基本的考え方を示す。また、アンカーのメンテナンスサイクル構築には、点検方法、診断方法の高度化も必要である。既存の点検方法や診断方法では検知することが困難な損傷事例について、(独)土木研究所で実施した再現実験を報告する。

<キーワード> 土工構造物、維持管理、メンテナンスサイクル、グラウンドアンカー、遅れ破壊

【特集報文】 橋梁以外の道路構造物(土工・舗装・トンネル)のアセットマネジメント体系の構築に向けた取組み

玉越隆史・横井芳輝

<抄録> 橋梁以外の主要な道路構造物である土工構造物やトンネル等についても、道路橋と同様に高度経済成長期頃から積極的な整備が行われてきており、個々に傾向は異なるものの経年により着実に劣化や損傷のリスクが高まることを踏まえた合理的な維持管理手法の確立が求められている。本稿では、橋梁以外のこれらの道路構造物の合理的な維持管理体系の確立に向けた近年の取り組みについて紹介する。

<キーワード> 道路構造物、トンネル、土工構造物、舗装、維持管理

【現地レポート】 北九州市におけるトンネル長寿命化の取組み

平田大三・井上和広

<抄録> 道路施設の高齢化や点検のあり方が社会的な関心事になるなか、北九州市において策定したトンネル長寿命化修繕計画の概要と今後の維持管理の取り組みについて紹介する。

<キーワード> トンネル、維持管理、予防保全、点検、修繕計画

【報文】 光学衛星画像による大規模崩壊の土砂移動状況の経年把握

水野正樹・江川真史・清水孝一・筒井 健

<抄録> 2004年3月26日にインドネシア国バワカラエン山カルデラ壁で発生した大崩壊(推定崩壊土砂量:約2億m3)を対象として、複数時期の高分解能光学衛星画像をもとにステレオ画像解析により時系列的にDEMを作成し、崩壊前後及びその後の土砂流出による地形変化を経年的に把握した事例について報告する。

<キーワード> 大規模崩壊、衛星、光学画像、土砂移動、モニタリング

【報文】 技術試験衛星[型「きく8号」を用いた災害対応センサデータ伝送実験

石塚忠範・森田耕司・清水武志・山越隆雄・中尾正博・橋本剛正

<抄録> 火山噴火時に現地の情報を定期的に入手するには複数の通信回路を確保することが重要となる。そこで、(独)宇宙航空開発研究機構 (JAXA)とともに、技術試験衛星[型「きく8号」を利用して、降灰量を計測する自動降灰・降水量計のデータが伝送可能か確かめるための共同研究を行った。本稿では共同研究の実施内容とその結果について報告する。

<キーワード> 桜島、火山灰、自動降灰量計、技術試験衛星[型、きく8号

【土研センター】 補強土工法の設計・施工マニュアルの改訂概要(その1)

中根 淳

<抄録> 「道路土工−擁壁工指針」(平成24年度版)の改訂を受けて、「ジオテキスタイルを用いた補強土工法」、「補強土(テールアルメ)壁工法」、「多数アンカー式補強土壁工法」の設計・施工マニュアルについても改訂を行った。ここでは、「ジオテキスタイルを用いた補強土工法」の主な改訂内容を紹介するものである。

<キーワード> 補強土工法、マニュアル、ジオテキスタイル、テールアルメ、多数アンカー