Header image
劇場版地盤汚染遭遇物語ー土壌汚染の常識・非常識ー
 
line decor
 HOME
line decor
 
 
 
 

 
 
2.調査の目的
 

A主任

B部長、ご苦労様です。地盤汚染と土壌汚染の違いを教えて下さい。

B部長

ごっついええ質問やなあ。地盤汚染というのは、土壌汚染だけでなく地下水汚染まで一体として考えたところに特徴があります。我々は、両者を関係づけて土壌汚染が地下水汚染として敷地外へ漏洩するシナリオを想定して、それまでの時間とか経路を計算したりリスクを計算するための遅延係数などの基礎データを蓄積することが重要と「建設工事で遭遇する地盤汚染対応マニュアル」に解説してます。

A主任

C課長の得意な移流拡散計算ですか?

B部長

ほーそんな言葉知ってたの?

A主任

(無視して)では、本題に入ります。土壌汚染対策法でいう特定有害物質は、25物質26項目あることは勉強しましたが、いつもすべての項目を分析しなければいけないんですか?

B部長

それは調査の目的によって違うな。ここでちょっと整理してみよ。ただし、これが絶対というものではないことを承知しておいてや。まず、発注者はどんな時に調査を実施する?

A主任

通常は、環境アセス時に都道府県の条例などに従った調査を実施することによって土壌汚染を評価しているわけですから施工者が乗り込んだ段階ではもう必要ないのではないのですか?

B部長

またどっかの係長みたいなこと言う。コンサルC課長にも議論に入ってもらおう。
どんなときに調査するか列挙せよ!

A主任

・現場で不審な廃棄物が埋設されていたとき(自主的な調査)
・土壌汚染対策法に基づくとき
・関係条例に基づくとき
・土地を売却するとき(自主的な調査)
・建設残土を敷地外に持ち出すとき
まず、土壌汚染対策法の位置づけから説明して下さい。

C課長

詳しくは「建設工事で遭遇する地盤汚染対応マニュアル」にも載っていますが、平易にいうと次のようになります。
土壌汚染対策法は、有害物質を使用していた特定施設を廃止する時点で、その施設を使用していたものが、調査をするように義務づけている法律です。また健康被害が予想されるのにどうしても調査をしない土地の所有者に対し、都道府県知事が命令をする場合も定められています。土壌汚染対策法では、使用していなかった物質、例えば有害物質使用特定施設が建設される前の状況については考慮されません。あくまでも特定施設の運転、運営によって発生するおそれのある調査項目について評価するに留まります。もちろん自然由来の基準超過についても言及していません。

B部長

いろいろある条例は、土壌汚染対策法とどのように関わっているか、もうちょっと説明してもらえますか?

C課長

はい、条例はいろいろあるので、すべて説明するわけには行きません。例えば東京都の場合は、環境確保条例116条、117条というのがあり、前者は土壌汚染対策法と同じように東京都が決めている指定作業場のうち有害物質を取り扱うおそれがあるものを閉鎖するときに区に対して報告するものです。一方117条は、3000m2以上の敷地において土地を改変するときに東京都に対してその土地の履歴を報告して調査が必要かどうか判断を仰ぐというものです。

B部長

以上が土壌汚染対策法及び条例に対する調査内容や。

C課長

民間の土地を公共用地として買い上げる場合には「公共用地の取得における土壌汚染への対応に係る土地扱い指針」というのがありますのでそれを参考にして下さい。民間同志の取引の場合は、最近は銀行の介入が多いようです。

B部長

そうや、当該土地が不動産投資の対象に入れられる場合には、25物質26項目全部の分析を銀行から要求されることが多い。結局土地履歴調査を実施して汚染のおそれが少ないとうことになっても、分析データを必要としているようや。一方、東京都が以前に浚渫土を埋め立てた上部に建設残土をさらに盛土して造成した臨海副都心の調査において表層だけ土壌汚染の調査して表層より下部を全く調査しないこともある。頭隠して尻隠さずというパターンやなあ。

A主任

本当ですか、銀行の人は少なくともB部長より賢そうですけど。

B部長

おれもそう思うけど、とりあへず書類がそろえばええみたい。ようするにまだシステムが整っていないということや。ああいう埋立地を普通の土地として扱うのに無理があると思います。

A主任

土地取引のための法律と土壌汚染対策法がもう少し整合性があればいいのにねえ。次に、掘削土搬出のための調査項目は僕に任せて下さい。これは一言で言えば、土を受け入れる側の受入基準ですね。
いつも不思議に思うのは、土壌汚染対策法では、第一種特定有害物質を調査するために表層土壌ガス調査を実施するのに対し、建設残土受入基準は第一種特定有害物質の溶出量を要求してきます。これって二度手間なんですけど。

C課長

立場、立場によって違うし、難しい問題ですね。
受入基準は、受入地がどこにあるかによって分析項目に違いがあるので注意が必要です。これこそ二度手間にならないようにしないとね。

B部長

現場で調査項目を何に絞るかは、現場状況やいままでの既存調査結果など総合して分析項目を選ばないとあかんな。工事現場の場合には、土壌汚染対策法で問題にしている分析項目だけでなく油やダイオキシンなどに遭遇する機会もあるから25物質26項目だけではないことを頭に入れておいたほうがいい。国内では1万種以上の化学物質が使用されているから、工場跡地や不法投棄のある現場の場合には、航空写真による年代の割り出しなどだけでも参考になることが多い。そういう意味では軽視されがちな土地履歴調査は実は重要やということや。

A主任

わかりました。土地履歴調査の結果を生かさないといけないということですね(終)。

(ページ番号) Page Topへ


 

1.はじめに
2.調査の目的
3.防護具
4.有効数字
5.詳細調査
6.汚染土の希釈