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劇場版地盤汚染遭遇物語ー土壌汚染の常識・非常識ー
 
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6.汚染土の希釈

A主任

C課長、こんにちわ。今日相談させていただきたいのは計画中の工事での汚染土対策です。敷地は、大きく3つの工区に分かれており、Ⅰ工区でフッ素の溶出濃度が土壌環境基準を超過しており、一方Ⅱ工区では鉛の含有量が土壌汚染対策法の指定基準を超過しています。いずれも基準値の1.5倍前後なので両方混ぜてしまえば基準以下になりそうです。混合した土を100m3に1回測定して基準を満足したら建設残土としてよいでしょうか。

C課長

結論からいえば土の希釈という処理方法はなく、このような方法は認められません。
大気や水域といった環境媒体への汚染物の排出では拡散による希釈効果が期待され、汚染は一時的な現象と(フロー汚染)と捉えることができます。一方土壌は一旦汚染されると拡散による希釈効果はあまり期待できません。これをストック型の汚染と呼んでいます。
今回の工事では、Ⅰ工区とⅡ工区の土を機械混合して濃度を下げるということですが、土の混合は微視的に見れば非常に難しく、土質改良機などで十分混合しても分析してみると基準を超過することが多いです。また、混合する前に混合が容易になるように石灰混合を行うことが多いですが、その際pHが変化して鉛などの溶出が促進されるおそれもあります。

B部長

私が、工事所長をしていた20世紀には現場で汚染のない土を購入してバックフォーで混合して建設残土として搬出したことがある。搬出土は土工事の専門業者にまかせていたのでどこかの埋め戻しに使っていると思う。

A主任

20世紀といったら随分昔のように聞こえるけどまだ10年ぐらいしか経っていないじゃないですか。

C課長

環境省は、建設残土の中継地で汚染土が判明している件を問題視しています。闇資金の洗浄に例えて汚染土のロンダリングと呼んでいます。

B部長

なんかVシネマみたいでかっこいいね。

A主任

(唖然)

B部長

建設残土を搬出する前に調査しているだけでも胸を張っていたんやけどなあ。世の中の価値判断も変わってくるなあ。当時は何も悪いことしていたと思っていなかった。

C課長

建設業界でもCSRという言葉が浸透していますよね。法律でとがめられないからやってもいいというわけではないです。倫理という概念は、時代とともに変化するので本当に難しいですね。今回は「汚染土の希釈はあり得ない。」ということで終わりにしたいと思います。

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1.はじめに
2.調査の目的
3.防護具
4.有効数字
5.詳細調査
6.汚染土の希釈