(一財)土木研究センター/刊行物/月刊誌土木技術資料抄録/平成27年

 
平成27年1月 報文抄録
 
特 集:50年先の日本を創る土木技術
 

【特集報文】 ITにより賢く機能する道路空間

森  望

<抄録> 50年後、全国の道路ネットワークが構成する。本稿では、ITSに関する歴史について解説し、現在取り組んでいるITSを中心とした研究開発から将来の研究開発に対する期待も込めて、想像した50年後の賢く機能する道路空間について述べる。

<キーワード> 情報通信技術、ITS、道路ネットワーク、スマートウェイ、道路空間

【特集報文】 道路構造物の長寿命化について

松浦 弘・真下英人

<抄録> 将来の社会資本整備は、予算面、人手面での厳しい制約の下に行われことが予想される。このため、構造物の維持管理にあたっても効率的に行うことが必要であり、長寿命化が望まれることとなる。道路構造物のうち、主として橋梁と地中構造物について長寿命化に必要となる調査設計から維持管理の各段階での留意点、取り組みを紹介する。

<キーワード> 橋梁、地中構造物、トンネル、維持管理、長寿命化

【特集報文】 安全で活力のある国土を次世代に引き継ぐために

鳥居謙一

<抄録> 気候変動、人口減少、高齢化の進展を踏まえて安全安心を持続的に確保するための今後の水害対策についての方向性(超過外力,不確実性,リスク評価,自然インフラの活用,リスクコミュニケーションの深化,対策の時間スケール)について論じるものである。

<キーワード> 気候変動、リスク評価、不確実性、超過外力、リスクコミュニケーション

【特集報文】 火山噴火時の緊急調査と緊急減災対策の展望

渡 正昭・松本直樹・小山内信智・藤村直樹

<抄録> 平成26年9月の御嶽山噴火など火山災害が相次いでいる。なかでも火山活動に伴う土砂移動現象は時々刻々状況が変化することから最も対応が困難な災害事象の一つである。火山噴火による土砂災害に対しては、これまでに様々な緊急調査や減災対策の手法が確立されてきており、今後も新たな技術の開発・導入により迅速かつより精度の高い対応を行っていく必要がある。

<キーワード> 火山噴火、御嶽山、降灰、土石流、緊急調査

【特集報文】 「循環のみち下水道」の持続と進化

島英二郎

<抄録> 「新下水道ビジョン」(平成26年7月)において示された、「循環のみち下水道」の「持続」と「進化」という方針に基づき、下水道技術全般に求められる方向性について、①省エネ・省力・低コスト、②価値の創出、③適切な調査・予測と弾力的な対応の3つに大別して論じた。

<キーワード> 下水道、省エネ・省力・省コスト、水・資源・エネルギー、適切な調査・予測、弾力的な対応

【特集報文】 将来の環境変化と生態系の評価

池田 茂・村岡敬子

<抄録> 将来に起こりうる環境変化の生態系への影響を的確に評価するためには、これまで行われている調査の情報を蓄積するとともに、先端技術の活用を含めて継続的かつきめ細かい情報収集が求められる。本報では、近年、急速に発展した遺伝情報をとりあげ、土木研究所における取り組みを紹介するとともに、将来的な展望を述べる。

<キーワード> 地球温暖化、環境変化、遺伝情報、地域集団、外来種

【特集報文】 情報通信技術・ロボット技術による土木施工高度化

吉田 正

<抄録> 情報通信技術やロボット技術の急速な発展に伴い、施工分野でも情報化施工が実用化の段階を迎え、防災やインフラ維持管理の分野でロボット技術の活用、実用化に対する期待が高まっている。土木施工における「情報化施工」と「ロボット技術」の活用について技術開発・実用化の動向を紹介し、今後の展望、課題について述べる。

<キーワード> 情報化施工、施工管理、ロボット技術、無人化施工

【報文】 建設ロボットが創る次世代の社会インフラ

藤野健一

<抄録> 日本再興戦略などにより、ロボットを活用した社会的課題の解決について注目が集まっている。土木研究所ではロボットIT総プロなどの建設ロボットに関する研究調査を実施してきたが、最近では施工、災害対策、維持管理等のフェーズでの有効活用を目指した研究開発を進めている。

<キーワード> 建設ロボット、情報化施工、無人化施工、維持管理、災害対策

【報文】 歴史的な土木施設における伝統的工法の活用方策
〜歴史的風致維持向上計画認定都市の取組みを例に〜

木村優介・曽根直幸・栗原正夫

<抄録> 土木施設が地域の歴史的価値の向上に寄与する効果を明らかにするため、歴史的風致維持向上計画認定都市における土木施設等の整備状況を調査した。結果、認定都市の30施設について整備概要と適用工法を整理し、歴史的価値に対する考え方と材料に基づく施設の類型を示すとともに、事例分析を基に、景観上、技術上の効果を提示した。

<キーワード> 歴史的風致維持向上計画、土木施設、土木遺産、伝統的工法、効果

【土研センター】 鴨川暴露試験場の開設 〜鋼橋塗替えにおける防食技術や施工技術の確立に向けて〜

片脇清士・中野正則・安波博道・落合盛人・中島和俊

<抄録> 本報では、鋼道路橋の塗替えに関する技術を評価・確認するために、当センターが暴露試験場を新たに開設することになったので、その概要について報告する。

<キーワード> 暴露試験、鋼橋、塗装、塗替え、防食


平成27年2月 報文抄録
 
特 集:水環境研究
 

【特集報文】 河道内氾濫原環境の評価手法の開発

永山滋也・原田守啓・萱場祐一

<抄録> 氾濫原生態系の指標生物・イシガイ類をモデルとして、直轄河川で整備されている既存のデータセットを使い、氾濫原環境を評価する簡易な手法を開発した。評価手法のフローと必要なデータ処理、精度の検証、汎用性を高めるために必要な課題を提示するとともに、河川管理への活用方法を示した。

<キーワード> 直轄河川、氾濫原生態系、樹林化、高水敷掘削、河川整備

【特集報文】 河川環境管理の実効性を高めるための課題と取組み

中村圭吾・服部 敦・福濱方哉

<抄録> 河川環境の保全・管理の実効性を高めるための課題とその克服に向けた考え方を整理するとともに、環境管理の具体的手法として、河川ごとに相対的に環境の良好な場を選定し、その場を保全しつつ、レファレンスとして活用し、他の地点の環境改善を図る方法とその課題について概説する。

<キーワード> 環境目標、環境管理、河川水辺の国勢調査、生息適地モデル、河川環境

【特集報文】 河道内樹木の再繁茂抑制技術について 
〜効果的な河道内樹木の管理に向けて〜

萱場祐一・田屋祐樹・填島みどり・赤松史一・中西 哲・三輪準二

<抄録> 河道内樹林を効果的に管理するために、主要な管理対象樹種であるヤナギ類、ハリエンジュ、タケ・ササ類を対象に、再萌芽抑制を考慮したいくつか処理方法を組合せて実証実験を行った。結果として、それぞれの樹種の生態的特徴に応じた手法を選択することで、再萌芽を有効に抑制できることを示した。

<キーワード> 樹林化、再萌芽抑制手法、ヤナギ類、ハリエンジュ、タケ・ササ類

【特集報文】 都市河川における医薬品類の挙動と水生生態系への影響

真野浩行・岡本誠一郎

<抄録> 本稿は、多摩川中流域における医薬品類10物質の流下過程での挙動、生態リスク初期評価を実施した結果を報告する。流下過程での河川水中の医薬品類の減衰率は医薬品類により異なっていた。また、生態リスク初期評価を行ったところ、5物質について、水生生物への影響を詳細に調査する必要があることが示された。

<キーワード> PPCPs、生態リスク評価、曝露評価、未規制化学物質

【特集報文】 下水道未整備区域を対象とした都市排水中の病原微生物による河川の汚染実態調査

諏訪 守・桜井健介・津森ジュン

<抄録> 病原微生物の検出技術の高度化により、下水や公共用水域での汚染実態が徐々に明らかになる中で、それらに起因する集団感染発生が危惧されている。大腸菌群では、新たな病原微生物の汚染実態を十分に把握できないこともあり、公共用水域に対する各種汚染源の解明や汚染源の特徴に応じた対策手法の構築が望まれている。本報では、病原微生物の負荷源を明らかにする一環として、下水道未整備区域であり主として浄化槽排水が負荷源として考えられる流域を有する河川を対象に、冬季における感染性胃腸炎の原因ウイルスの1つであるノロウイルスや、耐塩素性原虫類の存在実態を評価した。

<キーワード> 病原微生物、浄化槽、ノロウイルス、原虫類

【現地レポート】 樋井川における河道安定と瀬淵構造の保全創出の取組み

永井智幸・樋口公孝・神崎孝二

<抄録> 福岡市を北流する樋井川では、床上浸水対策特別緊急事業による河床掘削、護岸補強を進めている。本稿では、事業区間上流部における河道の安定、瀬淵の保全・創出を目的とした検討プロセスと、その結果、導入した早瀬工、瀬淵工について報告する。

<キーワード> 都市河川、中小河川、河道の安定、早瀬工、瀬淵工

【報文】 スクリーニング調査を核とした管渠調査方法の技術評価
〜B-DASHプロジェクト(管渠マネジメントシステム)の実証研究〜

深谷 渉・末久正樹・賀屋拓郎・小川文章

<抄録> 下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)の一環で、下水道管路施設の維持管理費縮減や点検調査実施率の向上を図るための管渠マネジメントシステム技術(3技術)を対象とした実証研究を実施した。実証の結果、従来の調査方法に比べ日進量が最大3倍向上、コストが最大6割削減されることを確認した。

<キーワード> B-DASH、管渠マネジメントシステム、スクリーニング調査、下水道管路施設

【報文】 実物大コンクリート杭載荷試験により明らかになった高強度鉄筋(SD490)の有効性

鈴木慶吾・後庵満丸・河野哲也・七澤利明・秋山充良

<抄録> 既製コンクリート杭のスパイラル鉄筋に高強度鉄筋を用いた場合のせん断耐力の検討のために載荷試験を実施した。試験結果から、SD490をスパイラル鉄筋として用いた場合にも鉄筋が降伏してせん断耐力に寄与し、SD345を用いた場合と同等のせん断抵抗力を発揮することが分かった。

<キーワード> せん断試験、既製コンクリート杭、スパイラル鉄筋、中詰め、ディープビーム

【土研センター】 「盛土の性能評価と強化・補強の実務」の出版
〜盛土の性能予測・評価から性能向上に必要な技術まで〜

常田賢一・林 健二・中根 淳

<抄録> 近年、地震、降雨により盛土の被害が顕在化しているが、盛土の安定性の確保を効果的かつ経済的に実施するためには、性能規定型の設計法の具体化が緊要である。本文は、盛土の性能に着目して、危険度評価から性能の評価基準、性能の予測法および強化・補強技術に至る、盛土の性能向上に必要な技術の体系化における視点を報告する。

<キーワード> 盛土、設計、性能評価、強化、補強


平成27年3月 報文抄録
 

【報文】 ITS世界会議東京ショーケースにおける体験走行の実施報告

広 正樹・渡部大輔・小木曽俊夫・牧野浩志

<抄録> ITS世界会議東京大会において、官民共同で3つのショーケース(高速道路サグ部の交通円滑化サービス、ITSスポットサービス、モバイル通信とITSスポットの協調サービス)を実施し、アンケートによる各サービスのアンケート調査を行った。本稿でその概要を報告する。

<キーワード> ITSスポット、スマートフォン、DSRC、自動運転、交通円滑化

【報文】 ACCを活用した高速道路サグ部の交通円滑化走行実験

鈴木一史・岩武宏一・鹿野島秀行・牧野浩志

<抄録> 車間を自動で一定に維持可能なACCを活用した高速道路サグ部渋滞対策サービスについて、模擬体験可能な走行実験を実道で実施し、サービスによる車間適正化効果、交通流率の改善可能性、サービスのドライバ受容性を確認した結果について報告する。

<キーワード> 渋滞対策、高速道路、サグ部、ACC、走行実験

【報文】 高速道路交通円滑化に資する渋滞対策の受容性検討
〜政策評価モデルを用いたアンケート調査結果分析〜

岩武宏一・鈴木一史・鹿野島秀行・牧野浩志

<抄録> 都市間高速道路単路部で発生する渋滞の対策として、高速道路会社では、車線利用平準化対策や速度低下防止を図る標識の設置などを行っている。今回、都市間高速道路単路部の渋滞抑制対策として、ACC普及とともに、キープレフトの徹底や適正な車間距離保持を実現するための受容性向上策について検討したので、その結果について報告する。

<キーワード> 交通円滑化サービス、ACC、キープレフト、車間距離保持、SP(Stated Preferences)調査

【報文】 英・米・独の交通関連公共事業における事業評価制度の現状

小林 肇・藤井都弥子・森田康夫

<抄録> 公共事業評価手法の高度化や改善のため、公共事業の計画制度や意思決定方法と事業評価との関連性に着目して調査を進めている。英国・ドイツ・米国の交通関連公共事業の調査を実施したので、各国の政策・基本計画・整備計画・個別事業の体系、個別事業評価の手続きについて紹介する。

<キーワード> 公共事業、事業評価、交通関連公共事業、道路事業、英国、米国、ドイツ

【報文】 河川への遡上津波の河川構造物に与える影響

坂野 章・箱石憲昭・石神孝之

<抄録> 先の東日本大震災の河川被害を契機に、河川法施行規則及び河川管理施設等構造令施行規則が一部改正され、「津波」や「計画津波水位」の規定等が明確化された。本報告は、これらの新しい規定を踏まえて河川へ遡上する津波を設計外力とした場合の河川構造物等への力学的な影響とその対策について、水理実験を主体として検討したものである。

<キーワード> 東日本大震災、津波、河川遡上、河川構造物、津波荷重、水理実験

【報文】 平成26年2月関東甲信地方の大雪に伴う雪崩の特徴

松下拓樹・池田慎二・秋山一弥

<抄録> 平成26年2月14日から15日にかけて関東甲信地方と東北地方で記録的な大雪となり、各地で雪崩が発生して人家など建築物が破損する被害が発生した。本報文では、この大雪に伴って発生した雪崩の特徴について、山梨県を中心とした地域の調査結果を報告する。

<キーワード> 大雪、雪崩、見通し角、衝撃圧、降雪強度

【報文】 下水処理場における下水汚泥の資源・エネルギー化技術普及促進に関する取組

大西宵平・釜谷悟司・田 淳・山下洋正

<抄録> 本研究では、全国の各下水処理場を対象に、各汚泥処理方式の採算性を評価し、既存施設更新よりも資源・エネルギー化技術を導入した場合にLCCが安価となる処理場へ各技術を導入した際のGHG排出削減量等を試算するとともに、下水道事業者が技術導入検討を円滑に進めることを目的として、技術導入検討の手引きを策定した。

<キーワード> 下水汚泥、資源・エネルギー化技術、下水汚泥エネルギー化率、温室効果ガス

【現地レポート】 桜の名所に新しい土系舗装技術を適用

川上篤史・青木政樹

<抄録> 土系舗装は、土本来の風合いにより自然感を有するとともに、適度な弾力性、衝撃吸収性を備えている舗装です。本稿では、日本さくら名所100 選にも選ばれている富山県富山市の松川べり遊歩道において、(独)土木研究所と大成ロテック(株)、(株)近代化成で共同研究開発した土系舗装技術が採用されましたので、その施工事例を紹介します。

<キーワード> 土系舗装、歩道、歩行者、歩きやすさ、景観

【現地レポート】 「部分薄肉化PCL工法」を用いてトンネルを補強

石村利明・夏目岳洋

<抄録> 本稿は、内空断面に余裕がないトンネルに対する補強対策として土木研究所とPCL協会4社との共同研究により開発した「部分薄肉化PCL工法」について、その特徴と道路トンネルの補強対策として採用された施工事例について紹介する。本稿は、土木研究所とPCL協会4社との共同研究により内空断面に余裕がないトンネルの補強対策技術として開発した「部分薄肉化PCL工法」の道路トンネルへの適用事例とともに、補強工法の概要を紹介する。

<キーワード> トンネル、補強、薄肉、PCL、施工

【土研センター】 湖での防波堤建設に伴う湖浜変形 〜宍道湖での事例〜

宇多高明・伊達文美

<抄録> 湖では、風波の周期が短いので外海に面した海岸で造られる施設と同等な規模を有する防波堤などが沖合に伸ばされると、波長に対する構造物長が著しく大きくなり、結果的に外海で観察されるのと同じ規模の湖浜変形が生じることがある。ここでは防波堤建設後規模の大きな舌状砂州が発達し、周辺域で著しい侵食が起きた宍道湖の鳥ヶ崎砂州の実例を基に考察した。

<キーワード> 湖、湖浜変形、防波堤、舌状砂州、変形予測


平成27年4月 報文抄録
 
特 集:現場の情報化・ロボット化
 

【特集報文】 TSを用いた出来形管理の適用工種拡大
〜護岸工におけるTSでの計測手法立案及び省力化効果の検証〜

近藤弘嗣・長山真一・椎葉祐士

<抄録> TSを用いた出来形管理の適用工種拡大を目指し、護岸工(コンクリート張)におけるTSでの計測手法立案並びに現場試行を通じて、計測精度の検証及び省力化効果の検証を行った。計測精度については実用に堪えうることが確認出来たとともに、従来手法との比較で約2.3割の作業時間の削減効果が確認出来た。

<キーワード> トータルステーション、TS、出来型管理、情報化施工、護岸工、コンクリート張

 

【特集報文】 3次元道路形状の円滑な流通・再利用のためのデータ交換モデルの標準仕様

谷口寿俊・青山憲明・藤田 玲・重高浩一

<抄録> 建設事業において利用される3次元データは、2次元図面を元に施工者が作成している。設計段階で3次元データを作成し、後工程へ流通できれば、事業全体の効率化に繋がる。本研究では、道路事業等で必要となる情報を3次元設計データとしてデータ交換するための標準的なモデルを検討した。

<キーワード> 道路、設計、CALS/EC、3次元データ、LandXML

【特集報文】 無人化施工における油圧ショベルの作業時間計測
〜モデルタスクによる搭乗・遠隔操作での作業時間比較〜

茂木正晴・西山章彦・藤野健一・油田信一

<抄録> 無人化施工技術(施工効率・ヒューマンファクター等)について、主体が違ってもその性能を横並び評価できる標準的なモデルタスクを提案し、これに基づき、搭乗操作と遠隔操作時における作業時間(サイクルタイム)計測を行った結果について述べる。

<キーワード> 油圧ショベル、無人化施工、遠隔操作、搭乗操作、作業時間

【特集報文】 橋梁点検不可視部アプローチツールの開発

西山章彦・茂木正晴・藤野健一

<抄録> 橋梁狭隘部のような目視点検が困難な箇所へと近づくことが出来るフレキシブルアーム装置、そして装置によって得られた情報を整理するための点検記録システムについて、開発に至る背景、ニーズ、ツールの概要等について述べる。

<キーワード> 橋梁、橋梁点検、効率化、狭隘部、社会資本、維持管理

【特集報文】 ICT施工の導入を目的としたフィルダムの合理的な施工管理方法の開発

佐藤弘行・坂本博紀・青井克志・吉田諭司・下山顕治・山口嘉一

<抄録> 近年、ICT施工の導入が推進されているが、フィルダムの建設においては透水性の評価も重要であるため、ICT施工による品質管理の合理化までには至っていない。本論文は、試験時間が長く施工の効率化の妨げになるコアゾーンの現場透水試験について、不飽和浸透流解析を組み合わせることにより試験時間短縮の検討を行った。

<キーワード> ICT施工、フィルダム、現場透水試験、浸透流解析

【現地レポート】 災害現場調査におけるマルチコプターの活用報告

坂井佑介・杉町英明

<抄録> 近年、飛躍的に技術が進歩しているマルチコプターについて、災害現場調査で活用した事例を報告するとともに、現場で安全に使用するための運用方針(案)、被災状況の迅速かつ効率的な情報共有のための空撮映像のリアルタイム伝送試験について紹介する。

<キーワード> 災害現場調査、UAV、マルチコプター、リアルタイム伝送

【一般報文】 防水型トンネルにおける基礎的な水理挙動 
〜排水―非排水区間境界部に関する留意点〜

淡路動太・砂金伸治・日下 敦・河田皓介

<抄録> 防水型トンネルの基礎的な水理挙動を検討するために3次元浸透流解析を実施した。その結果、排水―非排水共存型の防水型トンネルでは、境界部でのトンネルの安定性を確保するために、区間湧水量の局所化に対して、止水壁の構築や適切な排水性能を確保する対策等に留意することが重要であることが分かった。

<キーワード> 山岳トンネル、防水型トンネル、地下水環境保全、3次元浸透流解析

【一般報文】 大型車両に対する走行経路表示システムの実験的評価

築地貴裕・鈴木彰一・牧野浩志

<抄録> 本稿では、汎用製品のタブレット端末を用いてドライバーに対し許可経路と自車位置を表示する「走行経路表示システム」について、実験により有効性検証を行った。検証の結果、走行経路表示システムはドライバーが許可経路を遵守して走行する上で一定程度有効であるものの、運送事業者による特殊車両通行許可制度の正しい理解も必要であることが明らかとなった。

<キーワード> 大型車両、走行経路表示システム、特殊車両通行許可制度、許可経路、折進誤り

【土研センター】 フィリピン中部にあるBoracay島のWhite Beachの侵食状況調査

宇多高明・伊達文美

<抄録> Boracay島は、マニラの南200kmに位置するPanay島沖2kmに位置し、海洋リゾート地として有名である。島の南西側には長さ4kmのWhite Beachがあり、そこは多くの観光客で賑わってきたが、近年このビーチが侵食傾向となり、良好な海岸環境が失われつつある。そこで2014年1月17日に現地調査を行った。

<キーワード> Boracay島、リーフ、海岸侵食、現地踏査


平成27年5月 報文抄録
 

【一般報文】 山地河川における豪雨時の土砂流出特性を考慮した河床変動計算

丹羽 諭・内田太郎・蒲原潤一

<抄録> 本研究では、山地河川における豪雨時の土砂流出の特徴及び解析手法についてレビューし、富士川水系春木川を対象とした解析結果から、解析手法の条件設定について検討した。その結果、対象とする土砂動態の再現には、土砂供給タイミングの設定、侵食条件、流れ幅の評価の評価が重要であることが示された。

<キーワード> 山地河川、大規模土砂流出、河床変動計算、流砂水文観測

【一般報文】 山地河川における土砂移動現象への測域センサの活用

清水武志・吉永子規・藤村直樹・石塚忠範

<抄録> 産業用ロボット分野で活用されている1軸走査型光波距離の測域センサーを山地河川で活用するために実施した基礎的な室内実験と、天然ダム越流侵食実験や土石流現地観測への適用事例について紹介する。

<キーワード> 山地河川、土石流、測域センサ、天然ダム、光波距離計

【一般報文】 干渉SAR解析による斜面の微小変動の把握

神山嬢子・江川真史・水野正樹・國友 優

<抄録> 大規模な土砂移動現象による被害を防止・軽減するため、センシング技術の高度化による国土監視が求められおり、本報告では、地すべりや深層崩壊等の予兆となる微少な斜面変動を早期に把握する際の干渉SAR解析技術の適用性の検討を行った。その結果、変動把握における斜面向き等の影響はあるものの、事例的に斜面変動検出の有効性を確認することが出来た。

<キーワード> 深層崩壊、地すべり、斜面変動、人工衛星SAR、干渉解析

【一般報文】 ドイツにおける道路構造物の維持管理

玉越隆史・白戸真大・宮原 史

<抄録> 法体系や行政制度が異なる他国の道路構造物の維持管理制度や関連する技術基準類の内容を把握することは、我が国の技術基準類や技術支援の内容を検討する上で有益と考えられる。本稿では、ドイツ連邦共和国を対象に行った調査結果の一部を紹介するとともに、我が国との類似点、相違点に着目して考察する。

<キーワード> ドイツ、道路構造物、維持管理、点検

【一般報文】 ETC2.0プローブを活用した分析事例

佐治秀剛・田中良寛・鹿野島秀行・牧野浩志

<抄録> 日本では、路側にITSスポットと呼ばれる電波ビーコンを設置し、車両に搭載されたETC2.0対応カーナビからプローブ情報を収集している。本稿では、道路管理の効率化、高度化に資することを目的としたプローブ情報の活用の事例を紹介する。

<キーワード> ETC2.0プローブ、ITSスポット、道路管理、プローブ情報利活用システム

【一般報文】 海外の大型車両マネジメントにおけるITS技術活用の動向

鈴木彰一・築地貴裕・鹿谷征生・牧野浩志

<抄録> 本稿では、ITS技術が大型車両マネジメントに導入・活用されている、米国、韓国、豪州の事例について、調査結果を報告する。その上で、今後、日本で実施すべき大型車両の通行適正化施策を検討するにあたり、参考とすべき点について考察する。

<キーワード> ITS、大型車両マネジメント、海外事例調査、重量計測技術、特殊車両通行許可制度

【一般報文】 調査・設計等業務の入札・契約方式に関する最近の状況について

小塚 清・藤井都弥子・森田康夫

<抄録> 調査・設計等業務の成果品質を確保するための業務の調達にあたっては、企業や技術者の技術力を適切に評価できるような入札・契約制度の構築が不可欠である。本稿では、調査・設計等分野における入札・契約の実施状況を概観するとともに、「業務の内容に応じた適切な発注方式選定」など、入札・契約制度の改善のための最近の取り組みの状況を紹介する。

<キーワード> 調査・設計業務、入札方式、総合評価落札方式、技術力評価

【現地レポート】 流水型ダムの建設に向けて 〜立野ダム建設事業の概要〜

島本卓三・寺下進一・松本佳之

<抄録> 白川沿川の洪水防御を目的とした治水専用ダムである立野ダムについて、流水型ダムに至った経緯やその機能について紹介するとともに、傑出した自然風景が見られる阿蘇くじゅう国立公園内でのダム建設になるため、立野ダム工事事務所で実施している景観に配慮するための様々な取り組みについて紹介します。

<キーワード> 流水型ダム、治水専用ダム、放流管、環境負荷、景観

【土研センター】 アデムウォール工法の設計・施工マニュアルの概要と補強土壁工法の性能の基本的な考え方

中根 淳・竜田尚希

<抄録> 当センターから平成26年12月に発刊した「アデムウォール(補強土壁)工法設計・施工マニュアル」の概要を解説するとともに、当センターから発刊している4つの補強土壁工法の設計・施工マニュアルにおける基本的な性能の考え方を紹介する。

<キーワード> 補強土壁工法、ジオテキスタイル、テールアルメ、多数アンカー、アデムウォール、性能設計


平成27年6月 報文抄録
 
特 集:巨大地震に備える技術開発
 

【特集報文】 即時震害推測システムの開発

長屋和宏・片岡正次郎・日下部毅明・松本幸司

<抄録> 地震発生時における国土交通省の所管施設の管理では、大きな震度が観測されたエリアで点検を実施している。しかしながら、被害が甚大でその分布が広範にわたる場合や地震が夜間に発生した場合など、被害状況の把握に数時間以上を要することがあり、迅速な災害対策のための意思決定が困難になることが懸念される。そこで、地震発生直後に得られる強震記録から地震動分布を推定する手法および地震動分布とインフラ施設の基礎情報をもとに被害状況を推測する手法の開発を行った。また、開発成果を踏まえ、施設管理者などの意志決定支援を目的に地震発生直後の情報の少ない段階においてインフラ施設の被害推測情報などを提供する、「即時震害推測システム」の開発を行った。開発にあたっては、災害対応現場の担当者との意見交換などを踏まえ、基本的な機能に加え、災害時の意思決定支援に資するいくつかの機能を備えた。

<キーワード> 被害推測、地震動分布、災害対応、意思決定支援

【特集報文】 自然・地域インフラを活かして津波減災をはかる

渡邊国広・諏訪義雄

<抄録> 「津波防災地域づくりにおける自然・地域インフラの活用に関する研究」の内容として、津波減災に役立つと期待される自然・地域インフラの収集・整理、砂丘・樹林・盛土等の津波に対する耐久性の事例分析と水理実験、津波減災についての分野横断的な情報交換を促進するための研究集会の開催について紹介した。

<キーワード> 津波、減災、自然、地域、砂丘

【特集報文】 東日本大震災時に道路橋に作用した津波の特性とその影響

片岡正次郎・松本幸司

<抄録> 東北地方太平洋沖地震の津波の影響を受けた道路橋を対象に、津波の再現解析を行い、道路橋に作用した津波の推定結果を検証した上で、上部構造の流出に影響の大きい津波の特性を検討した。算出した津波の特性等から上部構造が流出するか否かを評価することは可能であり、それには流速を精度良く把握する必要があるという結果が得られた。

<キーワード> 東北地方太平洋沖地震、津波、道路橋、数値解析

【特集報文】 集水地内道路盛土の耐震性向上に向けた検討

加藤俊二・梶取真一・佐々木哲也

<抄録> 過去の大規模地震においては、集水地内道路盛土が大きく被災し、道路交通に支障を来した。このため、集水地内道路盛土の耐震設計・耐震補強方法の提案を目的とした検討を進めており、本報ではその概要について報告するものである。

<キーワード> 道路盛土、集水地形、耐震性向上、対策効果

【特集報文】 地震時における山岳トンネルの変形モードと作用荷重

日下 敦・河田皓介・砂金伸治

<抄録> 地震時の山岳トンネルの変形モードについて、実際の山岳トンネルにおいて動的計測により得られた結果や、過去の地震において発生した山岳トンネルの被害形態をもとに、トンネル構造の作用する荷重の大きさやその算定の考え方について検討した結果について、概説する。

<キーワード> 山岳トンネル、耐震対策、現地計測、数値解析

【特集報文】 GPSを用いた地震時のダムの変位計測

小堀俊秀・榎村康史・山口嘉一・清水則一

<抄録> 東北地方太平洋沖地震の際、石淵ダムに設置したGPS変位計測システムにより、地震時のダム堤体の外部変位を連続的に計測することができた。本論文は、石淵ダムにおける地震時の変位計測結果を示すとともに、地震時の計測の即応性および地震によるダムの堤体変位について考察し、GPSによる変位計測の有効性を検証するものである。

<キーワード> ロックフィルダム、GPS、安全管理、変位計測、高精度

【現地レポート】 中部地震津波対策技術センターの取組み

高橋洋一・菊池秀之

<抄録> 迫り来る南海トラフ地震に備えて、中部地方整備局に「中部地震津波対策技術センター」が設置された。当センターが進める現場対応への技術検討、広域的な地震津波対策の推進、地方公共団体への支援等の取り組み内容について紹介する。

<キーワード> 南海トラフ地震への備え、中部地震津波対策技術センター、技術開発、地方公共団体への支援

【一般報文】 道路橋桁端部の腐食環境調査 〜橋台、橋脚の調査事例〜

田中良樹・村越 潤・石田雅博・吉田英二

<抄録> 道路橋の桁端部では、伸縮装置からの漏水が塩害等のさまざまな劣化をもたらすことが懸念される。道路橋桁端部の劣化対策検討の一環として、既設橋の腐食環境調査を、調査方法の検討も含めて実施している。本文では、下部構造への影響を含めて、桁端部の漏水対策の必要性を述べるとともに、既設の橋台、橋脚の調査事例を紹介する。

<キーワード> 凍結防止剤、漏水、塩害、劣化、付着塩分量

【土研センター】 道路の路側余裕とたわみ性車両用防護柵の変形性能との関係
〜弱支柱防護柵と強支柱防護柵〜

安藤和彦

<抄録> ガードレール等の車両用防護柵について、近年国内でも開発されてきている弱支柱防護柵と、従来から用いられている強支柱防護柵の特徴を比較整理し、両者の適切な使い分け等について整理を行った。

<キーワード> 車両用防護柵、弱支柱防護柵、強支柱防護柵、性能、比較


平成27年7月 報文抄録
 

【一般報文】 超高力ボルトの鋼道路橋への適用性に関する実験

横井芳輝・水口知樹・玉越隆史

<抄録> 鋼道路橋のボルト継手に従来の高力ボルトより高強度の超高力ボルトを採用できる場合、継手部の小型化、施工数量の削減等、道路橋の建設時及び補修・補強時のコストの縮減が期待される。本稿では、道路橋における腐食環境、及び施工条件・荷重条件等に着目した各実験を行い、超高力ボルトの適用性について考察する。

<キーワード> 鋼道路橋、超高力ボルト、遅れ破壊、高力ボルト摩擦接合継手

【一般報文】 FTAを用いた道路橋の経年劣化に伴うリスクの評価手法

玉越隆史・横井芳輝・山崎健次郎・水口知樹

<抄録> 道路橋の維持管理を行うにあたり、劣化特性と冗長性などの構造的特徴を考慮したリスク評価の実現が望まれている。本稿では、直轄定期点検の蓄積データを用いた部材や要素ごとの劣化特性と、道路橋の構造系の階層化を組み合わせたリスク評価の道路橋の戦略的な維持管理計画への導入の可能性について、基礎的な検討を行った。

<キーワード> 道路構造物、落橋、リスク評価、フォルトツリー解析、点検

【一般報文】 一定せん断流パネル要素を用いた鋼道路橋の構造解析手法

水口知樹・横井芳輝・玉越隆史

<抄録> 本稿では、一定せん断流パネル解析を用いた鋼道路橋の構造解析手法への適用性について、複雑な板組形状を有する部位の耐荷力評価、大きな作用力を受ける部位の疲労耐久性評価に着目して、複雑な応力性状となる部位の設計手法確立の可能性があることを確認し、研究の一部を紹介する。

<キーワード> 鋼道路橋、一定せん断流パネル解析、設計手法

【一般報文】 道路利用者と道路の接点となる施設の維持管理における業績指標の用法

吉田 武

<抄録> 本稿では、ニュー・パブリック・マネジメント先進国における道路維持管理に係る業績指標の用法を明らかにした上で、日本のように道路管理者の管理部局と現業部局の2層構造の下では、マネジメント・サイクルを機能させるために管理規定や作業標準等のマネジメント・ツールが重要な役割を果たすことを明らかにする。

<キーワード> ニュー・パブリック・マネジメント、業績指標、ベンチマーキング、業績評価、道路施設

【一般報文】 近年の山地流域における流砂観測による成果と課題

田中健貴・内田太郎・蒲原潤一・桜井 亘

<抄録> 近年、全国直轄砂防事務所による山地流域での流砂水文観測が活発に行われるようになってきており、多数の知見が蓄積されつつある。そこでこれまでに得られた直轄砂防事務所による観測成果についてレビューした上で、山地流域における流砂水文観測の現状の到達点および課題について示した。

<キーワード> 山地流域、流砂水文観測、掃流砂、浮遊砂、ハイドロフォン

【一般報文】 河川定期横断測量へのレーザプロファイラの適用可能性と今後の展望

今井龍一・松井 晋・中村圭吾・重高浩一

<抄録> 近年の航空レーザ測量の技術革新を踏まえると、レーザプロファイラ(以下、LPという。)を用いて横断図を調製できる可能性がある。この横断図とLPとを河川管理の各場面に利用することで様々な発現効果が期待できる。本研究では、LPを用いた横断図の調製可能性の考察と横断図の河川管理の多様な場面への活用を検討した。

<キーワード> レーザプロファイラ、横断図、河川定期縦横断測量業務実施要領・同解説、適用可能性

【一般報文】 付着面の表面粗さと断面修復材の付着強度の関係

片平 博・古賀裕久・渡辺博志

<抄録> 断面修復を施すコンクリートの表面粗さの程度と、下地調整処理方法(水湿しまたはプライマー処理)の違いが付着強度に与える影響について、実験的な検討を行った。また、表面粗さの程度を簡易に評価する方法として、サンドパッチング法を試みた。

<キーワード> 断面修復材、付着強度、表面粗さ、水湿し、プライマー

【一般報文】 施工が硬化コンクリートの耐久性に与える影響

古賀裕久・渡辺博志

<抄録> コンクリートの打込み時に過度な衝撃を加えたり、長時間の締固めを行ったりするなどの不適切な施工を模擬した検討を行い、その影響を把握した。その結果、施工中にエントレインドエアが減少し、耐凍害性に悪影響が生じるおそれがあることが確認された。こうした影響は、コアの圧縮強度試験では把握できなかった。

<キーワード> コンクリート、施工、打込み、空気量、凍結融解

【現地レポート】 一般国道57号森山拡幅工事における軟弱地盤対策

後川英樹・池田輝彦・稲積みのり・宮武裕昭・近藤益央

<抄録> 一般国道57号森山拡幅工事では、盛土を構築する場合には軟弱地盤対策を施さないと、圧密沈下により橋梁部との間に段差が発生したり、隣接する島原鉄道の軌道が変形したりと影響が懸念される。コスト縮減や圧密促進のための盛土サーチャージによる周辺地盤への影響を考慮して、深層混合処理工法による軟弱地盤対策はALiCC工法を用いて設計された。また、本事業に併せてALiCC工法の更なる普及を目的とした現地講習会及び現場見学会を実施したので報告するものである。

<キーワード> 軟弱地盤対策工、深層混合処理工法、工費縮減、工期短縮、低改良率化、講習会、見学会

【土研センター】 袋詰脱水処理工法によるため池等放射性物質封じ込め効果の検証

土橋聖賢・阪本廣行・道端秀治

<抄録> 袋詰脱水処理工法は、透水性を有する袋に高含水の粘性土や河川・湖沼などの軟弱な底質を詰めて脱水・減容化する工法。土粒子と強く吸着する放射性セシウムを袋詰脱水処理工法で封じ込めを行い、封じ込め率と脱水減容化率を確認した。

<キーワード> 袋詰脱水処理工法、放射性セシウム汚染底泥、ため池、脱水及び減容化


平成27年8月 報文抄録
 
特 集:道路構造物の点検への取組み
 

【特集報文】 橋梁における非破壊検査技術の性能評価

小原 誠・玉越隆史・間渕利明

<抄録> 近年、様々な原理や仕様を有する非破壊検査技術が開発されているが道路橋への適用の観点からその性能を検証する統一的な手法は確立していない。本稿では、主に道路橋のプレストレストコンクリート部材の内部損傷の検知を目的とした非破壊検査技術に対する性能検証を行い、評価方法の提案を行った。

<キーワード> 非破壊検査技術、道路橋、プレストレストコンクリート橋、性能検証、評価方法

 

【特集報文】 点検結果に基づく道路トンネルの変状実態

石村利明・砂金伸治・笹田俊之

<抄録> 本稿は、供用中の道路トンネルで実施されてきた点検結果等に基づいて、供用年数・施工方法と変状実態の関連性および、現在、山岳トンネルの標準的な施工方法であるNATMにより構築されたトンネルを対象として支保構造の規模と変状実態に関して分析した結果について報告する。

<キーワード> 道路トンネル、維持管理、点検、変状、矢板、NATM

【特集報文】 補強土壁における点検手法の構築に向けた取組み

宮武裕昭・藤田智弘

<抄録> 補強土壁は、壁高の高いものや他の構造物と隣接する箇所での利用実績が増えてきている。補強土壁を事後対応的ではなく計画的に維持管理するために、維持管理手法確立は喫緊の課題と言える。本報では、補強土壁の点検方法の開発と予防御保全型の維持管理に向けた取り組みについて紹介する。

<キーワード> 補強土壁、維持管理、点検、劣化シナリオ

【特集報文】 舗装路面の新たな点検手法の動向と土木研究所の取組み

渡邉一弘・久保和幸

<抄録> 舗装の効率的な管理の実現に向け、道路の性格・役割を踏まえた点検手法が求められる。本稿は、舗装の点検技術に関する最近の技術開発動向を概観すると共に、既報で報告した土木研究所と民間各社との共同研究事例に関してその後の展開を報告するものである。

<キーワード> 舗装、点検、調査、路面、技術開発

【特集報文】 道路標識・照明施設の定期点検

玉越隆史・白戸真大・増田安弘

<抄録> 本稿は、主として直轄国道の標識・照明施設等の定期点検要領の概要とその技術的背景を述べるものである。過去の試行点検結果を用いて、国総研では、損傷が、接合部や柱基部等の弱点部に集中すること、経過年に応じて基部腐食について詳細調査の必要性が高くなることを明らかにした。以上の結果は、定期点検要領の策定にも反映された。

<キーワード> 標識・照明、損傷、点検体系、点検要領、効率化

【現地レポート】 コンクリート橋梁における塩害対策の取組み

飯野克宏・川村雅一

<抄録> 北陸地方整備局が平成12年度より取り組んできた、全国の塩害被害を受けたコンクリート橋梁から得た知見により、①塩害橋梁維持管理マニュアル(案)の作成、②塩害発生メカニズムの究明、③能生大橋の耐久性調査、④電気防食工法による効果測定について取りまとめ、さらに、今後の予定についても述べたものである。

<キーワード> 塩害、橋梁、コンクリート、維持管理、電気防食

【一般報文】 パノラマウォークスルーを用いた簡易3次元モデル化による既設橋梁の維持管理

青山憲明・谷口寿俊・山岡大亮・重高浩一

<抄録> 本研究では、低コストで橋梁の3次元空間を構築する方法としてパノラマウォークスルーを提案した。さらに、既設橋梁についてパノラマウォークスルーを用いた維持管理システムのプロトタイプを作成して、作成する上でのノウハウを獲得するとともに事務所管理者に対するヒアリングを実施し、有効性を明らかにした。

<キーワード> CIM、既設橋梁、維持管理、3次元モデル、パノラマ写真

【一般報文】 電気自動車への非接触給電の実用化に向けた伝送特性の把握

鳥海大輔・金藤康昭・重高浩一

<抄録> 走行中の電気自動車へ安定して非接触給電を行うには、車両と送電側との離隔を一定に保ちやすい路面との間で給電ができることが望ましいと考えられる。このため、道路に埋設した装置から磁界共鳴方式を用いて給電を行う際の路盤材の影響を実験によって確認したものである。

<キーワード> 磁界共鳴、非接触給電、電気自動車

【土研センター】 ワッペン式暴露試験結果を用いた腐食予測の試算例

中野正則・安波博道・加納 勇・中島和俊

<抄録> ニッケル系高耐候性鋼を使用して架橋された瀬戸中央橋について、6年間のワッペン式暴露試験による長期腐食予測を行い同鋼材の適用について検証を行った。また、長崎県内の7橋梁で実施したワッペン式暴露試験の結果から、フランジ・ウェブ面などの設置部位毎の腐食傾向について評価を行った。

<キーワード> 耐候性鋼橋梁、ワッペン式暴露試験、腐食予測、腐食速度


平成27年9月 報文抄録
 

【一般報文】 効果的交通安全対策のための要因分析・対策立案手法
〜「交通事故の要因分析・対策立案に関する技術資料」〜

尾崎悠太・高宮 進

<抄録> 近年、日本での交通事故の死者数及び死傷事故件数は減少傾向にあるものの、現在も多くの方が交通事故の犠牲となっている。このような状況から、交通事故の削減に向け継続的な対策実施が必要である。国土技術政策総合研究所では交通安全対策をより効果的に実施するための技術資料を作成した。本稿では、その技術資料について紹介する。

<キーワード> 交通安全対策、交通事故要因分析、対策立案

【一般報文】 塩化ビニル管の健全率予測式の作成に向けた影響因子の分析

竹内大輔・賀屋拓郎・深谷 渉・宮本豊尚・横田敏宏

<抄録> 今後、改築需要が増加する塩化ビニル管に対して、正確に塩化ビニル管の劣化状況を把握するための劣化状況の視覚判定基準(案)、緊急度診断基準(案)および、改築需要を予測するために健全率予測式の作成を行っている。本検討は、塩化ビニル管の健全率予測式を作成するために必要な影響因子の分析を行うものである。

<キーワード> 塩化ビニル管、健全率予測式、緊急度、劣化項目、影響因子

【一般報文】 湿雪雪崩の発生と積雪内部の水の浸透との関係

松下拓樹・池田慎二・石田孝司

<抄録> 湿雪雪崩は、降雨や融雪水の積雪への浸透など複雑な過程を経て発生する。この報文では、湿雪雪崩の発生と積雪内部の水の浸透状況との関係について、雪崩発生箇所近傍の気象観測データを用いた解析と積雪内の水の浸透に関する現地実験の結果を基に報告する。

<キーワード> 湿雪、表層雪崩、全層雪崩、水の浸透、斜面積雪

【一般報文】 Twitter情報を活用した土砂災害の前兆・発生状況把握の可能性

國友 優・神山嬢子

<抄録> 土砂災害に対する避難の判断指標とされる前兆現象等に関する情報を収集・共有し、警戒・避難システムとして活用するため、近年の豪雨災害時につぶやかれた情報の分析を行い、Twitter情報を活用した土砂災害発生場の状況把握の可能性について検討を行った。土砂災害に関連するキーワードより抽出したツイートの件数の変化や発言内容から危険性の検知や災害状況の把握が可能であることを確認した。

<キーワード> 土砂災害、前兆現象、ソーシャルメディア、つぶやき情報、Twitter

【一般報文】 現場条件を考慮した災害復旧に関する動的遠心力載荷模型実験
〜大型土のうと補強材を用いた本復旧盛土の適用性〜

森 芳徳・久保哲也・宮武裕昭

<抄録> 近年、豪雨や地震による道路盛土等の道路土工構造物の災害が大規模化している。災害現場における復旧方法として、大型土のうを用いた応急復旧が用いられていることが確認されている。本報告では、大型土のうを用いた本復旧対策手法の適用性について、実現場の施工条件等を考慮した動的遠心力載荷模型実験を実施した結果について報告する。

<キーワード> 道路盛土、災害復旧、大型土のう、本復旧、動的遠心力載荷模型実験

【一般報文】 補強土壁の予防保全に向けたフォルトツリーの活用について

宮武裕昭・藤田智弘

<抄録> 本報では、支障時の道路交通機能への影響等を鑑みて、アプローチ部の補強土壁に対して早期に予防保全へと移行することを目的に、予防保全に向けた取り組み、フォルトツリーの活用、補強材破断に関する実大模型実験について報告した。

<キーワード> 補強土壁、維持管理、劣化シナリオ、補強材破断

【一般報文】 可搬型高出力X線によるPC桁内部の可視化実験

大島義信・宇佐美 惣・石田雅博・土橋克宏・上坂 充

<抄録> 本研究グループでは、PC桁全体のグラウト未充填区間、鋼材減肉量、破断有無の把握を目的として、高出力X線源によるコンクリート橋検査技術の開発を行っている。ここでは、日本で初めて屋外で実施された高出力3.95MeVX線源を用いた撤去桁の可視化実験の結果を報告する。

<キーワード> 高出力X線源、撤去桁、可視化、グラウト未充填、非破壊

【現地レポート】 国内初の既設堤体を大規模切削して洪水吐を増設する長安口ダム改造事業

赤松 薫・森本修三・白川豪人・岡田武文・竹内伸一

<抄録> 長安口ダム改造事業は、治水・利水・環境面におけるダム機能向上を目的として平成19年度より着手しており、本報告では、ダム改造事業の特徴的な施工方法や現在の工事状況及び今後の予定について述べたものである。

<キーワード> 長安口ダム、ダム改造事業、国内初の工法(本体切削)、ダムを運用しながらの工事

【土研センター】 発展途上国での海岸管理上の問題 〜ジャワ島西端のAnyer海岸の例〜

宇多高明・守安邦弘

<抄録> IndonesiaのJava島西端部のAnyer周辺の海岸を対象として現地踏査を行い、急速に開発が進みつつある発展途上国における海岸保全について考察した。この付近では過剰な埋め立てが行われ、自然資源を十分活用できない状況にある。現地踏査を基に開発上の問題点を探り、今後同種の開発がなされる際考慮されるべき点について考察した。

<キーワード> 海岸保全、Indonisia、Anyer、Java島


平成27年10月 報文抄録
 
特 集:下水道による都市の水の管理
 

【特集報文】 下水処理場の高度処理方法・規模の違いによる水処理設備のエネルギー消費特性

M田知幸・田 淳・山下洋正

<抄録> 閉鎖性水域の富栄養化対策等を目的に多くの処理場での高度処理が実施されている。一方で、高度処理は通常処理より多くのエネルギーを必要とすることが問題となる。本研究では、高度処理を実施している下水処理場において、ベンチマークとして活用するため、処理法毎に単位窒素除去量当たりのエネルギー消費を整理した。

<キーワード> エネルギー、高度処理、窒素、ベンチマーク

【特集報文】 下水処理場における直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)の除去特性

小森行也・岡本誠一郎

<抄録> 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)は、水生生物に対する毒性を有することからH25年3月に水生生物の保全に係る水質環境基準に追加された物質である。LASは排水規制の設定が予想されるが、下水処理場は排水規制の対象となることから、一般的な下水処理による除去特性の把握が重要となる。本調査では実験及び実態調査により下水処理によるLASの除去特性を明らかにした。

<キーワード> 下水処理、LAS、除去特性、実態調査

【特集報文】 膜処理技術を用いた下水再生水のノロウイルス感染リスクに基づく利用適合性の評価

安井宣仁・諏訪 守・南山瑞彦

<抄録> 下水再生水利用時における病原微生物リスク評価を行うことを目的に、各種の膜処理を並行して行うことのできるパイロットプラントを用い、限外ろ過(UF)膜処理の前処理ならびに後段処理における再生水中のノロウイルス感染リスク評価を行い、再生水利用用途毎の利用可能性を検討した。その結果、UF膜処理の後段にUV処理を行うことで、ノロウイルスの感染リスクを低減可能であり、親水利用(水浴)を除き、利用可能であると評価された。

<キーワード> ノロウイルス、感染リスク評価、UF膜処理、下水再生水

【特集報文】 下水道革新的技術(バイオマス発電)の実証研究の成果

田 淳・川住亮太・山下洋正

<抄録> 平成25年度より実規模プラントで実証してきた下水汚泥の焼却廃熱を活用した発電技術に関する2件の実証研究成果を踏まえ、実証技術毎に技術導入ガイドラインを策定した。ガイドライン策定に当たっては、下水道事業者が技術の特徴や性能を理解し、下水処理場の状況に応じた導入可能性を容易に検討することができるように留意した。

<キーワード> 機内二液調質型脱水機、革新型階段炉、低空気比燃焼設備、廃熱発電

【現地レポート】 神奈川県流域下水道における過給式流動焼却炉の導入効果

大野孝則・竹内秀樹

<抄録> 神奈川県では、地球温暖化対策の推進のため、温室効果ガス排出量の多い下水道事業において、環境配慮型焼却炉である過給式流動焼却炉を導入した。その結果、温室効果ガスの削減に非常に効果があった。そこで過給式流動焼却炉の導入の背景、特徴および効果について報告する。

<キーワード> 下水汚泥焼却、省エネルギー、温室効果ガス削減、過給式流動焼却炉

【一般報文】 地すべり防止施設集水管の閉塞防止器の開発

丸山清輝・石田孝司

<抄録> 地下水排除施設老朽化の実態調査結果では、集水管が閉塞しているものが数多くあり、その一番の原因は鉄細菌による閉塞物の生成であった。そこで、集水管内に生成された閉塞物を断続的に洗い流す集水管閉塞防止器を考案し、現地試験を実施した。その結果、集水管閉塞防止器により集水管の閉塞が抑制できる可能性があることが分かった。

<キーワード> 地すべり、地下水排除施設、集水管、閉塞防止器

【一般報文】 構造細目及び照査内容に見る既設木杭基礎の設計の考え方と今後の課題

河野哲也・七澤利明・中谷昌一

<抄録> 既設木杭基礎の多くは構造や諸元が不明であり、また、当時の設計法が明確でないために再現設計により構造や性能を推定することも難しく、耐震性の評価が困難である。そこで本文では、全国から既設木杭基礎の設計図書を収集し・分析し、木杭基礎の構造細目や諸元、設計法を明らかにした。

<キーワード> 既設木杭基礎、実橋の設計結果、諸元や構造細目の推定、設計法の整理

【一般報文】 山岳トンネルの時間依存性挙動の簡易評価手法

淡路動太・砂金伸治・日下 敦・河田皓介

<抄録> 山岳トンネルで一般的に実施されている内空変位測定を利用して、掘削停止期間中の変位データに着目し、時間依存性挙動を抽出する方法、および得られた測定データから地山劣化モデルにおける時間依存性挙動に関する物性値を同定する簡易計算手法を提案し、実測定データに適用して、その有効性を確認した。

<キーワード> 山岳トンネル、内空変位測定、時間依存性挙動、クリープ変位速度、地山劣化モデル

【一般報文】 南海トラフ連動型地震で想定される下水道施設被害と効果的復旧支援

深谷 渉・松橋 学・田敏宏

<抄録> 近い将来に発生が予想される南海トラフ連動型地震では、東日本大震災を超える被害が想定される。下水道分野においては、東日本大震災の経験や知見を踏まえ、下水道施設の地震・津波対策に鋭意取り組んでいるが、ハード的な対策(耐震化、耐津波化)には多くの予算や時間を要することから、耐震化の途上で大地震が発生することを想定し、その際の被害を最小化するための減災対策が重要となる。本稿では、中央防災会議の検討結果を踏まえ、南海トラフ地震発生時に迅速かつ適切な下水道施設の復旧支援体制を構築するために必要な被害想定や復旧支援人員の算出を行うことで、南海トラフ地震の効果的な復旧支援の一助とするものである。

<キーワード> 南海トラフ地震、下水道施設被害想定、復旧支援

【土研センター】 浸透性コンクリート保護材の塩害抑制効果確認暴露試験報告(1年経過後)

大田孝二・平林克己

<抄録> 当センターは浸透性コンクリート保護材の性能試験を実施している。この試験に適合した材料が、散布された凍結防止剤(塩水)に対してどの程度の塩分の浸透抑制効果を持つか、壁高欄を模した試験体に塗布して暴露試験を実施した。人為的に塩水を複数回噴霧し、塩分の浸透状況を調査した。今回は3年暴露計画の1年経過時点の報告である。

<キーワード> 浸透性コンクリート保護材、撥水性、塩分浸透抑制、凍結防止剤散布、暴露試験


平成27年11月 報文抄録
 

【一般報文】 RC橋脚の橋座部に生じるせん断損傷に対する応急復旧工法の考案とその効果の検証実験
Effectiveness of Temporary Repair Method for Shear Damage Developed at Seat of Bearing Support in RC Pier Walls

榎本武雄・井上崇雅・篠原聖二・星隈順一

<抄録> 本文では、既設の壁式RC橋脚の橋座部周辺に生じるせん断損傷を対象としてその応急復旧工法を考案した。ここでは、東日本大震災における教訓を踏まえ、大地震後には復旧に必要となる資機材や特殊工事ができる作業員の確保が困難となるという条件に配慮した。そして、壁式RC橋脚の模型供試体に対する水平力載荷実験により、対象とした応急復旧工法における復旧効果の検証を行った。

<キーワード> 応急復旧、橋座部、せん断損傷、載荷実験による検証

【一般報文】 土木施設に係る伝統的工法を活かした歴史的風致の維持・向上
Practical Use of Traditional Civil Engineering Construction Methods in Preservation and Improvement of Historic Landscape

西村亮彦・木村優介・曽根直幸・栗原正夫

<抄録> 本研究では、舗装、石積み、土塀、生垣・屋敷林、煉瓦構造物を対象に、有識者へのヒアリング調査を行い、各施設に係る伝統的工法を活用する上での主な課題を整理した。また、歴史的風致維持向上計画認定都市を対象に、アンケート調査を行い、歴史的風致に配慮した土木施設の整備事例を収集し、その事業方式を明らかにした。

<キーワード> 伝統的工法、歴史的風致、歴史まちづくり、文化財、土木施設

【一般報文】 山岳トンネルにおける覆工背面空洞裏込め注入材の剛性が外力作用時の覆工応力に及ぼす影響
Effect of Stiffness of Backfill Material on Stress of Mountain Tunnel Lining Affected by Lateral Load

日下 敦・砂金伸治・真下英人

<抄録> トンネル覆工に外力が作用する場合において、天端部の覆工背面空洞に充填する裏込め注入材の弾性係数が、覆工の応力に及ぼす影響について数値解析により検討した。その結果、十分な剛性を有する裏込め注入材を用いる必要があるとともに、極端に剛性の大きな注入材を用いても大幅な応力低減を見込めない可能性があることが分かった。

<キーワード> 山岳トンネル、背面空洞、裏込め注入、数値解析

【一般報文】 印旛沼流入河川における出水時の栄養塩類濃度と藻類増殖ポテンシャルの関係
Relationship Between Nutrients and Algal Growth Potential during Flooding of Rivers Flowing into Lake Inbanuma

北村友一・岡本誠一郎

<抄録> 出水が藻類増殖に寄与するかどうかを明らかにするため、印旛沼流域において出水時のAGPと栄養塩類の流出特性の把握、土地利用とAGPおよび金属濃度とAGPの関係について解析を行った。その結果、AGP負荷量は、畑の割合が多い流域では出水時に増大し、市街地の割合が多い流域では、出水時に減少することがわかった。一部の金属類は、藻類増殖に寄与している可能性があった。

<キーワード> 藻類増殖ポテンシャル、流出負荷量、降雨時負荷量、印旛沼

【一般報文】 レーザープロファイラデータを用いた土石流侵食幅・侵食深の解析
Analysis of Eroded Width and Depth Due to Debris Flow using LiDAR Data

工藤 司・内田太郎・松本直樹・桜井 亘

<抄録> 土石流流下に伴う侵食幅・侵食深を精度よく推定して移動可能土砂量を設定することは、対策施設の計画や効果評価にとって重要である。本報告では、土石流流下に伴う侵食幅・侵食深の実態を明らかにすることを目的とし、近年取得した土石流発生前後のレーザープロファイラデータを用いた侵食幅・侵食深の解析および整理を行った。

<キーワード> 土石流、レーザープロファイラ、土石流流下に伴う侵食、平均侵食深、平均侵食幅

【一般報文】 トラック運送事業者の抱える課題とETC2.0を活用した物流支援に関する取組み
Supporting Logistics Using ETC 2.0 Platform in Response to Trucking Business Issues

松田奈緒子・大竹 岳・鹿谷征生・牧野浩志

<抄録> 本稿では、トラック運送事業者が抱える経営状況、労働者数等の課題や求められている安全性や、ニーズについて調査結果を報告する。その上で、そのような課題等を解決するためのETC2.0を活用した物流支援に関する取り組みについて紹介する。

<キーワード> 物流支援、トラック運送事業者、プローブデータ、ITS、官民共同研究

【現地レポート】 命の道・国道168号(五條新宮道路)の効果 〜紀伊半島大水害を経験して〜
Effect of National Route 168 as "Life-Saving Road": Lessons from Great Kii Peninsula Flood Disaster

竹田博康

<抄録> 国道168号(五條新宮道路)は地域高規格道路として整備を進めている。この道路は、平成23年9月の紀伊半島大水害においても被災なく、災害に強い命の道であることは立証された。しかしながら、整備途中や未整備の区間も数多く残り、リダンダンシーの観点から早期の事業着手・供用の重要性も確認されたところである。本稿では、これらについて、事例を通じて概説するものである。

<キーワード> 命の道、国道168号、五條新宮道路、紀伊半島大水害、深層崩壊、河道閉塞、リダンダンシー、防災検討会

【現地レポート】 大規模土砂災害対策研究機構における技術開発・研究活動の取組み
Research and Technological Development by Sediment Disaster Prevention Research Organization

西岡恒志・筒井和男・福田和寿・森 加代子・野池耕平・木下篤彦

<抄録> 土木研究所と和歌山県は大規模土砂災害対策研究機構の枠組みの中で、平成23年台風12号で土砂災害が多発した紀伊半島において表層崩壊や深層崩壊の発生危険箇所の抽出手法や発生機構の解明など大規模土砂災害に係る建設技術の研究及び開発に取り組んでいる研究の概要についての紹介。

<キーワード> 大規模土砂災害対策研究機構、平成23年台風12号、表層崩壊、深層崩壊、和歌山県土砂災害啓発センター

【土研センター】 鉄鋼スラグ路盤設計施工指針の発刊 〜鉄鋼スラグの水浸膨張比の規格値検討〜
Publication of the New Guideline for Steel Slag Roadbed Materials

安藤和彦・寺田 剛・坂 修平

<抄録> 国立開発法人土木研究所と鐵鋼スラグ協会が3か年にわたり実施した製鋼スラグのエージング方法と許容膨張比の見直しに関する共同研究成果を受け、一般財団法人土木研究センター内に鉄鋼スラグ路盤設計施工指針作成委員会に設けて指針作成の検討を行い、今般新たな指針を発刊するに至ったので、その概要を紹介する。

<キーワード> 鉄鋼スラグ、路盤、指針、許容膨張比、エージング


平成27年12月 報文抄録
 
特 集:持続可能な社会の形成に資する材料資源研究
Special Topic: Research on the development of tools and materials for building a sustainable society
【特集報文】 下水処理場における培養微細藻類量の予測ツールの開発
Development of Prediction Tool for Microalgal Biomass Production in Wastewater Treatment Plant

高部祐剛・南山瑞彦
Yugo TAKABE、Mizuhiko MINAMIYAMA

<抄録> 本研究では、下水処理場における培養微細藻類量の予測による導入検討の支援を目的として、微細藻類増殖の数理モデルを構築し、微細藻類培養実験結果を踏まえ、数理モデルの再現性を評価した。その結果、構築した数理モデルは、培養微細藻類濃度予測を可能とし、下水処理場への微細藻類培養システム導入検討の支援ツールとしての利用が期待される。
This study was conducted with the aim of supporting the decision making process for the introduction of a microalgae biomass production system to wastewater treatment plants. We developed a numerical model to predict microalgal growth and evaluated its reproducibility, comparing the simulation results with those from microalgal culture experiments. We confirmed that the developed model predicted the concentrations of cultured microalgae successfully and suggested that it can serve as an effective tool to help users make decisions on the installation of a microalgal biomass production system to wastewater treatment plants.

<キーワード> 下水処理場、微細藻類、エネルギー生産、二次処理水、数理モデル
Keywords: wastewater treatment plant, microalgae, energy production, secondary effluent, numerical model

【特集報文】 スラグ骨材を用いた舗装用コンクリートの特性
Study on the Characteristics of Pavement Concrete using Slag Aggregate

森濱和正・加藤祐哉・古賀裕久
Kazumasa MORIHAMA、Yuya KATO、Hirohisa KOGA

<抄録> コンクリート舗装にスラグ骨材を用いた場合の強度、凍結融解抵抗性、スケーリング抵抗性、乾燥収縮特性、走行安全性の観点からすり減り抵抗性、すべり抵抗性について検討し、乾燥収縮は改善されるが、すり減り抵抗性は低下する恐れがあることなどが明らかになった。
In this study, we tested pavement concrete using several types of slag aggregates for its strength, freezing and thawing resistance, scaling resistance and drying shrinkage, as well as abrasion resistance and skid resistance in relation to running safety. The results shows that the amount of drying shrinkage can be decreased but abrasion resistance will be degraded by the use of certain kinds of slag aggregates.

<キーワード> スラグ骨材、舗装コンクリート、スケーリング、乾燥収縮、すり減り、すべり
Keywords: slag aggregate, pavement concrete, scaling, drying shrinkage, abrasion, skid

【特集報文】 二酸化炭素排出抑制型アスファルト混合物の評価
Evaluation of the CO2 Emission-Reducing Asphalt Mixture

辻本陽子・新田弘之・西崎 到・川上篤史・久保和幸
Yoko TSUJIMOTO、Hiroyuki NITTA、Itaru NISHIZAKI、Atsushi KAWAKAMI、Kazuyuki KUBO

<抄録> 本報では、舗装材料のさらなる低炭素化に有効な中温化技術について紹介する。また、開発品の中温化剤を添加した改質アスファルト混合物や再生混合物の二酸化炭素排出量を試算し、削減率を算出して低炭素化の効果を検証したので報告する。
This report introduces warm mix asphalt technology that is effective in promoting further low carbonization of pavement material. We tested this new technology for low carbonization effect by calculating reduction rates of CO2 emissions that had been estimated for polymer modified asphalt mixture and recycled asphalt mixture with warm mix additives that we had developed.

<キーワード> 低炭素化、中温化技術、再生混合物、CO2排出量原単位、二酸化炭素排出量削減率
Keywords: low carbonization, warm mix asphalt technology, recycled asphalt mixture, CO2 emission unit, CO2 emissions reduction rate

【特集報文】 ひび割れを光検出する塗料と構造物劣化検出
Luminescent Crack Sensor Paint and Damage Detection of Structures

百武 壮・西崎 到・道信剛志
Tsuyoshi HYAKUTAKE、Itaru NISHIZAKI、Tsuyoshi MICHINOBU

<抄録> インフラ構造物のヘルスモニタリングを目的とした非破壊検査手法に注目が集まっている。本報では、検査範囲が広い場合にも対応しやすい、より簡便・低コストで劣化検出が可能となるセンサー機能を有する新材料として、コンクリートのひび割れに応答して発光消光するひび割れ検出塗料の研究状況を紹介する。ブラックライトによって強く発光し、消光挙動でひび割れ部分を可視化することができる。トンネル内部や箱桁などの暗視野、近接点検が困難な箇所に施工して、インフラ構造物の点検の簡略化と危険察知への活用が期待できる。
Nondestructive inspection techniques have drawn a lot of attention in terms of health monitoring of infrastructures. This report introduces the progress in the development of luminescent crack sensor paint, which realizes damage detection that are easy, low cost and applicable to a wide inspection area. This paint illuminates under black light and visualizes cracks by quenching behaviour. It will simplify the inspection of infrastructures and help detect early damage risk when used in dark fields such as tunnels and box girders and places where close-up inspection is hard to conduct.

<キーワード> 土木材料、機能材料、非破壊検査、センサー
Keywords: construction material, functional material, nondestructive inspection, sensor

【特集報文】 ひび割れ注入工法の低温における充填性と耐凍害性
Filling Ability and Frost Resistance of Crack Injection at Low Temperatures

内藤 勲・島多昭典
Isao NAITOH、Akinori SHIMATA

<抄録> コンクリート構造物の長寿命化に向け、補修の体系化や対策技術の確立等を目的とした研究を行っている。各種補修工法の内、ひび割れ修復工法において、ひび割れ注入後の充填性に関する調査や低温環境における注入工法の施工時の留意点、及び耐久性について、補修を模擬した試験体を用いた凍結融解試験結果と実環境で暴露試験中の測定結果等について報告する。
We are currently working on the development of systematic repair methods and the establishment of technologies for damage prevention for longer service life of concrete structures. Among many repair methods, this report specifically focuses on a crack repair method and presents issues on the inspection of filling ability after crack injection and the application and durability of crack injection under a low temperature environment along with results from freeze-thaw tests using a repair model and exposure tests in an actual environment.

<キーワード> ひび割れ注入工法、寒冷環境、再劣化、充填性、耐久性
Keywords: crack injection, cold environment, re-deterioration, filling ability, durability

【現地レポート】 橋梁への新素材の適用による耐久性向上に向けた取組み
An Approach for Improvement of Durability of Bridges by New Materials

細沼宏之・川畑勝嗣
Hiroyuki HOSONUMA、Katsushi KAWABATA

<抄録> 能登半島の厳しい塩害環境下での橋梁建設にあたり、石川県では、コンクリート橋の耐久性を向上させるため、1988年より鋼材腐食に対する根本的な対策として、新素材(CFRP)を緊張材に用いたPC橋を5橋建設し、2008年にはGFRP橋を1橋建設した。本稿では、塩害環境下での橋梁の実態と新素材導入による橋梁の特性および建設後の点検の状況を報告する。
Improvement in the durability of concrete bridges has been an important issue in the construction of bridges in a severe chloride attack environment such as the Noto Peninsula of Ishikawa Prefecture, Japan. As one of the fundamental measures for the prevention of steel corrosion, five PC bridges using a new tendon called CFRP have started to be built since 1988 in addition to one bridge using the GFRP tendon in 2008. This report presents the condition of bridges in a severe chloride attack environment, the characteristics of bridges using new tendons, and their current condition found through post-construction inspection.

<キーワード> 塩害、緊張材、CFRP、GFRP、耐久性
Keywords: salt damage, tendon, CFRP, GFRP, durability

【一般報文】 生物応答試験による下水処理水の影響評価の試み
Evaluation of Biological Effect of Treated Sewage Water by Biological Response Test

武田文彦・真野浩行・岡本誠一郎
Fumihiko TAKEDA、Hiroyuki MANO、Seiichiro OKAMOTO

<抄録> 流入下水および標準活性汚泥法で処理した二次処理水、塩素消毒した放流水に対し、緑藻ムレミカヅキモ、オオミジンコ、ゼブラフィッシュを用いて生物影響を評価した。流入下水では生物影響が見られる場合があったが、二次処理水及び放流水では影響がなかったため、下水の生物影響は活性汚泥処理によって低減できることが分かった。
A biological response test was conducted to evaluate the biological effect of sewage influent, secondary effluent treated in the conventional activated sludge process, and final chlorinated effluent on Pseudokirchneriella subcapitata, Daphnia magna, and Danio rerio. The results found that the secondary and final effluent showed no biological effect while the sewage influent did in some cases. The study concluded that the biological effect of sewage water can be reduced by treating it in the activated sludge process.

<キーワード> 下水、化学物質管理、総排水毒性(Whole Effluent Toxicity)、活性汚泥法
Keywords: sewage water, chemical substance management, whole effluent toxicity, activated sludge process

【一般報文】 積雪地域の地すべり地における繰り返し地下水流動層調査
Repeated Investigation of Groundwater Flow Layers at a Landslide Site in a Snow-Cover Region

桂 真也・丸山清輝・池田慎二・石田孝司
Shin'ya KATSURA、Kiyoteru MARUYAMA、Shinji IKEDA、Koji ISHIDA

<抄録> 地下水検層を同一観測孔で繰り返し実施した結果、融雪水の影響により地下水流動層が発生・拡大する観測孔が存在した。現実的に検層は1回しか実施できないことを考慮すると、地下水排除施設の効果的な配置のためには、地すべりの発生につながると考えられる流動層を的確に把握できる時期に検層を実施することが重要である。
As a result of repeated groundwater logging through the same observation boreholes, we confirmed the emergence and expansion of a groundwater flow layer due to the impact of snowmelt water. Considering that groundwater logging can be done only once in practice and that groundwater drainage facilities should be installed at locations where they can operate most effectively, we concluded that groundwater logging should be carried out at a proper timing when a groundwater flow layer, which can contribute to landslide occurrence, can be observed accurately.

<キーワード> 地すべり、地下水流動層、地下水検層、融雪、検層実施時期
Keywords: landslide, groundwater flow layer, groundwater logging, snowmelt, timing of logging


翻訳:土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター派遣職員 大久保雅彦
Masahiko OKUBO