(一財)土木研究センター/刊行物/月刊誌土木技術資料抄録/平成26年

 
平成26年1月 報文抄録
 
特 集:強靭な国土の実現を目指した土木技術
 

【特集報文】 地震に対するハード・ソフト両面からの強靭化技術

日下部毅明・運上茂樹

<抄録> 地震災害に対し国土を強靭化するためには、ハードによる計画的な対策とともに、地震時の対応力を高めるソフトの対策も重要となる。本報文では国総研危機管理技術研究センターと土研地震関係研究グループが実施する、ハード・ソフト両面の技術について全体像を概観したうえで、一部を具体的に紹介する。

<キーワード> 地震対策、津波対策、液状化判定、リスクマネジメント、震害予測

 

【特集報文】 設計超過津波への対応策 〜粘り強い海岸堤防と自然・地域インフラの活用〜

加藤史訓・渡辺国広・姫野一樹・諏訪義雄

<抄録> 海岸堤防の設計外力を超過する津波に対する取り組みとして、海岸堤防の粘り強い構造に関する研究の進捗状況と、海岸周辺に存在する自然地形や歴史的地物の減災効果の発現を目指した新規研究「津波防災地域づくりにおける自然・地域インフラの活用に関する研究」の概要について紹介する。

<キーワード> 海岸堤防、粘り強い構造、設計超過津波、模型実験、自然・地域インフラ

 

【特集報文】 大規模土砂災害の危機管理を支える探査技術とその活用

水野正樹・内田太郎・高原晃宙・木下篤彦・江川真史・丹羽 諭

<抄録> 豪雨等により山間部で発生した大規模天然ダムは、形成の覚知や、夜間や悪天候時の天然ダム形成確認調査が困難であった。そこで、天然ダムの形成、位置、規模をより早く把握するために、「振動センサーによる大規模崩壊の把握手法」、「SAR判読による天然ダムの緊急判読調査手法」、「流量低下監視による天然ダムの形成覚知手法」の3つの天然ダム探査技術を確立したので報告する。

<キーワード> 大規模崩壊、天然ダム、振動センサー、流量監視、SAR画像

 

【特集報文】 衛星SARによる構造物の変位監視技術 〜フィルダムを事例として〜

佐藤弘行・小堀俊秀・榎村康史・山口嘉一・岩崎智治・虫明成生・本田謙一

<抄録> 頻発する大規模地震や構造物の老朽化に国民の関心が高まっている。本論文は、平常時と災害時の区分なく広域なデータが得られる衛星SARの観測データを用いた構造物の変位モニタリング手法を開発するために、フィルダムを対象として、衛星SARによる変位モニタリングの適用性を検討した。

<キーワード> SAR、monitoring、disaster、aging、dam

 

【特集報文】 多様な道路関連情報を組織間で迅速に共有する技術
〜道路管理用情報共有プラットフォーム〜

谷口寿俊・小原弘志・今井龍一

<抄録> 国総研において開発された地理空間情報プラットフォームは、部門毎に集約、提供されていた地理空間情報を部門横断的に共有できる環境として、組織内の情報共有環境の実現に寄与する。道路管理用情報共有プラットフォームは、空間情報連携共通プラットフォームへ道路管理に必要な機能を追加し、異なる道路管理者間の情報共有を実現するものである。

<キーワード> データベース、移動・交通、道路管理、防災

 

【特集報文】 国土の強靱化を支える道路構造物の維持管理性の向上に向けた取組み

玉越隆史・白戸真大

<抄録> 強靱な道路ネットワークを確保するためには、構造物の安全性・復旧性に係わる信頼性が調和すること、また、部材などの一部の損傷が構造物の破壊や第三者被害に結びつくリスクを低減することが重要である。そこで、本稿では、信頼性の調和とリスクの低減を図るために必要な設計、施工、管理にかかる研究の方向性をレビューしている。

<キーワード> 維持管理性、道路橋、信頼性、リスク、リダンダンシー

 

【特集報文】 震災時の下水処理場機能不全に対する感染リスク管理手法の考察

諏訪 守・津森ジュン・鈴木 穣

<抄録> 東日本大震災による教訓などから、既存の水質管理システムの脆弱性が明らかとなった。今後、内陸部の下水処理場が被災した場合には、その下流域の水利用系への病原微生物に対する感染リスクが増大することが想定される。本報では、被災により機能不全に陥った下水処理場における実態調査や過去の水系感染症の事例調査から明らかとなった課題を整理するとともに、下水道を含めた水系における応急的な対応策による感染リスク低減手法構築の必要性について考察した。

<キーワード> 震災、機能不全、下水処理場、感染リスク

 

【報文】 道路災害の交通影響と対策効果に関する調査

木村祐二・金子正洋・宮武裕昭・間渕利明

<抄録> 本調査は、防災対策事業のより効率的な実施に資する情報を提供することを目的として、道路斜面災害を対象として、主に被災事例を収集・分析することにより、道路災害が発生する条件を整理するとともに、道路災害が道路交通に与える影響や道路防災対策の効果を評価する手法について検討した。

<キーワード> 道路斜面災害、道路交通影響、道路防災点検項目、道路防災対策、対策効果の評価

 

【報文】 土砂災害被害と降雨確率規模、災害発生頻度の関係

林 真一郎・内田太郎・蒲原潤一

<抄録> 国土交通省砂防部、国土技術政策総合研究所において、これまで蓄積された土砂災害データに基づき、土砂災害の頻度に関する検討として実施した、@人的被害が生じた土石流災害を引き起こした降雨確率規模に関する分析、A土砂災害の土砂移動現象としての規模・社会的影響と発生頻度の関係の検討結果について報告する。

<キーワード> 土砂災害被害、降雨確率規模、災害発生頻度、災害規模、社会的影響

 

【土研センター】 テールアルメ工法、多数アンカー式補強土壁工法の設計・施工マニュアルの改訂(その2)

中根 淳・大谷義則・酒井茂賀・小浪岳治

<抄録> 「道路土工−擁壁工指針」(平成24年度版)の改訂を受けて、「ジオテキスタイルを用いた補強土工法」、「補強土(テールアルメ)壁工法」、「多数アンカー式補強土壁工法」の設計・施工マニュアルについても改訂を行った。ここでは、「補強土(テールアルメ)壁工法」、「多数アンカー式補強土壁工法」の主な改訂内容を紹介するものである。

<キーワード> 補強土工法、マニュアル、テールアルメ、多数アンカー

 

 

平成26年2月 報文抄録
 
特 集:既設ダムの有効活用
 

【特集報文】 ダム堤体嵩上げに関する技術的課題

榎村康史・金銅将史・佐藤弘行・小堀俊秀

<抄録> 近年、自然環境の保全および公共事業費の削減等の要請を背景に、既設ダムの有効活用が求められている。本稿では、既設ダムの有効活用方策の一つであるダム堤体嵩上げについて、実施事例及び技術的課題について述べるとともに、土木研究所における嵩上ダムの構造設計手法の確立を目指した既往の研究成果について報告する。

<キーワード> 既設ダム、堤体嵩上げ、技術的課題、有効活用

 

【特集報文】 嵩上げ重力式コンクリートダムの大規模地震時挙動の推定

金銅将史・志田孝之・佐々木 隆・榎村康史

<抄録> 既設ダムを有効利用してその機能の増強・再編を図るダム再開発事業の代表的方式の1つである既設重力式コンクリートダムの堤体嵩上げを取り上げ、嵩上げダムの大規模地震時の挙動を数値解析により推定した結果から、嵩上げダムの耐震性能を照査する上での留意点などについて述べる。

<キーワード> ダム、再開発、嵩上げ、地震、耐震性能照査

 

【特集報文】 長寿命化を目指したダム本体の合理的維持管理手法の開発

金銅将史・小堀俊秀・加嶋武志・佐々木 隆・榎村康史

<抄録> ダムが長期にわたって安全にその機能を発揮していく上で求められる合理的な維持管理の実現に向けた研究として、長期供用ダムで生じる事象とその把握のための診断技術から将来的な安全性への影響の評価手法、またダムにおける安全管理の基本となっている計測の有り方に関するこれまでの検討について紹介する。

<キーワード> ダム、長寿命化、維持管理、健全度診断、安全管理

 

【特集報文】 既設ダムへの放流設備増設に関する水理的課題と対応

箱石憲昭

<抄録> 既設ダムを有効活用するための貯水池運用の変更や、設置後長期間が経過したダムの機能改善が求められ、それに対応するための放流設備の増設が行われている。本稿では、主として国土交通省直轄ダムの放流設備増設事例を紹介しつつ、水理面での技術的課題と、それに対応した土木研究所の取り組みについて述べる。

<キーワード> 既設ダム、有効利用、放流設備増設、水理

 

【特集報文】 貯水池のエネルギーを活用した排砂技術の開発

宮川 仁・櫻井寿之・箱石憲昭

<抄録> 貯水位を低下させずにダムの堆積土砂を適切な量と質を制御しつつ下流へ放流可能な施設を開発することを目的として、ダムにおける上下流の水位差のエネルギーを活用して、無動力で堆砂を吸引・放流する「潜行吸引式排砂管」の開発状況について報告する。

<キーワード> 貯水池堆砂、排砂技術、吸引工法、潜行吸引式排砂管、現地排砂実験

 

【特集報文】 アンサンブル予測雨量を活用したダム洪水調節手法

猪股広典・川ア将生

<抄録> アンサンブル予測雨量の計算およびダム洪水調節への適用性について複数のイベントを対象とした検討を行った。結果としてアンサンブル予測雨量を用いることで洪水調節効果を高めることができるイベントとそうでないイベントが存在することが確認された。

<キーワード> ダム洪水調節、アンサンブル予測雨量

 

【現地レポート】 鹿野川ダム改造事業の概要 〜選択取水関連工事状況(中間報告)〜

西澤洋行・三宅和志・原田隆史・吉岡修一・尾嶋百合香

<抄録> 鹿野川ダムでは、治水機能の増強及び河川環境の改善を目的としたダム改造事業を進めているところである。本稿では、発電を継続した現行貯水運用を行いながら現場施工している「選択取水設備工事」について、その概要の報告を行うものである。

<キーワード> 鹿野川ダム、ダム改造事業、選択取水設備、低水放流設備、チャンバー

 

【報文】 濁水に含まれる無機物の堆積が付着藻類の一次生産に及ぼす影響

宮川幸雄・森 照貴・小野田幸生・萱場祐一

<抄録> 濁水に含まれる無機物が堆積し、付着膜の無機物量比が変化することで、付着藻類の一次生産速度がどのように変化するのかを検証した。その結果、付着膜中の無機物量比が増加するほど、付着藻類の一次生産速度の最大値が低下することが示された。

<キーワード> 濁り、付着膜、一次生産速度、光、クロロフィルa

 

【報文】 プローブ旅行時間データの取得状況と旅行時間信頼性指標値の信頼度との関係

関谷浩孝・諸田恵士・高宮 進

<抄録> 国道4号の2つのOD区間を対象に、プローブ旅行時間データの取得状況(データ取得日数)と、これから算定される旅行時間信頼性指標の信頼度との関係について分析を行った。この結果、一定の信頼度を確保するために必要なデータ取得日数等に関する知見を得た。

<キーワード> 旅行時間信頼性、旅行時間変動、プローブデータ、道路交通

 

【土研センター】 粗粒材養浜により蘇った砂浜:茅ヶ崎中海岸の例

宇多高明・細川順一・石川仁憲

<抄録> 茅ヶ崎中海岸では、侵食対策として2012年までに計画量の約1/2(19.6万m3)の養浜が行われた結果、砂浜の回復が著しい。砂浜海岸に対し、礫(40%)が多く含まれた養浜材を用いたことが特徴である。ここでは、粗粒材養浜による保全効果を定量的に調べ、物理的意味も含め効果的な海岸保全手法であることを明らかにした。

<キーワード> 養浜、粗粒材、海岸保全、茅ケ崎中海岸

 

 

平成26年3月 報文抄録
 

【報文】 ITSスポットを用いた個別情報提供サービスについて

金澤文彦・澤 純平・渡部大輔・嶌村嘉智

<抄録> 本研究では、ITSスポットを用いて物流車両等の特定車両に対して個別の情報提供を行うような個別情報提供サービスの通信実験を行い、サービス実現のために必要な路車間通信における送受信可能なデータ量等の制約条件を検討した上で、道路交通の課題解消等の観点から、サービス内容を検討したため、その報告を行う。

<キーワード> ITSスポット、個別情報提供システム、DSRC、特定車両、リクエスト

 

【報文】 洪水予測を目的とした分布型流出モデルの同定

伊藤弘之・飯野光則・平塚真里子・大浪裕之

<抄録> 分布型流出モデルについて、洪水予測の観点からの精度向上を図るため、流域内に多地点の再現地点を設けることによる流出モデル定数の最適化、河道貯留効果やダム効果の適切な反映等の方法について検討した。

<キーワード> 分布型流出モデル、洪水予測、リアルタイム観測技術、河道特性、ダム効果

 

【報文】 豪雨の強度増加に対する効果的な都市雨水対策手法の抽出

橋本 翼・小川文章

<抄録> 将来的な豪雨の強度増加が都市雨水対策に与えるのか、3地区でケーススタディを行うとともに、豪雨の強度増加に対する対策として、多岐にわたる都市雨水対策手法の効果発現性や実現可能性を評価し、降雨特性に応じた効果的な対策手法を示した。

<キーワード> 都市雨水対策手法、豪雨、浸水原因、ケーススタディ、定性的評価

 

【報文】 地盤調査法や施工法の違いを考慮した道路橋杭基礎の部材照査に用いる部分係数の検討

西田秀明・七澤利明・河野哲也・北浦光章・鈴木慶吾

<抄録> 道路橋に関する技術基準である道路橋示方書では、次期改定での部分係数設計法の導入にむけた検討が鋭意進められている。本文は、道路橋杭基礎における杭基礎の部材照査を対象とした、地盤調査法や杭の施工法の違いに応じた部分係数に関する研究の概要について紹介するものである。

<キーワード> 道路橋、杭基礎、部材照査、信頼性評価、部分係数

 

【報文】 2010年10月ムラピ火山噴火における降下火砕堆積物分布調査

清水武志・山越隆雄・木佐洋志・中野陽子・森田耕司・石塚忠範

<抄録> 2010年10月に噴火したインドネシアのムラピ火山によって多量の降下火砕物が堆積し、噴火後の降雨によって土石流災害が発生した。筆者らは噴火後に実施した降下火砕堆積物の現地調査を火山山麓の方位を対象に実施したため、本稿ではその結果を報告する。

<キーワード> 降下火砕堆積物、火山灰、ムラピ火山、インドネシア、土石流

 

【報文】 交通安全施策への急減速データの活用

尾崎悠太・矢田淳一・藪 雅行

<抄録> 本報文では、危険箇所抽出や効果評価へのプローブデータの活用方法を検討するため、カーナビサービスにより収集したデータから生成される急減速データとドライブレコーダから得られる急減速データの2つを使用して、プローブデータのデータ特性や事故データとの関係について整理した。

<キーワード> 交通安全対策、プローブデータ、危険箇所抽出、効果評価

 

【報文】 鉄筋コンクリート床版の疲労耐久性に関する最近の研究

田中良樹・村越 潤・長屋優子・吉田英二

<抄録> 2007〜2012年度に実施した多点動的計測を伴う鉄筋コンクリート床版の輪荷重走行試験の結果を総括する。それらの結果から得られた鉄筋コンクリート床版の疲労損傷機構に関する新たな知見と、鋼板接着の補強効果及び打継目の影響について新たな視点から検討した結果について概説する。

<キーワード> 床版、疲労、鋼板接着、打継目、輪荷重走行試験

 

【現地レポート】 雲仙・普賢岳噴火災害から20年

佐藤保之

<抄録> 雲仙・普賢岳火山噴火災害では、人命財産、地域社会や経済にも深刻な打撃を与えた。平成5年4月に建設省雲仙復興工事事務所(当時)が開設され、今年で事務所開設から20年が経過することら、これまでの噴火災害からの復興の取り組みを報告する。

<キーワード> 活火山、復興、技術開発、災害伝承、ジオパーク

 

【土研センター】 長期間供用したコンクリート舗装の現況調査と維持修繕方法の検討

鳥山義則・浅井順一・山本 実

<抄録> 長期間供用したコンクリート舗装の補修対策工法を検討するため、国土交通省中国地方整備局岡山国道事務所が、施工後40年以上経過している国道53号のコンクリート舗装区間を対象として実施した調査検討結果を報告するものである。

<キーワード> 既設コンクリート舗装、長期供用、路面性状調査、FWD調査、補修方法検討

 

 

平成26年4月 報文抄録
 
特 集:道路インフラの「本格的なメンテナンス時代」を支える技術
 

【特集報文】 本格的なメンテナンス時代における道路橋の維持管理技術の方向性

玉越隆史・宮原 史

<抄録> 本格的なメンテナンス時代に入ったといわれている我が国の道路橋について、維持管理の観点からその特徴について整理するとともに、それらを踏まえた持続性のある合理的な保全体制の確立のために求められる技術と国土技術政策総合研究所の取り組みを紹介する。

<キーワード> 道路橋、維持管理、耐久性、信頼性、リスク

 

【特集報文】 道路トンネルにおけるメンテナンスの取組み

砂金伸治・真下英人・石村利明

<抄録> 道路トンネルは一般に地形に制約をもった箇所にある場合が多い。そのため通行が困難となった場合に適当な迂回路がなく、交通に与える影響が非常に大きいと考えられる。我が国のトンネルは道路整備の進展とトンネル技術の進歩とともに1960年以降急激な伸びで建設されており、今後はこれまで以上に維持管理にきめ細かい配慮が必要になってくる。本稿では、これまでの道路トンネルに関する点検制度を概括するとともに、これまでに言及されているメンテナンスサイクルを通じたスパイラルアップのポイント、また、メンテナンスサイクルを支える技術の現況と課題について述べる。

<キーワード> トンネル、維持管理、点検、対策

 

【特集報文】 土工構造物のメンテナンスサイクル確立に向けた取組み

宮武裕昭・中谷昌一

<抄録> 土工構造物は、道路延長の大部分において構築された構造物であり、材料や作用に不確実性を内包するという特性を有しており、こうした特性を考慮した維持点検が求められている。本稿では、土工構造物の特性と従来行われてきた維持管理の概要を述べ、本格的なメンテナンス時代の到来に向けてメンテナンスサイクルの確立に向けた現状と課題について述べる。

<キーワード> 土工構造物、防災点検、災害、老朽化対策、グラウンドアンカー、補強土

 

【特集報文】 舗装の特性を考慮したマネジメント

渡邉一弘・久保和幸

<抄録> 多様な道路施設の一つである舗装において、そのマネジメントに取り組む上で認識しておくべき特性について改めて整理し、さらに、PDCA(Plan-Do-Check-Act)のサイクルを意識したマネジメントのフローを提示し、それを実施する上での留意事項をとりまとめたものである。

<キーワード> 舗装、マネジメント、特性、PDCAサイクル

 

【特集報文】 道路附属物(道路標識、道路照明施設等)メンテナンスの現状と課題

藪 雅行・池原圭一・武本 東

<抄録> 道路附属物は、平成19年末時点で道路照明が約350万基、道路標識が約220万基あるように、施設数が非常に膨大である。一方で比較的小型な施設が多いことから更新の費用が相対的に小さいなどの特徴がある。本稿では、既設点検要領の概要を紹介しつつ、点検時に必要な視点と、メンテナンスサイクル構築のための点検手法などの現状と課題を述べる。

<キーワード> 道路附属物、道路標識、道路照明施設、道路情報提供装置、支柱、維持管理、点検

 

【現地レポート】 高精度な道路防災点検手法による斜面安定度の総合的評価(岐阜県御嵩町 国道21号)

伊藤仁志

<抄録> 道路防災点検において、精度の高いスクリーニング及び詳細調査を実施した。詳細な地表踏査によって崩壊地周辺の地形・地質特性が判明し、これに基づいて斜面の安定度を評価した。また、土検棒の貫入試験のデータを「斜面の傾斜角―土層深」の関係図で整理することによって、斜面の安定度を評価する方法を新たに示した。

<キーワード> 道路防災点検、地表踏査、土検棒の貫入試験、斜面傾斜角―土層深の関係図、斜面安定度

 

【報文】 既設道路橋基礎の液状化対策に関する動的遠心力模型実験

谷本俊輔・西田秀明・七澤利明・佐藤靖彦・深田 久

<抄録> 本報は、既設道路橋基礎の耐震補強として液状化対策工法を適用することを想定し、性能検証における課題を整理するとともに、締固め工法を例として、課題に対する検証のための動的遠心力模型実験を実施した結果についてとりまとめたものである。

<キーワード> 基礎、耐震補強、液状化対策、動的遠心力模型実験

 

【報文】 橋台部ジョイントレス構造における鋼−コンクリート接合部の耐力評価に関する正負交番実験

和田圭仙・遠藤繁人・七澤利明・星隈順一

<抄録> 本研究は、橋台部ジョイントレス構造のうち、スタッドジベルを用いた鋼−コンクリート接合部を対象として縮小模型供試体1体による正負交番載荷実験を実施し、当該部位の耐力特性や抵抗メカニズムについて実験的に検討した。実験の結果、設計で考慮する荷重条件時における損傷程度や、最終的な破壊形態について確認できた。

<キーワード> 橋台部ジョイントレス構造、インテグラル、鋼−コンクリート、接合部、正負交番実験

 

【報文】 鋼道路橋桁端部の腐食断面欠損に対する当て板補強

田中良樹・村越 潤・飯塚拓英

<抄録> 鋼道路橋の桁端部で見られる、腐食による著しい断面欠損への応急対策として、高力ボルト、仮設用高力クランプと接着剤を併用した当て板補強を実橋で試験的に行った。本文では、鋼桁の桁端部腐食の影響を整理した上で、実橋での試験施工の内容と、その効果確認のために行った走行載荷試験及び供用下のひずみ測定の結果を述べる。

<キーワード> 腐食、応力集中、当て板補強、ボルト接着継手、高力クランプ

 

【土研センター】 がれき混じり泥土の再生処理技術とその分別・改質特性

平嶋 裕・平石耕一・堀内晴生

<抄録> 東日本大震災にて大量に発生している津波堆積物に対して、回転式破砕混合機とカルシア改質材を用いて、復興用土工材料に分別・改質する検討を実施した。検討の結果、本工法は精度良い分別と改質ができ、改質された土は防潮堤や道路等の盛土材料、地盤の嵩上げ材料等に有効利用できることが明らかになった。

<キーワード> 津波堆積物、泥土、分別、カルシア改質、回転式破砕混合機

 

 

平成26年5月 報文抄録
 

【報文】 下水処理水中の化学物質排出・移動量届出制度における第一種指定化学物質の環境リスク初期評価

真野浩行・岡本誠一郎

<抄録> 本稿は、化学物質排出移動量届出制度における第一種指定化学物質について、ヒト健康リスクおよび生態リスクの初期評価を実施した結果を報告する。評価した化学物質のうち詳細なヒト健康リスク評価を行う必要があるとされたものは2物質、詳細な生態リスク評価を行う必要があるとされたものは9物質であった。

<キーワード> PRTR、化学物質、生態影響、スクリーニング評価、ヒト健康

 

【報文】 微生物保持担体処理による下水処理水の藻類増殖抑制効果

柴山慶行・岡安祐司・岡本誠一郎

<抄録> 下水処理水を修景用に再利用した際には、栄養塩類が環境水よりも高濃度に含まれていることもあり、糸状の藻類が大増殖し、景観や維持管理上の問題になることがある。そこで、処理水中の溶存態マンガンの濃度を低下させる簡易的な処理手法を適用し、池や水路を模擬したものに通水したところ、藻類増殖が大幅に減ったことが確認できた。

<キーワード> 下水処理水、再利用、高度処理、藻類増殖

 

【報文】 軽量盛土を用いた橋台の地震時挙動の評価

藤原慎八・篠原聖二・西田秀明・石田雅博

<抄録> 土圧軽減などの目的で、橋台背面にEPS盛土が設置される事例があるが、EPS盛土を背面に有する橋台の地震時挙動については明確にはなっていない。そこで本検討では、橋台背面にEPS盛土を設置した場合の橋台の地震時挙動を把握することを目的として、動的遠心模型実験を実施した。

<キーワード> 橋台、軽量盛土、地震時挙動、動的遠心模型実験

 

【報文】 ASRによりひび割れが生じたPC撤去桁の耐荷性能

木村嘉富・和田圭仙・青柳 聖

<抄録> 桁下面に橋軸方向ひび割れが生じたPC撤去桁を活用して、ひび割れによる桁の耐荷性能の違いに着目した載荷試験を行った。また、載荷試験後には、ひび割れ状況および発生原因を把握するため、解体調査および材料試験を実施した。

<キーワード> PC撤去桁、橋軸方向ひび割れ、載荷試験、ASR

 

【報文】 早期断面閉合を行った山岳トンネルの変形挙動

淡路動太・砂金伸治・河田皓介・真下英人

<抄録> 早期断面閉合の変形挙動を検討するために、三次元数値解析を実施した。その結果、早期断面閉合はトンネル変位と塑性域の抑制効果を持ち、トンネル構造の保有耐力を効率的に活用できることが分かった。一方、支保部材には大きな軸力が発生し、インバート部では、軸圧縮耐力に加え曲げ耐力も考慮する必要があることが分かった。

<キーワード> 山岳トンネル、補助ベンチ付き全断面工法、早期断面閉合、三次元数値解析

 

【報文】 路面への雨水浸入が舗装の構造的健全度の低下に与える影響

渡邉一弘・堀内智司・久保和幸

<抄録> 舗装繰返し載荷試験施設において同一舗装断面に対して路面への雨水の浸入の有無等の試験条件を相違させて繰返し載荷試験を行った結果を報告し、それら試験条件の相違が舗装の疲労蓄積に与える影響に関して考察を加えるものである。

<キーワード> 舗装、雨水、疲労、繰返し載荷、構造的健全性、弾性係数

 

【報文】 スマートフォンを活用した自転車通行実態調査手法の提案

中野達也・小林 寛・今田勝昭・高宮 進

<抄録> 本研究では、スマートフォンを活用した効率的な自転車通行実態調査手法を開発し、試行調査を行うことで、自転車ネットワーク計画の検討への活用可能性を検証するとともに、本調査手法の課題や留意点を整理した。

<キーワード> スマートフォン、自転車通行実態調査、自転車ネットワーク計画

 

【報文】 民間プローブデータを用いたボトルネック交差点とその影響範囲の特定方法

橋本浩良・水木智英・高宮 進

<抄録> 本研究では、日々の交通状況を踏まえたボトルネック交差点とその影響範囲の特定方法を提案し、具体的提案手法を示すとともに、その有用性を、実際の主要渋滞箇所を事例に検証することにより明らかとした。

<キーワード> 道路交通調査、プローブデータ、交通円滑化、ボトルネック箇所

 

【現地レポート】 神戸市下水道における資源・エネルギー回収の取組み

阪口浩一・坂部敬祐・内海秀人・小松原謙輔

<抄録> 神戸市における「こうべバイオガス」の活用、リン回収、新たな公民連携による発電事業を紹介する。これらは全国に先駆けたもので、これまでの下水処理場のイメージを一新させた取組みであると自負している。下水処理場は「資源の宝庫」であり、今後もエネルギー再生、資源再生に積極的に取り組んでいきたい。

<キーワード> 消化ガス、天然ガス自動車燃料、都市ガス導管注入、リン回収、太陽光・バイオガス発電

 

【土研センター】 つくば舗装技術交流会(TPT)の取組み

小柴朋広・大田孝二・倉持智明・佐々木 巌

<抄録> つくば舗装技術交流会(TPT)は土木研究所と舗装会社の官民協力の下、舗装技術に関する様々な研究が行われ、平成6年の発足からおよそ20年が経過した。本文ではこれまで行われてきた研究成果、および平成20年より始まった勉強会の概要について紹介する。

<キーワード> 舗装技術、官民協力、研究、勉強会

 

 

平成26年6月 報文抄録
 
特 集:国際社会における水災害リスク軽減の取組み
 

【特集報文】 ICHARMに期待される役割

井樋世一郎

<抄録> 2013年7月、ユネスコと日本国政府の間で、ICHARMに関する協定が更新された。世界では水関連災害による被害が増加傾向にある中、ICHARMにおいては、これまでより一層水災害に関する研究で世界の先頭に立ち、先進的な研究を世界各国の防災力向上に役立てることを期待している。

<キーワード> ICHARM、水関連災害、ユネスコ、防災協働対話、運営理事会

 

【特集報文】 国連世界防災会議へ向けてのICHARMの活動
〜Global Water-related Disaster Risk Indicesの開発〜

栗林大輔・岡積敏雄・李商恩・GUSYEV MAKSYM・郭栄珠・安田成夫

<抄録> 世界規模の水災害に対応するために、様々な国際機関においては、「国連世界防災会議」を始め様々な取り組みが行われている。ICHARMでは、その貢献の一つとして、「Global Water-related Disaster Risk Indices」の開発を進めており、実際にアジア三流域で適用を行ってダムや堤防の効果を検証した。

<キーワード> 国連世界防災会議、洪水、リスク評価、BTOPモデル、FIDモデル

 

【特集報文】 アジアにおける水災害リスク評価と適応策の研究
〜「気候変動リスク情報創生プログラム」におけるICHARMの取組み〜

上野山智也・岩見洋一・岡積敏雄・安田成夫

<抄録> 文部科学省の「気候変動リスク情報創生プログラム」(2012〜2016年)においてICHARMが取り組んでいるアジアの5流域を対象にした気候変動に伴う河川流量、浸水域の変化予測、社会経済影響評価の研究について、特にフィリピンのパンパンガ川での分析結果を紹介する。

<キーワード> 気候変動、河川流量、浸水域、社会経済影響評価、アジア、創生プログラム

 

【特集報文】 降雨流出氾濫(RRI)モデルの開発と応用

佐山敬洋・岩見洋一

<抄録> 山地・平野を問わず、降雨流出から洪水氾濫までを流域一体で解析する降雨流出氾濫モデル(Rainfall-Runoff-Inundation: RRI Model)の開発を進めてきた。本報は、RRIモデル開発の背景と構成・特徴を概説したうえで、インダス川流域とチャオプラヤ川流域を含む適用事例を紹介する。

<キーワード> 洪水氾濫、降雨流出、ハザードマップ、タイ洪水、パキスタン洪水

 

【特集報文】 半乾燥山岳地域における水文解析モデルの適用性評価並びに気候変化影響評価
〜イラン国カルン川流域を例として〜

菱沼志朗

<抄録> 本報文では、イラン国カルン川流域を対象にした水文解析モデルの適用性評価ならびに気候変化影響評価を行い、半乾燥山岳地域における水文解析が直面する課題に対する解決策を提示した。

<キーワード> 半乾燥山岳地域、BTOPMC、ホートン型地表流、融雪流出、気候変化影響評価

 

【現地レポート】 台風30号によるフィリピン国における高潮災害と予警報活動

宮本 守・田島芳満・安田誠宏・信岡尚道・川崎浩司・浅野雄司

<抄録> 2013年11月に発生した台風Haiyanによる大規模な高潮災害を受け、公益社団法人土木学会とフィリピン土木学会PICEは合同で調査団を派遣し、レイテ島東部とサマール島で高潮災害に関する現地調査を実施した。本稿では合同調査団による調査結果と災害警戒情報の発表履歴等に関して現地ヒアリングから明らかになったことについて述べた。

<キーワード> 高潮、高波、浸水痕跡、災害警戒情報、避難命令

 

【報文】 舗装材としての他産業再生資材及び再生路盤材の実態調査

堀内智司・寺田 剛・川上篤史・久保和幸

<抄録> 適切なリサイクル促進や省資源化を図るため、アスファルト混合物に使用される他産業再生資材の実態調査を行い、約半数のプラントで使用実績があることがわかった。また、セメントコンクリート発生材由来の再生クラッシャランについて、細粒分が多くなる場合の強度面と環境面への影響を検討した。

<キーワード> 舗装、他産業再生資材、再生路盤材、実態調査

 

【報文】 下水道管路施設の埋戻し土の液状化対策工法の施工管理

松橋 学・深谷 渉・小川文章

<抄録> 国総研では、耐震対策の促進に向け、管路施設の液状化対策の一つである埋戻し土の締固め工法を対象として、施工管理方法に関する検討を行った。その結果、狭隘部での管きょ埋戻し時には、現場で即時に締固め度を管理することが困難なことや、試験施工を行うことで効率的に締固め度90%程度以上を達成できることが分かった。

<キーワード> 下水道、管きょ、液状化対策、施工管理、埋戻し土の締固め

 

【報文】 交通安全対策による速度抑制効果の簡易な測定方法の実験

鬼塚大輔・大橋幸子・木村 泰・藪 雅行

<抄録> 生活道路における簡易な車両の走行速度測定として、ストップウォッチでの測定の有効性の検討と適切な測定区間長の把握を実験により行った。その結果、ストップウォッチ測定は有効であり、測定区間長は30m程度が望ましいと言えた。また、車両の速度が40km/h以下であれば、20m程度の測定区間長でも測定は有効と言えた

<キーワード> 生活道路、交通安全対策、速度測定方法、整備効果把握

 

【土研センター】 沖縄本島にみるリーフ海岸での開発と保全の姿

宇多高明・五十嵐竜行

<抄録> 本稿では、過去の様々な開発のその後の状況や、沖縄の原風景が保たれている海岸の姿について現地踏査を行い、種々の問題の発生を未然に防ぐために必要とされた配慮事項について考察した。現地踏査は2013年1月、沖縄本島で実施した。

<キーワード> 沖縄の原風景、人工海浜、ポケットビーチ、リーフ、侵食・飛砂対策

 

 

平成26年7月 報文抄録
 

【報文】 鋼板接着補強した道路橋コンクリート床版の劣化診断手法

玉越隆史・石尾真理・強瀬義輝

<抄録> 補修や補強が行われた道路橋コンクリート床版では、点検が困難となる点が課題となっていることから、実際の供用条件下で損傷した鋼板補強床版に対して既存の代表的な非破壊検査手法を適用し、内部の変状の検出性能について調査した結果を報告する。

<キーワード> 道路橋、点検、維持管理、非破壊検査技術、鋼板補強床版

 

【報文】 コストキャップ型下水道の導入効果
〜低コスト型下水道整備で持続可能な下水道経営を〜

森田弘昭・橋本 翼・深谷 渉・小川文章

<抄録> コストキャップ型下水道は、厳しい地方財政を前提条件として下水道整備への投資可能額を設定し、その範囲で持続的に下水道経営が可能となる経営モデルを提案するものである。愛知県美浜町の協力を得て、既往の計画手法、整備手法、維持管理方法の徹底的な見直しを行った結果、建設費及び維持管理費の大幅な削減が達成可能となり、下水道経営にも好影響をもたらすことが示された。

<キーワード> コストキャップ型下水道、下水道経営モデル、投資可能額、クイックプロジェクト

 

 

【報文】 3次元モデルを利用した樋門・樋管における維持管理情報の統合管理

谷口寿俊・青山憲明・藤田 玲・重高浩一

<抄録> 本研究では、土木系と機械設備系との複合構造物である樋門樋管を対象として、3次元モデルに材質、品質、出来形、点検・補修記録等の維持管理に必要となる各種情報を統合したCIM(Construction Information Modeling)のプロトタイプモデルを作成した。

<キーワード> CIM、3次元モデル、維持管理、樋門・樋管

 

 

【報文】 天然ダム越流侵食に対する侵食抑止工の効果に関する水路実験

梶 昭仁・清水武志・森田耕司・石塚忠範

<抄録> 天然ダムに対する対策として排水路などによる侵食抑制や砂防堰堤などによる土砂の捕捉が考えられる。水路実験によって、排水路の配置によって天然ダム決壊後までの時間やピーク流量が異なることを示した。また、ネットによる捕捉工に関する試験的な実験結果を紹介した。

<キーワード> 天然ダム、対策工、配置、天然ダム決壊

 

 

【報文】 国土交通省における調査・設計等業務の入札・契約の近況と今後の課題について

吉田純土・森田康夫・小塚 清・藤井都弥子

<抄録> 近年、国土交通省における調査・設計等分野の入札・契約においては、総合評価落札方式の導入が進んでいる。一方で、入札額が調査基準価格近傍に集中する、技術評価点の得点差が小さい業務がある等の課題も明らかになっている。こうした課題に対応するために評価方法や発注方式の見直しを検討した。

<キーワード> 入札・契約、調査・設計等業務、総合評価落札方式、低入札、品質確保

 

 

【報文】 コンクリート用再生骨材等の再資源化の過程における二酸化炭素固定量

長M庸介・神田太朗・角湯克典

<抄録> コンクリートは炭酸化と呼ばれる反応により大気中の二酸化炭素を固定する。本研究では、コンクリートの二酸化炭素固定に関する基礎的な知見を得るため、コンクリートの主な再生利用方法である路盤材、及び新たな再生利用方法としてJIS化されたコンクリート用再生骨材を模擬した試料を作成し、それらの二酸化炭素固定量を測定した。

<キーワード> コンクリート、炭酸化、中性化、二酸化炭素固定、再生骨材

 

 

【報文】 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の合成開口レーダPALSARを用いた火山噴火後の土砂災害に関する情報収集

清水武志・石塚忠範

<抄録> ALOS/PALSARの防災利用実証実験のワーキンググループの活動の一環として火山噴火後の土砂災害に関する情報収集について検討してきた。2011年から2013年までの成果を既往発表資料に基づいて要約して紹介する。強度画像を用いることで、火砕流堆積物、降灰範囲、山体崩壊および河道の埋積などの現象を見ることができる可能性を示した。また、位相情報を用いたコヒーレンス解析および差分干渉SARにより、降灰範囲およびその層厚について推定できる可能性を示した。

<キーワード> ALOS/PALSAR、合成開口レーダ、降灰範囲、 コヒーレンス解析、差分干渉

 

 

【報文】 地震計データを用いた土砂移動発生時刻及び箇所推定の解析

高原晃宙・木下篤彦・水谷 佑・石塚忠範

<抄録> 地震計データを用いて、土石流や表層崩壊の波形特性把握、土砂移動発生時刻及び箇所推定を試みた。波形解析より、土石流や表層崩壊は深層崩壊とは異なる周波数特性を有する事が認められた。また、地盤振動による振幅は、土砂移動発生位置からの距離に応じて減衰する関係を仮定し解析を実施した結果、時刻及び箇所の推定を概ね良好に示す事ができた。

<キーワード> 土石流、表層崩壊、地震計、地盤振動、振幅

 

 

【現地レポート】 福岡市における再生水利用の取組み

有働健一郎

<抄録> 福岡市は、1978年に大渇水を受けたことを契機に市民・事業者・行政が一体となり「節水型都市づくり」に取り組んできた。その取り組みのひとつとして再生水事業を立ち上げ、1980年に日本で初めて再生水の供給を開始し、現在の供給箇所数は日本一である。また、2003年には日本で初めて再生水要綱を条例化した。

<キーワード> 再生水事業、大渇水、節水型都市づくり、供給開始は日本初で供給箇所は日本一、日本で初めて要綱を条例化

 

 

【土研センター】 青森中央大橋の健全度評価と補修方法

中野正則・安波博道・加納 勇・中島和俊

<抄録> 表面処理剤が施された耐候性鋼橋梁である青森中央大橋において、桁端部等に生じた異常腐食に対する補修の要否に関する詳細な検討を実施し、さらに箱桁内部の異常腐食に対する構造安全性の照査ならびに補修補強方法の検討を実施した。本報文では、平成23年度以降3ヶ年に亘る一連の成果を取りまとめて報告する。

<キーワード> 耐候性鋼橋梁、健全度評価、載荷試験、ワッペン式暴露試験、塗替え塗装

 

 

平成26年8月 報文抄録
 
特 集:IT活用による道路交通の高度化
 

【特集報文】 ITSセカンドステージの普及策に関する一考察

牧野浩志

<抄録> セカンドステージのITSのプラットフォームとなるITSスポット対応カーナビの機能について概説し、それらを組み合わせて活用することで、自動車交通に起因する社会の問題をどのように解決していくのかについて論説した

<キーワード> ITS、セカンドステージ、スマートウェイ、ITSスポット、スマートグロース

 

【特集報文】 ITSスポットサービスの概要とモニタ調査結果

岩武宏一・鈴木彰一・鈴木一史・金澤文彦

<抄録> 2011年より、全国の高速道路上を中心に約1,600箇所にITSスポットが設置され、本格的なITSスポットサービスが開始された。本稿では、ITSスポットサービスの内容について紹介する。また、モニタに対してITSスポット対応カーナビを貸与しITSスポットサービスを体験して頂いており、そのサービスに対する有効性アンケート調査結果について、報告する。

<キーワード> ITSスポットサービス、情報提供、利用者評価

 

 

【特集報文】 プローブ情報利活用システムの構築

佐治秀剛・田中良寛・鹿野島秀行・牧野浩志

<抄録> 2011年より全国の高速道路を中心に設置しているITSスポットによりプローブ情報を収集している。本稿では、プローブ情報及びプローブ情報を収集するシステムの概要を説明するとともに、道路管理者がプローブ情報を活用するために開発したプローブ情報利活用システムの機能概要について報告する。

<キーワード> ITSスポット、プローブ情報、利活用システム、道路管理

 

 

【特集報文】 ITS分野における日米共同研究

築地貴裕・鹿野島秀行・牧野浩志

<抄録> 本稿では、国総研ITS研究室が米国運輸省研究・革新技術庁と共同研究を行っている「プローブデータ」、「ITSの効果評価」について、これまでの研究成果及び今後の展望を報告した。共同研究を進めていく中で、日米におけるITSのこれまでの取り組みや解決すべき課題、関心分野には、共通する部分が多くあることが明らかになった。

<キーワード> 日米共同研究、プローブデータ、アプリケーション、ITSの効果評価、効果評価指標

 

 

【特集報文】 スマートフォンアプリを利用した人の交通行動調査とその分析技術

松島敏和・橋本浩良・高宮 進

<抄録> スマートフォンアプリを利用した人の交通行動調査をつくば市・筑波大学と協働で実施した。本稿では、調査の概要と収集された移動情報データの分析技術を紹介する。併せて、スマートフォンアプリを利用した人の交通行動調査の今後の展望について述べる。

<キーワード> プローブパーソン調査、GPS、スマートフォンアプリ、交通行動分析

 

 

【特集報文】 急減速データを利用した危険箇所抽出手法の確立に向けた調査

尾崎悠太・矢田淳一・神谷 翔・藪 雅行・高宮 進

<抄録> プローブデータのうち急減速の発生時に収集されるデータを利用した危険箇所の抽出をより的確に実施するための検討として実施した、急減速データの特性調査、急減速データの収集状況と事故発生状況の関係比較の結果、及び急減速データによる危険箇所抽出手法を行う際の留意点について述べる。

<キーワード> プローブデータ、急減速データ、危険箇所抽出、交通安全対策

 

 

【特集報文】 道路事業に係わる行政相談資料及びSNSデータへのデータマイニング技術の適用性に関する考察

今井龍一・田嶋聡司・重高浩一

<抄録> 道路事業に係わる国民の声に対してデータマイニング技術を適用することで、潜在的な問題やニーズなど、有益な情報を発掘できる可能性がある。本稿は、行政相談資料およびTwitterのつぶやき(ツイート)に対してデータマイニング技術を適用し、道路事業の計画や評価への適用可能性を考察した結果を報告する。

<キーワード>データマイニング、道路事業、twitter、行政相談

 

 

【現地レポート】 狭あい道路のIT活用による交通安全 〜最新の事例(高知、静岡など)〜

熊谷靖彦・嶋 浩司・齋藤 徹

<抄録> 高知工科大学では高知県および静岡県と共同で、中山間道路における狭隘区間の相互通行を安全かつ円滑に走行するための「ゆずりあいロード支援システム」を開発し、実運用されている。これらの技術開発は、地域固有の道路交通問題を、地域ニーズに応える地域密着のITSで、「草の根ITS」と呼んでいる。

<キーワード> 高知、静岡、1.5車線的道路整備、ITS、草の根、中山間地域

 

 

【土研センター】 2011年大津波時に相馬市八沢浦干拓地で起きた悲しい出来事

宇多高明・伊達文美

<抄録> 長い歴史を持つ各地の神社が大津波に耐えた事実は、歴史津波に関する有効な情報になりえる。今回、南相馬市を調査したところ、周辺農地が津波により全面水没する被害を受けたにもかかわらず、丘上に祭られていた熊野神社は津波災害を完全に免れた。一方、熊野神社の南側の海岸低地に祭られた山田神社は周辺家屋とともに流失し、46名の命とともに失われるという悲話が残されていた。

<キーワード> 大津波、神社、災害

 

 

平成26年9月 報文抄録
 

【報文】 地震時の斜面変状が橋梁基礎の安全余裕度に及ぼす影響に関する解析的検討

遠藤繁人・西田秀明・石田雅博

<抄録> 地震時に堆積土のすべり又は崩壊により斜面変状を生じうる箇所に設置された道路橋基礎を対象に傾斜角や地盤定数などの斜面の条件、設計地震力などの斜面の変状が生じる条件や、基礎のすべり力の載荷幅、受働土圧抵抗の考慮の有無が、基礎の安全余裕度に及ぼす影響について解析的検討を行った。

<キーワード> 斜面変状、柱状体深礎基礎、すべり力、載荷幅、受働土圧抵抗

 

【報文】 衛星雨量データの土砂災害危険度分析への活用

清水孝一・岡積敏雄・石塚忠範

<抄録> 一般に途上国では、地上雨量計のネットワークやレーダー雨量計などの水文観測情報が不足している。このため、大規模土砂災害時の危機管理対応を政府や国出先機関で迅速に行うことを目的として、衛星雨量データを用いて土砂災害の危険度を推定する手法について研究している。その成果を報告するものである。

<キーワード> 土砂災害、衛星雨量、GSMaP、土砂災害危険度情報、長期雨量指標

 

 

【報文】 MODIS時系列画像と数値標高データを用いた広域の洪水氾濫域抽出
〜2011年タイ国チャオプラヤ川大洪水〜

郭 栄珠・萬矢敦啓・岩見洋一

<抄録> タイ国チャオプラヤ川流域における広域的な洪水氾濫域マップを迅速に作成するため、光学衛星画像によるバンド別スペクトルとの相関を分析し、新たな地表水指数を開発した。その結果、一次浸水域を抽出したうえ、数値標高データを組み合わせて二次浸水域へ修正により、3次元的な浸水域の判読精度が改善された。

<キーワード> タイ国チャオプラヤ川、洪水氾濫マップ、地表水指数、数値標高データ、浸水域

 

 

【報文】 多言語で利用可能な洪水災害準備体制指標の開発

南雲直子・中須 正・岡積敏雄・清水孝一

<抄録> 洪水災害の発生頻度が高い途上国の地域コミュニティーで利用できる「洪水災害準備体制指標」を構築し、多言語化してウェブサイトにて公開した。設問項目改善のために実施した現地調査では防災力向上の教育的効果も得られた。本指標を用いることで、定期的な防災体制の現状把握と達成度評価が可能である。

<キーワード> 洪水、防災力評価、地域コミュニティー、多言語、ウェブサイト

 

 

【報文】 大規模な土石流の流下・堆積に関する数値計算プログラム作成の留意点

内田太郎・丹羽 諭・西口幸希・村上正人・蒲原潤一・岡本 敦

<抄録> 大規模な土石流の流下・堆積を記述する数値計算手法に関する検討を行うとともに、プログラム作成上、重要と考えられる留意点の整理を行った。特に、支配方程式の適用範囲、離散化手法、フェーズシフトの取扱いに関する細かい仕様について検討を行い、これらの細かい仕様が土石流の流下・堆積に関する数値計算結果に大きく影響する場合があることを示した。

<キーワード> 大規模な土石流、数値計算プログラム

 

 

【報文】 道路維持管理における性能規定型契約〜構成する概念および多面的効果〜

吉田 武

<抄録> 本稿では、性能規定型契約方式を構成する概念を性能規定、性能保証、包括化、連続化、長期化の5つと定義し、世界中の契約事例の事後評価を通じて当該方式の実施効果が多面的であることを指摘した上で、各効果と上記概念との関係を明らかにする。

<キーワード> 革新的契約方式、ワランティ、設計・施工・維持管理一括発注方式、契約項目、導入事例

 

 

【報文】 超過外力を考慮した災害シナリオと対策検討の支援手法の開発

日下部毅明・木村祐二・稲澤太志

<抄録> 東日本大震災を経験した後、大規模災害に対し適切な危機管理方策を検討・立案することが重要となっている。本稿は、国土技術政策総合研究所で取り組んでいる大規模災害に対する危機管理方策に関する研究の成果の一部となる災害発生シナリオの構築手法を開発したので、リスクマネジメントの考え方と併せて紹介する。

<キーワード> 超過外力、危機管理方策、リスクマネジメント、災害発生シナリオ、大規模災害

 

 

【報文】 ダムの試験湛水の長期化リスク低減のための合理的対応手法
〜堤体の漏水対応を中心として〜

藤田将司・金銅将史・榎村康史

<抄録> ダムの試験湛水中に漏水などの事象が発生し、対応が必要となる例がある。このような事象の発生に伴う試験湛水の長期化リスクの低減を図るため、既往の試験湛水時に発生した事象を調査・分析するとともに、試験湛水の事前あるいは事象発生時に有効と考えられる調査、対策等の考え方を取り纏めた。

<キーワード> ダム、試験湛水、漏水、安全性評価

 

 

【現地レポート】 ブラジルにおける土砂災害に関する技術協力プロジェクト

武士俊也

<抄録> ブラジルにおいて土砂災対策に関するODA事業による技術協力「統合自然災害リスク管理国家戦略強化プロジェクト」が、リスク評価・マッピング能力の向上、都市拡張計画策定と実施能力の向上、早期警報発令の改善、土砂災害の監視・予測システムの改善、などの4つの分野で2013年7月末から開始されています。

<キーワード> ブラジル、土砂災害、リスク評価、ODA事業、JICA

 

 

【土研センター】 合理的な鋼道路橋塗替塗装計画の立案

田口 仁・中野正則・安波博道・五島孝行・中島和俊

<抄録> 鋼道路橋の塗替方法は、従来は全体を同一の塗装仕様で塗り替える方法が一般的であったが、最近は、桁端部などを塗り替える「部分塗替」や劣化の程度に応じて塗装仕様を変える「塗分け」等の合理的な方法が実施されつつある。本稿では、部分塗替や塗分けなどの合理的な塗替方法を主体とした鋼橋の塗替塗装計画の立案および塗装診断を行った事例を報告する。

<キーワード> 鋼橋、横断歩道橋、塗装塗替、塗装計画、劣化診断

 

 

平成26年10月 報文抄録
 
特 集:時々刻々変化する土砂災害リスクを把む
 

【特集報文】 マルチエージェントモデルを活用した土砂災害に対する避難行動シミュレーション

秋山怜子・高原晃宙・木下篤彦・石塚忠範

<抄録> 土砂災害では、斜面崩壊、土石流、土砂氾濫などの現象が時間的・空間的に不連続に発生する可能性がある。時々刻々と変化する現象と、それが避難行動へ与える影響を事前に分析できるツールの一つとして、マルチエージェントモデルの活用が考えられる。そこで、土砂災害を対象としたマルチエージェントモデルの適用可能性について検討を行った。

<キーワード> 土砂災害、マルチエージェントモデル、時間変化、避難、タイミング

 

【特集報文】 スマートフォンによる効果的な土砂災害関連情報の収集・提供手法の開発

神山嬢子・森田直志・水野正樹・蒲原潤一

<抄録> 土砂災害関連情報を十分に活かして住民の避難等の判断に役立てるため、スマートフォンを用いた、避難等の判断に役立つ、より効果的な情報収集・提供手法の評価分析を行った。その結果、スマートフォンによる土砂災害関連情報の一元表示(重ね合わせ)や相互通報、災害関連ツイート情報の活用といった情報収集・提供手法の有効性が確認された。

<キーワード> 土砂災害、避難、情報収集・提供手法、スマートフォン、ヒアリング

 

 

【特集報文】 現地取得が可能なパラメータを用いた崩壊発生時刻予測手法の開発

秋山怜子・石塚忠範・内田太郎・高原晃宙

<抄録> 現在、市町村単位で土砂災害警戒情報が発表されているが、より危険度の高い地域と時刻を限定した情報への期待が大きい。そこで、現地取得で可能なパラメータのみで崩壊発生時刻と斜面を予測することが可能な簡易な崩壊発生時刻予測手法を開発した。平成21年に発生した山口県防府市の災害事例について検証した結果、高い精度で予測可能であることが期待できる結果が得られた。

<キーワード> 斜面崩壊、H-SLIDER、崩壊発生時刻、崩壊発生限界雨量強度

 

 

【特集報文】 沖積扇状地で停止する地すべり土塊の到達範囲

畠田和弘・木村 誇・桂 真也・丸山清輝・秋山一弥

<抄録> 沖積扇状地で土塊が停止した地すべりの地すべり地形と土塊の到達範囲を調査した。その結果、沖積扇状地における土塊の到達範囲は、水平長として発生域の水平長、最大幅として発生域の最大幅を考えればよいが、谷状の移送域を伴う場合や積雪期に発生する場合は水平到達距離が大きくなる可能性があることが分かった。

<キーワード> 地すべり、土塊の到達範囲、沖積扇状地、国川地すべり

 

 

【特集報文】 大規模土砂生産後の土砂流出

内田太郎・丹羽 諭・蒲原潤一

<抄録> 豪雨や大規模地震によって、多数の斜面崩壊が生じ、渓流・河川・ダムなどへの大量の土砂供給がなされるケースがある。このような大規模な土砂生産現象は流域の土砂動態に長期間大きな影響を及ぼすと考えられる。そこで、本報告では、大規模土砂生産後の土砂流出現象について既往研究をレビューした上で、2つの事例研究の成果について報告する。

<キーワード> 大規模な土砂生産、地震、豪雨、天然ダム

 

 

【現地レポート】 平成25年台風18号災害における土砂災害防止の取組み

沢崎幸夫

<抄録> 福井県において台風18号により甚大な土砂災害が生じた。本稿では、被災時の応急対策や気象、防災行動履歴からハード整備や土砂災害警戒区域指定等のソフト対策が被害軽減に寄与した事例を報告する。加えて、台風18号を踏まえ進めている土砂災害警戒区域の見直し、スネーク曲線図の市町提供等の施策を紹介する。

<キーワード> 土石流センサー、土砂災害警戒区域、土砂災害ハザードマップ、スネーク曲線図

 

 

【報文】 バングラデシュにおける効果的な洪水予警報システム構築のための総合意思決定手法の開発

宮本 守・ラビンドラ オスティ・岡積敏雄

<抄録> 大規模な国際河川の下流国であるバングラデシュでは隣国からの水文情報の入手が困難な状況下にある。また、河川管理に係わる機関が多く存在するなど、効果的な洪水予警報システムの構築の難しさが多くある。本稿では、効果的な洪水予警報を構築するためのロードマップの作成を目的として総合意思決定手法の開発を行った。

<キーワード> MCA(マルチクライテリア解析)、AHP(階層分析法)、SWOT、優先順位、ロードマップ

 

 

【報文】 積雪モデルの斜面積雪への適用 〜湿雪雪崩の危険度評価を目的として〜

池田慎二・勝島隆史・松下拓樹・秋山一弥

<抄録> 湿雪雪崩の危険度評価へ向けて、気象データから積雪の状態を推定する積雪モデルの再現性に関する検討を行った。斜面と平地における積雪断面観測結果とモデルによる計算値を比較した結果、斜面積雪の再現には、水みちへの浸透量を調整する閾値を従来研究が行われていた平地とは異なる値に設定する必要があることがわかった。

<キーワード> 雪崩、湿雪、積雪モデル、水みち、斜面積雪

 

 

【土研センター】 路面のIRI(国際ラフネス指数)を測定する各種測定方法の精度比較

安藤和彦・倉持智明

<抄録> 近年我が国で採用された舗装路面評価指数であるIRI(国際ラフネス指数)を測定する各種測定装置の精度を把握するため比較試験を実施したので、その結果について報告するものである。

<キーワード> IRI、乗り心地、舗装路面評価、測定装置、精度比較試験

 

 

平成26年11月 報文抄録
 

【報文】 限られた情報下における洪水リスクアセスメントで生じる不確実性の評価

岡積敏雄・宮本 守・シュレスサ バドリ バクタ・グスエフ マクシム

<抄録> 洪水リスクアセスメントをシステムとして捉え、システムに内在する不確実性について、途上国河川流域をモデルとして解析し、雨量・流量観測データの頻度分析、再現計算、被害推計の各段階で評価した。結果として被害推計段階の不確実性が大きく、被害推計モデル構築・検証のための被害データ収集が急務であると指摘した。

<キーワード> 洪水被害データ、洪水頻度解析、被害関数、変動係数、フィリピン国パンパンガ川

 

【報文】 道路トンネル内の火災時避難行動に関する実験的検討

石村利明・砂金伸治

<抄録> 本報文は、道路トンネル内の火災時等における利用者の安全確保のための検討のひとつとして、実大規模のトンネルを用いて、火災によって火災・煙が発生した際の利用者の避難開始時間の実験とともに、トンネル内の煙の濃度を変化させたときの避難速度といった避難行動についての実験を行った結果について報告するものである。

<キーワード> 道路トンネル、火災、避難行動、避難開始時間、避難速度

 

 

【報文】 道路ユーザーの視点に立った舗装性能評価法

藤原栄吾・寺田 剛・久保和幸

<抄録> 本研究では、道路ユーザーの視点に立った舗装性能評価法を提案するため、アンケート調査を実施し、ユーザーの要求性能を明らかにした。次に、ユーザーを対象とした要求性能に関する被験者調査と舗装調査を実施した。これらの調査結果から、舗装性能評価法としてライドナンバ、バネ上振動加速度、D1500を提案した。

<キーワード> 道路ユーザー、要求性能、乗り心地、たわみ、振動

 

 

【報文】 GISと生息適地モデルによる広域スケールでの生物の生息環境の評価と地図化の試み

上野裕介・栗原正夫

<抄録> GISと統計モデルを組み合わせ、自然環境分野に適用することで、国土管理や都市計画、保護区の設定、環境アセスメント等に活用できる。本報文では、これらの技術の紹介と利用上の課題、今後の可能性について概説した。

<キーワード> 生息適地モデル、GIS、環境保全、環境情報の地図化

 

 

【報文】 下水道用塩化ビニル管の劣化事象と管体性能への影響評価
〜塩化ビニル管用視覚判定基準(案)の作成〜

深谷 渉・賀屋拓郎・末久正樹・小川文章

<抄録> 我が国の下水道管きょ延長は平成24年度末で約45万kmであり、このうち、高度経済成長期以降急速に普及した塩化ビニル管が約5割を占める。今後、塩化ビニル管の修繕や改築量の増加が想定されるが、経年劣化に関する知見が少なく劣化メカニズムには不明な点が多い。このため国総研では、塩化ビニル管の劣化事象や管体性能に関する現地調査及び実験等を実施し、劣化診断のための視覚判定基準を作成した。

<キーワード> 塩化ビニル管、劣化、視覚判定基準

 

 

【報文】 下水処理場への新たな衛生学的指標導入に関する検討

藤井都弥子・川住亮太・重村浩之・山下洋正・小越眞佐司

<抄録> 下水処理場における消毒前処理水及び消毒後放流水中の大腸菌の存在状況、変動状況、測定方法や測定者の違いによる影響等を把握するための調査を行うとともに、大腸菌群数と大腸菌数との関係について整理した。これらの結果から、放流水の水質の新たな基準値を設定する考え方を提案した。

<キーワード> 大腸菌、下水処理水、水質基準、基準値設定の考え方、衛生学的指標

 

 

【報文】 インダス川流域を対象とした洪水予警報システムの構築

津田守正・杉浦 愛・佐山敬洋・岩見洋一

<抄録> ICHARMでは、2011年度から2014年度にかけて、パキスタン国インダス川流域を対象に、洪水予警報システム(Indus-IFAS)を構築した。本システムは、これまでICHARMにおいて開発を進めてきた流出モデルIFAS(総合洪水解析システム)、RRI(降雨流出氾濫モデル)をもとに構築した。本報告では、同システムの技術的特徴や今後の展望等について述べる。

<キーワード> IFAS、RRI、洪水予警報システム、インダス川、パキスタン

 

 

【報文】 東北地方太平洋沖地震およびその余震を考慮した距離減衰式の提案

佐々木 隆・伊藤壮志

<抄録> 2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)で観測された地震動も考慮した最新のダム用距離減衰式について提案を行い、その適合性について検討を行う。この距離減衰式は、1974年から2011年4月までの91地震において、239ダムで観測された794水平地震動成分および394鉛直地震動成分の統計分析に基づいている。

<キーワード> 地震動、距離減衰式、加速度応答スペクトル、東北地方太平洋沖地震

 

 

【現地レポート】 関東維持管理技術センターの取組み

村刺徹雄・前田隆徳・金子孝男・蛭川 満・田中義光

<抄録> 関東維持管理技術センターは、今後急速に老朽化することが見込まれるインフラの戦略的な維持管理・更新を実現するために現場で必要とされる技術開発等の効率的な推進を図っているところである。河川、道路、機械設備の各分野における点検・診断技術、維持管理システム等の技術開発についての取り組みを報告するものである。

<キーワード> 維持管理、点検・診断、維持管理システム、非破壊点検、アセットマネジメント

 

 

【土研センター】 浸透性コンクリート保護材の塩害抑制効果確認のための暴露試験の概要

柴田辰正・大田孝二・五島孝行

<抄録> 今後、建設される新規の高速道路や、すでに供用されている既存高架橋の壁高欄等において、冬期に散布される凍結防止剤による塩害抑制を目的として、壁高欄に浸透性コンクリート保護材を塗布した場合の塩害抑制効果等を確認するために、暴露試験を実施する。塗布時には、実施工の横向き塗布と性能試験時の下向き塗布を比べ、浸透深さの違いについて確認する。

<キーワード> 浸透性コンクリート保護材、シラン、シロキサン、浸透深さ、凍結防止剤、塩害

 

 

平成26年12月 報文抄録
 
特 集:気候変動適応研究本部における5年間の取組み
 

【特集報文】 IPCC第5次報告書を水工技術者はいかに読み解くべきか
〜洪水影響評価の観点から〜

深見和彦

<抄録> 現状の気候変動予測の成果を水工技術者が利用する際に必ず理解しておかなければならない不確実性の問題を手がかりとして、IPCC第5次報告書(第1作業部会)に書かれている最新の知見を理解するためのポイントを解説するとともに、降水量動向の将来予測研究の現状と課題について、洪水への影響評価と適応策を検討する視点から紹介する。

<キーワード> 地球温暖化、気候変動予測、不確実性、RCPシナリオ、ダウンスケーリング

 

【特集報文】 気候変動が治水施策に与える影響のマクロ評価

服部 敦・板垣 修・土屋修一・加藤拓磨

<抄録> 気候変動の影響を吸収し所定の治水安全度を将来にわたって確保するという設定の下、その治水施策の実現の難易度と将来予測の不確実性の影響について定量的に考察を加えた。その結果、一級水系の全般的な傾向として影響度は相当に大きく、予測の信頼性についても相当大きな幅を想定せざるを得ないことが明確になった。

<キーワード> 気候変化、影響評価、治水、適応策、信頼性

 

 

【特集報文】 豪雨強度増加時における効果的な都市浸水対策

松浦達郎・小川文章・橋本 翼

<抄録> 気候変動等による将来的な豪雨の強度増加時における効果的な都市浸水対策を検討するために、仮想排水区を用いた流出シミュレーションを行い、対策量・施設整備費用・整備に要する期間の観点から浸水対策に対する整備効率性を評価し、降雨や対象地区の規模・特性毎に効果的と考えられる対策施設について示した。

<キーワード> 気候変動、都市浸水対策、豪雨強度増加、仮想排水区、整備効率性

 

 

【特集報文】 遊水機能を維持・活用した治水の実践事例
〜事例調査から浮き彫りになった地域特性の共通点〜

大沼克弘・伊藤弘之

<抄録> 氾濫を考慮した治水施策の推進に向け、既存の遊水機能を有する区域を維持・活用した施策事例について調査を行い、その調査結果から共通性が見られる地域条件を抽出した。加えて、上記事例をより効果的にするための建築物規制や雨水流出抑制施設設置など土地利用に関する条例についてまとめた。

<キーワード> 遊水機能、事例調査、地域特性、土地利用規制

 

 

【特集報文】 XRAIN雨量情報を活用した水災害への対応強化

山地秀幸・川ア将生・土屋修一

<抄録> XバンドMPレーダによる気候変動に伴う豪雨の監視体制の強化に関する研究について、雨量情報の利活用の事例を述べた。XRAINの整備により雨量情報の時空間分解能及びリアルタイム性が飛躍的に向上し、局地的な集中豪雨を詳細に捉えることが可能になった。

<キーワード> 気候変動、豪雨監視、XバンドMPレーダ、XRAIN

 

 

【特集報文】 大規模氾濫時における近隣の中高層建物への避難による人的被害低減対策の有効性

板垣 修・加藤拓磨・服部 敦

<抄録> 最大浸水深が5mに達するような大規模氾濫時における潜在的な人的被害低減対策の検討に資するため、自宅周辺の浸水等を契機に避難しはじめる「切迫避難」について、近隣の中高層建物への避難等による人的被害低減効果について試算する手法を開発し、大都市圏の密集市街地、田園地帯、郊外住宅街のモデル地区で各試算した。

<キーワード> 大規模氾濫、切迫避難、要緊急救助者、建物分布、大都市圏

 

 

【特集報文】 海岸保全施設の気候変動適応策の始動に向けて

野口賢二・諏訪義雄

<抄録> 気候変動に適応した治水対策検討小委員会答申「水関連災害分野における地球温暖化に伴う気候変動への適応策のあり方について(2008年6月)」1)で示された「段階的な堤防の嵩上げ」の導入にむけた検討の取組みについて、海岸分野に関連する気候変動予測研究の状況と高潮堤防等の嵩上げ量の概算手法の提案を紹介する。

<キーワード> 気候変動、高潮堤防、嵩上げ、海面上昇

 

 

【現地レポート】 台風等水害に備えたタイムライン(事前防災行動計画)の取り組み

中村直哉

<抄録> 紀宝町は、平成23年台風第12号において町内いたるところで甚大な被害が発生した。この災害で得た経験や教訓を、今後の防災対策に活かし、少しでも減災が実現できるように、新たな防災対策であるタイムライン(事前防災行動計画)を導入することとなり、現在、策定中である紀宝町タイムライン取り組み状況について紹介する。

<キーワード> 平成23年台風第12号(紀伊半島大水害)、台風第12号の教訓、タイムライン、導入の効果、タイムライン検討及び試行

 

 

【報文】 歩行者・自転車の影響を考慮したラウンドアバウトの交通容量の評価

今田勝昭・小林 寛・高宮 進

<抄録> ラウンドアバウトにおける自動車の交通容量を評価するにあたって、歩行者や自転車の影響は、無視できない重要や要素であるといえる。そこで、交通流シミュレーションを活用し、ラウンドアバウトにおける交通を再現し、自動車の交通容量に歩行者や自転車が与える影響を検証した。

<キーワード> ラウンドアバウト、交通容量、交通流シミュレーション、歩行者や自転車の影響

 

 

【報文】 都市内ラウンドアバウトにおける適切な自転車通行方法に関する基礎検討

小林 寛・今田勝昭・高宮 進

<抄録> 我が国は、特に都市内において自転車の利用割合が高く、ラウンドアバウト通行時における自転車の安全性には課題が残る。そこで、本稿では、自転車通行の多い我が国において自転車と自動車が都市内ラウンドアバウトを安全で円滑に通行できる自転車の通行方法に関する基礎的な検討を行なった。

<キーワード> ラウンドアバウト、自転車通行方法、交通流シミュレーション、試験走路実験、道路交通法

 

 

【土研センター】 アルカリシリカ反応と輪荷重疲労で複合劣化した床版の疲労耐久性

五島孝行・大田孝二・岸良 竜・ 大野 晃・前島 拓・久保善司

<抄録> 近年、RC床版で見られる複合劣化の一例として、ASRと輪荷重疲労の事例を取り上げ、輪荷重移動載荷実験によりASRがRC床版の耐疲労性に与える影響を検討した。促進養生により床版を短期間で膨張させた結果、ASRによる膨張が厚さ方向に卓越する一方で、平面方向にはケミカルプレストレスが導入され、予想に反し耐疲労性が向上した。

<キーワード> 鋼道路橋、RC床版、アルカリ骨材反応、輪荷重疲労、複合劣化、ケミカルプレストレス