騒音評価法に関する調査
1. はじめに
国土交通省が発注する性能規定舗装工事では、一般的な要求項目以外に騒音値の規定がある。この騒音値は、舗装路面騒音測定車(Road Acoustic Checker、RAC車)による値で、これまでのRAC車による排水性舗装の騒音値を考慮すると、施工直後の騒音値を89dBA以下にするために排水性舗装の低騒音化の検討がなされている。このため、低騒音舗装を施工した舗装関係各社は自社で騒音値の管理を行うべく検討を行っている。
しかし、タイヤ/路面騒音測定には統一された方法がなく、各社が独自の方法で行っているのが実情である。
そこでTPTでは、適切な騒音測定方法を検討する目的で、騒音値に与える影響因子について検討した。
2. 試験概要
タイヤ/路面騒音の試験項目等を以下に示す。
表−1 タイヤ/路面騒音の試験項目 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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表−2 マイクロホンの設置位置 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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図-1 マイクロホン設置位置の距離
写真-1 マイクロホン設置位置
表-3 試験用タイヤの種類
3. 調査概要
年度ごとの検討内容
- 平成12年度
- マイクロホン設置位置の違いによる影響
- タイヤ種類の違いによる影響
- 走行速度の違いによる影響
- 測定車種の違いによる影響
- 平成13年度
- 測定開始ウォーミングアップの方法
- ウインドースクリーンによる影響
- 温度変化の影響
- 車輌の荷重及び接地圧の変化に伴う影響
- 測定車両の違いによる影響
- 伝播騒音の把握
調査により得られた結果
@マイクロホン設置位置の違いによる影響
マイクロホンの設置位置の違いによる騒音特性を検討した結果、設置位置によって騒音値は異なり、タイヤ接触面より離れた位置の方が、舗装の違いが大きく現れやすいことが分かった。また、風の影響等を取り除くには、タイヤ幅の中心にマイクロホンを設置する方が望ましいことが分かった。
Aタイヤ種類の違いによる影響
タイヤ種類の違いによる騒音特性を検討した結果、トレッドパターンの違いによって騒音値が異なり、周波数の波形も異なることが分かった。
B走行速度の違いによる影響
走行速度がタイヤ/路面騒音に及ぼす影響を4速度で検討した結果、タイヤ/路面騒音は速度依存性が大きいことが確認できた。
C測定開始ウォーミングアップの方法
ウォーミングアップの必要性や回数等について検討した結果、明確なウォーミングアップ距離を規定することはできないが、走行距離3km以上を目安とするとよいと考えられた。
Dウインドスクリーンによる影響
3種類のウインドースクリーンを用いてタイヤ/路面騒音測定時の効果度合いを検討した結果、音圧レベルの大きさは舗装によらず、一般型>ノーズコーン+一般型>全天候型の順となったが、その差は一般型と全天候型で0.5dB程度であることが分かった。また、一般型に比べてノーズコーンや全天候型を使用すると、低い周波数(400Hz以下)または高い周波数(2kHz以上)でノイズが除去できることが分かった。
E温度変化の影響
温度(気温、路面温度、タイヤ温度)の変化がタイヤ/路面騒音に及ぼす影響を検討した結果、タイヤ/路面騒音は温度による影響が大きく、特にタイヤ表面温度では概ね-0.08dB/℃の温度依存性があった。また、タイヤの種類が異なると、音圧レベルの大きさは異なるものの、温度勾配は同程度であることが分かった。
F車両の荷重及び接地圧の変化に伴う影響
タイヤ荷重の増加によってタイヤ/路面騒音は増加傾向を示すことから、測定車両に乗車する測定員の体重や燃料の残量によるタイヤ荷重の変化は、タイヤ/路面騒音に影響を与えるため注意を必要とすることが明らかになった。また、マイクロホンの設置高さはタイヤ/路面騒音に大きく影響することから、車重や路面勾配などの変化によって車高が変化する場合は配慮が必要であることが明らかになった。
G測定車両の違いによる影響
測定車の違いがタイヤ/路面騒音に及ぼす影響を7車種で検討した結果、タイヤパターンやマイクロホン位置が同じでも、測定車の形状や排気量、タイヤの寸法が異なれば、タイヤ/路面騒音は異なることが分かった。
H伝播騒音の把握
舗装の種類の違いによる伝播騒音の減衰効果について検討した結果、密粒度舗装に対して排水性舗装の方が距離減衰比は大きいことが分かった。また、伝播騒音の解析手法について検討した結果、ピーク法または二乗積分法により、舗装の違いによる音圧レベルの差異を比較できるものと考えられた。