無電柱化について
1. 無電柱化の目的
無電柱化とは道路上から電柱・電線をなくす取り組みであり、無電柱化を進める目的には大きく分けて3つ挙げられる。
1つ目は道路防災性の向上であり、安全で信頼性の高いライフラインと道路機能が確保できる。
2つ目は安全で快適な通行空間の確保であり、歩行者やベビーカー、車いす利用者が安全に歩道を広く使うことができる。また、運転者にとっても信号や標識が見やすくなり安全性が向上する。
3つ目は良好な景観形成や観光振興であり、美しい景観を取り戻すことでまちの活性化になり観光振興につながる。
2. 無電柱化計画の変遷
(1)昭和61年~平成2年の期間は、『第1期電線類地中化計画』として電線共同溝方式のキャブシステムを中心に1000km/10 年を目標に整備された。
(2)平成3年~平成6年の期間は、『第2期電線類地中化計画』として対象地域を電力需要の増大が見込まれる範囲まで拡大し、電線共同溝以外でも複数の手法が執り行われ1000km/5 年を目標に整備された。
(3)平成7年~平成10年の期間は、『第3期電線類地中化計画』として電線共同溝のC.C.Boxが整備手法に採用され、2000km/5 年を目標に整備された。
(4)平成11年~平成15年の期間は、『新電線類地中化計画』として中規模商業地域や住居系地域まで対象範囲を拡大し、裏配線や軒下配線も採用され3000km/7 年を目標に整備された。
(5)平成16年~平成20年の期間は『無電柱化推進計画』として、まちの幹線道路に加え主要な非幹線道路まで対象を拡大し、5年間で市街地の幹線道路無電柱化率が17%向上した。
(6)平成21年以降は、無電柱化推進計画の整備対象および整備手法を引継ぎ、現在も進められている。
(2)平成3年~平成6年の期間は、『第2期電線類地中化計画』として対象地域を電力需要の増大が見込まれる範囲まで拡大し、電線共同溝以外でも複数の手法が執り行われ1000km/5 年を目標に整備された。
(3)平成7年~平成10年の期間は、『第3期電線類地中化計画』として電線共同溝のC.C.Boxが整備手法に採用され、2000km/5 年を目標に整備された。
(4)平成11年~平成15年の期間は、『新電線類地中化計画』として中規模商業地域や住居系地域まで対象範囲を拡大し、裏配線や軒下配線も採用され3000km/7 年を目標に整備された。
(5)平成16年~平成20年の期間は『無電柱化推進計画』として、まちの幹線道路に加え主要な非幹線道路まで対象を拡大し、5年間で市街地の幹線道路無電柱化率が17%向上した。
(6)平成21年以降は、無電柱化推進計画の整備対象および整備手法を引継ぎ、現在も進められている。
3. 無電柱化の整備手法・整備事例
整備手法として、地中化には電線共同溝方式、自治体管路方式、単独地中化方式、要請者負担方式があり、今後は低コスト手法やソフト地中化の手法も増えていくと思われる。また、地中化以外では主要な通りの裏通りに電線類を配置する裏配線や、軒が連坦して街並みの変化が少ない歴史的建造物の軒下に配置する軒下配線などがある。無電柱化には全国の地方公共団体が個別に取り組んでおり、防災、安全・快適、景観・観光とそれぞれの目標に合わせて実施されている。
また、海外の事例としてはプラットフォームを使って上空に地上機器を設置、壁伝いに軒下配線、トランスが建物の中に押し込められていることもあり、ヨーロッパでは電線類地中化が常識で簡易な施工となっている傾向がある。
また、海外の事例としてはプラットフォームを使って上空に地上機器を設置、壁伝いに軒下配線、トランスが建物の中に押し込められていることもあり、ヨーロッパでは電線類地中化が常識で簡易な施工となっている傾向がある。
4. 無電柱化の課題と取り組み
(1)コストが高い
1km当たり約3.5億円を要するといわれるコストの高さが課題としてある。取り組みとしては直接埋設や掘削量を減らすように埋設深さを調整することがあげられる。
(2)電力会社や通信会社との調整が困難
管理者(道路管理者と電線管理者)間で合意が得られにくいことや、地元住民や工事に関連する各関係省庁など多くの人々・団体の足並みがそろわなければ工事が進まないことが課題としてある。取り組みとしては協議会に地元代表者を含め、工事関係および関連事業関係者が一堂に会し合意形成を図る体制を新たに構築することがあげられる。
(3)地上機器の置き場所がない
電柱の撤去に伴う変圧器(地上機器)の設置個所の検討が課題としてある。取り組みとしては家屋と一体化するなど、景観に配慮しながら出来るだけ小型化し進めることがあげられる。
(4)道路が狭くて事業ができない
市区町村道では歩道幅員が狭い場合が多く、施設の整備や地上機器の確保が困難なことが課題としてある。取り組みとしては軒下配線や幅員拡幅などの整備があげられる。
(5)その他
災害が多い日本では地中化することで災害は減るものの、万が一断線した場合の復旧に時間がかかることが課題としてある。取り組みとしては場所に応じて地中線と架空線を使い分けること、3D マップによる地中電線の位置記録やIC タグ設置による管理などにより埋設位置を明確化することがあげられる。
5. 低コストに向けた取り組み
日本における無電柱化推進の課題はコストであり、ヨーロッパが直接埋設で約0.8億円/kmであるのに対し、日本では電線共同溝が主流でコストとして約3.5億円/kmを要する。コスト低減策としては埋設方法を変えることと埋設深さを浅くすること有効であるが、懸念事項として3 つ挙げられる。
(1)既存の基準埋設深さより浅くした場合の舗装及び埋設物への影響
(2)電力ケーブルと通信ケーブルの離隔距離を小さくした場合の誘電電圧などの影響
(3)小型ボックス施工時の技術的な課題
以上の課題に対して、無電柱化低コスト手法技術検討委員会による実験的検証が行われた。
検証の結果、埋設深さや離隔距離に関する当該規格の変更、直接埋設や小型ボックス活用方法の課題に対する対応、安全対策や技術施工マニュアルの整備、コストの検討等が検討委員会から提案された。これを踏まえて埋設物の設置基準が見直された。また、無電柱化推進計画が策定されており、その中の低コスト手法の推進には、上述の検討結果が反映されている。低コスト手法を活用した実例が増えることで、無電柱化の適用拡大が望まれる。
6. まとめ
日本における無電柱化は海外の主要都市と比較すると遅れているが、様々な施策により推進されている。現状は電線共同溝や裏配線、軒下配線により無電柱化を進めているが、今後は低コスト手法による浅層埋設や小型ボックス活用、直接埋設による施工方法が増えていくものと考えられる。無電柱化を進めるうえでの課題として財政・管理費用の課題や技術的課題は引き続き検討が必要であり、地元住民も含めて関係者の調整・連携が重要となる。今後も「道路防災性の向上」「安全で快適な通行空間の確保」「良好な景観形成や観光振興」を目指し、地域住民の理解の元管理費用を踏まえて無電柱化を推進していくための効率的な仕組みを構築していくものと考えられる。