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自動運転について

1. はじめに

(1)背景

 我が国では戦後、高度経済成長期を通じ道路網が整備され、急速なモータリゼーションの発展もあり交通量が飛躍的に増加した。交通量の増加に伴い、安全や環境に対する対策が社会的ニーズとなり、自動車業界・行政・道路舗装業界ではそれぞれで取り組んできた。
 近年では更なる自動車技術として自動運転が発展してきており、世界的にも実用化に向けて取り組まれている。社会情勢の変化と更なるモータリゼーションの発展に伴い、道路・舗装への社会のニーズも変化するものと思われる。そこで、現在の自動運転の技術と取り組みについて情報を収集した。

(2)自動運転とは

 自動運転とは「乗り物の操作を人に依らず、機械が自律的に行う」ものであり、自動車への実用化が遅れている。自動車の自動運転には「認知」を行うセンサー類や「判断」を行うコンピュータ(AI等)が必要であるが、「判断」に関する技術がまだ発展途上である。
 自動運転にはアメリカにおいてLv.0~5の6段階で定義づけされ、日本もこれに準拠している。それぞれのレベルに応じて、ドライバーとシステムが担う要素が異なり、現状ではレベル2(部分運転支援)相当が実用化、レベル3(条件付自動運転)相当の開発が進んでいる。技術的な課題によってレベル4(高度自動運転)以降は実験段階であり、法的課題についても検討が進められている。

2. 検討概要

(1)我が国における自動運転の現状

 日本における自動運転は、高齢化人口の増加や都市部への人口集中、物流業界におけるトラック運転手の不足等の社会的背景及び世界最先端のITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)を維持・構築するための国際的背景のもと、官民一体となって戦略を策定・実行されている。
 現状として国内メーカーにおける自家用車においては、自動運転レベル1及びレベル2の実用化はされているが、レベル3以上については実用化されていない。ただし2020年以降でレベル3以上の実用化を各社メーカーは目指している。
 国主体で実施されている自動運転レベル3以上の実証実験は全国各地で実施されており、その内容は以下のとおりである。
  • 高齢化が進む地方部にて「道の駅」等を拠点とした自動運転サービスの実証実験
  • 高齢化が進むニュータウンでの自動運転サービスの実証実験
  • 空港制限区域内にて人の輸送を想定した自動運転の実証実験
  • 高速道路におけるトラックの隊列走行の実証実験
  • 遠隔型自動走行システム及び移動サービスの事業性検討のためのラストマイル実証実験
  • SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)事業として、東京臨海部で行われている産学官共同の実証実験

のいずれの実証実験も2020年度の実用化を目指している。

(2)我が国における自動運転に関する法整備

 自動運転の普及により、我が国が抱える道路交通および社会に関する多くの課題解決が期待されている。しかし、自動運転の実用化(特にレベル3以上)に伴い、従来の「自動車を人が操作」から「自動車を機械が操作」へと変化し、自動車の操作主体が根本的に変わることから、従来の道路交通に関する様々な法制度に不備が生じてくるため、現在、関係する法制度の見直しの検討がなされている。今回は、2019年5月に改正された「道路交通法」、「道路運送車両法」の主な改正点について紹介した。
 今後は、国際的動向や自動運転の技術的動向を踏まえながら、柔軟に対応可能な法制度を想定し、新たに対応が必要な内容が生じた場合は随時制度改正が行われていくものと思われる。

(3)自動運転の海外における動向

 海外における自動運転の運転自動化レベルは、現状、日本と同様のレベル2もしくは、レベル3程度である。
 海外での自動運転に関する政策は、日本より早い時期から、議論され可決されている。特にドイツでは、2017年には、限定的なレベル3相当の実用化を認める道路交通方が施行されている。また、インフラからの支援も、アメリカでは、協調型自動運転システムのためのプラットフォームや制御ソフトウェアの開発が産業界と連携して進められている。
 海外の自動車メーカーやIT・新興企業の動向は、自動運転車によるタクシーサービスや配送サービス等、自動運転車の商品化を見据えた実証実験が増加している。しかし、海外も日本と同様に、自動運転中の事故になった場合の法律、保険、安全性能に関する車両認証等が課題となっている。

3. まとめ

 自動運転が本格的な実用化に向け、自動運転技術や法整備が整いつつあるが、自動運転と舗装には密接な関係があり多くの課題が存在する。自動運転が舗装に与える影響(課題)については、①自動運転の特性で舗装の破損特性が変化する可能性、②自動運転で必要な埋設物等も考慮した新たな舗装の設計施工方法が必要となる可能性、③自動運転に関する機能維持の視点も含めた舗装の管理が必要となる可能性、等が考えられる。
 このように、舗装分野で解決すべき課題は多岐に及ぶものと考えられ、これらの課題を解決に向けては、舗装分野のみでなく自動運転分野と連携した検討が必要になるものと考えられる。