舗装とAIの関り
1. はじめに
AIは我々の生活の中で欠かせない技術であり,意識せずともその恩恵を受けている。我々の舗装業界においても、舗装路面性状調査にAIを活用した技術が適用されるなど、AIは舗装点検の効率化・省人化に大きな役割を果たしており、各社から数多くの報告がなされている。このような背景の中、当勉強会でAIに関する調査・情報収集・報告を行うことで、TPT会員各社の皆様にAIについての理解を少しでも増やし、今後の舗装業界の発展の一助になればと思いを込め、選定するに至った。
2. 検討概要
(1)AIとは
AIは、“Artificial Intelligence”の略称であり、直訳すると『人工的な知能』となる。AIは、1950年代後半から研究がなされており、複数回のブームを経て、現在の“第三次人工知能(AI)ブーム”に至っている。
AIの内部処理を受け持つアルゴリズムには、いくつかの種類が存在しており、ニューラルネットワーク・遺伝的アルゴリズム・エキスパートシステムについての概要を説明する。また、AIの学習方法として機械学習があり、その中でさらに高度な学習方法として、人間の脳が自然に行うタスクをモデル化したディープラーニングという方法により、AI自身が学習を進めることを可能としている。また、AIの種類に関しては、受け持つタスク範囲や知能レベルでの分類が一般的にされており、さらにはグルーピングに特化した『識別系AI』や、新たに画像や音楽などをAI自らが創り出す『生成AI』に分類されていることが分かった。
AIの内部処理を受け持つアルゴリズムには、いくつかの種類が存在しており、ニューラルネットワーク・遺伝的アルゴリズム・エキスパートシステムについての概要を説明する。また、AIの学習方法として機械学習があり、その中でさらに高度な学習方法として、人間の脳が自然に行うタスクをモデル化したディープラーニングという方法により、AI自身が学習を進めることを可能としている。また、AIの種類に関しては、受け持つタスク範囲や知能レベルでの分類が一般的にされており、さらにはグルーピングに特化した『識別系AI』や、新たに画像や音楽などをAI自らが創り出す『生成AI』に分類されていることが分かった。
(2)舗装分野の活用事例(国土交通省におけるAI活用の動向)
我が国の産業全体において、人口減少や少子高齢化による担い手不足という課題は慢性的な課題であり、建設分野においても生産性向上による働き方改革の推進は喫緊の課題である。そこで国土交通省では、それらの課題に対して種々の取組みがなされており、AIの活用については、平成29年3月の『第四期国土交通省技術基本計画』のなかで最初に取組みが言及された。具体事例としては、「i-Construction」の取組みにおいて各段階でのAIの活用が望まれているものの、現状はそれらすべてにAIが活用されているとはいいがたい。従って、さらなる技術革新により今後はより広い範囲での適用が望まれる。
舗装分野での活用事例としては、『令和5年度 新技術導入促進計画』のなかで「ICT・AIを活用した道路巡視の効率化・高度化技術」により技術公募がなされており、またそれらの技術を取りまとめた“点検支援技術性能カタログ”が策定されている。舗装分野以外に関しては、国土技術政策総合研究所・港湾局・気象庁・土木研究所による取り組み事例を紹介した。
舗装分野での活用事例としては、『令和5年度 新技術導入促進計画』のなかで「ICT・AIを活用した道路巡視の効率化・高度化技術」により技術公募がなされており、またそれらの技術を取りまとめた“点検支援技術性能カタログ”が策定されている。舗装分野以外に関しては、国土技術政策総合研究所・港湾局・気象庁・土木研究所による取り組み事例を紹介した。
(3)舗装分野の活用事例(舗装業界の動向紹介)
前章でも報告したように、我々の舗装業界におけるAIの活用事例としては、『舗装の路面点検技術』が中心である。それらの主な技術は“点検支援技術性能カタログ”に記載されており、当該カタログに掲載されている全24技術のうちおおよそ半数の14技術に、AIが活用されていることが分かった。
このうち、鹿島道路㈱・ニチレキ㈱・福田道路㈱・JIPテクノサイエンス㈱の技術を紹介し、カタログ以外の技術として、南紀白浜空港におけるAIを用いた空港滑走路の調査技術の事例を紹介した。当該技術は、AIを用いたいひび割れ検知技術とともに、路面画像の取得には自動運転により空港内を走行する点検車両を用いており、優れた技術としてインフラメンテナンスプロジェクト賞を土木学会より授与されている。
このうち、鹿島道路㈱・ニチレキ㈱・福田道路㈱・JIPテクノサイエンス㈱の技術を紹介し、カタログ以外の技術として、南紀白浜空港におけるAIを用いた空港滑走路の調査技術の事例を紹介した。当該技術は、AIを用いたいひび割れ検知技術とともに、路面画像の取得には自動運転により空港内を走行する点検車両を用いており、優れた技術としてインフラメンテナンスプロジェクト賞を土木学会より授与されている。
(4)土木分野・他産業における活用事例
土木分野でのAI活用事例として13事例を紹介した。AIは、画像認識・文字認識・推論および予測・機械制御・生成AIなど様々な領域で活用されており、特に画像認識をAIにより実行する事例が多かった。
また他産業分野での事例は、自動車の自動運転をはじめ、金融業・漁業・畜産業など多方面からの事例を紹介し、更に生成AIを活用した事例として飲料の味やデザインの提案や、ニュース原稿作成など多岐に渡る事例を紹介した。
また他産業分野での事例は、自動車の自動運転をはじめ、金融業・漁業・畜産業など多方面からの事例を紹介し、更に生成AIを活用した事例として飲料の味やデザインの提案や、ニュース原稿作成など多岐に渡る事例を紹介した。
(5)海外での活用事例
総務省の報告資料によると、世界のAI市場規模の推移および予測値は年々上昇を続けるとされている。その中で、日本は世界と比較すると、2020~2022年度において新たに資金援助を受けた企業数は8~10位に位置し、アメリカや中国とは大きく差がついているのが現状である。
海外でのAI適用事例を見ると、日本と多少の違いはあるものの、AI技術の適用およびその範囲は類似していると考えられる。具体的には、道路舗装や空港舗装を対象とした点検作業、またエプロンでの作業可視化および効率化などがあり、それらの適用は海外の独自開発のAI技術の活用のほか、日本のAI技術を海外で適用している事例があるなど、相互活用している例もみられた。
海外でのAI適用事例を見ると、日本と多少の違いはあるものの、AI技術の適用およびその範囲は類似していると考えられる。具体的には、道路舗装や空港舗装を対象とした点検作業、またエプロンでの作業可視化および効率化などがあり、それらの適用は海外の独自開発のAI技術の活用のほか、日本のAI技術を海外で適用している事例があるなど、相互活用している例もみられた。
(6)AIに関する法整備
AIを利用することで懸念されるリスクの例として、機密情報の流出などに代表される「セキュリティ上のリスク」のほか、「知的財産権の侵害に関するリスク」や「誤情報や虚偽情報など不適切な情報まん延のリスク」などが挙げられる。特に、『生成AIを用いて作成された生成物の著作性』については、利用の状況により著作権侵害の可否が変わることも想定されている。
日本と諸外国の法整備の状況について目を向けると、日本では2023年初頭より内閣府から「AIに関する暫定的な論定整理」により大枠が設定され始めたのに対し、アジアを含めた諸外国では2022年頃から法整備の動きが開始されていた。特に、EU圏においては『AI規制法』により、AI利用に関して段階的なリスクとその対応が定められていて、法整備の状況についてやや先行していると考えられる。
日本と諸外国の法整備の状況について目を向けると、日本では2023年初頭より内閣府から「AIに関する暫定的な論定整理」により大枠が設定され始めたのに対し、アジアを含めた諸外国では2022年頃から法整備の動きが開始されていた。特に、EU圏においては『AI規制法』により、AI利用に関して段階的なリスクとその対応が定められていて、法整備の状況についてやや先行していると考えられる。
3. まとめ
以上のように、舗装業界に関わらずAIの活用は今後、加速度的に増加していると考えられる。またその活用事例は多岐に渡るものの、舗装業界においては、限られた範囲での適用にとどまっていることも同時に確認された。ここで、事例としてChat GPTを用いて『舗装業界にAIを活用することで期待されることは何?』と問うてみたところ、ある実用化には至っていない技術も含まれるものの、ある程度適切な回答が得られた。
日本における更なるAIの利活用・社会実装の推進に向けては、人材確保やデータの利用方法など具体的な課題だけでなく、何かしらの思い込み(仕事を代替されてしまう・専門技術者が必要・データの入手待ち)を取り払うことも必要であるとの提言もあった。また同時に、日本における画一的な法整備も必須であると考える。今後、舗装業界においても、AIとの関りはより多岐に渡り深くなることが期待・予測される。我々、舗装技術者もそれに準備するためにも、当勉強会をとおしてAIに関する知識を少しでも広げていただける機会となれば幸いである。
日本における更なるAIの利活用・社会実装の推進に向けては、人材確保やデータの利用方法など具体的な課題だけでなく、何かしらの思い込み(仕事を代替されてしまう・専門技術者が必要・データの入手待ち)を取り払うことも必要であるとの提言もあった。また同時に、日本における画一的な法整備も必須であると考える。今後、舗装業界においても、AIとの関りはより多岐に渡り深くなることが期待・予測される。我々、舗装技術者もそれに準備するためにも、当勉強会をとおしてAIに関する知識を少しでも広げていただける機会となれば幸いである。
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