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カーボンニュートラルについて

1. はじめに

 昨今では、豪雨や森林火災などの大規模で高頻度の異常気象が発生しており、これらは地球温暖化による気温上昇に起因すると考えられている。今後、何も対策を講じない場合は、さらに地球温暖化が進み、異常気象も増えていくと予想される。このような状況の中、地球温暖化の主要な原因である二酸化炭素(CO2)の排出量を減らす動きが活発化しており、対策としてCO2の排出量と吸収・除去量の差し引きをゼロとする「カーボンニュートラル」が推し進められるようになった。
 本勉強会では、現在までの国内外の取り組みを調査し、現状を知るとともに、今後の業務に活かすことを目的に活動を行った。

2. カーボンニュートラルに係わる建設業以外の取組

 建設業以外の取組としては、日本全体の施策として「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指して令和3年10 月22 日に閣議決定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を整理した。
 本長期戦略では、①エネルギー、②産業、③運輸、④地域・くらし、⑤吸収源対策の5分野に分けてカーボンニュートラルに向けたビジョンや対策・施策の方向性が決められている。

3. カーボンニュートラルに係わる舗装分野の取組

(1)混合物関係

 アスファルト混合物には、二酸化炭素の排出量削減に有効ないくつかの技術がある。代表的なものとしては、製造温度を低減することができる中温化・常温混合物、舗装の長寿命化で排出削減に寄与する高耐久混合物、材料の削減を図った薄層用混合物、転がり抵抗を小さくし燃費向上を図った低燃費舗装用混合物などである。

(2)アスファルトプラント

 アスファルトプラントの合材製造数量は年々減少しており、また新規合材に比べてCO2排出量が少ない再生合材の出荷数量割合が多くなったこともあり、CO2排出量は年々減少している。CO2排出原単位でみると、合材出荷量が多いとCO2排出量は少なくなるため、大型プラントからの出荷を増やすことでCO2排出量の削減を行いやすいといえる。
 アスファルトプラント設備のCO2削減技術については、現在いくつかの取組を行っている。骨材加熱用バーナの燃料変更、脱臭炉を蓄熱式脱臭炉へ変更、重機の燃料を軽油から代替燃料へ変更、サテライト設備の設置および自動化、フォームドアスファルト装置の使用、再生可能エネルギーの使用など、最終的にはプラントの完全オール電化を目指している。

(3)施工機械

 国交省では国内における産業部門のCO2排出量のうち1.4%を占める建設機械の燃費性能向上を進めてきており、2050年目標に向け革新的な建設機械の導入拡大を図って燃費基準達成建設機械の認定制度や施工機械およびクッカー車の電動化、計量装置搭載ダンプトラックの活用、またICT施工の導入や運行管理システム使用、遠隔臨場の実施などに取り組んでいる。

4. カーボンニュートラルに係わる海外の取組

 従来の合材に比べ低温度製造できる中温化合材は、アメリカやフランス、ノルウェーで多く製造しており、アメリカで製造されている中温化合材の製造数量は、2020年時点で、全体の約45%を占め、最大25万トンのCO2排出を削減したと報告されている。また、ライフサイクルコストを低減できる長寿命化舗装として、永久舗装という概念がアメリカ舗装協会で提唱されており、50年間ライフサイクルでのCO2排出量は、コンクリート舗装の約30%まで抑えることができると言われている。近年では、太陽電池を路面へ敷設したソーラーロード(フランス)や、工場の稼働電力の一部を太陽光発電で補っている砕石工場(アメリカ)などの事例があり、再生可能エネルギーが積極的に活用されてきている。
 次に、舗装業界以外の他業界の取組について調査を行った。航空業界(イギリス)では、2040年までに国内フライトをネットゼロとする目標を掲げ、自動車業界では、2035年から内燃エンジン新車の販売停止を欧州会議が承認(EU)、アメリカのGM社では、2035年までに乗用車部門の排気ガスの排出量をゼロにする目標を設定している。このように他業界においても明確な目標を設定し、業界全体でカーボンニュートラル社会を目指している。

5. まとめ

 地球温暖化に伴う異常気象の頻発を背景に、CO₂排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの取組が世界的に進展している。本勉強会では、建設業界と他業界における最新の取組を調査した。舗装分野では、中温化合材や高耐久・薄層混合物、低燃費舗装などの技術、プラントのオール電化や再生材利用の推進、施工機械の電動化やICT活用が進められている。海外ではアメリカや欧州を中心に中温化技術や再生可能エネルギー導入が進み、他業界でも明確な削減目標が設定されている。