(一財)土木研究センター/材料・構造研究部の業務内容

材料・構造研究部の研究内容(1)

 

 材料・構造研究部では、材料・構造に係わる研究・調査・試験を行う部所として優秀なスタッフを揃え、橋梁・防食等に関連する様々な業務を広範囲にわたって行っております。

部分塗替え塗装の計画策定(工事中)
鋼橋の長寿命化を支える塗替え工法(ブラストを用いた局部補修)

無塗装橋梁の適用性評価試験(ワッペン式暴露試験)
耐候性鋼橋梁の健全度評価法(工事中)

軽量素材(FRP)を用いた高耐食性歩道橋(FRP橋)

発表論文等
鋼橋塗替え診断

鋼橋の長寿命化を支える塗替え工法(ブラストを用いた局部補修)

概 要
従来の全面塗替え塗装による防食補修工事では、健全な個所を含めて塗り替えているが、狭隘部では十分な補修が行えないため、腐食の進行を抑止することは困難である。   損傷による架替え理由
 
物理的な損傷による鋼道路橋の架替え理由の26%は、鋼材の腐食が原因である。
 
腐食発生部位に特定して腐食進行抑止を目的とする、『局部補修塗装工法』を推奨する。

素地調整の程度差
局部補修塗装工法
特 長
腐食箇所にブラスト+重防食による防食補修を行うことにより、橋梁の寿命を延ばすことが可能
 
局部補修塗装工法の概要
素地調整方法 : 除錆レベル ISO Sa2 1/2 (ブラスト工法) 。
補修塗装仕様 : 鋼道路橋塗装・防食便覧 Rc-T
     
腐食部位に対する素地調整の例
施工状況

従来の塗替え塗装の性能
性能曲線
 
提案する局部補修塗装工法の基本仕様と特徴
 
(1)必ずしも橋全体を対象とする必要はない
 ⇒局部補修も選択肢
 
(2)劣化に応じた補修を行う
 ⇒1)さび部  :1種ケレン(ブラスト)
    2)塗膜健全部:放置、または上塗りのみ
 
性能曲線
 
 ⇒構造物の長寿命化、LCCミニマムを達成

連絡先:一般財団法人土木研究センター 材料・構造研究部 Tel 03-3835-3609 Fax 03-3832-7397
担当:安波博道(E-mail yasunami(a)pwrc.or.jp)、中島和俊(nakashima(a)pwrc.or.jp)
(※メールを送信する場合は(a)を@と変更して下さい。)

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無塗装橋梁の適用性評価試験(ワッペン式暴露試験)

概 要
耐候性鋼材の小型試験片(ワッペン試験片)を仮設暴露架台あるいは既設橋梁に貼り付け、1年後の腐食減耗量から、計画橋梁に対する当鋼材の適用性を評価することができる試験方法。

特 長

従来の飛来塩分量を判定指標とする評価方法に比べ、精度が高く、かつ労力とコストが節約できる。(表−1を参照)
本試験は耐候性鋼材(JIS SMA)およびニッケル系高耐候性鋼材に適用できる。

試験方法
ワッペン試験片の形状・寸法 鋼材の適用性判定基準
    経年腐食減耗量推定式:Y=A・XB(A,Bは腐食パラメータ)
本推定式の同定には複数の経年データの取得が望ましいが、1年経過データのみでも大まかな推定は可能である。
   
       
ワッペン式暴露試験の実施例(試験の種類については表−2を参照)
  ○建設予定地の近傍に既設橋梁がない場合に行う現地暴露試験
<架設暴露架台によるワッペン式暴露試験(百葉箱暴露試験)>
 
       
  ○建設予定地の近傍に既設橋梁がある場合に行う現地暴露試験
<既設橋梁利用によるワッペン式暴露試験(既設橋暴露試験)>
 

表−1 耐候性鋼材の現地適用性評価方法の比較
評価方法
概 要
評価指標
精 度
費 用
現地暴露試験による方法
(試験片の形状と取付け法により、従来式とワッペン式とがある。)
・鋼材の暴露試験で得られる経年にともなう腐食減耗量のデータに基づき適否の判定を行う方法。
・相関が証明されている腐食減耗量推定式(※)で推定した経年腐食減耗量が許容値以内に収まるか否かで判定する。
※ Y=A・XB (A,Bは腐食パラメータ)
直接、腐食減耗量を計測するため、原理的に高精度である。
  従来式 ・小型矩形試験体を気中にさらす試験。構造物が形成するミクロ的な腐食環境の影響を受けないように配慮しており、マクロ的腐食環境評価に適する。 腐食減耗量 [○]
橋梁各部位との差異を考慮した補正が必要。
・現地訪問回数が少なく、労力と費用が節減できる。
ワッペン式 ・ワッペン試験片(2t×50×50)を仮設暴露架台や既設橋梁に接着する方法。橋梁部位ごとの腐食減耗量の相違を明確に評価することができる。 腐食減耗量 [◎]
橋梁各部位ごとの腐食減耗量の評価が可能。
・現地訪問回数が少なく、労力と費用が節減できる。
飛来塩分量を判定指標とする方法 ・飛来塩分量を耐候性鋼材の適否判定指標とする方法。飛来塩分量は一般に1年以上継続する必要がある。
・飛来塩分量の測定を省略して、離岸距離から判定する方法もある。
飛来塩分量 [△]
相対的なマクロ環境評価には適用可能。
・月ごとのデータ取得のため労力と費用を要する。
腐食減耗量予測による方法 ・建設地近隣の環境因子データ(飛来塩分量、気温、湿度等)をもとに、平均腐食減耗量を計算により予測し、適否判定を行う方法。
・環境因子を実測する場合は1年以上の期間を要する。
環境因子データ [△〜○]
確率統計的データに基づいており、ある程度の精度が得られる。
・机上検討のみであれば費用は僅少。環境を実測する場合は労力と費用を要する。

表−2 ワッペン式暴露試験の種類と特徴
種 類
特 徴
仮設暴露架台による
ワッペン式暴露試験
(百葉箱暴露試験)
・建設予定地の近傍に既設橋梁がない場合に行う現地暴露試験。当該地に、計画橋梁の腐食環境を模擬した仮設暴露架台(百葉箱)を設置し、その内部にワッペン式暴露試験片を暴露して腐食減耗量を計測する。
・橋梁部位のなかで一般にフランジの腐食減耗量が卓越することから、ワッペン試験片は水平に設置することを標準とする。
既設橋梁利用による
ワッペン式暴露試験
(既設橋暴露試験)
・建設予定地の近傍に既設橋梁がある場合に行う現地暴露試験。当該既設橋梁の腐食環境を代表すると考えられる部位(内桁の下フランジ下面など)にワッペン試験片を貼付し、腐食減耗量を計測する。
・部位ごとの腐食環境の違いを明確化することを目的とする場合には、様々な部位に貼付する試験も可能である。
・橋梁竣工後の腐食減耗量に関するモニタリングにも適用可能である。

[参考文献:耐候性鋼橋梁の可能性と新しい技術、社団法人日本鋼構造協会 2006.10]

連絡先:一般財団法人土木研究センター 材料・構造研究部 Tel 03-3835-3609 Fax 03-3832-7397
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軽量素材(FRP)を用いた高耐食性歩道橋(FRP桁橋)

特徴

耐食性に極めて優れている。(塩分で劣化しない)
軽量である。(鋼製の1/3程度)
   
主な仕様
主要素材:FRP引抜成形材(ガラス繊維及びビニルエステル樹脂、炭素繊維板補強)
幅員:2〜3.5m程度
支間長:最大20m程度

構造の概要
設計技術の概要
道路橋示方書・同解説及び立体横断施設技術基準に準拠
FRPには降伏点がないため、FRP素材に適合した座屈強度設計法を採用。
たわみ許容値を立体横断施設技術基準に基づき1/400と設定。
載荷試験、FEM解析等による設計法の妥当性検証。
構造イメージ図
   
主構造部材(引抜成形材H600)
引抜成形材H600の橋梁補強への適用事例
(片平橋(福岡:大牟田))
FRP桁部材の載荷試験
   
 
土木研究所のこれまでのFRP橋梁の検討事例
   
国内のFRP橋梁事例
(沖縄県、伊計-平良川線ロードパーク橋、
橋長37m、幅員3.5m、2001年)
海外のFRP歩道橋事例
(この他、200橋を越える採用事例がある。)
     
「FRPを用いた橋梁の設計技術に関する共同研究」
独立行政法人土木研究所、一般財団法人土木研究センター、旭硝子マテックス(株)、
石川島播磨重工業(株)新日本石油(株)、日東紡績(株)、三菱重工業(株) (平成13〜17年度)
 

主な適用用途(事例)

歩道のない橋梁への歩道(側道)新設

歩道のない道路橋に側道橋で歩道を付加した事例
(右は下部工の様子(基礎の新設が必要))
     
軽量であれば下図のような添加側道橋が
容易となり、低コストで歩道の設置が可能となる。
   

鋼製橋梁で実施した事例
(軽量橋梁ではより容易に採用可能となる)
   
 
特記すべき利点
 ・大規模な下部工工事(基礎工)を必要としない 。
 ・耐食性の飛躍的向上(塩害地域に適する)
 ・上記によるLCCの低減。
 

塩害地域の鋼製歩道橋の更新

塩害地域の道路橋は、塩害対策、補修が進みつつあるが、側道橋として整備された鋼製歩道橋
については腐食が進行したままのものが多い。FRP歩道橋は耐食性に優れ、長期間塗り替え等
の補修無しですますことができるため、これらの鋼製歩道橋の更新に有望と考えられる。
 
特記すべき利点
 ・耐食性の飛躍的向上
 ・迅速な施工(跨線橋等にも適する)
  ・死荷重の軽減(下部工等への負担の軽減)
 
 
塩害地域の腐食が進行した鋼製歩道橋の事例
(鋼材の塗装による防食は塗り替えることが原則であり、大規模な主要構造物には適しているものの、小規模な
構造物の場合には、耐食性に優れた素材の採用により、維持管理の省力化を図ることが有効と期待できる。)

 

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