(財)土木研究センター/刊行物/月刊誌土木技術資料抄録/平成19年
 
平成19年1月 報文抄録

【論説・企画趣旨】ダム有効利用技術の夢

吉田 等

【報文】重力式コンクリートダムの合理的な嵩上げ設計手法

佐々木 隆・山口嘉一・金縄健一・高藤 啓

<抄録> 本報文は、重力式コンクリートダムの合理的な嵩上げ設計手法を提案するものである。対象とした方法は、①従来法(垣谷公式)での荷重条件をより実際的な荷重条件に変更する方法、②「①」に加えて、堤体底面上流端の局所的な亀裂発生を考慮した方法である。2つの方法による設計断面に対して、嵩上げ後のダムと同じ規模の新設ダムと比較を行うことで、堤体安全性の評価を行った。さらに、大きな地震動を作用させた時の堤体安全性についても比較検討を行い、重力式コンクリートダムの合理的な嵩上げ設計方法の提案を行った。

<キーワード> 重力式コンクリートダム、嵩上げ、設計手法、大地震動

【報文】フィルダムの合理的な嵩上げ設計手法

山口嘉一・冨田尚樹・水原道法・三笠真吾

<抄録> 本研究で、フィルダムの合理的な嵩上げ設計手法を提案する。まず、フィルダムの嵩上げについて、複数の嵩上げ形式を想定した上で、現行の設計基準を満足し、経済的にも満足する嵩上げ形式を選定した。選定した嵩上げ形式を対象に、築堤時の応力および変形に着目し、その安全性について考察した。また、湛水に伴う嵩上げダム遮水部の水圧破砕に対する安全性について評価した。さらに、嵩上げダムのすべり変形量を評価し、大規模地震時の耐震性について検討を行った。検討の結果を踏まえ、せん断破壊、水圧破砕、耐震性についての留意点を明らかにし、合理的な嵩上げ設計手順を提案した。

<キーワード> フィルダム、嵩上げ、せん断破壊、水圧破砕、すべり変形量、設計手法

【報文】重力式コンクリートダム堤体への増設放流管の補強鉄筋効果に関する検討

佐々木 隆・金縄健一・高藤 啓・山口嘉一・倉橋 宏

<抄録> 再開発事業として重力式コンクリートダムへ放流管を増設する場合、既設堤体と充填コンクリートの応力状態の違いから、放流管周辺発生応力は、新設ダムにおける発生箇所や発生応力値とは大きく異なる。本報文では、施工手順を考慮した3次元有限要素解析による検討に基づいて増設放流管の空洞周辺の応力特性を把握し、補強鉄筋の効果を検討した。

<キーワード> 重力式コンクリートダム、再開発、放流管増設、補強鉄筋、3次元有限要素解析

【報文】 粒径を考慮した貯水池堆砂の予測手法

櫻井寿之・箱石憲昭・柏井条介

<抄録> 貯水池の堆砂対策を検討する上で、様々な手法の効果と経済性を考慮する必要があり、堆砂現象を予測するツールが不可欠である。そこで、本稿では、既設ダムの堆砂データを用いて粒径別の流入土砂量を精度良く推定する手法、堆砂予測のための混合粒径1次元河床変動モデルの概要とその再現性の検証事例を紹介する。

<キーワード> 貯水池、堆砂、排砂、1次元河床変動モデル、混合粒径

【報文】貯水池の水質予測手法

櫻井寿之・箱石憲昭・柏井条介

<抄録> 貯水池計画の環境影響評価や水質対策の検討においては、水質予測モデルが不可欠である。本稿では、水質予測モデルの概要を示し、計算を実施するに当たって留意すべき境界条件・計算条件の設定方法を示す。また、具体例の一つとして、土木研究所で開発したモデルの概要と計算事例を紹介し、今後の課題を示す。

<キーワード> 貯水池、水質、水温、濁度、鉛直2次元モデル

【報文】 グラウンドアンカーの健全性診断・補修技術

宮武裕昭・大下武志・小野寺誠一

<抄録> 本報文は、既設のグラウンドアンカーについて、アンカーの機能低下に影響する様々な変状、アンカーの健全性を調査する手法、機能に問題があるアンカーに対する補修技術を体系的に整理し、定期的な点検から健全性診断、補修に至る維持管理のしくみを提案するものである。

<キーワード> グラウンドアンカー、健全性診断、維持管理、のり面工

【報文】ファイバー要素を用いた円形断面鉄筋コンクリート橋脚模型の地震応答解析

堺 淳一・運上茂樹

<抄録> >鉄筋コンクリート橋脚の地震応答解析の精度向上を目的として、振動台加震実験における円形断面の鉄筋コンクリート橋脚模型の非線形動的応答をファイバー要素を用いた解析により再現することを試みた。材料構成則のモデル、減衰の仮定等をパラメータに解析を行い、推定精度におよぼすこれらの影響を明らかにした。

<キーワード> 鉄筋コンクリート橋脚、振動台実験、地震応答解析、ファイバー要素、減衰

【報文】河川水質分布からみた再生水の評価

原田 新・中田典秀・鈴木 穣

<抄録> 河川水の水質分布を物差しとして、再生水の相対的な水質評価を行うため、全国から選定した河川の水質分布を非超過率として整理し、再生水の水質と比較した。この結果、二次処理水のエストロゲン様活性や多くの水質項目は、オゾン処理や土壌浸透処理によって代表的な河川水質なみに改善された。

<キーワード> 河川水、下水処理水、再生水、土壌浸透処理、水質評価


平成19年2月 報文抄録

【論説・企画趣旨】急速な広がりを見せる建設分野での情報技術の活用

山田晴利

【報文】道路工事完成図を活用した道路基盤データの構築

阿部寛之・関本義秀・金澤文彦

<抄録> 道路管理のIT化が進む中、道路の基本的な構造情報を表現した道路基盤データを効率的に整備・更新することが必要となっている。筆者らは、道路工事完成図を活用し、道路基盤データのリアルタイムな収集・更新を実現するため「道路工事完成図等作成要領」を策定した。本稿は、今年から運用を開始した要領の概要を紹介する。

<キーワード> CALS/EC、電子納品、道路工事、完成図、GIS

【報文】トータルステーションを用いた道路土工出来形管理

田中洋一・阿部寛之・金澤文彦

<抄録> 国土技術政策総合研究所では情報技術を活用した新たな管理基準として「施工管理情報を搭載したトータルステーションによる出来形管理要領(試行案)」(道路土工編)(以下出来形管理要領という)を作成している。

<キーワード> トータルステーション、出来形管理、道路土工、3次元設計データ、工事測量

【報文】道路通信標準を用いた道路管理情報の共有と利活用

佐藤 司・山本剛司

<抄録> 道路管理者が道路情報システムを効率的に展開するためには、拡張性に配慮したシステム整備及び互換性、接続性を確保することが不可欠である。これらを解決すべく国総研では通信方法や情報定義などの標準を規定した道路通信標準を策定した。本稿では、道路通信標準とそれを用いた道路管理情報の共有と利活用について紹介する。

<キーワード> 道路通信標準、相互接続性、相互運用性、互換性、道路管理情報

【報文】 ICTを活用した維持管理

佐藤 司・田中洋一・小林 亘

<抄録> 地震、土砂災害、水害をはじめとする自然災害に対する安全性の向上を求める社会的要請が高まり、また、社会資本の老朽化への対応が喫緊の課題となっている。このような状況のもと、国総研として取り組んでいる「社会資本の管理技術の開発」について研究内容を紹介するとともに、道路巡回点検を効率化するための道路巡回端末に関する研究成果を報告するもの。

<キーワード> ICT、社会資本、維持管理、道路巡回端末

【報文】災害情報共有システムの実運用と考察

小原弘志・山本剛司・金澤文彦・中尾吉宏・小路泰広

<抄録> 実際の災害時の情報の流れなどを分析して構築した災害情報共有システムの概要と、実運用から得られた課題に対する考察をとおして、災害情報共有システムの今後の改良や適用範囲の拡充について述べる。

<キーワード> 災害情報、情報共有、電子国土、情報システム、システム連携

【報文】 走りやすさを表現した地図の開発とカーナビ等への展開

関本義秀・井坪慎二

<抄録> 本研究は、現在各都道府県で整備されている走りやすさマップに関する様々なデータをカーナビ等に搭載し、例えば比較的運転技術のおとる高齢者などが走りやすい経路を検索することができるなど、安全運転に資するためのサービス実現を目指すものである。本稿では、走りやすさデータのコアとなる道路構造情報の効率的な集約・提供の方法からカーナビ等への迅速な反映に至るまでの道路構造情報の円滑な流通に関する研究や官民連携の概要を紹介する。

<キーワード> 走りやすさマップ、道路構造情報、地図、カーナビ、安全運転支援

【報文】準天頂衛星システム(日本版GPS)を用いたRTK-GPS測位の移動体への適用

藤本幸司・松下博俊

<抄録> >準天頂衛星システムは、日本付近で常に天頂方向に衛星が見えるよう日本自ら配備し、GPS情報を補完・補強することにより、山間部・ビルなどに影響されずに高精度測位サービスの提供を実現するもの。国総研では、準天頂衛星の利用面して、作業車両、建設機械等の中低速度で移動するものへの適用化技術等の研究開発を実施しており、その中間報告を行うものである。

<キーワード> RTK-GPS、準天頂衛星、情報化施工、慣性航法複合技術、GPS高速初期化技術

【報文】低改良率セメントコラム工法の開発

古本一司・小橋秀俊・三木博史・恒岡伸幸

<抄録> 超軟弱地盤上での構造物の建設計画が増える中、それに伴い高度でかつ経済的な軟弱地盤対策の開発が求められている。本報文はこれを念頭に開発した低改良率セメントコラム工法に関し、設計に必要なアーチ効果を解明するための模型実験並びに試験施工結果を紹介する。

<キーワード> 軟弱地盤対策、低改良率、深層混合処理、アーチ効果

【報文】下水管渠の破損に伴う土砂の流出特性

桑野玲子・桝谷有吾・堀井俊孝・山内慶太・小橋秀俊

<抄録> 本研究では、老朽下水管渠の破損部等への土砂流出に関して、初期の地盤内空洞の形成から、最終的に空洞・ゆるみが拡大・進展して地表面に到達するまでのメカニズムや支配要因を、小型土槽を用いた土砂流出実験により検討した。その結果、空洞周辺の「ゆるみ」領域に対して定量的な評価を加え、地盤材料ごとに空洞とゆるみの概略形状や範囲、程度を明らかにした。

<キーワード> 下水管渠、空洞、ゆるみ、道路陥没

【報文】道路橋の維持管理に関する指標開発の取組み

玉越隆史・小林 寛・武田達也・平塚慶達

<抄録> 道路橋の定期点検結果から管理状態を表現する「総合評価指標」の構築を行った。本指標は複数の要求性能に対する指標値を並列させ、閾値により区分することを特徴とする。また既存の損傷データを分析して評価位置を合理化している。本指標を実橋梁に当てはめ、経験的な評価と概ね整合する指標を提案できる可能性を示せた。

<キーワード> 総合評価指標、定期点検、損傷発生位置、管理状態


平成19年3月 報文抄録

【論説】土木技術者よ、夢とロマンを

猪股 純

【報文】景観検討・評価のための計画デザイン・システムに関する研究

福井恒明

<抄録> 本研究は、平成16年度から18年度にかけて国土技術研究会指定課題として実施した「景観検討・評価のための計画デザイン・システムに関する研究」である。今年度は平成19年度からの景観アセス本格運用を踏まえ、景観アセス試行事業を通じて抽出された課題とそれに対する対応や、今後の直轄公共事業における景観施策の課題、地整における最新の取組みについて報告を行った。

<キーワード> 景観検討、景観評価、景観アセスメント、計画デザイン・システム

【報文】山地流域における土砂生産予測手法の研究

栗原淳一・桜井 亘・酒井直樹

<抄録> この報文は、平成18年度国土交通省国土技術研究会指定課題「山地流域における土砂生産予測手法の研究」における研究成果をとりまとめたものである。これまで検討してきた土生産砂量予測手法を複数の現場に適用し、その適用性を検証した成果を報告する。

<キーワード> 土砂生産予測手法、山地流域、斜面崩壊、渓床・渓岸侵食

【報文】河川事業におけるインパクト-レスポンスの分析および
 河川の物理的指標を活用した河川環境評価手法に関する研究

天野邦彦・大石哲也・児玉秀樹

<抄録> 本研究は、河川事業を人為的インパクトと捉え、生態系へのインパクトを予測・評価する手法を確立するため、事例研究をベースとしながら、環境影響分析方法の高度化に資する検討を行う。本年度は、高水敷切り下げ後におきた出水による四万十川、三峰川の環境変化を紹介する。また、近年、各地方整備局の抱える共通の問題である河川環境評価手法に関する研究を取り上げ、過去の環境情報復元のための技術についての指針を示す。

<キーワード> インパクト・レスポンス、環境影響分析、河川調査法、RHS、過去の環境情報復元

【報文】 河道内樹木群の治水上の効果・影響に関する研究

山下武宣・板垣 修

<抄録> 河道内樹木群の治水上の効果・影響を評価し、より適切な樹木群管理手法について検討するため、現地調査箇所として30箇所を選定し観測用機器の準備を行い、これまでに13箇所において出水時の流況等調査を実施した。

<キーワード> 河道内樹木群、治水上の効果・影響、樹木群管理手法、現地調査箇所、出水時の流況等調査

【報文】交流可能圏域に着目した評価指標の開発

大脇鉄也・花輪正也・三上弘城

<抄録> 道路整備の効果として、国民が期待するものに一般的な開発効果がある。  そこで、交流圏(一定時間内に到達できる範囲)に着目し、道路整備による任意の2地域間の交通近接性向上効果を約5kmメッシュにより評価し、さらに、そこから派生する交流機会の拡大、地域経済の発展、生活・文化面での豊かさの向上を表す指標の開発を試みるものである。

<キーワード> 道路事業、効果評価、交流圏、メッシュ解析、交通近接性

【報文】 的確な震後対応のための被災イメージ活用と被災状況の迅速な把握技術の開発

小路泰広・宇佐美淳

<抄録> 道路管理者は、災害直後の混乱期に情報の空白や錯綜が生じる中で、緊急活動のための道路啓開や道路の通行可否についての情報提供が重要になる。このため、被災イメージを持ち、これを活用して、道路管理者が震後対応を遂行するための方法論について検討するとともに、災害把握の迅速化に資する技術開発を実施した。

<キーワード> 震後対応、PDCAサイクル、被害想定、情報共有、状況把握

【報文】地すべり地末端の崩落斜面における地盤変位の遠隔計測支援技術の開発

樋口佳意・藤澤和範・藤平 大・小原嬢子

<抄録> > 崩落土砂などの地すべり地末端の堆積物は、地すべり被害の拡大を抑えている可能性がある。そのため、救助や応急対策に伴う堆積物除去作業は、計測機器などを用いて監視をしながら安全に実施する必要がある。また、二次災害の恐れから、監視そのものも斜面に立入らず遠隔から安全に行う必要がある。  このような監視手法としてノンプリズム型のトータルステーションを用いた計測方法があるが、対象斜面にターゲットが設置されないため、ターゲットがある場合に比して計測精度が劣るとともにデータの客観性に問題がある。  このようなことから、筆者らは、遠隔から斜面に設置できるターゲットとその設置方法を開発し、より精度よく遠隔から安全にモニタリングする手法を考案した。

<キーワード> 地すべり災害、斜面監視、遠隔計測

【報文】最近の道路橋基礎の使用実態調査結果

井落久貴・中谷昌一・白戸真大・石田雅博

<抄録> 本報文は、平成16年度に発注された直轄事業における道路橋において使用されている基礎形式の選定要因の実態調査を行った結果を報告するものである。また、今回の調査結果(333橋、1504基礎)と過去の調査結果を比較することにより、基礎形式選定の変遷についても報告する。

<キーワード> 道路橋基礎形式選定、実態調査、基礎形式の変遷


平成19年4月 報文抄録

【論説・企画趣旨】安全で快適な道路空間を実現するための取り組み

時政 宏

【報文】幹線道路の交通安全対策

岡 邦彦・橋本裕樹・近藤久二

<抄録> 本稿では、「事故多発地点緊急対策事業」のフォローアップ調査結果をもとに、各種交通安全対策の事故削減効果を分析した。
  その結果、道路照明や歩道、右折レーン等の交通安全対策実施時の事故削減効果を定量的に把握するとともに、対策を組合せて実施した場合により高い事故削減効果を有する傾向があることがわかった。

<キーワード> 幹線道路、交通事故、交通安全対策、事故多発地点、事故削減効果

【報文】生活道路における交通安全対策事例とその効果

高宮 進・岡 邦彦・中野圭祐・小出 誠

<抄録> 生活道路では、交通事故の未然防止に加えて、歩行者が快適に利用できる空間の実現を望む声も強い。このため、安全で快適な道路空間を実現していく「くらしのみちゾーン」等の施策が進められている。本稿では、ハンプによる自動車速度の抑制、路側帯拡幅による通行位置の変化等の観点から、生活道路における交通安全対策の効果をまとめる。

<キーワード> 生活道路、交通安全対策、ハンプ、路側帯拡幅、快適性

【報文】ITSによる世界一安全な道路交通社会の実現

平井節生・畠中秀人・山崎 勲

<抄録> IT新改革戦略で唱えられている「交通事故の大幅な削減」の達成を目指して取り組んでいる新しい交通安全対策の実道における実験結果について報告するとともに、本対策をより効果的に実現することが可能となる次世代ITSサービス提供システムの実運用に向けての取り組み状況について報告する。

<キーワード> ITS、AHS、SMARTWAY、交通事故、前方障害物

【報文】 自律移動支援プロジェクトの推進~ユニバーサル社会の実現に向けて~

岡 邦彦・瀬戸下伸介

<抄録> 自律移動支援プロジェクトでは、平成17年度までの実証実験により、通常の環境下での機器類の稼働状況を確認し、技術仕様案を策定した。また、平成18年度の全国8箇所の実証実験により、積雪下、電波干渉の激しい都市部、車道への設置等、より厳しい環境下での検証を行い、実用化に向け基本的な技術を確立した。

<キーワード> 障害者、高齢者、ユビキタス、自律移動支援、実証実験

【報文】「走りやすさマップ」のアンケート結果と道路構造面から見た日本の道路ネットワークの現状について

奥谷 正・井坪慎二・前川友宏

<抄録> ユーザーの視点に立ったサービスレベルを表現した「走りやすさマップ」に関して、全国アンケート調査結果を取りまとめるとともに、道路幾何構造の観点から、わが国における道路ネットワークの現状を分析・評価する。

<キーワード> 走りやすさマップ、サービスレベル

【報文】 景観阻害広告物除去の必要性に関する調査

曽根真理・並河良治・足立文玄

<抄録> 本調査の目的は、景観を阻害している屋外広告物除去の必要性を整理・説明し、効果的な撤去の方策を提案するものである。
  先ず、景観阻害広告物の性格を整理することにした。次に、整理結果を基に景観阻害量の試算を行った。景観阻害広告物除去シナリオとして、道路管理者が主体となって行うものと、地域との連携のもとで行うものの2種類のシナリオを想定して、景観阻害量の変化を求めた。この結果、前者は47%改善、後者は73%改善するとの試算結果が得られた。

<キーワード> 屋外広告物、景観、定量化

【報文】地すべり災害の社会的影響評価とリスクマネジメント

藤澤和範・小原嬢子・池田 学・神原規也

<抄録> > 地すべり災害は、復旧に長期間を要するとともに、その被害は多岐にわたる。また、不測の事態に対して短時間での判断を迫られるケースが多いことから、本稿では危機管理に主眼を置き、地すべり災害が地域社会に及ぼす影響について、事例を交え検証を行う。

<キーワード> 地すべり災害、社会影響、間接被害、危機管理

【報文】自動車1台あたりの換気対象物質の低減を考慮したトンネル換気設計法

真下英人・石村利明

<抄録> 本報文は、供用中の道路トンネルにおける実態調査によりトンネル内の排出ガス濃度および自動車から排出される有害成分の排出量の推移を明らかにするとともに、道路トンネルの換気施設設計に用いる自動車1台あたりの換気対象物質の排出量の算定方法について検討したものである。

<キーワード> 道路トンネル、実態調査、自動車排出量、換気施設

【報文】米国でのインテグラルアバット橋に関する設計基準の調査および現地調査

小林篤司・中谷昌一・竹口昌弘・横幕 清

<抄録> インテグラルアバット橋に関する米国の設計基準の調査および現地調査の結果について整理した。その結果、支承や伸縮装置の省略により耐震性は向上するが、温度変化による桁の伸縮に伴う橋台背面部の損傷を防ぐためには、その橋台天端の水平移動量を指標として適用を制限する必要がある。

<キーワード> インテグラルアバット、橋台部ジョイントレス構造、設計基準、米国現地調査


平成19年5月 報文抄録

【論説・企画趣旨】新技術の開発とその活用・普及

見波 潔

【報文】土木研究所における新技術の開発及び活用・普及活動

菊地 稔・木村 慎・児玉法彰・安馬芳樹

<抄録> 土研における技術開発の動向(共同研究)を紹介するとともに、新技術等の活用・普及を図るために実施している、特許の管理や優先実施権制度といった運用、コンソーシアム等の設立・運営、新技術ショーケースの開催、表彰への応募、法人著作出版、広報・PR等の活動を紹介する。さらに、国土交通省が運用する「公共工事等における新技術活用システム」において土研の新技術活用評価委員会が実施している活動を紹介する。

<キーワード> 共同研究、広報、特許、出版、コンソーシアム、NETIS

【報文】特許の積極的な管理・運用-ハイグレードソイル工法-

小橋秀俊・安馬芳樹・菊地 稔・児玉法彰

<抄録> 多数の特許権で構成されるハイグレードソイル工法について、技術の内容や現場での活用事例等を紹介するとともに、その特許の内容、登録出願の経緯や管理及び効率的な運用の方法等を紹介する。

<キーワード> 特許、出願、維持・管理、実施契約

【報文】地方公共団体との連携-みずみち棒を用いた下水汚泥の重力濃縮技術の普及展開-

菊地 稔・児玉法彰・落 修一・越智通浩・成田 晃・三浦 匠

<抄録> 第1回ものづくり日本大賞(内閣総理大臣賞)や第7回国土技術開発賞優秀賞(国土交通大臣賞)を受賞した下水汚泥の重力濃縮技術について、技術の内容や現場での活用事例等を紹介するとともに、北海道や苫小牧市及び枝幸町との連携の経緯や内容、成果と他の地方公共団体への普及の見通し等を紹介する。

<キーワード> 地方公共団体、連携、現場導入、事例紹介、普及

【報文】 きめ細かな技術支援-高橋脚建設新技術“3H工法”の普及展開-

菊地 稔・児玉法彰・福井次郎・吉田 正・笹谷輝勝・原 夏生

<抄録> 現場での活用が進んでいる高橋脚の建設技術について、技術の内容や現場での活用事例等を紹介するとともに、発注側官公庁等への技術PR、委託を受けて実際に設計を行うこととなるコンサルタント技術者を対象とした現場研修会、3H工法研究会による技術支援等の活動を紹介する。

<キーワード> 新技術導入、技術指導、3H工法研究会

【報文】効果的な広報・PR-鋼製橋梁等の塗膜除去技術“インバイロワン工法”の普及展開-

菊地 稔・児玉法彰・守屋 進・臼井 明

<抄録> 第8回国土技術開発賞最優秀賞(国土交通大臣賞)を受賞した鋼構造物の塗膜剥離技術について、技術の内容や現場での活用事例等を紹介するとともに、現場の情報を充実させた技術パンフレットや施工の様子が視覚的に分かるDVDの作成、新技術ショーケースでの展示や技術相談、専門工事業者等の関係各方面への積極的な技術PR等の活動を紹介する。

<キーワード> 技術パンフレット、DVD、専門工事業者、技術紹介

【報文】 技術の規格化・基準化-コンクリートの品質確保技術とそのサポート-

菊地 稔・児玉法彰・森濱和正・片平 博

<抄録> 社会資本整備における品質管理のための、レディーミクストコンクリートの単位水分量の測定とコンクリート構造物の微破壊・非破壊試験による強度測定について、測定技術の一つとして選定された土木研究所の研究開発技術を紹介するとともに、単位水量測定技術については、技術事務所等での講習会を通じた技術指導等を、試験・強度測定技術については、技能講習会を通じて全国統一の技能レベルや精度の保持などを行っていることを紹介する。

<キーワード> コンクリート品質管理、技術基準、通達、技能保持

【報文】河川環境の事象を題材にした展示について

真田誠至・萱場祐一・吉冨友恭

<抄録> 河川環境の事象を効果的に伝達する方法として展示があげられる。本報告では、まず、河川環境の展示で伝えるべき内容の関係を整理し、ついで、河川環境でわかりにくい事象をまとめその展示手法を提案した。また、自然共生研究センターで出展した2つの展示例を取り上げ、河川環境情報を効果的に伝達する手法について解説した。

<キーワード> 展示、河川環境、情報伝達、水際植物、流量変動

【報文】豪雨を誘因とする深層崩壊発生箇所の特徴とその抽出手法について

鈴木隆司・栗原淳一・桜井 亘・酒井直樹

<抄録> 豪雨を誘因として発生する深層崩壊による災害を防止・軽減するために、既往の崩壊事例を収集・解析し、発生箇所の特徴が抽出指標の項目として必要条件となっていることを評価した。また、実際の崩壊発生地域に対して、危険区域の抽出がある程度可能なことを明らかにした。

<キーワード> 深層崩壊、抽出手法、明瞭なリニアメント、活断層、危険区域

【報文】東・東南アジア地域における洪水ハザードマップ作成の現状と課題

時岡利和・オスティ ラビンドラ・田中茂信

<抄録> 東・東南アジアにおける洪水ハザードマップの作成・普及状況について文献調査および現地調査を行った。その結果、いくつかの国において洪水ハザードマップの試作版が作成されているものの、広く住民に公表するには至っていないことが明らかとなった他、マップに対するニーズも日本とは異なることが明らかとなった。

<キーワード> 東・東南アジア、洪水ハザードマップ、浸水想定区域図


 
平成19年6月 報文抄録

【論説・企画趣旨】湖沼等の閉鎖性水域の環境保全

高柳淳二

【報文】湖沼における水質・生態系保全の評価手法に関する研究

天野邦彦

<抄録> 湖沼水質変動は、各湖沼特有の水理・水文状況に生態系活動が反応して生起している。そこで、湖沼水質変動を詳細な流動計算と水質計算により表現する数値モデルを開発した。現場における水質調査結果を利用してモデル解析を実施することで、水の流れと生態系反応が駆動する種々の動的な水質変化が解明された。

<キーワード> 湖沼水質、シミュレーション、生態系モデル、大型水生植物、生態的機能

【報文】沈水植物群落の再生による湖沼環境改善手法の提案

天野邦彦・時岡利和

<抄録> 新しい底泥処理手法として、沈水植物群落の再生による湖沼環境改善手法を提案した。沈水植物群落を再生することで、底泥の巻き上げが抑制され、透明度向上、更なる植生繁茂、水質改善が促進される。再生の際には、在来種の再生が必要であるが、そのために、失われた沈水植物の再生材料として底泥中に存在する散布体(種子や卵胞子)に着目し、その分布特性、発芽ポテンシャルを解明した。

<キーワード> 沈水植物、散布体、シードバンク、発芽、再生

【報文】湖沼の面源負荷対策としての湖内湖の効果

中村圭吾・天野邦彦

<抄録> 新しい面源負荷対策である湖内湖浄化法の汚濁削減効果の評価を実施した。その結果、除去率の平均値は、滞留時間に比例し、水面積負荷、負荷速度の増加にともなって指数関数的に減少することが分かった。また、生物に対する効果としては鳥類の生息場としては評価できるが、水生植物の生育場、魚類の生息場としては問題が多いことが分かった。今後は、浚渫を含めた浄化効果、コスト評価を行うとともに、湖内湖の考え方を応用した人工内湖などの降雨流出水対策を推進する必要がある。

<キーワード> 湿地浄化法、植生浄化法、水質浄化、水質対策、エコテクノロジー

【報文】貯水池底泥からの栄養塩類溶出量推定方法の開発

中薗孝裕・阿部千雅・鈴木 穣

<抄録> ダム貯水池における底層水への高濃度酸素供給装置と連続水質監視システムを開発しDO条件変化による水質変化を連続的モニタリングするとともに、この水質データを用いてモデルシミュレーションを行い栄養塩類溶出速度の検討を行った。

<キーワード> 高濃度酸素水、底泥、栄養塩類、シミュレーションモデル、溶出量推定

【報文】沈水植物の有無が水質、生態系に及ぼす影響

中村圭吾・天野邦彦

<抄録> 自然共生センターの実験池を用いて、沈水植物が池の水質および生態系にどのような影響を与えるか検討した。その結果、多くの水質指標に関して植生区においては、無植生区と比較して、良好な水質を得られた。沈水植物が実験池容積に占める割合が大きいほど水質が良い傾向があった。底生生物の現存量は、無植生区でミミズ類、ユスリカ類が多かった。クロイトトンボ類に関しては植生区において、より多く観察された。

<キーワード> PVI、湖沼復元、水生植物、レジームシフト、水草、浄化

【報文】 道路防災マップによる安定度調査箇所選定の有効性に関する分析

倉橋稔幸・佐々木靖人・矢島良紀

<抄録> 本報告は、平成8年度~平成16年度の間に直轄国道で発生した斜面災害54件が平成8年度道路防災総点検で点検対象外箇所となっていた要因を分析し、その対象外箇所を対象に道路防災マップによる安定度調査箇所の選定基準を適用し、その結果から道路防災マップの有効性を述べるものである。

<キーワード> 斜面災害、道路防災総点検、道路防災マップ、安定度調査箇所の選定

【報文】WEPモデルを用いた印旛沼・高崎川における雨水浸透対策効果のシミュレーション

飯泉佳子・深見和彦・木内 豪

<抄録> 将来の都市化や雨水の貯留浸透対策実施による流域水循環への影響について評価すること、及び、現在進められている高崎川および印旛沼流域における水循環の健全化計画策定に資する情報・知見を提供することを目的として、流域水循環の定量化と流域変化の影響予測に用いることを念頭に開発された分布物理型モデルであるWEPモデルを、印旛沼の流入河川である高崎川へ適用した。これにより、同流域による雨水浸透対策の効果について定量的な解析を行ったので報告する。

<キーワード> WEPモデル、雨水浸透対策、水循環、都市化、印旛沼

平成19年7月 報文抄録

【論説・企画趣旨】砂防・河川・海岸における総合土砂管理の取り組み―古くて新しい課題―

大平一典

【報文】流砂系の総合的な土砂管理支援システムの開発

水野秀明・小山内信智・清水武志・稲村貴志

<抄録> 流砂系における総合的な土砂管理を確立するためには、計画の作成・実施・評価・改善といったマネジメントシステム(「流砂系の総合的な土砂管理支援システム」)の構築が必要となる。本稿では、そのシステムの考え方を整理するとともに、土砂移動モニタリング技術や地形変化推定モデルといった技術開発の成果を報告する。

<キーワード> 流砂系、総合的な土砂管理、土砂移動モニタリング、地形変化推定モデル

【報文】堆砂対策によるダムからの土砂供給特性について

櫻井寿之・箱石憲昭

<抄録> ダム貯水池内への流入土砂を下流河道に供給することが求められている。最近では、ダムからの土砂供給による下流河道への影響について、供給される土砂の質を考慮して評価する必要性が指摘されている。そこで、本稿では、代表的な堆砂対策手法である、土砂バイパス、フラッシングおよび流水型治水専用ダムについて、土砂供給特性を考察した結果を報告する。

<キーワード> 貯水池堆砂、土砂供給、土砂バイパス、土砂フラッシング、流水型治水専用ダム

【報文】涸沼川における洪水中の河床波形状の観測

吉岡英貴・石神孝之・山下武宣・高部一彦

<抄録> 実河川における洪水時の河床波観測例は極めて少なく、特に河床形態の遷移過程を捉えた観測例は皆無に等しい。本研究では、機械的にヘッドを回転させて河床形状を取得する特殊なソナーを河道の一点に固定して、河床の鉛直2次元形状や平面2次元分布を把握した。そして、この河床波の移動速度から流砂量の推定を行った。

<キーワード> 河床波、ソナー、洪水観測、掃流砂、涸沼川

【報文】砂浜の機能と変形予測

福濱方哉・山田浩次

<抄録> 砂浜の本来持っている消波機能や根固め機能を維持・回復させて、海岸保全に活用するためには砂浜変形の特性を把握する必要がある。本報文では砂浜変形実験の結果から、波浪条件による砂浜の可逆変化と不可逆変化の特性を明らかにし、条件によってこれ以上侵食が進まない断面形状が存在することも示した。また、それらの変形予測の手法を示した。

<キーワード> 砂浜、海浜地形、消波機能、海浜変形、地形変化予測

【報文】養浜工法の洗練に向けた取り組み

野口賢二

<抄録> 養浜は汀線の回復を目的とするが、海岸にとっては海浜材料を補給し「漂砂系を改善」できてしかも副作用が少ない唯一の方法である。しかし、我が国の養浜に課せられる条件は厳しい。これを克服するために養浜を技術として洗練する試みについて、事例と研究を報告する。

<キーワード> 養浜材料、海浜断面変化、現地事例、海岸侵食、内部侵食

【報文】 等深線変化モデルを用いた潮位上昇が海岸侵食に与える影響予測手法

笹岡信吾・福濱方哉

<抄録> 海水面の継続的な上昇が生じた場合、沿岸漂砂量を増大させるため、汀線や浜崖の形成などの海浜地形の変形や侵食防止のための海岸保全施設の性能や安定性について、どのような応答があるか検討する必要がある。各年度に均一に潮位の上昇幅を割振り、各海岸に与えた初期地形から100年間における等深線変化解析を実施した。

<キーワード> 海水面上昇、等深線変化モデル、海岸保全施設、性能評価、海岸侵食

【報文】底生動物棲み込みによる河床固化について

田代 喬・皆川朋子・萱場祐一

<抄録> 底生動物棲み込みにより材料が移動しにくくなる「河床固化」の実態把握を目的として、ばねばかりを用いて礫の移動特性を計測した。礫の掃流限界を推定したうえで、影響因子の分析を試みたところ、ダム直下流における河床固化は明確で、底質により変化したが、季節による違い、ダムからの放流による影響は確認されなかった。

<キーワード> 河床固化、底生動物、礫床区間、ダム下流、フラッシュ放流

【報文】洪水流出解析におけるモデル適用妥当性の検討方法に関する一考察

猪股広典・深見和彦

<抄録> 流出モデルが持つパラメータの安定性をモデルの評価指標として、任意の流出モデル間の比較を定量的に行う手法を提案する。ここではJackknife法およびモンテカルロ法を用いたモデル安定性評価手法を提案し、貯留関数法、準線形貯留型モデル、等価粗度法および合理式合成法に適用し、モデル間の比較を行った。

<キーワード> 洪水流出解析、モデル安定性評価、Jackknife法、モンテカルロ法

【報文】コンクリート構造物補修用セメント系断面修復材の電気抵抗率測定方法

守屋 進・川俣孝治・内藤英晴・皆川 浩

<抄録> 電気防食工法の最適設計においては、セメント系断面修復材の電気抵抗率を正しく測定することが防食電流の均一性確保の点から重要である。本研究では、簡易な電気抵抗率測定方法の電流・電圧・周波数などが電気抵抗率に及ぼす影響について実験的検討を行い、標準的な測定法を提案した。

<キーワード> セメント系断面修復材、電気抵抗率、電気防食、防食電流、最適設計

平成19年8月 報文抄録

【論説・企画趣旨】最近の地震被害の傾向と耐震技術課題

松尾 修

【報文】H16年新潟県中越地震における斜材付π型PCラーメン橋の損傷分析

堺 淳一・運上茂樹

<抄録> 2004年の新潟県中越地震では、高速道路の跨道橋として採用される場合の多い斜材付π型PCラーメン橋に初めて地震被害が生じた。本研究では、損傷の分析および被災橋の地震応答解析から、斜材付π型PCラーメン橋の耐震性能を評価した。

<キーワード> 斜材付π型PCラーメン橋、新潟県中越地震、耐震性、地震応答解析

【報文】すべり系支承を有する免震橋梁模型の振動台実験

岡田太賀雄・遠藤和男・運上茂樹

<抄録> すべり系支承を有する免震橋梁の地震時挙動について検討するために、三次元大型振動台を用いて橋梁全体系を模擬した加振実験を行った。地震時挙動を確認するとともに、橋脚の塑性化が橋梁の地震時挙動に及ぼす影響及び数値解析モデルについて検証した結果について報告するものである。

<キーワード> すべり系支承、免震橋梁、振動台実験、シミュレーション解析

【報文】沢埋め盛土の耐震対策

佐々木哲也・杉田秀樹・大川 寛・水橋正典

<抄録> 2004年新潟県中越地震、2007年能登半島地震では特に沢部を横断する山岳道路盛土で大規模な崩壊が生じ、長期間にわたり道路交通機能が失われた。このような被害に対し、道路交通機能の低下を最小限に抑制するとともに、被災後の機能回復を迅速に行うため、山岳道路盛土についての耐震診断技術および耐震対策技術の開発が求められている。本報では、新潟県中越地震等の山岳道路盛土の被害事例を分析するとともに、動的遠心模型実験により山岳道路盛土の耐震性に及ぼす諸条件及び耐震対策工法の効果について検討した結果を紹介するとともに、沢埋め盛土の耐震対策の考え方と今後の課題について紹介する。

<キーワード> 新潟県中越地震、能登半島地震、道路盛土、耐震対策、動的遠心模型実験

【報文】土構造物の地震時変形照査に用いる液状化土の地盤定数の簡易推定法

谷本俊輔・杉田秀樹・佐々木哲也

<抄録> 本研究では、我が国で得られた多くの凍結試料の液状化試験結果を収集・整理してデータベースを作成するとともに、液状化土の様々な力学特性を表すR-Nc曲線について、影響を及ぼす要因の分析を行った。その分析結果に基づき、沖積地盤、埋立地盤における細粒分含有率FC<10%の砂質土を対象とし、標準貫入試験のN値から各種ひずみ振幅に対するR-Nc曲線を簡便に推定する方法を提案した。

<キーワード> 液状化、変形解析、R-Nc関係、ひずみ増加特性、凍結サンプリング

【報文】河川構造物の耐震性能照査手法の開発

杉田秀樹・田村敬一・高橋章浩・谷本俊輔

<抄録> 河川構造物の耐震設計は「建設省河川砂防技術基準(案)同解説、H9」に準拠しているが、設計地震動としてはレベル1地震動(中規模地震)のみが考慮されており、レベル2地震動への対処が喫緊の課題であった。本稿では、平成19年3月に国土交通省が新たに作成した「河川構造物の耐震性能照査指針(案)同解説」の骨子について報告する。

<キーワード> 河川構造物、河川堤防、耐震設計、耐震性能照査、レベル2地震動

【報文】 ダム下流の河床付着膜の特徴とフラッシュ放流による掃流

皆川朋子・福嶋 悟・萱場祐一

<抄録> 本報は、ダム下流の河床付着膜の特徴を整理し示すとともに、宮ヶ瀬ダムで実施されたフラッシュ放流を対象に、河床付着膜の状態(主に付着形態型の違い)に起因した掃流の程度の違い、景観やアユの餌資源としての観点からみた放流の効果やその後の経過について定量的に示したものである。

<キーワード> ダム、フラッシュ放流、河床付着膜、付着藻類、流量管理

【報文】主要な火山における火山灰の透水性の実態とその決定要因の考察

田方 智・武澤永純・山越隆雄・栗原淳一

<抄録> 火山噴火によって火山灰で覆われた斜面では浸透能が著しく低下し、その後の雨によって泥流・土石流が発生しやすくなる。そのため、火山灰の浸透能を把握することが泥流・土石流の発生危険度を評価する上で重要となる。本報では、これまでに噴火後の火山灰浸透能計測事例を広くレビューし、各々の計測手法の適用性を検討するとともに、火山灰の浸透能の決める要因について検討した結果を報告する。

<キーワード> 火山灰、浸透能、飽和透水係数

【報文】凍結融解作用を受けたコンクリート供試体の力学特性

片平 博・渡辺博志

<抄録> 一般にコンクリートの耐凍害性は凍結融解試験(JIS A 1148)で得られる相対動弾性係数や質量減少率で評価される。本研究では、凍結融解試験後の供試体の力学的性状(圧縮、曲げ、引張強度)を調査し、相対動弾性係数や質量減少率との関連について調査した。この結果、相対動弾性係数と強度は対応しており、相対動弾性係数の低下に対する強度低下は圧縮よりも引張で顕著であること、質量減少率は供試体のごく表面の劣化を表しており、内部劣化との関連は薄いこと等が分かった。また、本実験の結果から、凍結融解によるコンクリートの劣化パターンを3つに分類する考えを示し、現場での劣化診断における留意点を示した。

<キーワード> コンクリート、凍結融解試験法、相対動弾性係数、圧縮強度、引張強度、スケーリング

平成19年9月 報文抄録

【論説・企画趣旨】土砂災害と地域の復興

寺田秀樹

【報文】2004年新潟県中越地震により再滑動した地すべりの特徴

花岡正明・丸山清輝・ハスバートル・鈴木 滋・村中亮太

<抄録> 中越地震では、地震により再滑動する地すべりはないという定説に反して、大規模な地すべり土塊の急激な滑動により集落の直撃や河道閉塞など中山間地に深刻な被害をもたらした。そこで、地震により再滑動する地すべりの危険度評価法を提案するために、再滑動した塩谷神沢川など3地区の地すべりを代表事例とし、詳細な現地調査により地すべり機構を明らかにした。また、芋川流域における、地震により再滑動した地すべりの全般的な特徴について、地形解析を中心にとりまとめた。

<キーワード> 地震、再滑動した地すべり、地すべりの特徴

【報文】地質及び隆起量に基づく深層崩壊発生危険地域の抽出

内田太郎・鈴木隆司・田村圭司

<抄録> 深層崩壊発生危険斜面を抽出する第一段階として、地質や隆起量から、日本全土の深層崩壊発生危険度の評価を試みた.ここでは、既往の深層崩壊事例を収集・整理し、地質や隆起量の違いが深層崩壊発生に及ぼす影響を定量的に明らかにした上で、深層崩壊発生危険度から日本全土を4つの地域に分類することを試みた。

<キーワード> 深層崩壊、第四紀隆起量、地質、付加体

【報文】レーザープロファイラデータ起源のDEM解析による地すべりの発達度調査手法

笠井美青・池田 学・藤澤和範

<抄録> 近年、レーザープロファイラにより取得された地形データから地すべりが詳細に判読されるようになり、レーザープロファイラは施設建設・維持管理の場に多く採用されるようになった。この技術を土砂災害対策により役立てるために、本論文ではレーザープロファイラデータ起源のDEM解析から地すべりの発達度を調べる手法を検討する。

<キーワード> 地すべり地形、微地形解析、地すべり発達度、DEM解析、レーザープロファイラ

【報文】レーザープロファイラーを用いた地震時形成天然ダムの即時抽出手法

小山内信智・内田太郎・伊藤英之

<抄録> 2004年10月23日に発生した新潟県中越地震では、信濃川水系芋川流域において複数の天然ダムが生じた。特に東竹沢地区で生じたものは規模が大きく、家屋への浸水被害も生じた。さらに、道路網の寸断により、地上踏査による天然ダムの形成箇所の把握が困難であった。
 近年、災害直後の地形変化を把握するため、航空レーザー測量による地形データ取得手法が確立され、実際の災害現場で用いられることが多くなった。本研究では、新潟中越地震発生直後に取得した航空レーザー測量データを用いた河道閉塞箇所の早期自動抽出手法について検討を行った。

<キーワード> レーザープロファイラー、天然ダム、地震、逆勾配、即時抽出手法

【報文】河道閉塞発生直後の応急監視手法

山越隆雄・栗原淳一・桜井 亘・柳町年輝・田方 智

<抄録> 平成16年新潟県中越地震により、信濃川水系の芋川流域において多数の河道閉塞が発生した。本報は、その際の教訓を踏まえ、河道閉塞発生後の応急的な監視手法についてこれまで検討した結果をまとめて示すものである。

<キーワード> 河道閉塞、監視、湛水位、地上レーザースキャナー

【報文】 東横山地すべりを例とした地すべり災害におけるリスクマネジメントに関する一考察

小原嬢子・藤澤和範

<抄録> 地すべり災害によって道路や鉄道などのインフラが被災すると、交通が途絶されることにより、広く地域住民や地域経済などに大きな影響を及ぼすことがある。2006年5月に発生した東横山地すべりの災害を事例に、地すべりが滑落する前から後にかけての対応を紹介し、地すべり災害におけるリスクマネジメントの在り方について述べる。

<キーワード> 地すべり、リスクマネジメント、応急対応、画像解析

【報文】塩害環境下にあるコンクリート橋の自然電位測定手法

中村英佑・渡辺博志・古賀裕久

<抄録> 自然電位法は、コンクリート内部の鉄筋が置かれた腐食環境を非破壊かつ簡易に推定する検査方法であるが、実用化にあたっての課題も残されている。本報文では、塩害環境下にあるコンクリート橋と供試体での測定事例を示すとともに、自然電位法の適切な測定方法と測定結果の活用方法について検討した結果を報告する。

<キーワード> コンクリート橋、自然電位法、維持管理、鉄筋腐食、塩化物イオン濃度

【報文】良質地盤でのセグメント設計に用いる地盤反力係数の設定方法

真下英人・石村利明・左近嘉正

<抄録> 本報文は、地盤が弾性体としての挙動を示す良質地盤において、骨組み構造解析でトンネル覆工の挙動を求める場合に必要となる地盤反力係数を二次元弾性FEM解析により設定する方法について検討を行い、地盤条件および覆工条件が地盤反力係数に及ぼす影響について検討したものである。

<キーワード> 地盤反力係数、良質地盤、二次元弾性FEM解析、骨組み構造解析

平成19年10月 報文抄録

【論説・企画趣旨】地域の持続的な発展を支える21世紀型下水道「循環のみち」気候変動と下水道

藤木 修

【報文】市街地における面源負荷対策としての雨水浸透施設の効果

田本典秀・榊原 隆

<抄録> 市街地における面源負荷対策は、一部を除き、ほとんど進捗していないのが現状である。今後効率的に市街地面源負荷対策を進めていくためには、安価で浸水対策としても効果のある雨水浸透の活用が期待される。本稿は、雨水浸透が有する汚濁負荷削減効果について、実施設における調査結果を踏まえて述べたものである。

<キーワード> 雨水浸透、雨水ます、流出解析モデル、汚濁負荷削減、面源負荷

【報文】下水道管きょのアセットマネジメント研究

松宮洋介・福田康雄・深谷 渉・榊原 隆

<抄録> 管きょのアセットマネジメントとして、平均経済耐用年数とマクロな劣化曲線から長期の改築事業量を予測する手法を提案するとともに、劣化曲線を例示した。また、台帳作成から診断調査、改築・更新・修繕に至る各段階での実施優先順位決定の手法としてリスク評価の導入を提案し、点数計算表を例示した。

<キーワード> アセットマネジメント、改築事業量予測、平均経済耐用年数、劣化曲線、リスク評価

【報文】モンスーン・アジア地域における下水処理による病原微生物除去

尾崎正明・諏訪 守

<抄録> モンスーン・アジア地域に属するタイ国では、し尿は土壌浸透式トイレなどで別途処理されることが多く、下水はし尿を含まないグレイウォーターとされている。タイ国・コンケン市を対象に、ラグーン処理施設による下水中の病原微生物の除去、市内水路における降雨に伴う病原微生物の汚濁負荷流出について実態調査を行った。

<キーワード> 土壌浸透式トイレ、グレイウォーター、病原微生物、ラグーン処理施設、市内水路調査

【報文】下水処理工程における溶存酸素濃度条件が女性ホルモン除去に与える影響

岡安祐司・小森行也・鈴木 穣

<抄録> 硝化促進型標準活性汚泥法を再現し、下水処理工程における運転条件と女性ホルモン関連物質の除去特性との関係を把握した。エストロンは下水処理水中に検出される頻度が高く、その濃度はエアレーションタンクや最終沈殿池における溶存酸素濃度に大きく依存し、適切な溶存酸素濃度の管理を行うことが、効果的な除去のために重要であると考えられる。

<キーワード> 女性ホルモン、エストロン、下水処理、溶存酸素

【報文】珠洲・バイオマスエネルギー推進プラン~下水汚泥と生ゴミや他の汚泥との混合処理~

表野悦夫・高井 充・田川忠晴

<抄録> 珠洲市では、下水汚泥と生ゴミ等、地域のバイオマスを下水処理場で集約混合処理し、バイオガスはエネルギーとして場内活用、汚泥は肥料化して緑農地還元する『複合バイオマスメタン発酵施設』を導入。コスト縮減・環境配慮を両立し、循環型社会形成に向けて取組んでいる。

<キーワード> 下水汚泥、生ゴミ、集約・混合処理、施設の集約化、複合バイオマスメタン発酵施設

【報文】 PC鋼棒の熱影響による耐力低下

玉越隆史・小林 寛・武田達也・古賀友一郎

<抄録> PC鋼材に熱影響を与えると、耐荷力低下の可能性が高いことが知られている。一方、どの程度の熱影響が具体にどの程度耐荷力低下に影響を及ぼすかは一般的に認知されておらず、架設用治具等が安易に鉄筋などと溶接されるケースがあると言われている。このため具体の耐荷力低下の公表・周知を目的に実験を行い、きわめて小規模な仮止め溶接程度でもPC鋼棒の耐荷力低下を来たし、さらに曲げ作用が複合するとその程度が顕著になる場合があることが判明した。

<キーワード> PC鋼棒、総ねじPC鋼棒、熱影響、熱影響と曲げ作用、圧延鋼棒、熱処理鋼棒

【報文】統合型の水文・斜面安定モデルによる土砂災害発生予測

内田太郎・秋山一弥・小山内信智

<抄録> 土砂生産の予測モデルは、1980年代以降、土砂移動現象をコントロールする各現象モデルを結合した物理モデルの構築・提案がされてきた。また、雨水から流出に至る過程、土砂生産と移動現象に関する実験や、現地観測から様々なモデルの改良・提案もされてきている。本研究では、これらの土砂生産予測モデルが実務上利用可能となるように物理モデルの現状を分析して、統合型の物理モデルの構築を行い、現地に適用した事例を紹介する。

<キーワード> 土砂災害発生予測、斜面安定、モデル計算

【報文】拡径型アンカーの遠心模型引抜試験

小林悟史・大下武志・宇田川義夫

<抄録> 拡径型アンカーとは、定着長部を拡大させたアンカーであり、従来型のアンカーに比べて大きな耐力が得られるため、掘割構造部を対象とした土留め支保工として期待されている。本研究では、拡径型アンカーの基本的な特性を把握するため、遠心力模型試験を実施し、その強度特性について評価を行った。

<キーワード> 土留め、グラウンドアンカー、掘割構造、引抜試験、土砂地盤

平成19年11月 報文抄録

【論説・企画趣旨】土木研究所における材料研究の歴史と今後の展開

脇坂安彦

【報文】FRPの歩道橋への適用方策

木嶋 健・西崎 到

<抄録> FRP歩道橋は軽量性および耐食性に優れた橋梁であるが、実現にあたっては技術的課題や経済的課題を解決する必要がある。本報文では、既存の知見や具体的な施工事例に基づいてこれらの課題を整理し、FRPの歩道橋への適用方策について検討した結果を報告する。

<キーワード> FRP、歩道橋、施工事例、経済性、適用方策

【報文】チタン箔による塗装の防食性能の補強方法

守屋 進・小倉義雄・坂本宏司

<抄録> 鋼構造物塗装の防食性能の補強を目的に、チタン箔と基材を一体化したチタン箔シートを適用する工法について塗装防食の補強効果の検討を行った。その結果、チタン箔シートを適用することで塗装の防食性能を補強する効果が確認された。研究成果に基づいてチタン箔シートによる塗装の耐食性補強マニュアル(案)を作成した。

<キーワード> 鋼構造物塗装、チタン箔、チタン箔シート、防食性能の補強

【報文】下水汚泥溶融スラグの建設資材としての利用

宮本豊尚・尾﨑正明

<抄録> 近年下水道普及率の増加に伴い下水汚泥の発生量も増加している。溶融により得られるスラグは、物理・化学的性質から建設資材として利用することが可能である。一般廃棄物および下水汚泥を対象とする道路用、コンクリート用溶融スラグ骨材に関するJIS規格が制定され、建設資材利用の促進が期待されている。

<キーワード> 下水汚泥、溶融スラグ、建設資材利用、JIS

【報文】流動化処理土の下水管渠埋戻しへの適用

桝谷有吾・吉田直人・石原寛隆・小橋秀俊

<抄録> 下水道施設に起因する道路陥没が平成17年度には全国で約6,600箇所発生するなど年々増加する傾向にある。その一因として埋戻し材の締固め不足が挙げられる。そこで、締固めが不要な埋戻し材である流動化処理土を下水道管渠埋戻しへ適用するとともに、流動化処理土作製時の品質管理方法について検討した。

<キーワード> 流動化処理土、締固め、埋戻し

【報文】石材を用いた土木構造物DBの作成と石材の劣化事例 -土木構造物への石材利用とその技術的な課題-

矢島良紀・佐々木靖人

<抄録> 環境に対する国民の関心の高まりを背景に、土木構造物に対して石材を使用する事例が増加しつつある。しかし石材の使用方法に関しては体系化がなされておらず、使用環境によっては早期劣化等の問題が生じるおそれもある。本報では石材利用の現状および具体の劣化事例より明らかとなった技術的な課題を示すとともに、耐久性評価の指標とするために作成した土木構造物データベースについて述べる。

<キーワード> 石材、多自然型工法、石材劣化、歴史的土木構造物

【報文】 浸透に対する河川堤防強化工法

古本一司・齋藤由紀子・森 啓年・小橋秀俊

<抄録> 堤防点検の結果、浸透破壊に対する安全性の確保されていない個所については、質的整備を図ることとされており、効果的かつ経済的な堤防強化工法を早急に確立する必要がある。本報では、ドレーン工法の長期耐久性や短繊維混合補強土工法など新たな対策の適用性を明らかにした。また、堤防の透水性に着目し、強化工法選定に関する基礎的検討を行った。

<キーワード> 河川堤防、堤防強化工法、ドレーン工法、浸透対策

【報文】母材の微粒分がCSGの強度に与える影響

中村洋祐・佐々木晋・佐々木隆・山口嘉一

<抄録> 台形CSGダムの提体材料であるCSGは現地発生材に必要最小限の処理を施すことで作製されるセメント硬化体である。本報文では、CSG母材の粒度、その中でも粒径0.075mm以下の微粒分に着目し、室内試験により微粒分の含有率ちその粘着性が強度に与える影響について分析を行った結果を報告する。

<キーワード> ダム、CSG、微粒分、強度、変形性

【報文】建設現場における緊急地震速報の活用

高山丈司・小路泰広・日下部毅明

<抄録> 平成18年8月より気象庁が提供を開始した「緊急地震速報」は、震源に近い地震計が感知したP波をもとに、主要動(S波)到達前に各地点の予測震度や地震到達時間を知らせる技術であり、この情報を危険回避や避難誘導、施設制御に役立てるための研究が各分野で進められている。
 本検討では、建設分野において緊急地震速報が有効性を発揮する対象として建設現場を選定し、その効果や導入イメージ、運用方法等を具体化するため、実際の建設現場への導入を想定したケーススタディを実施し、導入に向けての課題をとりまとめた。

<キーワード> 緊急地震速報、建設現場、安全

平成19年12月 報文抄録

【論説・企画趣旨】ハザードマップの現状と課題

古賀省三

【報文】避難しない住民を避難させるには-津波・高潮避難対策と動くハザードマップの開発-

小田勝也・熊谷兼太郎

<抄録> 津波・高潮から確実に避難できるようにハザードマップの整備が進められている。しかし、津波避難勧告などが発令されても住民が避難しないという実態がある。動くハザードマップは災害イメージの固定化や自分だけは大丈夫という正常化の偏見を突き崩し、避難する住民となってもらうことを支援するツールである。

<キーワード> 津波・高潮避難シミュレーション、動くハザードマップ、リスクコミュニケーション

【報文】火山ハザードマップの現状と課題

伊藤英之・小山内信智・野呂智之

<抄録> 我が国にある108の活火山のうち、主要な33火山において火山防災マップ(火山ハザードマップ)が作成公表されている。これらのマップの変遷を総括し、現状における火山ハザードマップの課題を、技術面および活用面から述べる。

<キーワード> 火山ハザードマップ、火山防災マップ、活火山、災害予測、リアルタイム火山ハザードマップ

【報文】洪水ハザードマップの普及に向けた取り組み

山岸陽介・山本 晶・榎村康史

<抄録> 本報では、洪水ハザードマップの現状と問題点及び普及に関する取り組み事例を紹介するとともに、水害研究室で取り組んでいる流出解析から氾濫解析、さらにハザードマップの作成までを行えるハザードマップ作成支援システムの開発状況について報告する。

<キーワード> 洪水ハザードマップ、氾濫解析、流出解析、中小河川

【報文】迅速な震後対応はイメージの構築から

宇佐美 淳・片岡正次郎・小路泰広

<抄録> 地震ハザードマップは、一般から専門家向けまで地震に関する多くのハザードマップが作成、公表されている。いずれも、地震が発生した際に、どの程度の揺れや被害が発生するか目で見てわかるため、イメージしやすい。地震後の迅速かつ適切な対応には、被災イメージを持つことが重要である。さらに震後対応向上のために、これらハザードマップの活用手法について検討した。

<キーワード> 地震、ハザードマップ、被害想定、被災イメージ、震後対応

【報文】鋼材を挿入した深層混合処理工法の補強効果

島崎 修・大下武志・堤 祥一

<抄録> 深層混合処理工法において、コスト低減に向けた取り組みは、同時多軸施工、改良杭の大径化、浮式地盤改良等の方法が提案されている。また、施工機械の攪拌性能の向上、改良地盤強度の変形係数の改善による、高強度化、低改良率化によるコスト低減も図られてきている。
 しかしながら、軟弱地盤上の橋台、擁壁背面の盛土による側方流動対策として施工する深層混合処理工法は、鉛直コラムであり、水平方向力によるせん断、曲げ引張には不利となり、不経済である。そのため水平方向力に対処した新しい形式として、改良地盤に鋼材を併用した改良杭を提案し水平方向耐力の検討を行った。

<キーワード> 深層混合処理、鋼材、水平載荷試験、芯材長、曲げモーメント

【報文】 簡易かつ長期間計測を目標とした斜面崩壊検知センサーの開発

柳町年輝・栗原淳一・田村圭司

<抄録> 土砂災害を軽減する為には土砂災害発生の情報を時間遅れなく行政、住民に伝達する必要がある。土砂災害発生の情報を観測する機器として、安価で、容易に設置可能かつ長期間計測を目標とした崩壊検知センサーを開発し、試作センサーの検証実験を行った。その結果、崩壊に対する適用性が確認された。

<キーワード> 斜面崩壊、センサー、発生検知、無線通信、室内実験

【報文】国営みちのく杜の湖畔公園における森林管理が林床植物の種多様性増加と開花に
及ぼす効果と影響の分析

畠瀬頼子・小栗ひとみ・松江正彦

<抄録> 国営みちのく杜の湖畔公園において実験的な森林管理を行い、林床植生の変化、林床植物の開化・生育に及ぼす管理効果を分析した。コナラ林実験区では下草刈りのみでも種数の増加および多くの種の開花に効果が見られた。間伐と下草刈りを合わせて行った場合は、より多くの種の開花を促進した。ただし、減少した種もあり、モニタリングしながら管理方法を見直すことの重要性が示された。

<キーワード> 林床植生、林床植物、里山管理、雑木林、みちのく杜の湖畔公園

【報文】下水処理水に含まれる栄養塩がノリに与える効果

阿部千雅・鈴木 穣

<抄録> 下水処理水に含まれる栄養塩がノリにどのような効果を与えるかを調べるため、下水処理水の添加率を変えた条件を設定してノリの培養実験を行った。その結果、下水処理水の添加率が高いほどノリの色調が濃くなり、うまみ成分であるアミノ酸含有量も高くなった。このことから、下水処理水中の栄養塩は、ノリの品質を高めることに寄与する可能性があると考えられる。

<キーワード> 下水処理水、栄養塩、ノリ、培養実験