【論説】 ノーベル賞受賞から学ぶ
常田賢一
【企画趣旨】実験の意義と今後の展望
【報 文】上下部構造の連成を考慮した橋梁のハイブリッド振動実験
谷本俊輔・田村敬一・岡村未対・小林 寛
<抄録> 模型振動実験と振動応答数値解析を組み合わせた先導的なハイブリッド振動実験により、橋梁下部構造のみの模型を用いて、上下部構造の連成の影響を考慮した橋梁全体系の地震時挙動について検討した結果を報告する。
<キーワード> ハイブリッド振動台実験、上下部構造連成挙勧
【報 文】液状化地盤上の橋梁構造物の振動台実験
小野和行・鈴木貴喜・田村敬一・岡村未対・近藤益央・谷本俊輔
<抄録> 液状化地盤上の橋梁構造物を対象とした2種類の模型振動実験を行った。橋脚基礎を対象とした実験では、地盤変形の影響により杭に作用する土圧を定性的に評価した。また、橋台基礎を対象とした実験では、地盤の液状化に伴い橋台基礎に作用する流動力のメカニズムが、道路橋示方書で規定されている橋脚基礎に作用する流動力のメカニズムとは異なることを明らかにした。
<キーワード> 振動台実験、液状化、抗基礎、地盤変形、流動力
【報 文】杭基礎構造物の補強方法に関する振動台実験
足立有史・浦野和彦・三原正哉
<抄録> コストダウン及び工期短縮が期待できる2タイプの杭基礎の補強形式(杭の深さ方向に部分的な固化補強体の構築)を提案し、せん断土槽を用いたIG場の小型振動台実験を、その補強効果の確認を目的に実施した。実験結果の検討より、これらの補強方法の有効性を明らかにするとともに、解析シミュレーションとの比較を行った結果を報告する。
<キーワード> 振動台実験、せん断土槽、杭基礎、液状化、耐震補強、解析法との比較
【報 文】 鉄筋コンクリート構造物の水平二方向加振振動台実験
西田秀明・運上茂樹
<抄録> 水平動が二方向入力した場合の鉄筋コンクリート構造物の耐震設計法の開発を目的として、長方形断面を有する鉄筋コンクリート柱模型の水平二方向加振振動台実験を行った。その結果、水平二方向入力の影響は、角部や剛性の小さな主軸に直交する面での断面損傷による剛性の大きな主軸方向の変位の増加などとして生じること分かった。
<キーワード> 振動合実験、水平二方向入力、鉄筋コンクリート柱
【報 文】土工構造物・地中構造物の動的遠心模型実験
佐々木哲也・田村敬ー・岡村未対
<抄録> 遠心力載荷装置は、小規模な模型に遠心力を作用させることにより、地盤あるいは土構造物の実物と同じ応カレベルの状態を再現するものである。遠心力場において模型に対して加振実験を行えば、小型模型により実物の応力状態を再現した振動実験が可能となる。本報告では、当所所有の大型動的遠心力載荷装置を用いて 盛土、地中構造物等の地震時挙動及びそれらに対する液状化対策の効果について検討した結果を報告する。
<キーワード> 遠心力載荷装置、土工構造物・地中構造物、液状化、動的挙助、対策
【報 文】大型せん断土槽を用いた「土のう擁壁」の実大振動台実験
井上波彦・二木幹夫・三上和久
<抄録> 仮設資材として用いられてきた「土のう」の幅広い利用を計ることを目的として、大型せん断土槽を用いて土のうによる擁壁(高さ5.0m(50段)、天端幅1.2m(3列)、のり勾配1:0.3)に作用する土圧、接地圧および変形挙動を調べ、地震時の安定性について検討した。
<キーワード> 大型せん断土槽、擁壁、土のう、地震時応答
【報 文】 地中構造物変化部の耐震性に関する動的遠心模型実験
田中 弘・李黎明
<抄録> 代表的な都市部地中構造物変化部である立坑とシールドの取付け部の地震時挙動および耐震方策の検討を目的とした3次元モデルによる動的遠心模型実験を例示して、合理的な耐震施策を検討する際の動的遠心模型実験の有効性について示すとともに、地盤と構造物の動的相互作用問題に関するモデル化と模型製作を含む遠心模型実験上の工夫について報告した。
<キーワード> 地中構造物変化部、耐震、地盤改良、可とう性構造、動的遠心模型実験
【報 文】構造部材の耐震性能評価実験法の提案
星隈順一・運上茂樹
<抄録> 本文では、耐震性能の評価のために実施される実験としては最も代表的を正負交番載荷実験を対象として、寸法効果と縮小模型の設計上の注意点について述べた。また、正負交番載荷実験においては載荷繰返し回数が実験結果に大きな影響を及ぼすため、設計で考慮する地震動の特性に応した合理的な載荷パターンを提案した。
<キーワード> 正負交番載荷実験、実験方法、鉄筋コンクリート橋脚
【報 文】高性能鉄筋コンクリート橋脚の載荷実験
星隈順一・塩島亮彦・運上茂樹
<抄録> 横拘束補強以外の手法で鉄筋コンクリート橋脚の耐震性能を向上させることを目的として、軸方向の座屈発生をできる限り抑制できるような軸方向鉄筋の設置方法について検討を行った。そして、その橋脚構造の塑性変形性能を模型供試体による実験により確認した。
<キーワード> 耐震性能、鉄筋コンクリート橋脚、座屈の抑制、正負交番載荷実験
【報 文】 橋脚の耐震補強載荷実験
中村敏晴・廣中哲也・柴田輝和・松田好史・北後征雄
<抄録> RC柱の耐震補強工法として考案した、スパイラル筋巻立工法(既設柱にフープ状のスパイラル筋を巻立て、モルタルを吹付けて補強)と外部スパイラル鋼線巻立工法(既設柱にプレキャストブロックを設置して円柱形状にし、その外側に鋼より線を巻立て補強。本工法はJR西日本との共同研究)の耐震補強効果を確認するために、反力床・壁と自動制御加力装置を用いた載荷実験を実施した。載荷実験より、上述の2つの工法による耐震補強効果について次のことが確認できた。(1)せん断破壊型から曲げ破壊型への移行(2)じん性の大幅な向上(3)鋼板巻立工法と同等な性能
<キーワード> 繰り返し載荷実験、巻立補強工法、耐震性能
【報 文】堀割スリット構造の中柱に関する大型交番載荷実験
山口高弘・山下知之・古川 敦・大越靖広
<抄録> 掘割スリット構造の耐震設計で設定すべき、高軸力下での中柱の許容層間変形角と適切な中柱配筋方法を確立することを目的とし、1/2スケールの供試体による大型交番載荷実験を実施した。本報告では大型交番載荷実験装置を中心に、正負交番繰り返し載荷実験により検証した結果を述べる。(なお、本実験は、社団法人日本土木工業協会が日本道路公団東京建設局から、「掘割構造耐震実験」として委託されたものである。
<キーワード> 繰り返し載荷実験、堀割スリット構造の中柱、高軸力下、大変形
【報 文】サブストラクチャ仮動的実験によるPC造架構試験体の加力試験
加藤博人
<抄録> プレキャスト部材を圧着接合して構成されるプレストレストコンクリート造架構の地震応答性状を把握することを目的として、サブストラクチャ仮動的実験(PSD)を行った。サプストラクチャPSDの概要を紹介すると共に、試験体の耐力、変形性状、破懐状況などの実験結果と解析による検討結果について報告する。
<キーワード> サブストラクチャ仮動的実験、PC造架構、地震応答性状、解析との比較
【企画趣旨】 流量観測について考えるー「新しい流量観測への取り組み」に寄せてー
永山 功
【報 文】 水文観測業務規程の改定と新しい水文観測体制
竹島 睦
<抄録> 国上交通省では、観測データの品質確保と観測データの公開を進めるため、観測・照査体制を中心に水文観測業務規定の改定を行った。現在の水文観測に関わる諸課題を踏まえてこれからの水文観測体制について概要を述べる。
<キーワード> 水文観測業務規定、品質確保、データ照査、データ公開、技術開発
【報 文】 流量観測に関する技術基準の課題と新しい技術開発への対応
深見和彦・天羽 淳・大手方如・吉谷純一
<抄録> 流量観測技術基準の大きな2つの体系を構成する洪水流量観測と低水流量観測について、現状の技術基準の課題と、新しいニーズに応えていくための今後の技術基準改訂・見直しへの考えられる方策について議論を行うとともに、それらを背景として開始された河川局の流量観測技術の高度化へ向けての取組みについて紹介する。
<キーワード> 流量観測、洪水流量、低水流量、技術基準、浮子測法
【報 文】 水位流量曲線式作成照査支援システムの開発
大手方如・深見和彦・吉谷純―・東 高徳
<抄録> 水位流量曲線作成照査支援システム(HQシステム)は、従来煩雑で、経験が必要とされたHQ曲線式の作成を、野帳の入力から、式の妥当性の照査までを総活的に行うことを支援するシステムである。本稿では開発の経緯から、主な機能の紹介をする。
<キーワード> 水位流量曲線、水文観測業務規定細則様式、浮子観測、資料照査
【報 文】 非接触型流速計測法の開発
大手方如・深見和彦・吉谷純―・東 高徳・田村正秀・和田信昭 淀川巳之助・中島洋―・小松 朗・小林範之・佐藤健次
<抄録> 土木研究所は、共同研究により4種類の方式による非接触型流速計測法の開発研究を実施した。室内実験およびフィールド観測の結果、流量観測装置として実用に耐えうる精度を持つことが示された。浮子観測を補完する手法として、あるいは、無人での連続観測を可能とするオンライン手法等としての利活用が期待される。
<キーワード> 非接触型流通計、流量観測、表面流速、風波、吹送流
【報 文】 開水路流量計測に関する国際規格
堀田哲夫・吉谷純一
<抄録> ISO/TC113間水路の流量測定では、流量観測に関するISO規格が定常的に提案、審議制定されている。日本の国内審議団体は土木学会であり、水理委員会に「ISO/TCl13国内対応委員会」が設置され、規格の審議状況がモニターできる体制が作られている。 本報文では、当委員会の現在までの活動から、ISO規格と対応する日本国内の規格類、両者の規格の相違例、ISO規格の日本への影響の可能性、今後の課題を紹介する。
<キーワード> 水文観測、流量、規格、基準、測線
【報 文】 韓国の水文観測技術開発の現況
金 源
<抄録> 韓国で現在推進している水文観測技術開発に関する研究内容を整理した。特に、流量測定技術と関連して、水文視測技術基準の比較分析・開発、誤差分析枝法の適用等に関して分析するとともに、超音波流量計、ADCP、LSPⅣ等、新たな技術を利用した流量測定技術を検討した事例を紹介する。
<キーワード> 水文観測、流量測定、超音波流量計、ADCP
【報 文】 低湿地の水質浄化機能の影響要因に関する調査
濱田知幸・森田弘昭
<抄録> 低湿地の浄化機能に関する研究は、直接的な水質浄化機能の解明に重点をおいたものがほとんどで、浄化機能に影響を及ぼす各種要因に関する知見は、いまだ十分に蓄積しているとは言い難い。本研究では、低湿地の浄化機能に影響を及ぼす各種要因に関して知見を得るために霞ヶ浦の湖岸帯にヨシを植栽した低湿地実験施設を建設し、実際の汚濁河川水を導入して5年間の実験を行った。本報ではその概要を紹介する。
<キーワード> 低湿地浄化、栄養塩除去、溶存酸素、防風効果、遮光効果
【報 文】 近接トンネル掘削時の影響に関する実験的検討
石村利明・真下英人
<抄録> 固結度の低い砂質地山を対象として、2本のトンネルが左右近接および上下近接条件で施工される場合の先行トンネルヘの影響を把握するため、3次元の掘削模型実験を実施した。その結果、後行トンネル掘削による先行トンネルの作用荷重の変化は、近接条件により異なることが分かった。また、上下近接トンネルで上部トンネルを先行した場合は上部トンネルに下部トンネル掘削時に発生する沈下量を抑制する効果が期待できることが分かった。
<キーワード> 近接トンネル、模型実験、作用荷重、地表面沈下
【論 説】 社会を支える土木技術
中島威夫
【報 文】 河川事業における環境影響の予測・評価及びその軽減措置に関する研究
大寄真弓
<抄録> 平成9年度の河川法改正、平成11年の環境影響評価法制定等を背景として、河川事業が自然環境に及ぼす影響を適切に予測・評価する手法の開発及び、効率的なモニタリング手法の確立が急務となっている。本研究では、各地方整備局において、計画段階、事業実施中、実施後という様々な段階の河川事業を事例として取り上げ、適切な現況把握調査手法、事業の影響予測・評価手法を検討している。本報告では、そのうち2つの地方整備局の検討事例を紹介する。
<キーワード> 環境影響評価、インパクト・レスポンス、モニタリング、河道内微地形、PHABSIM
【報 文】 流砂系における土砂移動実態に関する研究
寺田秀樹・水野秀明・宮尾保道
<抄録> この報文は、平成14年度国土交通省国土技術研究会指定課題「流砂系の土砂移動実態に関する研究」(平成11年~平成15年)の概要をとりまとめたものである。平成11年度から平成14年度までに研究した、既往資料に基づき土砂生産量を推定した事例、土砂移動実態を観測した事例、及び土砂移動の予知予測技術の高度化の取り組みについて報告する。
<キーワード> 流砂系、土砂移動実態、モニタリング、土砂生産、土砂移動モデル
【報 文】幹線道路における交通安全対策に関する研究
池田武司
<抄録> 全国・各現場の視点で事故多発地点対策事業の実施状況と効果問題点を整理した上で問題点に対応するための方策として専門家の意見を採り入れた対策事業の事例対策効果を評価した事例およびPIを取り入れて対策を検討した事例を紹介した。また、事故対策マニュアルや道路安全監査を活用しつつ対策実施事例を蓄積するシステムを導入したより効果的効率的な交通安全対策事業のあり方について論じた。
<キーワード> 交通安全対策、事故多発地点、交通事故統合データベース
【報 文】 電子納品情報を活用した業務改善(BPR)に関する研究
奥谷 正・有冨孝一
<抄録> CALS/ECは、情報技術を活用した電子情報の交換、共有、連携により国民サービスの向上に向けた業務政善を目指してきている。しかし、業務での利活用が必ずしも十分ではない。本研究では、情報技術を活用した効率的な業務を行えるよう、電子納品に関連した業務プロセスや監督検査基準などの関連基準等を改善する見直し策を提案する。
<キーワード> CALS/EC、電子納品、情報共有、業務改善、基準の見直し
【報 文】 災害時における情報提供手法について
平城正隆・江州秀人・金籐康昭・前田安信
<抄録> 国土交通省が防災を目的として実施している情報提供手法として、放送やインターネットなど各メディアの情報伝達特性を活かして情報提供を行うことにより、 より多くの人に防災情報を迅速・的確に伝えることが可能となる。
<キーワード> 災害、防災情報、放送メディア、インターネット、IT、コミュニケーション、自助、共助
【報 文】 工事の実施による大気環境に係わる環境影響評価に関する研究
山口 崇
<抄録> 本研究は環境影響評価法に基づく「工事の実施」による環境影響評価について、円滑かつ適切な実施に資するため、環境アセスメント事例の調査や環境影響の実態調査を通じて現状の課題抽出とそれらの改善に向けた対応を検討するものである。事例調査や実態調査の結果を分析したところ、予測精度の向上や現場条件を考慮した予測方法の確立が必要であることがわかった。さらに、環境保全措置についても様々な保全対策の整備や効果の定量化が求められていることが判明した。
<キーワード> 環境影響評価、工事の実施、大気環境、技術手法
【報 文】可床変動の特性把握と予測に関する研究
日下部隆昭
<抄録> 昨年度までの国土技術研究会における土砂動態に関する成果を河道管理に活かすには、流砂量の変化が河床変動におよぼす影響を調べる必要がある。今年度からの国土技術研究会「河床変動の特性把握と予測に関する研究」では河床変動モニタリングにより洪水時の変動状況やその特性を調べるとともに、河床変動計算手法などのツールを用いて予測技術の精度検証・向上を図る。
<キーワード> 河床変動、モニタリング、特性把握、予測計算
【報 文】 ダム貯水池の堆砂形態
櫻井寿之・柏井条介・大黒真希
<抄録> ダム貯水池の堆砂の量、質及び堆砂形態を把握することはダムの計画、設計および管理運用において重要であり、これらの知見を得ることを目的として、全国約30の貯水池のボーリング調査結果及び河床形状のデータの整理・解析を行った。その結果、堆砂の粒度構成と問隙率の情報が得られた。また、それらの深度方向分布・横断分布、他の要因との関係及び堆砂形態に関する知見が得られた。
<キーワード> ダム貯水池、堆砂、粒度構成、間隙率、堆砂形態
【報 文】 都市緑地調査における人工衛星技術の活用に関する研究
山岸 裕・藤原宜夫
<抄録> 都市緑地調査への人工衛星データ活用手法の開発を目的とし、IKONOS画像を用いて都市内各種緑地の抽出・分類と精度検証を行った。その結果、樹林地と草地は精度よく抽出され、小規模緑地の抽出、緑被分布図の作成が可能であった。しかし、農地類の抽出・分類と常緑樹・落葉樹の区分については誤判読が多く課題が残された。
<キーワード> 高分解能人工衛星、IKONOS、都市緑地、土地被覆分類、常緑・落葉の区分
【論説】土木分野における国際標準化の動向と課題
三木博史
【報 文】ITS分野の国際標準化活動
山田晴利
<抄録> 高度道路交通システム (ITS)分野における標準化活動をおもに国際標準化機構(ISO)のITS専門委員会TC204に焦点をあてて紹介した。
<キーワード> 高度道路交通システム、国際標準化、ITS専門委員会、TC204
【報 文】 建設機械分野の国際標準化活動と日本の取り組み
吉田 正・渡辺 正
<抄録> 建設機械分野ではTC127(土工機械)における性能試験、安全及び居住性、運転及び整備などを中心に30年以上にわたり国際標準化活動が進められており、日本もPメンバーとして積極的に参加している。また、近年、情報化機械土工分野の新規の取り組みが開始され日本もその活動の中心的な役割を果たしている。
<キーワード> 建設機械、国際標準化活動、ISO規格、T127(土工機械)、情報化施工
【報 文】 舗装分野における国際標準化の動向
谷口 聡・寺田 剛・井上武美
<抄録> 舗装分野におけるISOについては、騒音関係の委員会が路面との関わりが多いとしてキメ特性、すべり等の路面性状や騒音特性を担当している。一方、ISOとCEN(欧州標準規格)との間で「ウィーン協定」を締結しており、CEN/TC227(道路材料委員会)での策定分がISOの道路、舗装関連の活動となる。そこで今回、舗装関係のISOやCENの動向を紹介するとともに、関連する土木研究所における取り組みについて簡単に紹介する。
<キーワード> ISO、路面性状、路面騒音、騒音試験用路面、アスファルト混合物、舗装試験法
【報 文】 コンクリート分野の国際標準化活動
河野広隆
<抄録> コンクリート分野のTC71を中心としたISOの体系とその所掌範囲、規格化の状況、今後制定予定の規格とその影響予測を紹介する。また、ISOに対するわが国の対応、その他の国際標準化の動きを紹介し、これまでの問題点とこれからの課題を報告する。
<キーワード> コンクリート、ISO TC71、国際標準
【報 文】地盤・基礎分野の標準化に関する国内外の動向
松井謙二・福井次郎`白戸真大
<抄録> 欧州ではCEN(欧州標準化機構)が、地盤・基礎に係わるものとして調査・設計(ユーロコード7)・施工の3点セットで規格/標準を策定中である。一方、わが国からも「地盤コード21」を策定するなど国際標準化活動が活発になってきた。ここでは、地盤・基礎に係わる国内外の標準化の動向を、筆者らが所属する構造物研究グループ基礎チームが直接的、間接的に関与しているものを中心にして述べる。
<キーワード> CEN(欧州標準化機構)、ISO(国際標準化機構)、ユーロコード(設計標準)、ISSMGE(国際地盤工学会)/TC23、地盤
【報 文】 土工・ジオシンセティックス・地盤環境分野における国際標準化の動向と課題
巻内勝彦・木幡行宏・北詰昌樹・三木博史
<抄録> (社)地盤工学会のISO検討委員会を中心に積極的な活動が行われている土工・ジオシンセティックス・地盤環境分野における国際標準化対応の現状と今後の課題をとりまとめた。取り上げられた内容は、地盤調査・試験法、地盤・基礎設計法、地盤改良、ジオシンセティックスの試験法と要求品質ガイドライン、地盤環境の調査・評価法に関するものである。
<キーワード> ISO、地盤調査、地盤・基礎設計、地盤改良、ジオシンセティックス、地盤
【報 文】 構造物の耐震設計に関する国際標準
田村敬―・連上茂樹
<抄録> 本文では、多種多様な土木構造物に対する地震作用を対象とし、我が国を中心として作業が進められている新規ISO制定のための活動の概要について紹介する。また、耐震設計に直接関わるものではないが、橋梁構造物に用いる免震支承・ ゴム支承に関する新規ISO制定のための活動についても紹介するものである。
<キーワード> ISO、 seismic design, seismic actions. elastomeric isolators
【報 文】 整流管付きジェットフローゲートの給気量
柏井条介・大澤信哉
<抄録> ジェットフローゲートの整流管内への給気量について、幾何学的に相似で大きさの異なる2種類の模型を用いた実験を行なった。その結果、給気量と放流水量の比は、従来から行われているフルード数をパラメーターとする方法では模型規模の影響を受けること、模型規模の影響の最も小さいパラメーターがウェーバー数であること等を示した。
<キーワード> ジェットフローゲート、給気管、整流管、フルード数、ウェーバー数
【報 文】 地震時における橋梁上部構造端部と橋台間の衝突解析法
運上茂樹・近藤益央・三上 卓
<抄録> 本文は、上部構造と橋台間の衝突現象を考慮した地震応答解析手法の検討を目的として、地震時の衝突解析法のうち、特に衝突バネ特性と数値積分時間間隔に着目して解析的に検討を行った結果をまとめたものである。橋長200m、橋脚高さ10mの一般的な連続橋のモデル化の場合には、積分時間間隔としては積分時間間隔を1/1000秒以下にとれば衝突部の最大加速度についてもほぼ安定した結果が得られることを確認した。
<キーワード> 橋梁、衝突、積分時間間隔、衝突バネ剛性
【論説・企画趣旨】 特集「自然共生型流域圏・都市の再生」
吉川勝秀
【報 文】 「自然共生型流域圏・都市の再生」について
<抄録> 国の重点研究開発課題(環境分野)である「自然共生型流域圏・ 都市の再生」イニシアティブについて、その歴史的背景や今日的な必要性について考察するとともに、関係6省で取り組むべき研究の詳細な内容および取り組み状況を述べた。そして、1992年度から5年間の研究スケジュールを述べるとともに、多様な関係者の参画を呼びかけた。
<キーワード> 自然共生、流域圏、都市、水物質循環、生態系、都市再生、政策シナリオ
【報 文】 「自然共生型流域圏・都市の再生」における農業分野の役割と取り組み
白谷栄作
<抄録> 流域圏における都市と農村の再生に果たす農村の役割を議論し、プロジェクト研究の推進理念と研究内容を紹介した。農村の食料供給機能、保険休養機能等の多面的機能を適切に評価し、国民の財産として活用することが都市再生と農村振興にとって重要である。プロジェクト研究は、諸施策を技術的に裏打ちするため 、農業、林業及び水産業分野の総合力により推進している。
<キーワード> 農村、流域管理、生態系、物質循環、多面的機能
【報 文】 自然環境流域圏、都市再生技術研究 環境省の取り組み
谷口靖彦
<抄録> (独)国立環境研究所及び大阪大学において実施されている自然共生型流域圏・都市再生技術研究について、それぞれの研究概要及び平成14年度の研究成果等を紹介した。両研究は、環境省の環境技術開発等推進費(競争的資金)による助成を受けて実施しているもの。
<キーワード> 自然共生、流域圏、都市再生、競争的資金、環境省
【報 文】基盤情報のGIS化と統合アプリケーションの開発
田中伸治・百瀬 浩・吉川勝秀 ・奥山祥司・藤田光一
<抄録> 現在様々な主体により地理情報が整備されているが、このうち共通に利用される基礎的な情報は統一されたデータベースとして整備するのが効率的である。本研究では、こうしたデータをコモンデータ、個別の目的に応じて整備されるデータをスペシフィックデータとして、情報基盤データベースの構築を行った。データベースは現在構築中であるが 最終的にはこれを利用するアプリケーションも合め、環境に関する議論をする基盤となるシステムを構築することを目指している。
<キーワード> GIS、地理情報システム、データベース、情報基盤
【報 文】流域を単位とした水循環・物質循環モデルの開発
安田佳哉 ・藤田光一・大沼克弘・田中伸治 鈴木宏幸・辻倉裕喜
<抄録> 霞ヶ浦、鶴見川流域を対象に水循環・物質循環モデルを構築し、初めてモデルを利用する方にも理解しやすいユーザーインターフェイスを開発し、政策シナリオの評価を試みた。霞ヶ浦を対象とした政策シナリオ評価結果から、昭和40年代の水質を達成するためには流域対策だけでは限界があり、底泥の浚渫等の湖内対策が必要であることがわかった。
<キーワード> 霞ヶ浦、鶴見川、水循環・ 物質循環モデル、ユーザーインターフェイス、政策シナリオ評価
【報 文】 都市の水循環における雨天時汚濁負荷流出現象の影響解折
森田弘昭
<抄録> 都市の水循環に大きな影響を与える雨天時合流式下水道越流水の実態を解明するために、横須質市平作川で、現場調査を行った。調査の結果、雨天時の平作川河口および久里浜港において糞便性大腸菌数が晴天時の102~104倍程度になることが明かとなり、雨天時合流式下水道越流水の影響が大きいこと確認された。
<キーワード> 都市の水循環、雨天時汚濁負荷、合流式下水道越流水、糞硬性大腸菌、平作川
【報 文】 広域的な生態系予測手法の開発
百瀬 浩 藤原宣夫
<抄録> 環境保全と国土管理を両立させるための地域計画策定手法の一つとして生物の潜在的な生息適地を予測するための数理モデルを作成し、それを用いて複数の国土管理/保全計画シナリオ(代替案)にもとづく生態系の将来予測を行うための研究について紹介する。
<キーワード> 生態系、環境保全、地域計画、予測モデル
【報 文】 流域におけるエコロジカルネットワークの保全・ 回復計画技術の開発
石曽根敦子・ 百瀬 浩,藤原宣夫
<抄録> 流域を単位としたエコロジカルネットワーク計画の策定方法を荒川水系で開始した。検討は荒川水系〈中域〉に加え、隣接する他の水系との関連を検討するための広域、さらに都市計画レベルでの詳細な検討を行うための荒川支川単位の小域、の3スケールで行うこととし、広域、中域スケールにおいて、植生情報の解析からネットワークにおいてコアとなりうる自然環境要素を抽出、 さらに広域では、森林要素のコリドーを確保すべき地点を抽出した。また小流域(支川)を単位に植生タイプの占有率から、その自然環境のタイブ区分を行った。
<キーワード> 流域、水系、自然共生、エコロジカルネットワーク
【報 文】貯留・浸透した雨水等を活用した熱環境改善システムの開発
松下雅行・水野太史・山本昌弘 並河良治
<抄録> 自然共生型都市再生の一環として、都市の環境問題の一つであるヒ―トアイランド現象を地表面近くの水循現を回復することによって緩和する技術の開発に着手した。この技術は、道路 公園等の地下等に貯留・ 浸透した雨水等を効率よく地上へと導水する技術と、保水性舗装等の地表面の熱環境改善技術を組合わせるシステムである。本稿では、そのコンセプト等の概要を記した。
<キーワード> ヒートアイランド、貯留・浸透、雨水活用、保水性舗装、透水性舗装
【報 文】 都市熱環境改善施策の社会受容性向上へむけて
桑原正明 曽根真理・ 並河良治
<抄録> 近年の行政課題の多くは、行政が単独で解決できるものは少なくなってきており、課題の解決のためには、市民・ 企業等の協力が必要となっている。本稿では、各種自然共生・都市再生施策に関する合意形成の円滑化、社会受容性の向上を図るための手法について、都市熱環境(ヒートアイランド)施策を例に取り上げ検討した結果を報告する。
<キーワード> 合意形成、社会受容性、広報、ヒートアイランド
【報 文】ペースト量がCSGの材料特性に及ぼす影響
吉田 等 平山大輔,扇谷 昇 萩原 潤
<抄録> CSGに添加するペースト量が、CSGの材料特性、物性値のばらつきに及ぼす影響を明らかにするため、室内材料試験を実施した。その結果、物性値とペースト量には相関関係があること、ペースト量が減少すると弾性係数がばらつくこと 応力ひずみ曲線におけるCSGの弾性領政はペースト量によらす―定であることなどを確認した。
<キーワード> CSG、ダム、材料特性、室内試験、新技術
【報 文】樋門・樋管周辺の遮水性確保技術の開発
荒井 猛
<抄録> 本開発は、樋門・樋管周辺の土質を改良し、地中遮水壁を構築することで破堤原因のひとつと考えられる「水みち」の対策枝術を開発するものである。開発にあたって実施された2種類の材料を用いた実大実験の結果、概ね計画通りの地中遮水壁を構築することができた。
<キーワード> 樋門・樋管、土質改良、遮水壁、堤防
【論 説】「ビジョナリー」な研究を
西川和廣
【企画趣旨】新しい時代に向けたダム技術
【報 文】 重力式コンクリートダム嵩上げ設計時の堤体応力特性に関する検討
佐々木 隆・金縄健―・山口嘉一
<抄録> 嵩上げダムの断面設計に影響を及ぼすと考えられる因子(施工を行う際の水位、嵩上げ規模および基礎岩盤の変形性)が、嵩上げ後の新堤体に発生する応力に与える影響について解明するため、二次元有限要素法解析により検討を行った結果を報告する。
<キーワード> 重力式コンクリートダム、嵩上げ、二次元有限要素法解析、「嵩上げ公式」
【報 文】 砂礫流下による水理施設の損傷量予測手法 ―減勢工の副ダム水叩きを例として
井上清敬・柏井条介
<抄録> ダム貯永池に堆積・ 流入する土砂を下流に供給する水理施設が受ける、砂礫の流下に伴う損傷量を予測するため、水理模型実験により、砂礫の流下挙助、衝突エネルギーの作用特性を把握した。また、損傷材料で製作した模型を使用して、損傷が進行した状態の衝突エネルギー分市および反発係数が異なる場合の補正方法を提示した。
<キーワード> 損傷、衝突エネルギー、土砂輸送施設、副ダム、砂礫流下
【報 文】 CSGを用いたダム技術に関する最新動向
川崎秀明・平山大輔
<抄録> CSGを用いた新形式のダムである台形CSGダムの実現に向け、国内では官民一体となった技術開発が盛んに行われている。本文は、台形CSGダムの特徴、CSGの施工方法および施工管理、今後の課題などについて、その最新動向を取りまとめたものである。
<キーワード> 新技術、CSG、ダム、台形CSGダム
【報 文】 カーテングラウチングによるダム基礎岩盤の遮水性改良度の評価方法
<抄録> 平成15年度に改訂されるグラウチング技術指針においては、これまでの指針に代わって性能規定的な考え方が数多く採り入れられることとなった。ここでは、カーテングラウチングを例にとり、その孔配置の妥望性やカーテングラウチングの効果の判定方法ないし予測方法について考察した結果を述べる。
<キーワード> カーテングラウチング、中央内挿法、規定孔間隔、グラウチング技術指針
【報 文】ダムの維持管理コストとライフサイクルマネジメント
金銅将史・川崎秀明
<抄録> 管理ダム数の増加に伴い、維持管理面におけるマネジメント技術の重要性が高まっている。本稿では、特にコスト面に着目し、全国の直轄 ・公団管理ダムを対象として実施したメンテナンスコストの実態調査結果を紹介した。また、維持管理コストの構成やその経年変化等の特性について分析を加え、ダムのライフサイクルマネジメント論への足掛かりとする。
<キーワード> ダム、維持管理、コスト、全国調査、ライフサイクルマネジメント
【報 文】空中写真による第四紀断層の客観的判読の試み
倉橋稔幸・品川俊介・阿南修司・脇坂安彦
<抄録> 本論では、主に山岳地域における第四紀断層地形判読の基本的考え方と記載方法をとりまとめた。本論の地形要素判読図は、線状模様や第四紀断層を構成する地形要素の連続性、明瞭度、変位基準との関係などに注目し、客観的に判読する結果を示すことに特徴があり、その判読過程が第三者に理解できるように、合理的な判読根拠を示すことができる。
<キーワード> 第四紀断層、線状模様、地形要素、地形要素判読図
【報 文】 大規模地震時における重力式コンクリートダムのクラック進展に関する数値解析的検討
<抄録> 大規模地鍵時における重力式コンクリートダムの被害形態の一つとして堤体コンクリートヘのクラック発生が考えられる。本報では、大規模地震を想定した時の重力式コンクリートダムのクラック進展に関して、数値解析手法により検討した結果について報告する。
<キーワード> 大規模地震、重力式コンクリートダム、分布型クラックモデル、クラツク進展解析
【報 文】下水中の環境ホルモン物質の分析技術
八十島 誠・小森行也・田中宏明
<抄録> エストロゲン及びNP関連物質は、存在量とエストロゲン様活性の強さを総合的に考えると、エストロゲン作用の面から下水道において注目されている物質である。下水道でのこれらの物質の分析方法を新たに開発した。下水処理場内での挙動を把握するために、調査を実施した。その結果、これらの物質の濃度は、下水処理を受けることで減少することが確認された。
<キーワード> 下水、環境ホルモン、分析
【論説】水害意識の風化について
近藤 悟
【企画趣旨】「防護・環境・利用の調和した海岸を目指して」
【報 文】 高潮ハザードマップ作成のための氾濫危険度評価
加藤史訓・烏居謙一
<抄録> 高潮ハザードマップの作成に必要な高潮氾濫の危険度評価の課題と全体的な流れを整理し、確率的台風モデルを用いた潮位・越波量の確率評価と海岸堤防の破堤評価を組み合わせた高潮氾濫の危険度の評価手法を検討した。その結果、高潮氾濫の危険度をより適切に評価することが可能になった。
<キーワード> 高潮、ハザードマップ、危険度評価、越波量、氾濫
【報 文】漂砂系の概念と海浜過程に関わる研究課題
山本幸次
<抄録> 流砂系の総合的な土砂管理にもとづき、改正「海岸法」の理念を実現する海岸保全を行うためには海域での土砂の運動領域においても土砂収支が把握されていなければならない。海域での土砂の運動領域は漂砂系という概念で徐々に認知が進んでいるが、海岸工学的にまだ明確に示されていないのが現状である。そこで、漂砂系の概念を1)沿岸方向には沿岸漂砂の連続する区間の、2)岸沖方向には砂丘の陸端から海底の漂砂の移動限界水深までの範囲で、3)分布する土砂の岩石種や鉱物組織が類似な空間領域とした。次に、漂砂系の沿岸方向境界と岸沖方向境界を設定するための研究課題を、土砂動態と海浜過程の観点から指摘した。
<キーワード> 改正「海岸法」、流砂系、漂砂系、海浜過程
【報 文】 白川河口域における土砂動態の解明
山本浩―・末次忠司・藤田光―・横山勝英
<抄録> 白川河口域の土砂動態を明らかにすることを目的として河口部において長期モニタリング、集中観測、底質調査、深浅測量を実施した。調査の結果、洪水期に2001年は10.2万m3の、2002年では2.7万m3の土砂(シルト・ 粘土)が上流域から感潮域に供給され、 2002年の平水期11ヶ月には累計1.84万m3のシルト・ 粘土が河口を流動し、河口0kmから河道3km までの区間に約0.95万m3のシルト・ 粘土が堆積したことが明らかになった。
<キーワード> 白川、強混合、河川感潮域、河口、土砂動態
【報 文】 アサリのすむ海岸の整備に向けて
古川恵太・粕谷智之
<抄録> 内湾におけるアサリの生息場の修復は、環境や利用と調和した海岸整備にとっても、重要な課題である。アサリの産卵後の浮遊幼生の浮遊経路や浮遊時の幼生の減少のしかたを調べる大規模な観測を実施した。アサリの生息に関しては、海の上の生態系ネットワークのような概念が適応できそうである。
<キーワード> 東京湾、二枚貝、現地観測、生態系ネットワーク、自然再生
【報 文】 海岸整備における空間の評価軸及び整備のポイント
上島顕司
<抄録> 海岸における空間整備においては、景観や利用に配慮した空間整備は従来から行われてきているが、その評価は個人の趣味や好みによる恣意的なものと誤解される傾向がある。このため、全国各地の臨海部空間の整備事例の問題点を抽出、分析し、その評価軸を体系化することにより、景観、デザインに係る恣意的でない評価のあり方とともに整備のポイントを示す。
<キーワード> 海岸空間、景観デザイン、評価軸
【報 文】 新たな海辺文化の創造
諸星―信
<抄録> 今後の海岸政策に最も重要なのは、人々と海辺との関係を重視し、新たな海辺の文化の形成を進めることである。そのためには、海辺との関係から人々が得るものや海辺で人々が果たす役割、安全についての考え方等について基本認識を新たにし、市民参加を進め住民、行政、専門家のパートナーシツプを形成していく必要がある。
<キーワード> 人々と海辺の関係、生活の豊かさ、被害の軽減、市民参加、パートナーシップ
【報 文】 米国における水質環境基準達成の戦略一アイダホ州でのTMDLの現実と課題一
佐藤元志・田中宏明
<抄録> 日最大許容負荷量(TMDL)は米国の連邦水質汚濁防止法(CWA:Clcan Water Act)の条項303(d)で制度化されている。TMDLは水域に定められた汚濁負荷割当量であり、州の水質基準を満たすことのできる最大負荷量と定義される。TMDL策定プロセスは水域の水質基準が達成されない原因となっている点源と面源を統合的に管理する機構である。
<キーワード> TMDL、CWA条項303(d)、水質ベースアプローチ、汚濁負荷量配分(WLA)、排水水質規制(NPDFS)
【報 文】 TBM掘削時に得られた機械データと支保に作用する荷重に関する考察
砂金伸治・真下英人・赤木 渉・城間博通
<抄録> 長大トンネルの建設費の縮減を図るには、急速施工が可能で、かつ地山の緩みを抑制することが最も効果的であるトンネルボーリングマシン(TBM)の採用が有効な方法の一つと考えられる。本研究では道路トンネルの先進導坑等で用いられたデータを基に、TBMによるトンネル掘削時の地山評価に資する指標の検討と支保工に作用する荷重値を算定した。その結果、機械データの中にはその変化の傾向と支保パターンの変化には関連性が見られること、支保工に作用する荷重値は、最大で掘削径程度の土荷重が作用しており、地山の性状が荷重値に及はす影響が小さい場合と大きい場合に分類できることが分かった。
<キーワード> トンネル、トンネルボーリングマシン、機械データ、支保荷重、支保パターン
【論説・企画趣旨】橋梁の維持管理・補修補強
佐藤弘史
【報 文】 洗掘による道路橋基礎の被害実態とその対策
石田雅博・野々村佳哲・福井次郎・大塚雅裕
<抄録> 橋梁基礎周辺の河床の洗掘により被害を受ける橋梁の数は、地震などの他の原因による被害に比べて圧倒的に多く、橋梁下部構造の維持管理において、洗掘は最も重要な問題となっている。本報では、洗掘の被害実態を示すとともに、洗掘被災に関する要因分析の結果、洗掘の調査、 監視手法、洗掘に対する対策工を報告した。
<キーワード> 洗掘、橋梁、維持管理、調査・点検、健全度評価、洗掘対策工
【報 文】部材応力のモニタリングによる鋼橋の状態監視に関する基礎検討
村越 潤・麓 興一郎・高木伸也・次村英毅
<抄録> 鋼道路橋を対象として、モニタリング技術の適用対象について整理するとともに、橋梁の状態監視に関する基礎検討としての実橋計測を実施し、約3ケ月間の応力、変位データについて分析を行った。その結果、大型車交通の影響と考えられる時間別、曜日別の活荷重の変動傾向及び温度変化に伴う各部の応力、変位の変動傾向を明らかにした。
<キーワード> モニタリング、道路橋、鋼部材、ひずみ、変位、疲労損傷度、応力頻度、温度応力
【報 文】各種コンクリート用断面補修工法の施工性・付着性および耐久性に関する研究
片平 博・河野広隆
<抄録> 既設コンクリート構造物の断面補修材料や補修工法は多岐にわたるが、補修工法の選定法や補修効果の評価方法が確立されていない。本研究は補修材を施工する旧コンクリート面の表面処理方法、補修材の種類、補修材の施工法等の組合せを種々に設定した実験を行い、各補修工法の施行性、強度、耐久性について特徴と留意点を整理した。
<キーワード> コンクリート構造物、維持捕修、断面補修材料、強度、耐久性
【報 文】 首都高速道路の構造物の維持、補修について
小島 宏・下里哲弘
<抄録> 首都高速道路公団は、管理する道路構造物をできる限り長期間に良好な状態に維持管理し、利用者に安心かつ快適に利用して頂くことに対して責務を課せられている。そこで、維持管理の中でも重要な部分を占める点検手法について概説するとともに、近年の構造物の補修 補強事例について述べる。
<キーワード> 鋼構造物、コンクリート構造物、疲労、点検、補修補強
【報 文】 本州四国連絡橋一海上長大橋一の維持管理
帆足博明・森山 彰
<抄録> 本州四国連絡橋は本州と四国を結ぶ海上長大橋である。その橋梁概要と厳しい腐食環境にある橋染群の維持管理を行う上での特徴と基本方針および維持管理技術の具体例について記述する。具体例として、塗装、除湿等による鋼材の防食技術、非破壊検査技術などについて紹介するとともに、今後の課題および取組みについて記述する。
<キーワード> 本州四国連絡橋、維持管理、非破壊検査、送気システム、重防食塗装
【報 文】米国連邦道路庁における研究および技術開発の方向性
Steven B.Chase・高木伸也(翻訳)
<抄録> 本文では、米国連邦道路庁における道路構造物に関する研究、開発および技術普及プログラムに関する将来の方向性について述べる。具体的には、プログラムの成功の鍵を握る人材、情報、技術および展開という枠組みの中で、橋梁の将来像、将来に向けた橋梁の維持管理、および橋梁の安全性・ 信頼性・.安全保障の確保という3つの新たな研究テーマを進めていくことを計画している。
<キーワード> 米国連邦道路庁、橋梁、維持管理、ライフサイクル、橋梁マネージメントシステム
【報 文】 米国アイダホ州ポートヌーフ川下流における水質モデルの構築
佐藤元志
<抄録> 米国アイダホ州ポートヌーフ川下流の日最大許容負荷量(TMDL)プログラムを支援するためQUAL2Eを使ってポートヌーフ川下流水質モデルを構築した。モデリングの結果によって、湧水・ 地下水の流入が栄養塩の主要な負荷源であり、ポカテロ市の下水処理場の改善だけではポートヌーフ川下流でのTMDLの目標値は達成されないことが示唆された。
<キーワード> ポートヌーフ川、水質モデル、QUAL2E、栄養塩、TMDL
【報 文】 等価線形化法による地震応答変位の推定
<抄録> 本報文では橋脚を変位ベース設計法に基づいて設計する際に等価線形化法を適用することを想定し、等価線形化法と非線形動的解析による最大応答変位を比較し、等価線形化法による最大応答変位の推定精度を向上させるための等価剛性と等価減衰定数の設定法について検討した。その結果、提案した等価減衰補正定数を用いることで推定精度が向上することが確認できた。
<キーワード> 変位ベース設計法、等価線形化法、等価剛性、等価減衰定数
【論説・企画趣旨】道路斜面崩壊のリスクマネジメント技術
萩原良二
【報 文】 エアートレーサー試験による岩盤斜面の亀裂調査
阿南修司・佐々木靖人・大谷知生
<抄録> 岩盤内の不連続面の分布と連続性を調査する手法として、空気を媒体とするエアートレーサー試験を新たに開発した。この試験では、亀裂間の連続性とゆるみの範囲を煙等のトレーサーの流出として視覚的に観察可能である。また、 トレーサーの移動距離や移動時間とともに、流出量や濃度等を解析することで、岩盤の安定度をある程度推定することも可能である。
<キーワード> 岩盤斜面、不連続面、亀裂、エアートレーサー試験、安定度
【報 文】 岩盤斜面モニタリング手法
浅井健―・小山内信智
<抄録> 岩盤崩壊危険箇所の計測技術等の向上を目的として、岩盤斜面の挙動計測をもとに岩盤モニタリングの現地適用可能性と限界、岩盤崩壊予測手法について検討を行った。その結果として、温度の影響を補正し累積変位を検出する手法、画像解析による非接触での変位計測手法、AE計測による崩壊前兆の検知手法などを提案するとともに、研究成果を総合して「岩盤崩壊モニタリング要領(案)」を作成した。
<キーワード> 岩盤崩壊、モニタリング、画像解析、AE計測
【報 文】 AE波形解析の岩盤モニタリングヘの適用に関する検討
千田容嗣・門間敬―・浅井健一
<抄録> 岩盤崩壊の前兆検知手法として期待されるAE計測技術の向上を目的として、岩盤斜面においてAE計測及び解析を行い、AEの発生要因別の波形の特徴及びノイズの分離方法の検討を行った。その結果、岩盤の変状に伴うAEとノイズでは周波数帯域に相違がみられることがわかったほか、主成分分析の結果、岩盤の変状に伴うAE波形、電気ノイズに伴うAE波形、その他ノイズのAE波形の3種類を主成分空間上で分離できた。
<キーワード> 岩盤崩壊、モニタリング、アコースティック・エミッション、波形解析
【報 文】 光ファイバセンサによる斜面崩壊モニタリング手法
加藤俊二・恒岡伸幸・小橋秀俊・室山拓生
<抄録> 土木研究所では、平成11年度末より光ファイバセンサによる斜面崩壊モニタリングシステムの開発を行ってきた。本報は、システムの導入・運用にあたっての要点を示すと共に、道路斜面管理におけるその役割について述べるものである。
<キーワード> 光ファイバセンサ、斜面崩壊、モニタリング、道路斜面管理、導入・運用
【報 文】 道路斜面防災GIS ―GISによる道路斜面防災情報の管理・表示システムの開発―
柴田光博・佐々木靖人・阿南修司
<抄録> 道路斜面の安全管理をするうえで、道路斜面の危険箇所の情報を面的に把握し、ハザードマップとして評価することは重要である。これらの作業を効率的に行うために、GISによる道路斜面防災情報の管理 ・表示システムの開発ならびにハザードマップの作成手法を開発した。
<キーワード> 道路斜面、GIS、ハザードマップ、防災、道路管理
【報 文】 リスク評価手法を用いた道路斜面管理
小橋秀俊・恒岡伸幸・加藤俊二・田中 衛・中野穣治
<抄録> 本研究は、損害保険の分野で先行しているリスクやハザードの数量化手法、提示手法を参考にしつつ、平成10~14年度の5年間で道路防災対策ないし管理のニーズに合ったリリスクマネジメント技術の開発を進めたものである。その中間成果については既に、平成14年12月号で紹介したところであるが、本報ではその後の検討成果と全期間を通じての総括を行った。
<キーワード> 道路防災、斜面崩壊、リスク評価、事前通行規制、GIS
【報 文】 焼却灰の重金属溶出特性に関する研究
川嶋幸徳・森田弘昭
<抄録> 下水汚泥焼却灰に含まれる重金属のうち、As,Seは含有量は小さいものの溶出率(溶出量/灰中含有量)が大きく、問題となる場合がある。 そこで、本研究では、焼却灰の処分あるいは有効利用を検討する上で必要となるAs,Seの溶出率の目安、およびこれらの溶出率に影響する因子を把握することを目的に種々の溶出試験を行い、As、Seの溶出特性はpHの影響を受けることなどを、明らかにした。
<キーワード> 焼却灰、溶出特性、土壌環境基準、ヒ素、セレン
【報 文】 重金属の汚泥への蓄積および存在形態
<抄録> Stoverの方法に準じた逐次抽出法を用い、下水処理場に流入する重金属および下水処理に伴って発生する汚泥中の重金属の存在形態を調査することにより、処理区域内の特性と重金属の流入状況、流入水中の重金属の汚泥への移行特性等を検討した。
<キーワード> 重金属、存在形態、下水汚泥、リサイクル
【論説・企画趣旨】水・物質循環の問題解決に向けて
高橋正宏
【報 文】霞ヶ浦における河川流入負荷特性
<抄録> 河川流入負荷の質および量の変動特性と絶対値の把握は、湖沼の物質循環機構解明のために必須の要件であり、根本的な冨栄養化対策として流入負荷削減対策の立案・評価に直接関わる重要な課題である。著者は、霞ヶ浦高浜入りを調査対象水域としてここに流入する恋瀬川、山王川、園部川の通年の河川流入負荷量調査と粒子態栄養塩の可溶化実験を実施し、河川流入負荷特性について考察した。
<キーワード> 冨栄養価、粒子態栄養塩、霞ヶ浦、可溶化速度、沈殿
【報 文】下水道へのディスポーザー導入施策の費用効果分析
山縣弘樹・吉田敏章・森兼政行・野口綾子・森田弘昭・藤生和也
<抄録> 下水道整備区域でディスポーザーが普及した場合の効果影響について、北海道歌登町をモデル地域としてディスポーザー利用者、町、清掃事業者、下水道事業者への影響について費用効果分析を用いて評価を行った。その結果、歌登町ではゴミ収集、処理が小規模でそのコスト低減の余地があまりないため、下水道への負荷増加に伴う下水道事業の費用増加が、可燃ゴミの削減に伴う清掃事業の費用削減を上回った。一方、CVMによリディスポーザー利用者の利便性に対するWTPの平均値として950円/月/世帯という値が得られ、町全体で年間1千万円余の利便性便益が見込まれた。
<キーワード> ディスポーザー、下水道、ごみ減量化、費用効果分析、CVM
【報 文】オゾン処理による効率的な微量環境汚染物質の除去に関する研究
田隝 淳・中島英一郎
<抄録> 下水処理の過程において内分泌攪乱物質は90%以上減少しているとの知見が得られているが、内分泌攪乱物質が生態系に与える影響については不明な点が多く、今後更なる削減が求められる可能性もある。そこで、下水処理水中の微量環境汚染物質の除去を効率的に行うためのオゾン処理運転方法の確立を目的として、オゾン処理による内分泌攪乱物質の除去効果について実験を行った。
<キーワード> オゾン処理、内分泌攪乱物質、下水処理水、オゾン注入率
【報 文】水系における病原微生物の挙動に関する研究
斎野秀幸・中島英一郎
<抄録> 現在、下水処理水の衛生学的指標として大腸菌群が用いられているが、放流後の下水処理水中の大腸菌群が水系においてどのような挙動をするかは明らかになっていない。そこで本研究では、下水処理水中の大腸菌群を始めとする指標細菌の水系における挙動を把握するために水路実験を行ったので、これを報告する。
<キーワード> 大腸菌群、再増殖、消毒、水路、指標
【報 文】下水道整備途上の流域での汚濁負荷流出の変遷に関する研究
壬生勝泰・津森ジュン・田中宏明
<抄録> 水質管理計画策定には流域からの汚濁負荷流出量とその発生要因の把握が必要となる。調査の結果、大津川では全窒素の増加傾向、比較的高濃度の糞便性大腸菌群数及び内分泌攪乱物質が認められ、これには浄化槽の影響が大きいことが確認された。
<キーワード> 降雨時水質調査、糞便性大腸菌、エストロゲン、ノニルフェノール
【報 文】水理模型実験による雨水管路の空気混入・噴出現象に関する検討
森 博昭・那須 基・森田弘昭・松原 誠
<抄録> 近年、集中豪雨によリマンホール蓋が浮上・飛散する現象が顕在化しており、安全上の問題が指摘されている。本研究では、空気噴出を考慮した雨水管路の設計手法の確立に向けた基礎研究として、同一形状の縮尺の異なる3タイプの模型実験結果から圧力流管路の空気を含む水理挙動を分析し、相似則について検討を行った。
<キーワード> 水理模型実験、雨水管路、空気混入、縮尺効果、人孔
【報 文】地下歩道の横断面の耐震性能
西岡 勉・運上茂樹・足立幸郎
<抄録> 本研究は、地下歩道が兵庫県南部地震のような大きな強度を有するレベル2地震動に対して軽微な損傷に止まった現象を検証することを目的に標準的な断面を有する地下歩道にレベル2地震動が作用した場合の地震時挙動を解析的に検討し、地下歩道の耐震安全性を評価したものである。
<キーワード> 地下歩道、レベル2地震動、耐震性能
【報 文】 大規模地震時における長大吊橋主塔の限界状態
河藤千尋・運上茂樹
<抄録> 長大吊橋のラーメン形式鋼製主塔を対象に、大規模地震に対する主塔構造の限界状態を設定することを目的に、ラーメン形式主塔の耐荷力性能と主塔各部の損傷特性について解析的に検討した結果をまとめたものである。解析はプッシュオーバー解析で行い、主塔が塑性化する順序、主塔各部の応力ーひずみ関係、断面変形量、せん断ひずみと主塔全体系の変形量との関係、限界状態設定のための着目する部位等を明らかにした。
<キーワード> 長大吊橋主塔、耐震性能評価、限界状態、耐荷力
【論説・企画趣旨】 走行支援道路システム(AHS)特集にあたって
【報 文】 走行支援道路システム(AHS)の概要
喜安和秀・牧野浩志・大内浩之
<抄録> 道路と自動車が協調してドライバや車両側のセンサが検出できない危険事象の情報をリアルタイムにやりとりすることにより、安全かつ安心な走行を目指すシステムであるAHSの研究開発の流れ、研究開発内容の概要を述べるとともに、平成14年度までの研究成果、実用化に向けた今後の研究課題こついて報告する。
<キーワード> 走行支援道路システム(AHS)、事故直前対策、道路状況把握センサ、路面状況把握センサ、路車間通信
【報 文】 AHS路面センサの開発
川田則幸・久野 晃・大内浩之
<抄録> ドライバーヘの安全運転支援あるいは、道路管理業務の効率化に有用と考えられる路面センサの検出性能と必要付加機能に関する検証を行ない、個別正解率、的中率、安全度の性能指標が日標値に近いこと、旋回ズーム/プリセット機能への対応が可能であること、複数カメラ対応機能として5台の接続が可能であることを検証した。
<キーワード> 走行支援道路システム(AHS)、CCTVカメラ、路面センサ、多変重解析、画像特徴量
【報 文】 走行支援道路システム(AHS)の安全性・信頼性に関する検討
川名万寿雄・小林 寛・吉永智広
<抄録> AHSの実用化に向けて、技術的な達成可能性や経済性を踏まえた現実的な安全性信頼性の確保について検討し、実証実験システムにおける安全度及び稼働率の仮目標値を設定した。また、残るリスクに対しては、車両やドライバーも含めた範囲での対策のあり方について検討し、安全性・信頼性を100%確保できない場合の対策の提案とその有効性の確認を行った。
<キーワード> ITS、走行支援道路システム、AHS、安全性、信頼性、ヒューマンマシンインターフェース、HMI
【報 文】 実道におけるAHSの実証実験
水口 賢,川畑 諭・中山英昭・水谷博之
<抄録> AISサービスを実現するためにシステムの研究開発を進めており、実用的なシステムの構築を行ってきた。2002年度にはシステムを実道の6箇所へ試験導入し、実証実験に取り組んだ。本稿ではAHSの単路系システムによる支援サービスのうち、実道での実証実験について報告する。
<キーワード> 走行支援道路システム(AHS)、実証実験、システムの性能、サービスの有効性、前方停止車両・低速車両情報提供支援システム、カーブ進入危険防止支援システム
【報 文】 走行支援道路システムにおけるヒューマンマシンインターフェイスに関する検討
小林 寛・湯浅雅也・大門 樹・川嶋弘尚
<抄録> AHSにおけるサービス情報をドライバヘ提供する方法として、視覚および聴覚を効果的に使い分けた伝達方法を人間工学的検知により検討した。検討は、単路部と交差点部に分けて実施した。その結果、情報板あるいは発光式道路鋲の視覚情報と、車載器による音声情報を使い分けることで、ドライバの理解度が向上する傾向がみられた。
<キーワード> ヒューマンマシンインターフェイス、情報板、車載器、自発光式道路鋲
【報 文】都市排熱の下水道への受け入れによるヒートアイランド対策について
森 博昭・斎野秀幸・森田弘昭・藤生和也
<抄録> ヒートアイランド対策として、冷房等の排熱を大気に排熱せず、ヒートポンプ等の利用により下水道へ排熱し、処理する「下水道都市排熱処理システム」考えられている。本システムの実現性は十分にあり、また、下水道は都市排熱の受け入れ先として大きなキャパシティーを有していることが明らかとなった。
<キーワード> ヒートアイランド、冷房排熱、下水温度、温排水、ヒートポンプ
【報 文】 下水処理水中の栄養塩と水生生物相との関連性
竹歳健治・中島英一郎・平出亮輔
<抄録> 下水処理水が、放流先に形成される付着藻類,底生動物といった水生生物相に与える影響を把握するために、屋内実験水路を製作し、様々な下水処理水等を用いて対照実験を行った。 下水処理水中の栄養塩が水生生物相に及ぼす影響について検討を行ったところ、付着藻類の増殖量にはリン濃度が大きく影響することが示唆された。その一方で、一定以上の栄養塩が供給された場合は、余剰分となって生物生産に利用されないことも推察された。 また、付着藻類の生育速度については、供試水の処理方式による違いは見られたが、栄養塩濃度の影響が見られなかった。この要因として、処理施設や処理方式の違いに起因する原水中の含有藻類量の差や、窒素・リン以外の栄養物質の影響等が考えられた。
<キーワード> 下水処理水,栄養塩,水生生物相,付着藻頌,底生動物,水路実験
【報 文】 低湿地における水質浄化特性
<抄録> 低湿地の水質浄化機能を活用して水環境の保全を図ろうとする浄化技術に関する実験や研究が各機関で実施されつつあるが、実汚濁水を用いた水質浄化特性に関する知見はいまだ十分に蓄積しているとは言い難く、特に長期的な連続実験によって最適な汚濁水の負荷条件や最適な管理方法について考察した研究は少ない。そこで、著者は、霞ヶ浦の湖岸帯にヨンを植裁した低湿地実験施設を建設し、実際の汚濁河川水を導入して5年間の実験を行い、人工低湿地の水質浄化機能について考察を行った。
<キーワード> 低湿地、脱窒作用、汚濁河川水、栄養塩除去、ヨシ
【論説・企画趣旨】自然災害をめぐる最近の状況
杉浦信男
【報 文】 5月26日宮城県沖を震源とする地震での震後対応状況を踏まえた今後の危機管理について
日下部毅明・真田晃宏
<抄録> 5月26日の三陸南地震では、危機管理担当職貝の記憶が新鮮な内に震後対応について聞き取り調査を行った。この調査および併せて実施した災害情報の流れに関する分析に基づき、今後の危機管理向上ヒントとなる事項、および災害時危機管理の主要な任務となる災害情報の伝達上の課題を抽出した。
<キーワード> 三陸南地震、聞き取り調査、危機管理、震後対応、情報伝達
【報 文】 Incident Command Systemとそのわが国の災害対処システムヘの適用可能性について 一平成15年7月20日水俣豪雨災害を事例として一
國友 優
<抄録> Incident Command Systemは災害対処システムとして米国で開発され現在ではカナダ、英国でも活用されている。本研究においては、平成15年7月20日に発生した水俣豪雨災害への対処活動を事例に、Incident Command Systemのわが国の災害対処システムヘの適用可能性の検討を行った。
<キーワード> Incident Command System、災害対処、指揮命令系統、統御範囲
【報 文】 地下室間の浸水リスク評価に関する検討
武富一秀・廣木謙三
<抄録> 国土技術政策総合研究所水害研究室では、これまでに、地下空間を対象とした水理模型実験等を行っている。また、平成15年度には、地下空間の浸水危険度を自己診断できるシステムの構築や地下鉄等の地下ネットワークを対象とした浸水解析を実施する。 本報では、今までに本研究室で実施した研究の成果と、その成果の政策への反映事例、現在の取り組み内容、今後の取り組み等について報告する。
<キーワード> 地下空間、浸水リスク
【報 文】下水道管渠網を組み込んだ氾濫解析モデルの構築
水草浩―・廣木謙三
<抄録> 国土技術政策総合研究所水害研究室では、都市域における浸水・氾濫の特性を充分に踏まえた上で、施策目標や想定される水災シナリオに基づいた浸水想定を行うための、氾濫解析モデルの開発や構築を行ってきている。そこで本報では、現在本研究室で行っているこれらに関する研究、取り組みについて紹介した。
<キーワード> 特定都市河川浸水被害対策法、都市域氾濫解析、下水道管渠内の水理解析、内水氾濫
【報 文】土石流による家屋被災範囲の推定手法
水野秀明・寺田秀樹
<抄録> 本研究では、既往の研究成果や過去の土石流災害の記録を参考に、土石流によって家屋が被災すると想定される土地の区域を簡易的に設定する手法を検討した。その手法を過去の土石流災害(16事例)に適用したところ、実際に被災した人家の70%程度は家屋が被災すると想定される土地の区域内に含まれたことが分かった。
<キーワード> 土石流、家屋被災範囲推定手法、精度検証
【報 文】 光ファイバを用いた地すべり変位検出センサの開発
森下 淳・小山内信智・藤澤和範
<抄録> 地すべり地における線的な変位計測をより低コストに実施するために、光ファイバに発生した微小な曲げがレイリー散乱光の強度を減ずることを利用した光ファイバ地盤変位検出センサの開発を試みた。地盤に発生した変位を光ファイバに曲げとして付加する機構を考案し、試作機により室内実験を行ったところ、5 mm程度の地盤変位を検出できることが確認された。
<キーワード> 地すべり、光ファイバ、レイリー散乱光、マイクロベンド損失
【報 文】雲仙普賢岳の火砕流堆積地における在来種率を用いた緑化試験
南雲賢―・柳原幸希`冨田腸子・金子正則
<抄録> 雲仙普賢岳の火砕流堆積地を緑化する上で必要な条件を把握するため、火砕流堆積地において緑化試験を実施した。試験の結果、樹種や導入形態(播種、苗木植栽)による定着率・初期生長の違い、樹種毎の施工適期、マルチングの効果、獣害防護策の効果等、火砕流堆積地を緑化する上で必要な条件を把握した。
<キーワード> 雲仙普賢岳、砂防指定地、火砕流堆積地、緑化、在来種
【報 文】河川水辺の国勢調査を利用した河川横断施設が魚類に与える影響評価
佐合純造
<抄録> 全国109一級河川を対象にして「河川水辺の国勢調査結果」と「全国一級水系における河川横断施設の概略点検結果」を用いて、河川単位で河川横断施設が河川生物に与える影響を求めた。また、河川横断方向に河川横断施設位置と魚類調査データを組み合わせることによって、横断施設が魚類に対する影響を定量的に評価した。
<キーワード> 河川水辺の国勢調査、河川横断施設、河川生物、魚類