合理的な軟弱地盤対策による道路建設コストの縮減
 
大きな沈下が予想される軟弱地盤上に、建設コストの縮減を図りながら道路を安全に建設するノウハウを提供します
 

 全国的な幹線道路ネットワークを構成する高規格幹線道路、及び、それを補完する地域高規格道路では、以下のいずれかの機能を有することが求められています。

連携機能
   通勤圏域の拡大や都市と農山村地域との連帯の強化による地域集積圏の拡大を図る環状・放射道路

交流機能
   高規格幹線道路を補完し、物資の流通、人の交流の活発化を促し地域集積圏間の交流を図る道路
連結機能
   空港・港湾等の広域的交流拠点や地域開発拠点等との連結道路
<技術的な課題>
   軟弱地盤上に高規格道路等を建設する場合、要求される機能を確保し、かつ、建設コストを縮減するには、以下の技術的課題への対応が必要です。
  軟弱な粘性土地盤などに盛土を設計する場合、一般的な地盤評価と設計手法では、沈下・安定のために全線に渡る軟弱地盤対策工が必要と判断され、軟弱地盤対策工の建設コストが膨大となります
  設計者が準拠する道路土工指針、道路橋示方書等の基準は、 全国を対象とした一般的な内容であり、具体的な検討には建設地の特有な条件への対応が必要となります

地域高規格道路の機能イメージ
(国土交通省近畿地方整備局HPより)

道路盛土の要求性能の例
道路盛土の要求性能の例

性能1: 健全性を損なわず、通常の維持管理で交通機能を確保できる性能
性能2: 有害な変形が発生するが、短期の補修で機能を回復できる性能
性能3: 交通機能は喪失するが、崩壊しても周囲に甚大な影響を与えない性能


     
道路・水路カルバートの沈下・段差緩和対策
 
路面の段差が問題となる道路・水路カルバートへの対応
非着底の深層混合処理と、浅層混合処理を組み合わせて、カルバートの沈下を許容値以下に制御
カルバート周辺の沈下差を考慮して、段差緩和区間の改良体長さを設定


当初計画 見直し後
コスト比率:1.00 コスト比率:0.29 (縮減率71%)


 地盤改良の目的は、軟弱粘性土地盤の安定・沈下問題が主体でしたが、最近では砂地盤の液状化も大きな問題となっています。
 そこで、盛土の沈下や周辺地盤の沈下を大幅に軽減し、さらに拘束効果により液状化を軽減する「フローティング型 壁式地盤改良工法」について紹介します。

 
1.特徴
横断壁と横断壁に囲まれた地盤が一体的に沈下するため、沈下対象層が横断壁下端より下部の地層となることや、横断壁側部の周面摩擦力により沈下対象層への載荷荷重が減少することから、杭式地盤改良に比較して沈下量が大幅に減少
横断壁を盛土横断方向に設置するため、地下水の流れを阻害せず、更に横断壁間が拘束されるため耐震性が高い
図-1 壁式改良+変位抑制壁(TYPE1)
図-2 壁式改良+変位抑制壁(TYPE2)
図-1 壁式改良+変位抑制壁
(TYPE1)
図-2 壁式改良+変位抑制壁
(TYPE2)
 
2.沈下低減効果(大川佐賀道路試験盛土の事例:有明海沿岸国道事務所)
盛土高さH=8m(無対策で盛土天端沈下量が330cm程度(FEM解析)となる地盤)で、沈下量は100cm程度(無処理の30%程度)と大幅に減少(図-4, 図-5)
周辺地盤(法尻2m離れ)の沈下量は3cmに激減(図-4)
横断壁に囲まれた改良部では過剰間隙水圧はほとんど発生せず、横断壁と一体化弾性沈下的な挙動を示す(図-6)
未改良部圧密沈下的な挙動を示す(図ー6)
盛土天端の平坦性を維持。道路盛土としての機能を確保(表-1)

図-3 大川佐賀道路試験盛土の一例   図-4 大川佐賀道路試験盛土の沈下の経時変化(横断壁の配置間隔5.9m)
図-3 大川佐賀道路試験盛土の一例   図-4 大川佐賀道路試験盛土の沈下の経時変化 (横断壁の配置間隔5.9m)
 
図-5 大川佐賀道路試験盛土の地表面沈下分布
図-5 大川佐賀道路試験盛土の地表面沈下分布
 
図-6 盛土中央の深度方向の沈下分布(横断壁の配置間隔5.9m)
図-6 盛土中央の深度方向の沈下分布(横断壁の配置間隔5.9m)
 
表-1 壁式地盤改良と杭式改良の盛土天端の状況
表-1 壁式地盤改良と杭式改良の盛土天端の状況
 
3.コストメリット
 比較条件: 盛土高さ8m、軟弱層の厚さ21.2m
盛土天端の沈下量:供用後3年間で10〜30cm以内
法尻の総沈下量:5cm以下
 
表-1 壁式地盤改良と杭式改良の盛土天端の状況
 
  壁式改良工法
(改良率18%)
(横断壁の配置間隔4.9m)
杭式改良
(改良率30%)
延長100m当たり
(直接工費)
\93,000,000-
(0.71)
\131,000,000-
(1.00)
 
4.施工実績等
  国土交通省九州地方整備局:国道57号熊本宇土道路
  国土交通省九州地方整備局:国道208号大川佐賀道路
  国土交通省北陸地方整備局:国道253号上越三和国道
     
  2019年3月: NETIS登録/フローティング型壁式地盤改良工法(NETIS:KT-180144-A)
  2021年3月: NETISテーマ設定型(技術公募):軟弱地盤上の堤防整備における周辺地盤に影響を与えない圧密・排水促進の技術(地盤改良を含む)の評価・比較表の公表
 
5.主な発表論文等
  「フローティング型 壁式地盤改良パラウォール工法 設計・施工マニュアル」改訂版, 令和3年7月, 一般財団法人土木研究センター 壁式改良工法研究会
No 論文名 出典 出典年月
1 軟弱地盤における壁式改良技術とその適用
―熊本宇土道路軟弱地盤対策を事例にして―
軟弱地盤No.12(軟弱地盤研究会) 2015年 5月
2 熊本宇土道路における壁式改良工法による盛土沈下抑制効果 土木技術資料, Vol.58, No5 2016年 5月
3 大川佐賀道路における壁式軟弱地盤対策による試験盛土の評価 第32回日本道路会議 2017年11月
4 試験盛土による壁式改良工法の沈下抑制効果の検証 地盤工学会誌, Vol.68 No.8Ser.No.751 2020年 8月
5 国道208号大川佐賀道路における壁式改良工法の適用性 第34回日本道路会議 2021年11月
6 最近の地盤改良工法について 第27回地盤工学に関わる実務者報告会
(地盤工学会北陸支部)
2022年 1月
 
6.壁式地盤改良工法研究会
 フローティング型壁式地盤改良工法の普及、及び技術の向上を目的として設立。現在、正会員5社、特別会員2社、一般会員5社により、工法の技術的検討、広報などに努めています。
 壁式地盤改良パンフレットはここをクリック☞
 
<正会員5社>
小野田ケミコ株式会社 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-21 JPRクレスト竹橋ビル 03-6386-7044
三信建設工業株式会社 〒111-0052 東京都台東区柳橋2-19-6 03-5825-3707
新日本グラウト工業株式会社 〒815-0031 福岡県福岡市南区清水1-15-18 092-511-8981
日特建設株式会社 〒103-0004 東京都中央区東日本橋3-10-6 03-5645-5115
ライト工業株式会社 〒102-8236 東京都千代田区九段北4-2-35 03-3265-2845
 
<特別会員2社>
九州地盤研究会 〒819-0395 福岡県福岡市西区元岡744番地 九州大学大学院 092-802-3381
一般財団法人土木研究センター 〒300-2624 茨城県つくば市西沢2-2 029-864-2521
 
<一般会員> 応用地質梶Aサンコーコンサルタント梶A(一社)地域国土強靭化研究所、日本国土開発梶A日本地研

連絡先:一般財団法人土木研究センター技術研究所土工構造物研究部
〒300-2624 茨城県つくば市西沢2-2
TEL 029-864-2521 FAX 029-864-2515
E-mail:kenkyu3@pwrc.or.jp

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