補強土壁の材料特性評価

補強土壁に用いられる材料の特性評価
 補強土壁を構成する材料は、補強材、壁面材、盛土材に分類できます。この内、工場製品である補強材および壁面材については、 表−1,2に示す各評価項目について、試験及び調査を行って十分な特性を有していることを検証しています。
 補強材には、鋼製補強材(帯状鋼材、アンカープレート付き鋼棒など)や合成高分子材料を素材とするジオテキスタイル等が用いられており、 素材によって検証すべき評価項目は異なります。また、土との引抜き抵抗力が摩擦や支圧等の異なる発現機構を有する場合は、 適切な試験方法を選定して評価します。
 壁面材には、コンクリート製または鋼製のパネルやコンクリートブロック等の剛な壁面材や、鋼製枠等の柔な壁面材が用いられており、各々の評価項目について検証を行っています。
表-1 補強材の特性評価
表-1 補強材の特性評価

表-2 壁面材の特性評価表-2 壁面材の特性評価

   
補強材 補強材の各評価項目における試験内容を以下に示す。
引張強度特性 補強材
引張強度試験は、製造時における品質管理は品質管理試験方法に従い。また、製品基準強度の確認は、性能評価試験方法に従って引張強度を確認する。
交点強度試験は、縦横のストランド有する補強材の交点部の強度を確認する。
付着強度試験は、心材を有する補強材の、被覆材との付着力を確認する。
   
クリープ特性
   クリープ試験は、補強材に製品基準強度以下の荷重を任意に選択して載荷し、クリープ低減係数を求める。
   
施工事における耐衝撃性
   耐寒・耐熱性試験は、寒冷地や高温地で使用する場合を想定し、低温および高温での引張強度の変化を確認する。
   
耐久性
促進耐候性試験は、太陽光や雨水等による材料劣化の程度を確認する。
耐薬品性試験は、酸性土、アルカリ土等における安定性を確認する。
耐寒・耐熱性試験は、寒冷地や高温地で使用する場合を想定し、低温および高温での引張強度の変化を確認する。
 ●土との摩擦特性 土中引抜き試験
   引張強度試験は、製造時における品質管理は品質管理試験方法に従い。また、製品基準強度の確認は、性能評価試験方法に従って引張強度を確認する。
     
壁面材
 壁面材の各評価項目における試験内容を以下に示す。
 ●構造特性 壁面材
  壁面材の安全は、想定する作用に対して十分な耐力を有していることを、構造計算により確認する。
  曲げ・せん断試験は、水平土圧に対する壁面材の曲げ・せん断耐力の確認。
  接続強度試験は、補強材の引抜き試験により、壁面材との接続強度が補強材の引張り強度以上であることを確認。
   
 ●耐久性
  凍結融解試験は、寒冷地における凍結融解作用に対する耐久性を確認する。
  中性化試験は、促進試験または施工後長期間経過した試料について、中性化深さを確認する。
   
 ●施工性
   実施工現場または試験施工等により、補強材や壁面材に関わる作業状況を調査して確認する。
   



補強土壁の健全性評価

補強土壁の維持管理の基本
 補強土壁が所要の機能を果たすには、建設に先立っての十分な調査を行うとともに、供用期間中は、常に良好な状態に保つための維持管理が重要です。一般に補強土壁は、降雨による影響を受けやすく、路面排水や表面排水等の排水施設が機能しないと、長期にわたる水の浸入により、裏込め土のせん断強度の低下や背面土圧の増加等による変状が生じ、大規模な災害に至る場合があります。さらに、各種の部材から構成される補強土壁は、周辺環境の影響による経年的な劣化に対しても調査を行う必要があります。
 このように補強土壁が所要の機能を果たすためには、変状の要因をできるだけ早期に見出し、必要な維持補修を行っていくことが大切です。
表-1 補強土壁の日常の点検項目と着眼点
表-1 補強土壁の日常の点検項目と着眼点
   
補強土壁の変状 補強土壁は,コンクリート擁壁に比べ変形を生じやすい土工    構造物です。適切な設計・施工がなされた場合は、安定や外観   に支障はなくとも,不用意な補強土壁の適用,不適切な調査・   設計・施工が行われた場合には,以下のような (a)壁面の倒 れ,(b)局所的なはらみ出し,(c)壁面工の開きやズレ等の変状      が生じ,放置すると場合によっては崩壊に至る場合もあります。 補強土壁の変状
壁面材
 当センターでは,供用時または変状後の補強土壁の健全度を、表-1の日常点検に加え、補強土壁の変状原因、使用材料の安全性、補強土壁の安定性について、以下のような調査・試験・解析などを通じて評価します。
(1)補強土の変状原因の評価
   1) 補強土壁本体及び周辺の地盤調査
    補強土壁の壁面,天端、地表面の変形計測
標準貫入試験、孔内傾斜計など
  2) 背面盛土および基礎地盤を含めた全体
    標準貫入試験、孔内傾斜計
地すべり計測(伸縮計,パイプ歪計)など
(2)材料の安全性の評価
  1) 盛土材
    使用した地盤材料の土質試験
  2) 補強材
    現位置における引抜き試験
    事前に埋設する歪みセンサーなど
  3) 壁面材
    壁面材の変形状況(傾斜、開き、角欠け、ひび割れ、 座屈)の外観診断
    部材特性試験など
(3)補強土壁の安定性の評価 補強土壁の動的遠心載荷試験
  1) 設計検討
    設計法の検証
安定性の照査など
  2) 変形検討
    動的遠心載荷実験、
変形解析(FEM解析)など
     

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